ボケ易い単焦点レンズのベスト15
(お勧めポートレート用レンズ)
第4位:300mm F2.8
撮影距離:7.2m
そして第4位が300mm F2.8で、これは現在キヤノン、ニコン、ソニーから発売されています。
Canon EF300mm F2.8L IS II USM (2011/8)
750,000円 2,350g
AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II (2010/1)
788,400円 2,900g
SONY 300mm F2.8 G SSM II (2012/12)
775,000円 2,340g
このレンズは前出の200mm F2.0と違って1970年代からありましたので、328(サンニッパ)との愛称で親しまれ、一時期ポートレートでも重宝された時代もありました。
ただし焦点距離が300mmと長い分だけ、モデルとの距離を5m以上確保しなければならならず、前述の200mm F2.0よりも更に使うのが難しいと言っても良いでしょう。
実際このレンズでモデルの上半身を撮るためには、更に7m以上離れなければならないため、屋外用と考えた方が良いかもしれません。
開放時のMTFを見るといずれも優秀で、10本/mmのチャートで100%近いコントラスト比は驚きです。
順位を付けるとすると、30本/mmのチャートでも端部以外でMTF90%を達成しているソニー、続いてキヤノン、ニコンの順番になります。
Canon MTF
NIKON MTF
SONY MTF
ちなみにキヤノンもニコンも200mm F2.0よりこちらの方がMTFは優秀です。
さて前段にお話ししました罠についてお話したいと思います。
先ほど上半身を撮影する場合、85mm F1.2が一番ボケるとお伝えしました。
ですがその場合、背景までの距離が6.7mでした。
でしたら、被写体までの距離はそのままで、背景がもっと遠くなるとどうなるでしょう。
ここでは思い切って、無限遠にあるとして計算してみます。
すると、どうなると思われますでしょうか?
背景が無限遠における上半身を撮影した場合のボケ量
(バストトップの50mm F1.4のボケ量を100%として換算)
いかがでしょうか?
背景が近い場合は、ボケ量はどのレンズも100%以下に落ち込んだのですが、見事に復帰しました。
そして興味深いのは300mm F2.8がトップに躍り出てきました。
これでお分かり頂いたでしょうか?
もし背景が十分遠くて、モデルの上半身を撮りたいのでしたら、この300mm F2.8が最も背景がボケ易いのです。
ですので、昔から屋外で見通しの良い場所でのモデル撮影にこのレンズが多用されるという訳です。
300mm F2.8
最後にもう一つ、興味深い事をお伝えしたいと思います。
今までに200mm F2.0、105mm F1.4、85mm F1.2、300mm F2.8の4本の市販レンズをご紹介してきました。
さて、この中でピント面で被写界深度の一番浅いレンズはどれでしょう?
そう聞かれれば、誰しも一番背景のボケる200mm F2.0と答えられるでしょう。
ところが、それも違うのです。
例えばモデルのバストアップと上半身を撮った場合の被写界深度は、以下の表の様になります。
レンズ | 被写界深度 | |
---|---|---|
バストアップ | 上半身 | |
300mm F2.8 | 97mm | 390mm |
200mm F2.0 | 69mm | 278mm |
105mm F1.4 | 49mm | 195mm |
85mm F1.2 | 42mm | 168mm |
すなわち、望遠になるほどピント面での被写界深度は深くなりますので、奥行のあるモデルの姿全体に対してピントが合うのです。
ですのでこの300mm F2.8レンズは、背景が遠くなるほど一番ボケ易く、尚且つモデルに対しては一番ボケ難いレンズと言えるのです。
この事実を写真家の方々が知っていたかどうかは定かではありませんが、昔から大きくて重い300mm F2.8レンズをポートレートに使われていたのは、こういった光学的な理由があったのです。
また逆に、望遠レンズ以上に105mm F1.4や85mm F1.2は、ピント合わせが非常に難しいレンズとも言えます。
余り知られていない話ですので、覚えておいて損はないと思います。