カメラのダイナミックレンジ
(RAWファイルの本当のメリットとは?)
Feb. 2016:Release
目次
4) ラチチュードとは
カメラのダイナミックレンジが分かった所で、ここでラチチュードついても触れておきましょう。
先ずラチチュード(latitude)を英英辞書で調べてみると、以下の様に書かれています。
photography
The extent to which a light-sensitive material can be over- or underexposed and still achieve an acceptable result.
写真関連
感光体が露出オーバーやアンダーでも許容できる範囲。
The extent to which a light-sensitive material can be over- or underexposed and still achieve an acceptable result.
写真関連
感光体が露出オーバーやアンダーでも許容できる範囲。
どうです?
これがダイナミックレンジと同じ意味だと思われますでしょうか?
上の抄訳でも十分意味が通じるのですが、これをカメラに当て嵌めれば以下の様に言えます。
ラチチュードとは適正露出から外れても許容できる光の範囲を指す
ですので、当然ながらラチチュードはダイナミックレンジよりもずっと狭くなります。
例えば、人物写真を撮ったとします。
その際誤って、絞り(露出)を1.5段階間違えて、アンダーやオーバーにしたとします。
ラチチュードが狭いカメラ

すると、中央の適正露出に対して、左上の写真の様に暗く潰れたり、右上の写真の様に白く飛んだりしてしまい、とても許容できるレベルではありません。
ところがラチチュードの広いカメラを使うと、例え露出を1.5段階間違えても、ベストとは言えないまでも、下の写真の様に何とか許容できるレベルの写真が撮れるのです。
ラチチュードが広いカメラ


ですので下段のカメラの場合、ラチチュードは±1.5EVと言えます。
あるいは、その許容範囲で表せば3EVとなります。
また明るさの配分からすれば、上段のカメラのラチチュードは恐らく±0.75EV(1.5EV)でしょうから、下段のカメラの方が2倍のラチチュードがあると言えます。
これがダイナミックレンジと同じだと言う記事は、明らかに間違いです。
繰り返しになりますがラチチュードとは、この様に適正露出から外れても、許容可能な露出範囲を言うのです。
ラチチュードを誤解されている理由
2017/4: 追記
最近になってようやく、日本でラチチュードとダイナミックレンジが同じだと誤解されている理由が分かりました。
その原因の一つは、日本版ウィキペディアでした。
下は日本版ウィキペディアのダイナミックレンジに関する前文の抜粋ですが、明確にラチチュードとダイナミックレンジが同じだと書かれています。
ダイナミックレンジ(英: dynamic range)とは、識別可能な信号の最小値と最大値の比率をいう。
信号の情報量を表すアナログ指標のひとつ。
写真の場合、ラチチュードと同じ意味で用いられることが多い。
信号の情報量を表すアナログ指標のひとつ。
写真の場合、ラチチュードと同じ意味で用いられることが多い。
ところが英語版のダイナミックレンジの説明には、前文はおろか全文を通してラチチュードについては一言も触れられていません。
Dynamic range, abbreviated DR, DNR, or DYR is the ratio between the largest and smallest values that a certain quantity can assume.
It is often used in the context of signals, like sound and light.
It is measured either as a ratio or as a base-10 (decibel) or base-2 (doublings, bits or stops) logarithmic value of the difference between the smallest and largest signal values, in parallel to the common usage for audio signals.
It is often used in the context of signals, like sound and light.
It is measured either as a ratio or as a base-10 (decibel) or base-2 (doublings, bits or stops) logarithmic value of the difference between the smallest and largest signal values, in parallel to the common usage for audio signals.
どうもどこかの誰かが書いた一言が、このデマの源泉になっている様です。
せめて本書を読まれた方だけでも、正しい意味をご理解頂ければと思います。
ただしもう一言付け加えておくと、ダイナミックレンジが広ければラチチュードも必然的に広くなります。
これについては今後中級編で詳しくお話しますが、できれば以下についてはここで覚えておいて頂ければと思います。
①ダイナミックレンジが広ければ画像は必然的に軟調になり、それに伴ってラチチュードは広くなる。
②その一方で、ダイナミックレンジが狭ければ画像は必然的に硬調になり、それに伴ってラチチュードは狭くなる。
③ただし、適正露出のコントラストのある画像(硬調画像)は、軟調画像と比べて明らかに印象的である。