2017/11
はじめに前回のα99 IIの衝撃(仕様編)に続いて、今回はα99 IIの使用レポートをお届けしたいと思います。 α99 II + Sonnar T* 135mm F1.8 ZA 通常の新製品レポートでしたら、即効性が重要視される事から、メーカーから借り出したカメラを数日使用した評価になるのでしょうが、それだけではどうしても分からないものがあります。 という訳で、既に発売から1年ほど経過しましたが、α99 IIを半年ほど使ってみて気が付いた事を、思いつくままにしたためたいと思います。 毎度の事ながら、こんな機能がほしい、ここを改善してほしいという内容も含まれています事、ご容赦願います。 AF性能α99 IIのAF精度は、ほぼ満足のいくレベルと言えます。 今までSONYのフルサイズ一眼は、ミラーレスのα7Sとα7R IIを使った事があるのですが、α7SのAF性能ははっきり言って最低でした。 何しろ大口径レンズである85mm F1.4 GMを開放で使うと、全くピントが合わない代物だったからです。 ピントの甘いSONY α7S + FE 85mm F1.4 GM(F1.4 1/1250 ISO100) α7R IIになって多少まともになった感はありますが、それでも撮った写真が心配で、画像をちょくちょく拡大して確認するか、大事な写真は絞り気味にして撮る必要がありました。 ですがα99 IIにおいては、100%とは言わないまでも、かなり安心して使えると言って良さそうです。 ちなみに下の写真はα99 IIで撮ったものですが、完璧ではないもののC-AF(コンティニュアスAF)ですと思いのほか人物にピントを合わせてくれます。 SONY α99 II + 85mm F1.4 ZA (ISO50 1/1500 F1.4) 生憎競合機である、キヤノンのEOS 5Dシリーズや、ニコンのD-800シリーズと比べた事はないのですが、専用のAFセンサー(ただしα77 IIの流用)を使っていますので、恐らく大きな差は無いと思われます。 理論的には、合焦面と測距位置が同じであるコントラストAFや像面位相差AFの方が、合焦精度が良い筈なのですが、フルサイズ一眼においては専用のAFセンサーの方がまだまだ上手(うわて)の様に思われます。 ストロボのAF補助光が点灯するその次にありがたいのが、ストロボ装着時にストロボのAF補助光が点灯する事です。 ストロボのAF補助光点灯(α99 II + HVL-F60M) 恐らくどなたでも、ストロをボ装着すればストロボのAF補助光が点灯するのは、当たり前だと思われる事でしょう。 ところがそうでもないのです。 SONYのミラーレス一眼にSONY純正のストロボを装着しても、(ストロボのAF補助光は点灯せずに)常に本体側のAF補助光しか点灯しないのです。 本体のAF補助光点灯(α7R II + HVL-F60M) その場合、鏡筒が長めのレンズを装着していたり、レンズにフードを付けたままにすると、それらに遮られてAF補助光が被写体に照射されない事がしばしばあるのです。 一体SONYのカメラ部門は何を考えているのかと思いますが、α99 IIにおいてストロボのAF補助光が使えるのは非常にありがたい事です。 なおSONYの最新のストロボでありますHVL-F45RMにおいて、ようやくミラーレス一眼でもAF補助光が点灯する様になりました。
ストロボの抜き差しが多少スムーズストロボに関して言えば、もう一つ吉報をお伝えしたいと思います。 それは、α99 IIのシューアダプターにストロボを差し込むのが、多少スムーズになった事です。 これもまた何だそんな事かと思われるかもしれませんが、SONYのミラーレス一眼に純正ストロボを装着しようとすると、アクセサリーシューへの挿し込みが渋くて本当に苦労します。 このため、ストロボが完全に奥まで差し込まれずにロックが掛からず、ストロボを落下させた事が2度もあります。 SONYのストロボ(HVL-F45RM)の基台はプラスチック製である この理由は、他社のストロボの基台は金属なのに対して、SONY製ストロボの基台はプラスチックなのが原因かもしれません。 キヤノンのストロボ(430EXⅢ-RT)の基台は金属製である これはもうSONY製ストロボの致命的な問題だと思っていたのですが、どういう訳かα99 IIでは多少スムーズにストロボを装着できるのです。 この理由は恐らく、アクセサリーシューの隙間公差を緩み側に設定したせいかもしれませんが、なぜSONY内で統一しないのでしょうか。 前述のAF補助光もそうですが、もしかしたらSONY内でSONY派とミノルタ派の軋轢が残っているのではないかと、勘ぐってしまいます。 他社機より優れている訳ではないのですが、ストロボ撮影時のストレスが多少和らいだので、お伝えしておきます。 AFレンジコントロールこれもまたSONYのミラーレス一眼にはないのですが、α99 IIにはAFレンジコントロール機能が搭載されています。 AFレンジコントロール機能を呼び出した状態 これを設定しておけば、AFの測距点が人物を飛び越えて背景に行ったり、近景に飛んだりするリスクを減らせます。 Aマウントの一眼レフには以前から搭載されているのですが、Eマウントのミラーレス一眼には最新のα9にもα7R IIIにも搭載されていません。 何故なのでしょう? ハイライト重点測光ハイライト重点測光とは、その名の通り、画面内の最も明るい領域に重点を置いて測光することです。 これによって、ハイライトの白とびを抑える事ができます。 一般的には舞台撮影用と思われているのですが、実は晴天の屋外でもかなり有効なのです。 赤色部が白飛び箇所(α99 II 24-70mm F2.8 ISO100 1/250 F6.7 中央重点測光) 上の写真はこのままでも良いのですが、もう少し空の明るさを落としたかった場合には、このハイライト測光で白飛びを抑える事が可能です。 ただしそのまま使うと、画像全体が暗くなってしまうため、+1~2段階程度の補正を掛けておいた方が無難かもしれません。 なおこの補正は、メニュー画面の露出→露出基準調整で各測光モード毎に設定できます。 3軸チルト液晶モニターこのAマウント一眼レフに採用されている3軸チルト液晶モニターは、本当に便利です。 上下左右にも動く3軸チルト液晶モニター 上からでも下からでも、更には横からでも画像が確認できるので、手の伸ばせる範囲であれば、ローアングルからハイアングルまで自由に撮影できます。 確かに横開き方式のバリアングルモニターでも同じ様に撮影可能なのですが、レンズの光軸からズレるのが欠点です。 一度これを使えば、他のカメラを持ち出すのは勇気がいります。 さらに、RGBの他にW(白)を追加した液晶パネルによって、夏のビーチでも液晶で画像が確認できるのも高く評価できます。 RGBW配列の昼までも明るい液晶パネル ただし欠点が無い訳ではありません。 モニターを上から覗く場合、補助プレートを本体に格納しなければ、画像が上下逆に映し出されてしまいます。 モニターを引き出した状態で上から見ると、画像が反転している これは、モニターを手間に引き出した状態で後からモニターを見る場合や、レンズ側に向けて自撮りを行うのを優先したためなのでしょうが、できればセンサーをもう一つ追加して改善して貰いたい箇所です。
シャッターボタン今まではどちらかと言えば好意的な内容でしたが、これからは徐々に厳しい指摘になります。 真っ先に挙げられるのは、シャッターボタンの押し心地でしょう。 ネット内でも指摘されている様に、使ってみると確かにシャッターが意図しないで切れてしまう事が、何度かあります。 意図せず切れてしまうシャッターボタン この原因については、恐らく半押しの状態から、全押してシャッターが切れるまでのストローク(深さ)が短いためだと思ったのですが、有料のストローク調整の内容からすると、従来より半押しの長さを浅くしたための様です。 それはともかく、何故こんなに重要な操作部の操作性を、今頃変更したのでしょうか? 確かに人によって、シャッターの操作力やストロークの好みは異なります。 ですが自然界の法則で、必ずや操作力やストロークの中心値は存在する筈です。 自然界の殆どのバラつきは正規分布して中心値が存在する その中心値になぜ合わせないのでしょうか? もしかしたらユーザーの意見を反映した結果と言うのかもしれませんが、もしそうだとしたら明らかにサンプル数が少ないか、訊くユーザーが偏っているのは間違いないでしょう。 マルチセレクター次はマルチセレクターの操作性です。 これについても、慎重に操作しないと、選ぼうとした位置と異なる所にカーソルが平気で飛んでいってしまいます。 思い通りに操作できないα99 IIのマルチセレクター この原因は、マルチセレクターの操作力に比べて、指への掛かりが悪いのが原因なのは間違いないでしょう。 マニュアルを読むと、ご丁寧に指の腹で操作しろとに書かれていますが、どこで操作しようがユーザーの勝手です。 α99のマルチセレクター(ジョイスティック) これは先代(α99)のマルチセレクターがジョイスティックタイプで、知らぬ間に設定が変わるのを防止するための変更のようですが、そのために操作性が悪くなるのは本末転倒です。 操作性を優先するか、誤操作防止を優先するかは、昔からの課題ではありますが、α99 IIのマルチセレクターは明らかな失敗作です。 ついでに言わせて頂けば、撮影モードダイヤルのロックボタンもいりません。 ISOオートでISO50を設定できないもう一つ何とかしてほしいのは、ISOオートの限界値です。 他社機でもそうなのですが、拡張ISO感度を含めると本機のISO感度はISO50~102,400なのに対して、ISOオートの設定可能範囲は常用ISO感度のISO100~25,600になっています。 ご存じの様に拡張ISO感度の場合、ダイナミックレンジが低下し、高感度ならばノイズが異常に増えるのは百も承知です。 このためユーザーが気付かずに拡張ISO感度になるのは避けなければいけませんが、ISOオートの限界値を設定するのはユーザーですので、それがいやなら常用ISO感度に設定すれば良いだけの事です。 ましてやα99 IIはプロを含めハイアマチュア向けのカメラですので、初中級者と違って拡張ISO感度を使うリスクは十分心得ています。 ノイズだらけになるISO51,200やISO102,400を使う事は稀かもれませんが、ISO50を使う機会はいくらでもありますしメリットも大きいので、何とかISOオートで設定できる様にしてほしいものです。 ISO25の設定先ほどISO50を使う機会はいくらでもあると述べましたが、実例を挙げておくと、晴天下で絞り開放で撮影するポートレートや、日中に水の流れなど低速撮影をする場合です。 この場合、ISO100では感度が高すぎるので、レンズにNDフィルターを付けて光量を落とさなくてはなりません。 屋外でフィルターの付け替えの手間といったらありません。 ISO50でしたら、シャッタースピード1/8000秒、絞りF1.4でEV15という明るい所でそのまま撮れますので、こんなに便利な事はありません。 そしてできる事なら、いつかISO25を実現してほしいものです。 粒状性、発色性ともピカ一だったコダクローム25 ISO25でしたら、EV16という真夏のビーチでも白飛びを気にせず撮影できます。 既にニコンのD810や最新のD850では常用ISO感度をISO64にして、拡張ISO感度でISO32を実現しています。 主要フルサイズカメラのISO感度 昨今はいたずらに高感度特性ばかりを評価する風潮がありますが、むしろ低感度の方が重要だという事を知っておいて頂きたいものです。 常用感度がISO50で、拡張ISO感度が25で、尚且つコダクローム25を彷彿とさせる発色性と使いこなしの難しさを提供してくれれば、言う事ありません。 高解像度+ISO25のフルサイズ一眼となると、かなり訴求効果があると思うのですが、いかがでしょうか? ISO感度が表示されない表示パネルISO感度続きで恐縮ですが、どう考えてもこれもおかしいでしょう。 本体右上部に付いた表示パネルですが、ISO感度が表示されないのです。 ISO値が表示されない役立たずの表示パネル 今どき最も気になるのはシャッタースピードや絞りより、ISO感度でしょう。 にも関わらず本体の状態を示す表示パネルには、ISO感度が常時表示されていないのです。(ISOボタンを押すと表示する) その代わりに、今どき誰も気にしない数千枚という膨大な撮影可能枚数が表示されているのです。 本体上部の表示パネルは、ライバルのキヤノンやニコンのフルサイズ一眼には、当然のごとく搭載されていたのですが、SONYのフルサイズミラーレス機には省略されていました。 このためα99 IIの表示パネルにはかなり便利になると期待していたのですが、ガッカリを通り越して唖然としてしまいます。 ですので、今までに1度もこの表示パネルは見た事がありません。 表示パネルにISO表示は不要と判断したのは、一体どこの誰なのでしょうか? ストロボを装着すると表示されないISO感度となると、ISO感度はファインダーか背面のモニターで確認するしかないのですが、ここにもまた問題があります。 通常ISO感度をオートにすると、シャッターボタンを半押しすると、そのときの明るさで最適になるISO感度が表示されます。 ところが、ストロボをセットしてISO感度をオートに設定すると、シャッターボタンを半押しても表示はAUTOのままで、ISO感度が表示されないのです。 ストロボをセットするとISO感度が表示されない ストロボ撮影においてもISOオートは何かと便利なのですが、事前にISO感度が表示されないため、止む無く1枚撮影して撮った写真でISO感度を確認する事になります。 さもなければ、一旦ストロボの電源を切って、更にシャッターボタンを半押しして確認しなければなりません。 一体この仕様を決めたのは、どこのどいつなのでしょうか? まとめいかがでしたでしょうか? 上記をまとめると以下の様になります。
後半は愚痴が多くなってしまいましたが、かなり完成度が高くなった分、細かな粗が目立ったとも言えない事もありません。 ですので、逆に言えば今の所これ以外の問題点は、感じないとも言えます。 一台数十万円するカメラですと、おいそれと使い比べる事もできないのですが、キヤノンやニコンにかなり近づいてきている印象があります。 ただしそれは明るい内だけで、夜は全く使えなくなりますので、ご注意ください。
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