AF精度と露出シミュレーションの関係

2020/01/28:発行


はじめに


ミラーレス一眼においてAFを最高の状態で働かせるには、露出シミュレーションをONにしておいた方が良いでしょうか?


瞳AFが働く最高の条件とは

それともOFFにしておいた方が良いのでしょうか?

はたまたどちらも同じなのでしょうか?

今まではどちらも同じだと、何の疑いも持たずにいたのですが、ある動画を見ていてそうではない事に気付きました。

そんな訳で、今回はAFと露出シミュレーションの関係についてお伝えしたいと思います。

なお本書では、瞳AFの検知精度とAFの測距精度をほぼ同意語として扱っています事、ご了承願います。

すなわち瞳AFの検知精度が落ちれば、AFの測距精度も落ちると扱っています。


興味深い動画


それでは早速、その発端になった動画をご紹介したいと思います。

内容はNikon Z 6とNikon Z 6IIのAF性能の比較です。


少し長いので簡単に内容をご説明しますと、この動画はNikon Z 6よりNikon Z 6IIの方が暗所でのAF性能がEV-3.5からEV-4.5に改善された事、更に動画撮影時にも瞳・顔検出が利用可能になった事の確認を、ご自分を被写体にして行われています。

その際、カメラの設定を以下の様に変えて試験されています。

部屋の明るさ:EV5.9
①1/60秒 F1.8 ISO320
(露出補正:0段)
②1/60秒 F1.8 ISO100
(露出補正:-1.7段)
③1/60秒 F2.8 ISO320
(露出補正:-3段)

ところがいざ試験してみると、③の状態では(予想に反して)むしろNikon Z 6の方がAF性能は良いという結果になった、という訳です。

その理由ですが、本来ならば暗所でのAF性能の差を確認するためには、部屋を徐々に暗くして行うべき所を、本試験では(ISO感度を下げたり絞りを変えたりして)露出補正を-3段にしてしまい、Nikon Z 6 IIの瞳AFが瞳を認識できなくなったためと思われます。

それに対してNikon Z 6は、動画中の瞳AFは非対応のため、AF測定個所は固定となり、結果的にNikon Z 6 IIよりAFが合い安くなったのでしょう。

ちなみに試験された部屋の明るさはカメラの設定値(1/60秒 F1.8 ISO320)から計算するとEV5.9で、その明るさとは下の表にあります様に一般的な廊下程度の明るさになります。

明るさ
明るさの目安 EV値 倍率
真夏のビーチ EV16 65536倍
快晴 EV15 32768倍
晴れ EV14 16384倍
薄日 EV13 8192倍
曇り EV12 4096倍
雨曇り EV11 2048倍
陳列棚 EV10 1024倍
明るい部屋 EV9 512倍
エレベータ EV8 256倍
体育館 EV7 128倍
廊下 EV6 64倍
休憩室 EV5 32倍
暗い室内 EV4 16倍
観客席 EV3 8倍
映画館 EV2 4倍
日没後 EV1 2倍
薄明り EV0 1倍
深夜屋内 EV-1 1/2倍
月夜 EV-2 1/4倍
おぼろ月夜 EV-3 1/8倍
星空 EV-4 1/16倍
表1: EV値の目安の明るさと倍率

一方Nikon Z 6の暗所でのAF性能であるEV-3.5とはおぼろ月夜、Nikon Z 6IIのEV-4.5とは星空程度の明るさにあります。

このため、もし暗所でのAF性能を比較するのでしたら、例えば1/7秒 F1.8 ISO25600(EV-3.5)と1/7秒 F1.8 ISO51200(EV-4.5)の露出設定において適正露出になる環境で行なわなければなりません。

とは言え、この動画は非常に興味深い内容でした。


動画を見て気づいた事


さて、すっかり前置きが長くなってしまいましたが、本書が興味を持ったのは、露出シミュレーションをONにした状態で露出補正を掛けると瞳AFが効かなくなるという事です。

という事は、露出シミュレーションをOFFにしていたら、常に最高の条件でAFが働くのでしょうか?

そんな訳で、早速手元にあるEOS R6を使って実験してみる事にしました。

なおこの実験の様子は、静止画より動画の方が分かり易いので、以下の動画にしてみました。


これをご覧頂けます様に、ほぼ予想通りの結果になりました。


まとめ


それでは本動画の内容(試験結果)を以下にまとめておきたいと思います。

①露出シミュレーションをONにして、徐々に露出をオーバーにしたりアンダーにすると、瞳AFが働き難くなっていく。

②この事から、露出シミュレーションをONにしている状態であれば、AFが最も精度良く働くのは適正露出のときだと言える。

③またAFは、撮像素子から取り込んだA/D変換直後のデータからではなく、画像データに変換したデータを元に行なわれている。

このため、EOS R6の場合、以下の様になる。

① 露出シミュレーションをONのまま、瞳AFを働かせ、サーボAFにすると、±3段以上の露出オーバーもしくはアンダーで瞳AFが機能しなくなる。

② ただし露出シミュレーションをOFFにすれば、露出オーバーアンダーに関わらず瞳AFは最高の検出精度で働く。

③ また露出シミュレーションがONであっても、ワンショットAFにすればアンダーの場合は画面(画像ファイル)を明るくしてAFが働く。

ただし+3程度オーバーになると画面は一瞬暗くなる(適正露出の画像になる)ものの、瞳AFは機能しない。


そんな訳で、普段適正露出で撮っている(露出補正を殆どしない)のであれば、それほど気にする必要はないものの、もし露出補正を大きく行なう、あるいは瞳AFを常に最高の検出条件で使いたい(AFの測距精度を最高の状態で使いたい)場合は、露出シミュレーションをOFFにした方が良いと言えます。

お役に立ちましたでしょうか。




AF精度と露出シミュレーションの関係




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