2017/11
はじめに2017/10/25にα7R IIIが発表されました。 発売は11/25からです。 となるとα7R IIをお待ちの方は、買い換えるべきがどうか、悩ましい所です。 α7R IIIの価格が35万円で、α7R IIの中古買い取り価格が25万円だとすると、追加で10万円以上の出費が必要です。 となるとα7R IIIには追加で10万円以上の価値があるかどうか、検証していきたいと思います。 仕様表それでは先ず両者の仕様を一通り見比べてみたいと思いますが、2機種にもう1機種加えておきましょう。 となると、つい最近(2017/5)発売されたα9が入ると思われるでしょうが、本書は違います。 連写秒速20コマを達成したSONY α9 α9はスチールカメラと言うより、むしろ速写性を追い求めたビデオカメラの流れを汲むミラーレス一眼ですので、高画素高速を目指したスチールカメラの流れを汲むα7R IIIとは全く異なるからです。 α7R IIとα7R IIIを比較するのであれば、同じ4千万画素の撮像素子を採用した同じくSONYのデジタル一眼レフのフラグシップであるα99 II(発売:2016/11)でしょう。 AマウントのフラッグシップSONY α99 II 何故ならば、α7R IIIはα7R IIの改良機、或いはα9のディチューン版と言うより、α7R IIIこそSONYミラーレス一眼のフラッグシップであり、α99 IIの正真正銘の競合機だからです。 前置きが長くなってしまいましたが、それでは早速その3台を見比べてみたいと思います。
一通り眺めて頂いた所で、更に細かく見ていきたいと思います。 外観先ずは外観ですが、これは殆ど同じと言っていいでしょう。 横幅と高さは同じで、厚みが2.4mm違うだけです。 厚みと言っても筐体の厚みではなく、グリップの厚みが増えた程度ですので、むしろ使い易くなった事に伴う厚み増と言えそうです。 ご存じの様にα7R IIIになってから、デュアルスロットルとバッテリーの大型化が図られましたが、それでもこの大きさに抑えたのは、さすがSONYとしか言いようがありません。 操作性次は操作性です。 ここについては、かなり変わりました。 一番大きな差は、タッチパネルが搭載された事です。 これによってAFポイントがダイレクトに指定できる様になりました。 おまけに、ジョイスティックも追加されたそうですので、頻繁にAFポイントを移動している方には朗報と言えます。 新たに追加されたジョイスティックとAF-ONとAELボタン ただし本書が最も評価しているのは、別にあります。 α7R IIIにおいては、瞳AFがシャッターボタンの半押しと連動する様になった事です。 瞳AF 従来瞳AFを働かせるためには、シャッターボタン半押し等でAFを駆動させた後、瞳AF機能を登録したボタンを追加で押す必要がありました。 すなわち、2つのボタンを同時に押さなければ、瞳AFは決して働らかなかったという訳です。 その昔初めてα7シリーズを購入したとき、シャッターボタン半押しで瞳AFを働かせる方法があると思い、SONYのお客様相談室に問い合わせた程です。 あれから3~4年経過して、ようやくまともな操作方法がSONY内部で承認された様です。 愚痴はこれくらいにして、1ボタンで瞳AFが働く様になったのは、α7R III最大のメリットと言えるかもしれません。 それ以外にも、恐らく死ぬまで触らないであろうと思うわれる左肩の隅に、(α9同様)C3ボタンが追加されました。 とてつもなく押し難いC3ボタン デフォルトでは、画像をプロテクトするために使う様ですが、一体どこの誰がこの押し難いボタンを使うのでしょうか? 言っておきますが、レンズを左手でホールドしている限り、決して左手の親指でこのボタンを押す事はできません。 ですので、もしこのボタンを押すのであれば、右手だけでカメラを支えた状態で、左手の親指で押すか、左手だけでカメラを支えて右手の人差し指(もしくは親指)で押すしかないのです。 同じく左肩にあるメニューボタンでさえ押すのに苦労するのに、なぜまたこんな所にボタンを追加したのでしょうか? 本当に理解に苦しみます。 もしかしたらどこかのプロ写真家の意見を取り込んだのでしょうが、プロ写真家もピンキリだという事を是非知って頂きたいと思います。 撮像素子撮像素子については、3機種とも同じ4200万画素のExmor R CMOSセンサーを使っています。 ただしα7R IIIの画像処理エンジンは新世代のBIONZ Xを採用したとの事で、画像についてはISO800~3200前後において約1段分のノイズが改善されたとの事です。 ノイズについては少ないに越した事はありませんので、これは素直に喜びたいと思います。 一方、無音撮影や連写における電子シャッター使用時においても、14bitのRAW出力が可能になったそうですが、無音撮影は何方が使っているのでしょうか? またもう一つ見逃してはいけないのが、ポートレート撮影における肌色の再現性を(SONYいわく)大幅に改善したという点です。 こればかりは撮り比べてみるしかありませんが、今までは他社に比べてお世辞にも綺麗とは言えなかった人物の肌がどう再現されるか楽しみです。
ファインダーファインダーも進歩しました。 従来は236万ドットの有機ELだったのですが、α7R IIIにおいては(α9と同様)369万ドット有機ELを搭載しました。 ドット数で5割増しですので、その差は歴然でしょう。 生憎実画像はないのですが、1.5倍の解像度の違い以下の様な違いがあります。 これだけの違いがあると、実際に覗いてみると解像度だけではなく明るさも違う感じでしょう。 またα7R IIIにおいては、ファインダーのフレームレイトを60fpsから120fpsに変える事ができます。 同じくα6300にもファインダーのフレームレイトを60fpsから120fpsに変える事ができるのですが、試してみると確かに動く画像がブレずにくっきり見えるのが分かります。 ファインダーに関しては、間違いなくα7R IIIは魅力的で、かなり光学ファインダーに近付いたと言えそうです。 ただしα7R IIと比べればであって、α7R IIで支障があるかと問われれば、NOと言わざるを得ません。 すなわちスチールカメラとして使う分には、α7R IIのファインダーでも十分だという事です。 AF性能次はAF性能です。 SONYの説明によれば、α7R IIIは大幅に改善されたそうです。 α7R IIは399点の像面位相差と25点のコントラストAFに対して、α7R IIIは399点の像面位相差と425点のコントラストAFです。 また動体追従性は2倍に向上したそうです。 これに伴ってα7シリーズで初めて4Dフォーカスにも対応したそうです。 そんな事を聞くと、画期的と思われるかもしれません。 ですが、以前どこかで同じ事を聞いた様な気がしてきます。 そうなのです。 実は2016/3に発売されたAPS-Cサイズのミラーレス機であるα6300でも、ほとんど同じ様な解説がされていたのです。 具体的には、先代のα6000は179点の像面位相差と25点のコントラストAFに対して、α6300は425点の像面位相差と169点のコントラストAFを採用し、世界最速0.05秒のAFスピードとアピールしましていました。 α6300のAFポイント そこまで言われたら、とてつもなくAF性能が改善されたのだろうなと期待したのですが、実際に使い比べてみても、全く以ってその差を感じませんでした。 それどころか、コントラストの薄い砂浜にでもカメラを向けると、相変わらずレンズが何度も前後するコントラストAF特有の情けない動きをするのです。 もしかしたら走り回る犬や、自転車に乗った人を撮り比べればその差が分かるのかもしれませんが、その様な写真を必要とする機会は実際にどれほどあるのでしょうか。 α7R IIIはそれよりも多少改善されているのかもしれませんが、α6300の経験からすれば、大きな期待はしない方が良いかもしれません。 そもそも測距点数が増えても、AFスピードが向上しても、合焦精度が上がる訳ではないのです。 瞳AF操作性でも述べましたが、本書が最も気になっているのが瞳AFです。 従来も可能だったのですが、問題がありました。 それは、信頼度が低い事です。 確かに撮影中に瞳AFのボタンを押せば目にAFの枠が表れるのですが、撮った写真はかなりの頻度でボケているのです。 ですので、とてもではありませんが絞り開放では使うのは怖くて、ついつい絞り込んで撮ってしまうほどです。 SONYの説明によれば、”瞳AFの検出精度・速度が向上し、追従性能は約2倍に向上しています、とあります。 これを鵜呑みにすれば、信頼度が高まっている様に思えますが、検出精度や追従性能が向上しても、合焦精度が従来のままであれば、ボケの発生率は同じ事です。 理論的にはコントラストAFは位相差方式のAFより精度を高められる事から、この辺が実際に改善されているかどうかが、最大の焦点です。 ISO感度次はISO感度です。 α7R IIの最大常用ISO感度は25600だったのに対して、α7R IIIは32000までアップしたそうです。 各社のフルサイズデジタル一眼のISO感度チャート ただし上のチャートをご覧頂きます様に、ISO25600が32000になったと聞くとかなり改善されたのかと思いきや、たったの1.25倍(1/4段)ですので、はっきり言って誤差範囲と言える程度です。 手振れ補正手振れ補正については、ハード、ソフトの改善によって、α7R IIが最大4.5段分だったのに対して、α7R IIIは最大5.5段分に改善されています。 これは素直に評価できますが、手持ち撮影で低速シャッタースピードを使わない限り、左程メリットを感じないかもしれません。 連写速度連写速度は、α7R IIが秒速5コマだったのに対して、α7R IIIは秒速10コマと大幅に改善されました。 ただしα99 IIは秒速12コマですので、もし連写にこだわるのでしたら、α99 IIの方がお勧めになります。 なお連続撮影可能枚数は、α7R IIに対してα7R IIIの方が3~4割ほどアップしています。 ピクセルシフトマルチ撮影α7R IIIはピクセルシフトマルチ撮影ができる様になりました。 ただしこれも、風のある屋外ではほとんど使えないと思った方が良いでしょうし、頑丈な三脚も必要ですので、結局試しに1度つかったら2度と使わないかもしれません。 動画次なる違いは動画です。 α7R IIIは4K動画でS-Log3が使える様になり、フルHD映像で120fpsのハイスピード撮影もできる様になりました。 スチールカメラとして使う方には、全く関係ありません。 撮影可能枚数撮影可能枚数は、電池を変更した事に伴い、α7R IIIの方が2倍近くアップしています。 これでしたら、ちょっとした撮影でしたら電池を交換しないで済みそうです。 ただし大事な撮影においては、どうしても予備を用意する事を考えると、電池が重くなった分不利になったとも言えます。 また従来の電池が使えなくなった事も、見逃す訳にはいきません。 筐体筐体はいずれもマグネシウム合金で防塵防滴を考慮した構造になっており、α7R IIと同じと考えて良いでしょう。 なおα7R IIIはデュアルスロットルになり、うっかりメモリーカードを入れ忘れる方には朗報です。 まとめ長々と述べてきましたが、それではまとめです。
上の表をご覧頂きます様に、10万円出してα7R IIIに買い換える価値はなさそうな気がしますが、いかがでしょうか? となると、むしろ期待は次期α7 IIIです。 正直な所、一般的な撮影がメインであれば、4800万画素も必要ありません。 確かにそれだけの画素数があれば、トリミングにレタッチにも有利ですが、ポートレートの様な場合でしたら、精細さよりもむしろ滑らかな肌の方が好まれます。 恐らく次期α7 IIIは、α9に使われた2400万画素の裏面照射撮像素子を採用し、ローパスフィルター有りになるのでしょう。 それで他の性能がα7R IIIと同等なると、むしろこちらの方が魅力的な様な気がします。 ついでに、もし本紙がインパクト大とする仕様は何かと訊かれたら、合焦精度2割アップ、拡張ISO感度25達成、ストロボ同調速度1/350、視線入力AF対応、ストロボ発光音とチャージ音復活、音反応シャッター搭載、操作部イルミネーション等でしょうか。
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