赤外写真では、何故空が暗く樹木が明るく写るのか
2021/04/09:発行
はじめに
皆様は赤外写真をご存知でしょうか?
カメラがデジタルに変わってから見掛ける事は少なくなりましたが、フィルムカメラ時代は赤外フィルムなる商品があって、それに赤色のフィルターを付けて撮ると下の様に不思議な写真が撮れました。
赤外写真
特徴的なのは、空が暗くなり、樹木が明るく写る事です。
と、ここまでは見たままの話しなのですが、ではなぜそうなるのかこれからでじっくり解説したいと思います。
今どき子供でも綺麗な写真が撮れるのですが、せめて何故空や海が青く見える(写る)かくらい、知っておいて損はないでしょう。
空が暗く写る理由
先ず空が青く見える理由ですが、太陽の光は空気中の窒素や酸素の分子に当たって波長の短い青色の光ほど散乱しいので、地上から見ると空は青く見えるのです。
ちなみに海が青く見えるのは、水は波長の長い赤い光を吸収し易いからです。
という事は、青く見える空には赤外線は殆ど存在しない(散乱しない)ため、赤外写真では暗く写ってしまうのです。
ただし太陽光(直射日光)は赤外線をタップリ含んでいますので、当然ながら赤外写真では白く写り、人体に当たれば暖かく感じます。
一方青空の光だけの日陰では熱を感じないのと共に、そこで一般的なカラー写真を撮ると青味がかって写る事になります。
このためついでにお伝えしておきますと、同じ太陽光の下であっても、順光と逆光は色味が変わっているのです。
樹木が明るく写る理由
次になぜ暗い樹木が明るく写るかですが、これはもっと興味深い話になります。
炭酸同化作用のため、植物は多くの光を取り込もうとします。
このため、肉眼で見ると(光が葉に吸収され)樹木の葉は暗く見えます。
ところが、光を吸収するのは可視光より短い波長のときだけなのです。
では可視光より波長の長い赤外線になるとどうなるかと言えば、何と今度は反射し始めるのです。
葉は波長が700nmを超える赤外線を反射する
一般的に黒い物体であれば、紫外線であろうが可視光であろうが赤外線であろうが来た光は何でも吸収してしまうのですが、葉は光の波長によって吸収と反射を変化させているのです。
これは、葉の細胞の大きさや細胞内の水の状態によって、葉内の光の乱反射が変化するためと推測されていますが、いやはや何とも驚きのメカニズムではないでしょうか。
このため木陰に入ると、紫外線や可視光は吸収されるものの熱(赤外線)は反射されるので、(熱も吸収するビーチパラソルの下より)涼しく感じるという訳です。
そうなると熱も反射する銀色のパラソルを作ると売れそうな気がするのでが、どうなのでしょうか?
折角の高尚な話が台無しです。
まとめ
それではまとめです。
①赤外写真を撮ると、空が暗くなり、樹木が明るく写る。
②この理由は、太陽の光は空気中の窒素や酸素の分子に当たって波長の短い青色の光ほど散乱しいので、青い空には赤外線が少ないからである。
③また樹木が明るく写るのは、樹木の葉は波長が長い(目に見えない)赤外線を多く反射するからである。