2017/08発行
はじめに安くて軽いα6000にするか? それとも思い切って、4K動画が撮れてAF性能がアップしてマグネシウム筐体を採用したα6300にするか? SONYのAPS-Cサイズのミラーレスを購入するにあたり、どちらにするか、楽しくもあり且つ悩ましくもある問題に直面している方も多いのではないでしょうか。 α6300の発売直後でしたら、両者の価格差が10万円近くもあったので、特別悩む必要もなかったのですが、昨今両者の値段も下がってきて価格差が5万円前後になってきた事から、その贅沢な悩みも俄(にわ)かに現実味を帯びてきました。 α6000 α6300 α6500 そう思ってネットで調べると、両者の比較記事は山の様にあるものの、いずれも単なる仕様書の比較でしかなく、読者と同レベルもしくはそれ以下の情報しか入手できません。 となったら、本書が自腹で2台のカメラを入手して、比較するしかありません。 入手したα6000(左)とα6300(右) これを読んで頂ければ、貴方にとって有効なカメラはどれか、仕様書だけでは分からない事も見えてくると思います。 また、(入手してもいないのに)ボディー内手振れ補正を搭載したα6500についても、偉そうに述べさせて頂いています。 仕様表それでは先ず両者の仕様を、一通り見比べてみる事にします。
これをご覧頂きます様に、α6300は色々改良が加えられていますので、それらの詳細について調べていきたいと思います。 外観先ずは外観ですが、これは殆ど同じと言っていいでしょう。 横幅と高さは同じで、厚みが4mm違うだけです。 でも何か変です。 2台を並べて上から見比べると、どうみてもα6300の方が一回り大きく見えます。 一回り大きく見えるα6300(手前) 試しに艦橋部の厚みを測ると28mmと31mmでやはり4mmの差でしかありません。 たった4mmの差なのですが、厚みで4mmの差は視覚的にはかなりの差がある感じです。 また重さは344gと404gで、60gの差があります。 60gとは10円玉が13枚分ですので、持ち比べるとα6000は軽いという感じで、6300はずっしりといった印象を持ちます。 恐らくこの重さの差は、筐体をマグネシウム合金にしたのが効いているのでしょう。 と言う訳で、大きさと重さに関しては、間違いなく軽くて小さいα6000に軍配が上がります。 なおボディー表面については、α6000が光沢のある塗装に対して、α6300はシボの付いた塗装になっています。 シボがある方が高級感があるとも言えますし、傷も目立ち難いのですが、殆どのEマウントレンズが光沢のある塗装なので、α6000の方がレンズとの統一感があるとも言えます。 この点からもα6000に軍配を上げたいと思います。 操作性次は操作性です。 ここについては仕様書では気付かない差がいくつかあります。 一番大きな差は、α6300にAF/MFとAELの切り替えレバーが追加になったという事です。 これはα7シリーズと同じ機構ですので、α7シリーズを使っている方にとっては、朗報と言えるのではないでしょうか。 α7の切り替えレバー ただしこれでα7シリーズと同じ様に操作できると思ってはいけません。 ご存じの様に、α7シリーズには右肩に露出補正ダイヤルがあり、更に前後にコントロールダイヤルがあります。 α7には前後ダイヤルと露出補正ダイヤルがある 一方α6300には、露出補正ダイヤルと前面のコントロールダイヤルがありません。 ですので、α7シリーズと全く同じ操作はできないのです。 と言う訳で、α6300をα7シリーズと同じ操作性のサブ機になると期待して購入すると、少々がっかりする結果になります。 その他の違いは、モードダイヤルのメニューもα6300の方がα7シリーズに近くなりましたが、実使用においてはそれほど大きな差ではないと言えます。 それ以外の細かい所では、α6000のモードダイヤルとコントロールダイヤルは、α6300のそれらより軽く回ります。 個体間のバラつきの可能性もあるのですが、この二つのダイヤルは親指だけで回す様になっているため、軽く回るのはかなり助かります。 好みの問題かもしれませんが、ダイヤルの操作性についてはα6000をお勧めします。 と言う訳で、操作性のまとめとしては、以下の様にしたいと思います。 α6300にAF/MFとAELの切り替えレバーが追加になったが、依然α7シーズよりダイヤルの数が少ないので、効果は限定的である。 それよりも、α6000のモードダイヤルとコントロールダイヤルは、α6300より軽く回るので、操作性は優れている。 撮像素子撮像素子については、同じAPS-C ExmorCMOSセンサーを使っています。 また画像処理エンジンも同じBIONZ Xですので、画像については同じと考えて良いでしょう。
ファインダー両者の大きな違いはファインダーでしょう。 当然ながら両者とも電子ファインダーを搭載しているのですが、その差は歴然です。 α6000の電子ファインダーは114万ドットなのに対して、α6300は236万ドットと2倍近い解像度なのです。 左がα6300、右がα6000のファインダー拡大写真 上の写真では少々分かり難いのですが、覗いてみると解像度だけではなく明るさも違う感じで、一度α6300のファインダーを覗いてしまうと、α6000には戻れません。 多少オーバーかもしれませんが、ハイビジョンTVの後に古いアナログTVを見た様な感じです。 またα6300はファインダーのフレームレイトを60fpsから120fpsに変える事ができ、試してみると確かに動く画像がブレずにくっきり見えるのが分かります。 おまけにα6300は、α6000で一旦省略された水準器も復活しています。 α6300で復活した水準器 と言う訳で、ファインダーについてはα6300が間違いなく上です。 ところでα6000に無くなった水準器ですが、どうしても必要になったら一つ手があります。 α6000の上部は真平らですので、100円ショップの水準器を乗せれば、簡単に水平を確認できます。 α6000の上に乗せた水準器 もし宜しければ、是非お試しください。 AF性能次はAF性能です。 仕様書でみれば、α6300の優位性が明らかです。 α6000は179点の像面位相差と25点のコントラストAFに対して、α6300は425点の像面位相差と169点のコントラストAFです。 α6000のAFポイント α6300のAFポイント 数値で比べると、像面位相差測距点の数で2.4倍、コントラストAFは6.8倍にもなります。 またAFスピードやAFの追従性能も、α6300は改善されているとの事です。 ですが、残念ながら使い比べてみても、全く以てその差を感じません。 もしかしたら走り回る犬や、自転車に乗った人を撮り比べればその差が分かるのかもしれませんが、その様な写真を必要とする機会は実際にどれほどあるのでしょうか。 測距点の数を増やすより、測距点を素早く選択できる方が、万人にとっては余程有効ではないかと思います。 と言う訳でAF性能については、α6300において大幅に改善された様だが、一般的な撮影においては、効果は限定的である、としたいと思います。 ISO感度次はISO感度です。 α6000は最大ISO感度25600なのに対して、α6300は拡張で最大51200まで増感できます。 では両者の画像を比べると、以下の様になります。 左がα6300のISO25600、右がα6000のISO25600 左がα6300のISO6400、右がα6000のISO6400 生憎α6000の方が僅かに明るいのですが、素人目で見る限りα6000の方がノイズが少ない様に見えます。 これからすると、全体的に感度が上がった訳ではなく、電気的に増幅してISO感度51200を追加しただけの様に思われます。 ちなみにISO51200で撮った画像は以下の通りで、余程の理由が無い限り一般ユーザーが使う事はないでしょう。 と言う訳で、ISO感度については1段階増感できる様になったものの、実質的なメリットは何も無い、としたいと思います。 サイレントシャッターサイレントシャッターとは、電子シャッターの事です。 これを使えば、シャッター音を消した撮影が可能になります。 ですのでコンサート会場とか、美術館での撮影には向いているでしょうが、無音で撮影する場面がどれほどあるか疑問です。 シャッターを押した感触がないので、筆者は使った事がありません。 内蔵ストロボ僅かな差ですが、α6000の内蔵ストロボのガイドナンバーは4だったのに対して、α6300は6になっています。 ガイドナンバー4のα6000(左)とガイドナンバー6のα6300(右) 僅かとは言え、光量がアップした事は評価できるのですが、このアップ分はISO感度を2倍にしたのと同じ事なのです。 すなわち、α6000のISO感度を200にしてやれば、ガイドナンバーは6になり、400にすれば8になるのです。 と言う訳で、ガイドナンバーの差については、実質的な差は殆ど無いと言えます。 手振れ補正手振れ補正については、両機とも搭載していません。 ですので、特に触れる必要もないのですが、折角ですのでα6500の話をここでしておきたいと思います。 ボディー内手振れ補正を搭載したα6500 ご存じの様に、α6500にはボディー内の5軸手振れ補正機能が搭載されています。 α6500の5軸手振れ補正機能 ですので、思い切ってα6500にしょうかと思っている方も少なからずいらっしゃると思います。 ですが、α6500の5軸手振れ補正は無駄です。 本サイトをご覧頂いている方ならご存じでしょうが、普通の撮影で手振れ補正が有効なのは、角度ブレだけなのです。 となると、下の表の様に殆どのEマウントレンズには角度ブレ補正機構が搭載されていますので、重複してボディー内手振れ補正など全く以て必要ありません。
ではボディー内手振れ補正の、シフト振れ補正や回転振れ補正は、なぜ必要無いのでしょうか? それは非常に簡単な事で、シフト振れが有効なのは、マクロ撮影の様な近距離撮影のときだけなのです。 そして回転振れ補正が有効なのは、夜景を手持ちで撮影する様な、長時間撮影のときだけなのです。 詳しい話はこちらをお読み頂くとして、5軸手振れ補正機能に興味を持ってα6500を購入しようと思っている方は、α6300もしくはα6000にする事を強くお勧め致します。 連写速度連写速度についても、両者同じですので割愛します。 なお折角ですので、お伝えしておきますと、α6000もα6300も、秒速11コマの高速連写が可能ですが、その間ファインダーが瞬間的に真っ暗になるブラックアウトはありません。 動画次なる違いは動画です。 α6300は4K動画が撮れる様になりました。 と言っても、動画に興味の無い方でしたら、どうでも良い話でしょう。 ましてや、S-Log3、S-Log2対応と言われても、何だソレ?といった所ではないでしょうか。 更には、折角4K動画を撮っても自宅のテレビが普通のハイビジョンであれば、多少の改善は見られるものの本来の4K画像は見られません。 ところが、この4K動画に全く興味の無い方にとって、α6300は見過ごせない問題点があるのです。 それをご説明する取っ掛かりになるのが、α7シーズの価格体系です。 何でいきなりα7シリーズの価格体系が出てくるのだ思われるでしょうが、騙されたと思って読んでみて下さい。 下は標準モデルのα7とα7 IIの、発売開始当初の価格とその価格差です。
ご存じかもしれませんが、α7とα7 IIの大きなさはボディー内手振れ補正の有無なので、この価格差(95000円)の大半が手振れ補正ユニットの価格なのは異論は無いと思います。 次に、高感度モデルであるα7Sとα7S IIの価格差を見てみましょう。
上の表をご覧の様に、驚く事に何とその差は19万円近くもあるのです。 α7Sとα7S IIの差と言えば、撮像素子は全く同じですので、ボディー内手振れ補正と4K動画機能の有無しかないのです。 と言う事は、この差額の19万円の内、手振れ補正ユニットの9万円を除く10万円の大半は、4K動画のコストに当たると考えるが妥当でしょう。 だからと言って、α6300も4K動画で10万円も上乗せされているとは言いませんが、α6300とα6000の差額のかなりの部分にこの4K動画のコストが締めているのは間違いありません。 ですので、もし4K動画を全く使わない人がα6300を買ったとしたら、使いもしない機能のために数万円を支払った様なものなのです。 という訳でここでの結論は、4K動画を全く撮らない方がα6300を購入するのは、非常に勿体ない事だ、としたいと思います。 撮影可能枚数撮影可能枚数はα6300の方が1割以上アップしています。 4K動画が撮れる様になっていながら消費電力を抑えた事は、SONYの面目躍如と高く評価できます。 筐体α6000の筐体は一般的なエンジニアリングプラスチックだったのに対して、α6300はマグネシウム合金を奢っています。 当然ながら金属の方が頑丈で剛性が高いので、重いストロボを装着したときに、俄然有利になります。 という訳でSONYの一番大きなストロボ(HVL-F60M)を装着して、強度上の違いが無いか調べてみました。 大型ストロボを搭載したα6300(左)とα6000(右) 結論を言えば、全く何の差も感じません。 また試しにα6000にフルサイズのレンズ(SEL2470Z)を装着してみたのですが、当然ながらグラグラ感もありせん。 これからすれば、余程重い望遠レンズでも装着しない限り、プラスチックの筐体でも全く問題も無さそうです。 ですので、敢えて筐体を金属にしたのは、4K動画撮影時の放熱性を考慮したのが主たる目的ではないでしょうか。 とすると、ますます4K動画を撮らない場合、α6300は無駄に思えてしまいます。 なおα6300は防塵防滴を考慮した構造になっていますが、APS-Cサイズの専用レンズは全て防塵防水ではないため、これもまた雨の日に使える訳ではありません。 まとめ長々と述べてきましたが、それではまとめです。 本書としては、以下の結論としたいのですが、いかがでしょうか。
本書がお役に立てば幸いです。
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