水中ハウジングの徹底活用ガイド
(キヤノンウォータープルーフケースWP-DC56)
2020/2/23:発行
2020/2/29:追記
2020/2/29:追記
目次
1. はじめに
ご存知でしょうか?
キヤノンでは昔から、レンズ固定式カメラ用に防水ケースをリリースしており、直近ではPowerShot G1 X Mark III用にウォータープルーフケース(WP-DC56)が発売されています。
キヤノンのウォータープルーフケース WP-DC56
これ自体は非常に評価できるのですが、残念な事にそれをどうやって使いこなすのかの情報を全く提供してくれません。
実際同梱された説明書は、B5サイズの紙ペラ1枚のみです。
ウォータープルーフケース WP-DC56の説明書
どこも似たり寄ったりかもしれませんが、製品を開発/評価した知識と経験から、こうやって使うとこんな問題が発生するので、こうやって使った方が良いという、有効な話を開示して貰えないものでしょうか。
また需要が少ないせいかネットで検索しても、水中ハウジングの使用に関して有効な情報を得られません。
そんな訳で、本サイトがウォータープルーフケース(WP-DC56)を使いながら、水中ハウジングの徹底活用ガイドを作ってみました。
初めて水中写真を撮る方にも、また既に何度か水中写真を撮っている方にも、そして陸上で防水カメラとして使う方にも、色々役立つ情報を盛り込んでおきましたので、是非参考にして頂ければと思います。
2. 製品紹介
先ずは製品紹介です。
PowerShot G1 X Mark III
既にお伝えしました様に、ウォータープルーフケース(WP-DC56)は、PowerShot G1 X Mark III専用の防水ケースです。
APS-Cサイズで光学3倍ズームレンズを搭載したキヤノンのPowerShot G1 X Mark III
PowerShot G1 X Mark IIIは、キヤノンのコンパクトカメラ(レンズ一体式カメラ)におけるフラッグシップモデルで、フルサイズ換算で24-72mmのズームレンズ、236万ドット電子ファインダー、バリアングルモニターを搭載しています。
初代のPowerShot G1(2000年発売)は他のコンパクトカメラより少し大きめの1/1.8型の撮像素子と使っていたのですが、PowerShot G1 X(2012年発売)で1.5型になり、PowerShot G1 X Mark III(2017年発売)はついにAPS-Cサイズにまで達しています。
キャノンのAPS-Cサイズ(面積比でフルサイズの38%)
余り知られていませんが、APS-Cサイズのレンズ固定式カメラでズームレンズを搭載しているのは、本機だけです。
ウォータープルーフケース(WP-DC56)
一方このPowerShot G1 X Mark III専用のウォータープルーフケース(WP-DC56)は、水深40mまでの防水機能を備えていますので、スポーツダイビングでしたら問題なく使用できます。
水深40m対応のウォータープルーフケース(WP-DC56)
防水ケースはサードパーティーから色々発売されていますが、APS-Cサイズ以上で純正の防水ケースはこれだけではないでしょうか。
3. WP-DC56の注意事項
早速本防水ケースの使い方をご説明したい所ですが、その前にWP-DC56の使用上の注意事項からお話ししたいと思います。
デカイ
最大の問題はその大きさです。
カメラ本体が小さいので、防水ケースもそれなりに小さいと思われるかもしれません。
WP-DC56は並みのフルサイズ一眼レフより大きい
ですが、フルサイズの一眼レフ以上に大きいのです。
特に気になるのが、その厚みです。
収納するカメラ自体は沈胴レンズなので、レンズ収納時は厚み50mmほどなのですが、防水ケースは120mmもあるのです。
持ち運ぶにも、撮影するにも、とにかくデカイのでご注意を。
背面ダイヤルが使えない
次なる問題点は、本ケースにカメラを入れると、背面ダイヤルを回転させる事ができない事でしょう。
防水ケースに入れると背面ダイヤルを操作できない
通常でしたら、絞り、シャッタースピード、ISO感度の3種類を調整したい所ですが、これによって使えるダイヤルは、レンズ根元のコントロールリングと本体前面のコントロールダイヤルの2つになります。
このため、本書お勧めの露出モードを後ほどお伝えします。
シャッターボタンの半押しができない
本ケースにはご覧の様に、手袋をしていても押せる様に大きなレバー式のシャッターボタンが付いています。
レバー式のシャッターボタン
だったら繊細にシャッターボタンを押せるかと思いきや、半押しの感触は全く掴めません。
ですので、陸上の様にAFロックやAEロックなどできずに、押したらそのままシャッターが切れると思った方が無難です。
バックルのロックがとてつもなく重い
これは余談かもしれませんが、ケースを開ける際に解除するバックルのロック解除ボタンがとてつもなく重いのです。
非常に使いづらいバックルのロック解除ボタン(黄色のボタン)
水中で防水ケースが誤って開いてしまう事を心配しているのでしょうが、水中でしたら水圧が掛かっていて、開けようと思っても開きません。
そう言うと、陸上で不用意に開かない様に付けてあると言われるかも、だったらせめてロック解除ボタンのバネだけでも外しておいてほしいものです。
一見、左手で本体を掴み、右手の親指でロックを解除しながら中指でバックルを解除できそうですが、ロック解除ボタンが重くて、どうあがいてもそれは無理です。
このため本体をどこかに置いて、両手を使わないとバックルを開けないのです。
いつか外したいロック解除ボタンのバネ
防水ケースを開ける度にこんな事をやらなければいけないと、苦痛そのものです。
いつかこのロックバネだけでも外してやりたいと思うのですが、それもまた面倒なのでこのまま使い続ける事になるのでしょう。
と言いながら、さすがにこれ以上我慢できず、ついにバネを外しました。
Eリングを二つ外す必要があるので難儀ですが、操作性は格段に向上しました。
お勧めです。
4. 水中撮影の注意事項
通常でしたら本書の後半にお伝えすべきなのでしょうが、ここで水中撮影における注意事項をお伝えしたいと思います。
その理由ですが、これを知っておいて頂ければ、事前にどんな設定をして、どんな準備をする必要があるかの説明をし易くなるからです。
水中では赤味が吸収されて青くなる
これは何方もご存知だと思うのですが、水中では何でも青く見えます。
水中では全ての物が青く見える
この理由は、太陽光の内で波長の短い赤色の光が水にどんどん吸収されて熱に変わってしまい、波長の短い青い光だけが水中に届くからです。
ですので、早い話が白黒の写真に青色で着色したのと同じ様になってしまうのです。
深く潜れば潜るほど、白黒写真を青く着色したのと同じ様な写真になる
これを補正するため、昔はオレンジ(正確にはアンバー)色のフィルターをレンズに付けて撮影していたのですが、現在はホワイトバランスをカメラ側で調整できる様になりました。
SONYのマリンパックに同梱されていたオレンジフィルター
ですので、後ほど登場するホワイトバランスにおいて”水中”を選択すると、水中に適した色味なるという訳です。
ただしそれが万能かと言えば,、全くそうではありません。
ご存知かもしれませんが、アクションカメラの代表格であるGoProには水中用のホワイトバランスの調整機能がないため、下の様なカラーフィルターが用意されています。
となると誰もがこれを使えば、青味の少ない写真を撮れると思ってしまいますが、これが機能するのは、まだ多少赤色の光が残っている水深4~5m程度までで、それ以上深くなるとただ暗くなるだけで、全くと言って良い程フィルターは役に立ちません。
実際説明書にもその様に謳われています。
これはホワイトバランスにも言える事で、青いライトで照らされた人物に対して、どんなにホワイトバランスを調整しても綺麗な肌色にならない事から分かって頂けると思います。
ですので5m以上潜ったら、ほぼ赤系の色が失われてしまうため、ストロボを使って赤色を出すしかありません。
ですがこのストロボが結構クセモノですので、後ほどじっくりご説明したいと思います。
水深1mで1段暗くなる
これもご存知でしょう。
水中に深く潜れば潜る程、暗くなっていきます。
深く潜ると暗くなる
これを数値で表すと、深さ1mで光が45%に減少しますので、1m潜るにつれて1絞り開けなくいけません。
これは是非覚えておいて頂ければと思います。
ですので地上が快晴であっても、5m潜る絞りとシャッタースピードと絞りを以下の様に変更しなければなりません。(EV値についてはこちら)
位置\設定 | 絞り | シャッタースピード | ISO | EV値 |
---|---|---|---|---|
地上 | F8 | 1/500秒 | 100 | EV15 |
水深5m | F2.8 | 1/125秒 | 100 | EV10 |
水深10m | F2.8 | 1/4秒 | 100 | EV5 |
これをご覧頂きます様に、水中で適正露出にしようとすると、はいかにブレやピンボケが発生し易いか、良くご理解頂けるのではないでしょうか。
もし水中10mとなったら、シャッタースピードは1/4秒になってしまいますので、手持ちの撮影は不可能です。
水中写真を撮り始めた頃は、どうしてもピンボケやブレの写真が多くなるのはこのためです。
これを避けるには、ISO感度を上げれば良いのですが、それでも手振れと被写界深度を稼ぐには水深5mで既にISO3200まで上げなくてはなりません。
位置\設定 | 絞り | シャッタースピード | ISO | EV値 |
---|---|---|---|---|
地上 | F8 | 1/500秒 | 100 | EV15 |
水深5m | F8 | 1/500秒 | 3200 | EV10 |
水深10m | F2.8 | 1/125秒 | 3200 | EV5 |
これはカメラをISOオートに設定しておけば自動で設定してくれると思いきや、一般定なカメラは、状況にお構いなくひたすらISO100で撮ろうとするので、手動でISO3200に設定する事を強くお勧めします。
ISO3200だとノイズが心配と言われるかもしれませんが、ピンボケやブレブレの写真よりよほどマシではないでしょうか。
また、たとえ晴れた日と言えども、水深5mでは雨雲り並みの明るさになり、水深10mだと地下鉄の車内並みの暗さになるというのは覚えておいて頂ければと思います。
水中写真は太陽の日が射す深さ3mくらいが最も美しい
そいう意味では、太陽の光が射し、珊瑚が生息する深さ3mくらいまでが、一番綺麗で写真写りの良い条件と言えるかもしれません。
逆に言えば、これ以上潜ると、どんどん撮影条件が悪くなると言えます。
そうなるとまた、ストロボの出番だと思われるでしょうが、その問題点も後ほどじっくりご説明したいと思います。
水中では広角の方が断然有利
水中写真をご覧になって、気が付かれた方は多いのではないでしょうか?
水中写真の大半は広角カメラで撮られている事を。
これはいくつか理由があります。
①被写体に近づける
一つ目は、水中ではどうしても被写体とカメラの間に浮遊物があるため、なるべく被写体に近づいた方がクリアな写真が撮れます。
そのためには、写せる範囲の広い広角レンズの方が断然有利です。
②被写界深度が深い
二つ目の理由は、広角の方が被写界深度が深く、ピントが合う範囲が広い事です。
地上でしたら、背景をぼかして被写体を浮き上がらせる手法もありますが、こと水中ですとなるべく絞りを絞って極力ピントが合っているほど綺麗に見えます。
③水中では1.33倍焦点距離が長くなる
もしかしたら、この話を最初に持ってくるべきだったかもしれません。
水中で自分の手を見ると、大きく見えた経験はないでしょうか。
これは水と空気の屈折率の違いで、水の中では陸上より4/3(1.33)倍も物が大きく見えるためです。
これと同じ理由で、レンズの焦点距離も長くなってしまうのです。
具体的には、仮に24mmの広角レンズであっても、水中では32mm(24mmの1.33倍)と並みの広角レンズになってしまうのです。
場所\種類 | 広角 | 超広角 | 超広角 | 魚眼 |
地上 | 24mm | 18mm | 15mm | 12mm |
水中 | 32mm | 24mm | 20mm | 16mm |
陸上と水中におけるレンズの焦点距離の変化
すなわち水中で写真を撮ると、レンズに1.33倍のテレコンバータを付けたのと、同じになってしまうのです。
このため、もし水中で焦点距離が24mmのレンズが欲しいのでしたら、18mmの超広角レンズが必要なのです。
だったら防水ケースにワイドコンバーターのレンズを付けてほしい気もしますが、値段やら画質への影響等考えると色々難しいのでしょう。
という訳で水中では思いっきりズームを広角にして、寄って撮りましょう。
水中ではピンボケが起きやすい
先ほど、水中では広角レンズが準広角レンズになってしまうとお伝えしました。
それで単に画角が狭くなるだけだと思われるかもしれませんが、実はもっと重要な問題が潜んでいるのです。
それは、被写界深度が一気に浅く(狭く)なり、ピンボケ写真が多くなってしまうのです。
本書で使用するキヤノンのG1X Mark IIIの場合、フルサイズ換算で焦点距離は24mm-72mmです。
この場合、広角端の24mmのF8にして、被写体までの距離を1.5mに設定すると、陸上ならば0.8m~29mまでピントが合います。
環境\条件 | 24mm、F8、距離1.5mの被写界深度 |
---|---|
陸上 | 0.8m~29m |
水中 | 1m~3.2m |
ところが水中ですと、焦点距離が32mm-96mm相当になりますので、同じ設定にした場合、1m~3.2mまでしかピントは合わないのです。
これはかなりビックリではないでしょうか。
このため、もし陸上と同じくらい被写界深度を深くしたいのでれば、F16まで絞らないといけないのです。
恐らく何方も水中で写真と撮ると、ブレとボケに悩まされると思いますが、水中は単に暗くなるだけでなく、こんなカラクリも潜んでいたのです。
水中写真では可能な限り絞りを絞る。
前段でISO3200まで上げるとお伝えしたのは、こんな背景があるのです。
特に接写の場合は、被写界深度が非常に浅くなるので、最小絞りのF16で撮ると思っておいた方が良いかもしれません。
5. 水中でのストロボの使い方
今までは水中では暗くなる、被写界深度が浅くなると述べてきましたので、だったらストロボを使えば良いのだと思われたかもしれません。
ですが、いくら水中が暗いからといって、数メートル先の被写体に向けて、ストロボを強く発光してはいけません。
ではそうするとどうなって、その対策はどうすれば良いのか、これからじっくりご説明したいと思います。
水中では不用意にストロボを発光してはいけない
先ずストロボを強く発光させた画像が、以下になります。
水中で真正面からストロボを発光すると浮遊物が白く光る
前段でお話した様に水中には非常に細かい浮遊物が漂っていますので、真正面からストロボを強く発光するとそれが光ってゴミの様に写ってしまうのです。
特に周囲が暗く、水が濁り気味の場合はこの現象が顕著に現れます。
中にはこれをマリンスノーと呼ぶ人もいますが、どうみてもゴミです。
特にPowerShot G1 X Mark IIIの内蔵ストロボは、レンズに近く更に光軸の真上にありますので、陸上ではストロボの影が出難いという大きな利点があるのですが、逆に水中ですと浮遊物を光らせ易いという欠点があるのです。
PowerShot G1 X Mark IIIの内蔵ストロボはレンズ光軸の真上にある
これを防ぐにはストロボを発光しない、透明度を良い所で潜る、或いは晴れた日に潜れば良いのでしょうが、それは解決策ではなく回避策になるので、ここでは具体的な解決策を理論的にお伝えしたいと思います。
背景を明るくする
先ず一つ目の方法は、ストロボの発光量は同じにして、カメラの設定で背景を明るくする事です。
もし撮った写真の背景が暗いのでしたら、この方法が有効です。
そうすれば、たとえ浮遊物が光っても、周囲が明るいのでゴミが目立ち難くなります。
ですが、いざそれをやろうとすると、結構難しいのです。
例えば、背景を明るくするために、露出補正ダイヤルを+(プラス)側に回したとします。
するとストロボの発光量も増えるので、浮遊物も更に明るく写り、相対的に見え方は同じなのです。
これを更に、絞り/ISO感度/シャッタースピードで背景を明るくする様に調整した場合を加えて表にすると、以下の様になります。
項目 | 調整方向 | 結果 | 判定 |
---|---|---|---|
露出補正ダイヤル | +側 | ストロボの発光量も増えるので、浮遊物も更に明るく写る。 | NG |
絞り | 開ける | ストロボの発光量が同じでも、絞りを開ける事によって、浮遊物も更に明るく写る。 | NG |
ISO感度 | +側 | ストロボの発光量が同じでも、撮像素子の感度が上がるので、浮遊物も更に明るく写る。 | NG |
シャッタースピード | 遅く | シャッタースピードはストロボで照射された物の明るさには影響しないので、浮遊物を明るさは同じで、背景だけ明るくできる。 | OK |
カメラの設定を変えて、背景だけを明るくする方法
上の表をご覧頂きます様に、シャッタースピード以外の項目は、背景を明るくなる様に調整すると、浮遊物自体も更に明るく写ってしまいます。
ですが、シャッタースピードを遅くした場合、シャッタースピードよりストロボの発光時間の方が短いため、ストロボの光を受ける浮遊物の明るさは殆ど変化しないのです。
突然ですが、スローシンクロという言葉を聞かれた事はないでしょうか?
これはストロボ撮影にいて、シャッタースピードだけを遅くして背景を明るくする手法です。
ストロボ撮影において、シャッタースピードだけを遅くすると背景だけを明るくできる
正にこれと同じ様にすれば良いのです。
と言う訳で、もし背景だけを明るくしたいのであれば、シャッタースピードだけを遅くする事です。
浮遊物を暗くする
それでは次に、周囲の明るさを同じにして、ストロボで照らされた浮遊物だけを暗くする方法を考えてみます。
もし背景の明るさが適正であれば、こちらの方法が有効です。
この場合、先ほどの表をご覧頂きます様に、露出補正ダイヤル、絞り、ISO感度、シャッタースピードのどれを逆側に調整しても、背景は暗くなってしまいます。
ではどうするかと言えば、ストロボの発光量だけを抑えれば良いのです。
これには二つの方法があり、もし自動調光(ストロボの光量をカメラが自動調整)の場合でしたら、調光補正を-(マイナス)側に設定します。
そしてマニュアル調光(ストロボの光量を手動調整)でしたら、発光量を落とします。
その設定方法については、後ほどご紹介します。
ストロボの発光位置を変える
先ほどお伝えしました様に、ストロボの光がレンズの光軸に近いほど、浮遊物が光り易くなります。
ですので、もしストロボで遠くの被写体を照らしたいのならば、ストロボをレンズの光軸からなるべく離して発光すれば良いのです。
よく本格的な水中カメラ機材を見ると、カニの手の様にカメラの両側に柄の長いストロボをセットしているのはこのためです。
水中カメラのストロボは極力レンズの光軸から離す必要がある(Nikonos RS)
という訳で、(レンズの光軸に近い)カメラ内蔵ストロボは、次でお話しする場合を除いてなるべく使わない事をお勧めします。
拡散板は接写用
それではその、内蔵ストロボを発光して良い場合をお伝えしましょう。
それは接写撮影のときです。
接写の場合、被写体までの距離は非常に短いので浮遊物は少ないですし、更にストロボの発光量も非常に少なくて済みますので、浮遊物の影響を受けにくいのです。
そしてそのとき必要なのが、本防水ケースに同梱されている拡散板です。
WP-DC56に拡散板を付けた所
この拡散版を付ける事で、ストロボの発光面が広がり、小さな被写体をマイルドに(影が出難く)照らしてくれるのです。
だったらこれを付ければ遠くの被写体もマイルドに撮れるかと思ってしまいますが、遠くの被写体から見たストロボの発光面は小さくなる(拡散板無しと同じになる)ので、そんな事はありません。
被写体から離れると拡散板の効果はどんどん弱まる
被写体からすれば、カメラがどんどん遠ざかれば、拡散板のないストロボに照らさているのと同じになるという訳です。
ご存知ないかもしれませんが、スタジオ撮影において、ソフトボックスや反射傘は極力モデルに近づけるのはこのためです。
スタジオ撮影では広い面光源をモデルに近づける
説明書には、”被写体が近過ぎると、拡散板の効果を十分に得られない事があります”と書かれていますが、これは間違いで”被写体が遠過ぎると、拡散板の効果を十分に得られない事があります”が正解です。
ですので、もし接写を行わないのでしたら、拡散板は不要と言えます。
ストロボの発光量は控え目に
そして最後にお伝えしたいのは、たとえ本格的なストロボを使ったとしても、ストロボの発光量は常に控え目にするという事です。
さもないと、周囲は真っ暗で、被写体だけが明るい、いかにもストロボを焚きましたというような写真になってしまいます。
ストロボの光が強いと不自然に見える
これは先ほどお話した、浮遊物が白く光らせるケースの、少し程度が良くなった版と言えるかもしれません。
このため、基本は自然光(ストロボ無し)で撮影して、もしどうしても被写体が暗い場合に、補助として使うくらいに思っていた方が無難です。
実際下の水中写真をご覧頂きます様に、ある程度水中に日が射して明るい方が綺麗に見えるのは間違いありません。
水中写真は背景が明るい方が断然綺麗に見える
何となく大きなストロボを使った方が綺麗な写真が撮れると思ってしまいますが、それは大いなる誤解です。
外部ストロボを使う
とは言え、それでも試しに水中で外部ストロボを使って撮ってみたい、と思われる方もいらっしゃる事でしょう。
という訳で、(散々ストロボ不要論を唱えておきながら)本防水ケースと外部ストロボの接続方法を、ここでお伝えしておきます。
INONの水中ストロボ(D-200)の2灯セット
先ずカメラと外部ストロボを同調発光させる方法ですが、カメラ(PowerShot G1 X Mark III)の内蔵ストロボを使います。
その内蔵ストロボの発光をトリガー(信号)として、外部ストロボを発光させるという訳です。
上の写真で防水ケースと外部ストロボを繋ぐケーブルが見えていますが、これが内蔵ストロボの発光した光を外部ストロボに伝える光ファイバーなのです。
ではこの光ファイバーを本防水ケースの何処に繋げば良いのでしょうか?
そこで登場するのが、本防水ケーブルに同梱されている光ファイバー接続アダプタです。
光ファイバー接続アダプタをセットした所
この穴に先ほどの光ファイバーの片方を差し込めばセット完了です。
ただしここで1点注意事項があります。
これでPowerShot G1 X Mark IIIの内蔵ストロボを光らせれば、外部ストロボも発光するのですが、撮った写真を見ると画像が暗いままのときがあります。
これは外部ストロボが、シャッターが切れる前に発光しているからです。
なぜそうなるかと言いますと、最近のカメラはストロボが本発光する前に、予備発光して自動調光を行ない、その後に本発光してシャッターが切れる様になっているからです。
このため外部ストロボは、予備発光に同期して発光してしまい、撮った写真は暗いままという訳です。
これを防止するために、外部ストロボにおいて、プレ発光を無視して本発光で同調する様に設定するか、さもなければカメラ(PowerShot G1 X Mark III)側をプレ発光しない様にする必要があります。
PowerShot G1 X Mark IIIの場合、Tv、Av、Mモードにすると、発光モードをオートとマニュアルからを選べる様になっていますので、マニュアルにすればプレ発光せず、どんな外部ストロボとでも同期させる事ができます。
6. カメラの設定
水中撮影における注意事項を知って頂いた上で、陸上でそれに対応したカメラの設定を行っておきましょう。
ケースに装填後も可能ですが、ボタンが押し易い陸上の方が断然楽です。
露出モード
それでは最初に露出モードの設定を行ないます。
既にお伝えしました様に、使用できるダイヤルは2種類ですので、これに沿った露出モードを選びます。
①水中シーン(SCN)モード
水中撮影に特化するのでしたら、一番のお勧めは水中シーンモードです。
これでしたら、シャッターボタンを押す以外、全てカメラ任せにできますので、ダイヤルを回す事もありません。
設定方法は以下の通りです。
①モードダイヤルをSCN(シーン)に設定する。
②背面のQボタンを押す。
③表示されたメニューから、水中撮影(魚マーク)を選択する。
この場合、ホワイトバランスも青味を抑えた設定になり、露出も全自動になり、ストロボのON/OFF/AUTOの設定も可能です。
ただし、AFは中央の1点だけで、露出補正以外は一切変更できません。
このため、もし陸上でも撮りたい場合は次のAUTOモードの方が良いかもしれません。
②AUTOモード
シーンモードより、多少調整しろがあるのが、AUTOモードです。
これは単にモードダイヤルをAUTOにするだけです。
これもシーンモードと同様に露出も全自動になるのですが、ホワイトバランスをAUTOに設定しておけば、水中でも陸上でも取れます。
またAFは、水中シーンモードが中央1点だったのに対して、カメラが被写体を自動判定して白枠で表示するスムーズゾーンフォーカスになります。
③プログラム(P)モード
できればもう少し自分好みに調整したい場合でしたら、プログラム(P)モードでしょうか。
プログラムモ(P)モード)
この場合、AEロック(*)ボタンを押した後、前ダイヤルを回せば、絞りとシャッタースピードの組み合わせを変更する事もでき、AFの方式を含め一通りの設定を自分で選択する事ができます。
絞り優先のAvモードや、シャッタースピード優先のTvモードでも良いのですが、明るさの変化によって絞りとシャッタースピードの両方を調整してくれた方が、失敗は少なくなると思われます。
ちなみに他の設定は以下を基準に自分好みにアレンジすれば良いと思います。
項目 | 設定値 |
---|---|
AF | スムーズゾーンAF |
AF動作 | ワンショット |
ISO | AUTO |
AWB | AUTOもしくは水中 |
ピクチャースタイル | オート |
測光モード | 評価測光 |
またピントの合う確率を上げたい(被写界深度を深くしたい)のならば、初めからISO感度をAUTOではなく、1600程度まで上げてしまうのも手です。
④マニュアルモード
積極的にお勧めはしないのですが、最後にマニュアルモードについてもお話しておきたいと思います。
モードダイヤルをMにすればマニュアルモードになる
一昔前のフィルム時代でしたら、マニュアルモードにすると周囲の明るさが変わる度に、絞りとシャッタースピードを自分で調整しなければいけなかったのですが、今はISOオートがあるので、絞りとシャッタースピードを固定したまま自動露出も可能です。
ですので晴れた日の水中でしたら、以下の様な設定でマニュアルモードが使用できます。
項目 | 設定値 |
---|---|
シャッタースピード | 1/125秒 |
絞り | F8 |
ISO | AUTO |
なお、何度もお伝えしております様に、設定可能なダイヤルは、レンズ根元のコントロールリングと本体前面のコントロールダイヤルの2つになりますので、事前にこの二つに絞りとシャッタースピードを登録しておく必要があります。
ストロボ光量設定
前段でお伝えしました様に、次はストロボの光量を設定します。
SCN/AUTO/Pモードの場合
シーン(SCN)モード/AUTOモード/プログラム(P)モードにおいては、ストロボは自動調光しか選択できません。
ですので、以下の手順で自動調光補正を行います。
①モードダイヤルをマニュアル(M)モード以外に設定する。
②背面ダイヤルも▶ボタン(フラッシュマーク)を長押しする。
③表示されたメニューから調光補正を選択し、補正量を-2にして、SETボタンを押す。
補正量が0のままですと、往々にして被写体がかなり明るく写ってしまいますので、-2程度に設定しておきましょう。
Av/Tv/Mモードの場合
絞り優先(Tv)/シャッタースピード優先(Tv)/マニュアル(M)モードでも自動調光は可能ですが、この場合はマニュアル発光が可能になり、以下の手順で光量も自分で設定できます。
①モードダイヤルをマニュアル(M)モードに設定する。
②背面ダイヤルも▶ボタン(フラッシュマーク)を長押しする。
③表示されたメニューから発光モードをマニュアルにする。
④撮った写真を見て、発光量を大中小の3段階から選択して、セットボタンを押す。
自動調光ですと、カメラが発光量をコントロールするため、便利な反面、思い通りに明るさが変わらないもどかしさがあります。
ですので、撮影に慣れてきたらこのマニュアル発光に挑戦するのも良いかもしれません。
マニュアルフォーカス
通常でしたらAFで撮影するのが一般的ですが、ここでは少々敷居が高くなりますが、水中撮影におけるマニュアルフォーカスの方法をお伝えしておきましょう。
そう聞かれると、水中で撮影する度に自分でピント合わせしなければいけないなんて、冗談じゃないと思われる事でしょう。
ところが、そうでもないのです。
むしろAFより、ピントの合う確立を上げる事ができるのです。
その理由は後にして、先に設定方法をお知らせしましょう。
①電源をONしたら、背面ダイヤルキーの左(◀)ボタンを押します。
②すると、フォーカスモードの切り替えメニューが出るので、マニュアルフォーカスを選択します。
④すると下にあるMFインディケータが表示されるので、距離を2.3mに調整して、セットボタンを押します。
MFインディケータで距離を2.3mに調整する
これでセット完了です。
ではこれで一体どんな事が起こるでしょう。
この状態で、ズームを広角端24mm(水中で32mm相当)の絞りF8にして写真を撮ると、下の図の様に何と1.3mから12.7mの範囲まで常にピントが合うのです。
水中で広角端24mm、絞りF8、距離2.3mにして写真を撮ると1.3~12.8mまで常にピントが合う
先ほど水の中だと、物が1.33倍大きく見えるとお伝えしましたが、という事は(1.33の逆数で)実際より0.75倍近く(1m先の物が距離75cmに)見えます。
このため、実距離1.3m~12.8mにピントが合うという事は、水中での見た目で1m~9.5mの範囲でピントが合うという事です。
これでしたら、接写以外の殆どの被写体を撮影できるでしょう。
もし接写するのでしたら、MFインディケータを表示して、水中で見た目の距離を設定すればピントが合います。
理解するのが少々難儀ですが、覚えておいて損はないでしょう。
表示先をモニターに固定する
カメラを防水ケースに入れてしまうと、例え表示先をオートにしておいても、ファインダー横の顔検知が防水ケースに反応して、ファインダー表示に固定されてしまいます。
このため、以下の手順により表示先をモニターに固定します。
①メニューのスパナマークの1から”表示先設定”を選択し、表示先切り替えをマニュアルにする。
②次にマニュアル表示先をモニターにする。
これでカメラの設定は終わりです。
7. セットアップ
それではいよいよ、カメラを防水ケースにセットします。
防水ケースのチェック
①防水ケースの中を覗いて、もし前面ガラスの内側が汚れていたら、綺麗にしておきましょう。
②オーリングを外して、オーリングの溝を清掃すると共に、オーリングにグリスを塗布して再度溝にはめ込みます。
SDカードとバッテリーのチェック
良くやるのが、SDカードの入れ忘れと、バッテリーの充電忘れです。
電池室の蓋を開けての目視確認では不十分です。
防水ケースに入れる前に、カメラの電源を入れてSDカードにエラーは無いか、充電量は十分かチェックします。
もし予備のバッテリーを持っているのでしたら、ここで交換して、再度電源をONして、充電量を確認しておきましょう。
カメラのフィルターを外す
本来G1 X Mark IIIにはフィルターを装着できない仕様になっているのですが、殆どケラレは発生しないのでフィルターを付けている方も多いのではないでしょうか。
その場合、防水ケースに入れる前に、フィルターを外さなければなりません。
その理由は、レンズの伸縮時にレンズ(フィルター)先端部が防水ケースの前面ガラスにぶつかるからです。
この場合、レンズエラーが発生してレンズが沈胴してしまいます。
という訳で、防水ケースに入れる度に小さなフィルターを外して、そのフィルターの保管場所をどこにするかオロオロする事になるのですが、我慢するしかありません。
カメラのネックストラップを外す
フィルターを外すのも面倒なのですが、もっと面倒なのがネックストップを外す事です。
フィルターとネックストラップを外さなければならない
これも数分掛かる作業なのですが、解決策があります。
ネックストラップの根元側に着脱式のクリップを付ける事です。
そうすれば、クリップを2か所外すだけでネックストラップを外す事ができます。
有名なのは、ピークデザインのクリップですが、値段も高いですし、クリップの片割れも大きくて防水ケースに本体を入れる際、これも邪魔になる可能性もあります。
このため、本体も軽い事もあって、広告左の安めのクリップで十分です。
そろそろ純正でこの様に取り外しの簡単なストラップを用意してほしいものです。
ストロボを上げる
ストロボを発光する場合に備えて、ストロボを発光位置に上げておきます。
カメラをセットする
これは何も問題ないでしょう。
カメラを防水ケースにセットする
カメラを防水ケースに入れ、蓋を閉めて、バックルを閉じます。
と言いたい所ですが、まだ閉じてはいけません。
乾燥剤を入れる
2020/2/23:追記
もっと早く言えと言われそうですが、防水ケースの中に乾燥剤を入れなければなりません。
各社から出ている防水ケース用の乾燥剤と汎用品(右)
その理由は下の写真を見て頂ければ、一目瞭然でしょう。
海水で前面ガラスが冷やされると、ガラスの裏面に結露して曇る
水温が25℃以上あれば良いのですが、それ以下ですと防水ケースの前面ガラスにケース内の水分が結露して曇ってしまうのです。
何も一番大事な前面ガラスではなく、他の個所が曇ってくれれば良いのですが、どうやらアクリルよりガラスの方が熱伝導性が良い様です。
だったら前面ガラスを二重にして空気の断熱層を作るとか、他の部分に金属板の部分外壁をつくり、故意にそこを結露させるとかすれば良さそうなものですが、コストを考えると難しいのでしょう。
一度曇ってしまいますと、ダイビング中にどんなに前面ガラスを暖めても曇りは解消されませんので、ダイビング1本を無駄にしてしまいます。
せめてこれくらい操作説明書に載せておいてくれても良さそうなものですが、キヤノンはその気は無い様です。
それ以前にキヤノンの品質保証部門は、ダイビング中にガラスが曇るという認識もないのかもしれません。
愚痴はこれくらいにいして乾燥剤を入れたら、裏カバーを閉じます。
なお裏技としては、開けた状態の防水ケースを冷蔵庫に5分ほど入れておき、その後冷蔵庫内でカメラをセットして裏カバーを閉じるという手もあります。
もしかしたら、ガンガンにエアコンを効かせた部屋でも効果があるかもしれません。
ただし、間違ってもカメラを裸のまま冷蔵庫(もしくはガンガンに冷やした部屋)に放置してはいけません。(結露の怖さについてはこちら)
おもりを付ける
もし身を入れて潜るのでしたら、防水ケースの下に三脚用のネジ穴を利用しておもり(240g)を付けます。
キヤノンからも専用のおもりを売っていますが、毎度の事ながらお高いので、代用で済ますのでしたら、以下の様なステンレスネジ(1/4インチネジ)を使ってホームセンターで適当な金属板を購入すれば安く済むかもしれません。
キヤノンの純正おもり(左)と代替おもり
と思ったのですが、ステンレスのネジ2本で1000円近くするとなると、純正もそう高いとは言えないかもしれません。
リストストラップに付け替える
キヤノの説明書によれば、ダイビングにおいてはネックストラップではなくリストストラップにする様書かれています。
あとは撮るだけなのですが、既に水中撮影における注意事項はお伝えしたので、次に本機を陸上で使う場合の注意事項をお伝えしたいと思います。
8. 陸上撮影の注意事項
それでは最後に、陸上で使う上での注意事項をお伝えします。
と言っても、背面ダイヤルが使えない事や、シャッターボタンの半押しが難しい事などは、既にお伝えしましたので、陸上で使う上での注意事項は一つしかありません。
それは、フードが無いので、逆光で撮るとフレアーでコントラストが大幅に低下する事です。
特に防水ケースの前面には、厚さ5mm程度もあるガラスが装着されていますので、カメラ単体より条件は悪いのです。
この前面ガラスに面光源を反射させて調べてみると、青緑色に見えるので、一応コーティングはされている様ですが、多層膜コーティングの様に高級なものではなさそうです。
ちなみにこれを逆光で撮ってみると、こんなにコントラストの低下した写真になってしまうのです。
本防水ケースを使って撮った左が遮光無し、右が遮光有りの写真
かと言って、本防水ケースにフードを付けるのも難しそうです。
そこで登場するのが、下のレンズシェードクリップ80です。
アストンのレンズシェードクリップ80
これでしたら本防水ケースの様にレンズの前にフードが取り付けられない場合でも、直射日光を簡単に遮る事ができます。
おまけに、この場合でしたら、ハレ切りをしながら内蔵ストロボを発光する事も可能です。
と言うのは、PowerShot G1 X Mark IIIの場合、ホットシューに何か接続すると内蔵ストロボは使えなくなるのですが、これなら可能です。
さすがに水中では使えませんが、お勧めです。
9. 陸上撮影での裏技
本書の始めに、本防水ケースの問題点として、背面のコントロールダイヤルが使えない等の話をさせて頂きました。
それと共に、当然ながら背面モニターの可変機構も使えなくなります。
ところが本防水ケースを使って陸上で撮る場合は、しぶきが掛かる様な波打ち際の撮影なのですが、その際可変モニターが使えないのは、かなり不便です。
波打ち際で可変モニターを使えないのはイタイ
そこでお勧めなのが、鏡を使ってモニターを上から見る方法です。
この場合、モニターの画像が上下逆さまになるのですが、全く見れないのに比べれば遥かに便利です。
具体的な方法は、割れないカードサイズの金属ミラーの下側を粘着テープで防水ケース下部に固定し、手で角度を調整するという訳です。
こうすれば、うつぶせになる事もなく低い位置から楽に撮れますので、お勧めです。
10. まとめ
さてまとめです。
①キヤノンウォータープルーフケース(WP-DC56)は、APS-Cサイズ以上としては唯一のカメラメーカー純正の防水ケースである。
②背面のコントロールダイヤルが使えない等の問題があるが、水中シーンモードで撮れば、シャッターボタンを押すだけで撮影する事もできる。
③ただし水中では広角側の焦点距離が32mmとなるため、本格的な水中写真を撮るには少々役不足である。
④内部にセットするカメラの内蔵ストロボを使用可能だが、自然な水中写真を撮るには、あくまでも接写用の補助として使用する方が無難である。
⑤本書の水中でのお勧め設定は以下の通りである。
広角端の24mm(水中で32mm)を使用する
ISO感度は1600程度まで上げる
絞りはF8(できればF11)まで絞る
シャッタースピードは1/125秒以上にする
ストロボはなるべく使わない
ISO感度は1600程度まで上げる
絞りはF8(できればF11)まで絞る
シャッタースピードは1/125秒以上にする
ストロボはなるべく使わない
⑥陸上で使う場合は、フレアーが発生し易いので、ハレ切りが必要である。
11. 本書お勧めの設定
これで終わりしようと思ったのですが、余りにも色々書き過ぎたので、却って混乱されている方もいらっしゃるかもしれません。
という訳で、最後に本書お勧めのかなりマニアックな設定をお伝えしたいと思います。
撮影条件:晴れの日で水深5m以上
被写体:珊瑚に集まる魚あるいはダイバー
カメラの設定:マニュアル(M)モードにして、各種設定は以下の通り
項目 | 設定値 |
---|---|
シャッタースピード | 1/125秒 |
絞り | F11 |
ISO | AUTO |
フォーカス:マニュアルフォーカスにし距離を1.1mに設定する。
これにより、広角端の24mmで撮れば、0.6mから5mの範囲でピントが合います。
最初の内は、シーンやAUTOモードを使って頂いて、もっとピンボケの歩留まりを下げたいと思ったら使ってみて頂ければと思います。
本書がお役に立てば幸いです。