ボケ易い単焦点レンズのベスト15
(お勧めポートレート用レンズ)
第11位:85mm F1.8
上半身撮影距離:2m
ボケ易い単焦点レンズの第11位は、85mm F1.8です。F1.8のレンズと聞くと、上位のF1.2やF1.4のレンズと比べて、廉価版あるいは初心者用レンズと思われるかもしれませんが、こと85mmについてはそうでもありません。
確かに、85mm F1.2やF1.4でしたら下の作例の様に背景は良くボケるのですが、同時に被写界深度も浅いので、被写体自体もボケてしまうのです。
上の作例の場合、正面からの撮影なので顔のボケは良く分かりませんが、例えば撮影距離が1.3mの場合、その被写界深度はF1.2で±8mm、F1.4でさえたったの±9mmしかないのです。
ですので、これらのレンズを使って絞り開放で撮るのは、かなりの勇気と度胸と慎重さが必要です。
またこれに伴い、ウッカリ最近流行(はやり)の像面位相差AFや、コントラストAFや、瞳AFを信じきって絞り開放で撮ると、ピンぼけ写真を量産する事になりかねません。
一方F1.8クラスになると、
①背景もそこそこボケ、
②絞り開放時の画質は上位レンズ並みもしくはそれ以上ですし、
③絞り開放でも被写界深度が適度に深くなり(それでも撮影距離が1.3mで±12mmですが)、
④同時にAFの合焦精度も上がり、
⑤光学系が軽い分AFの応答性も良くなる事から、
刻々と表情が変わる様な動的なポートレート撮影に最適なレンズと言えるかもしれません。
という訳で、ボケ量は11位ですが、価格も大きさも控え目で、気軽に絞り全開が楽しめるので本書お勧めのレンズです。
SONY α7 III + FE 85mm F1.8 絞り開放
ちょうど、恐る恐るでしかアクセルを踏み込めない高出力のスポーツカーより、気軽にアクセル全開が楽しめる、小型スポーツカーの様なものと言えば分かり易いでしょうか。
従来このクラスもキヤノンとニコンの独擅場だったのですが、2015年以降他社からもどんどん魅力的なレンズが発売されています。
ついでにもう一つ本レンズのアドバンテージをお伝えすると、これより大口径のレンズになると、光学系が重いためレンズ内に手ブレ補正機構を組み込むのは非常に難しいのですが、このクラスになるとそれが可能になるという事です。
実際既にこのクラスの2本のレンズにおいて、レンズ内に手ブレ補正機構を搭載しています。
Canon EF85mm F1.8 USM
最初にご紹介するのは、本クラスの定番中の定番とも言える1992年に発売されたCanon EF85mm F1.8 USMです。
Canon EF85mm F1.8 USM
EF85mm F1.8 USM(1992/7発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.85m | 58mm | φ75mm×71.5mm | 425g |
ピント機構 | リアフォーカシング | ||
AFモーター | SWM(超音波モーター) | ||
コーティング | ナノクリスタルコート | ||
絞り羽根 | 8枚 | ||
操作性等 | オートフォーカスの後、フォーカスリングを回転させるだけで即時にマニュアルフォーカスが可能なフルタイムマニュアルフォーカスを採用。 |
本レンズのMTFは次でご紹介します。
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
次にご紹介するのは、ニコンのAF-S NIKKOR 85mm f/1.8Gです。
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
発売が2012年ですので、前述のEF85mm F1.8 USM(1992/7発売)と比べればかなり新しいレンズと言えます。
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G(2012/2発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.8m | 67mm | φ80mm× 73mm | 350g |
ピント機構 | IF(ニコン内焦) | ||
AFモーター | SWM(超音波モーター) | ||
コーティング | ナノクリスタルコート | ||
絞り羽根 | 7枚 | ||
撮影情報 | カメラへの撮影距離情報を出力可能 |
価格は両者とも5万円前後と、まずまず手頃な価格になります。
そのCanon EF85mm F1.8 USMと、絞り開放でのMTF値を比べると、ニコンは周辺でも90%という極めて良好なコントラスト比を確保しているものの、キヤノンは80%以下ですので、明らかにニコンの方が優れています。
と、以前は言っていたのですが、ここへ来て伏兵が現れました。
ZEISS Batis 1.8/85
それが2015年8月に発売されたカールツァイス製レンズ、Batis 1.8/85です。
ZEISS Batis 1.8/85
ZEISS Batis 1.8/85(2015/8発売) | |||
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.8m | 67mm | φ81mm ×92mm | 475g |
ピント機構 | フローティング機構採用 | ||
AFモーター | リニアモータ内蔵 | ||
手ブレ補正 | 搭載 | ||
レンズ | 特殊低分散ガラスレンズ | ||
操作性等 | 防塵防滴仕様 合焦距離と被写界深度を表示する有機ELディスプレイ |
本レンズはカールツァイス製でありながら、SONYのEマウントカメラに装着してAF、レンズ内手ブレ補正、レンズの液晶に合焦距離と被写界深度が表示されるという優れ物です。
値段は10万円以上と少々高いのですが、一度使ってみたくなります。
なお開放時のMTF値については、中心部は90%を確保しているものの、周辺部はニコンの方が優れている結果になっています。
TAMRON SP 85mm F/1.8 Di VC USD
さらに2016年3月に、タムロンからも85mm F1.8レンズ(キヤノン、ニコン、ソニーの一眼レフに対応)が発売されました。
TAMRON SP 85mm F/1.8 Di VC USD(2016/3発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.8m | 67mm | φ85mm ×92mm (Canon) φ85mm ×89mm (Nikon) |
700g 660g |
AFモーター | 超音波モーター | ||
手ブレ補正 | 3.5段分(85mm F1.8で世界初) | ||
レンズ | LD (Low Dispersion: 異常低分散)レンズ XLD (eXtra Low Dispersion)レンズを採用 |
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操作性等 | 簡易防塵防滴。 最前面のレンズに撥水性・撥油性コーティング実施。 ナノ構造膜のコーティングとマルチコーティング実施。 ニコン用に電磁絞り採用 |
キヤノン用 ニコン用 ソニー用
MTFを見ると前述した3本のレンズより格段に優れています。
これはLDレンズ等の異常分散レンズを多用した事により、色収差を徹底的に排除したのが、効いているのかもしれません。
おまけに3.5段分の手ブレ補正を備えていますので、値段の折り合いが付けばかなりお勧めです。
一昔前は、レンズメーカー製のレンズは安さが売りだったのですが、今はすっかり逆転した様です。
そんな事を思っていたら、ソニーからもミラーレス一眼用に新レンズが登場しました。
SONY FE 85mm F1.8
それが2017年3月に発売された、ソニーのFE 85mm F1.8です。
SONY FE 85mm F1.8
SONY FE 85mm F1.8(2017/3発売) | |||
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.8m | 67mm | φ78mm ×82mm | 371g |
ピント機構 | 全長の変化しないインナーフォーカス機構採用 | ||
AFモーター | ダブルリニアモーター | ||
手ブレ補正 | 非搭載 | ||
レンズ | ED(特殊低分散)ガラス | ||
操作性等 | フォーカスモードスイッチ、フォーカスホールドボタンを搭載し、防塵・防滴仕様 |
さすがに最新のレンズですので、MTFはタムロンを超えるかと思ったのですが、僅かながらそこまでは達しませんでした。
と言うより、むしろタムロンのレンズがすばらしいと言うべきかもしれません。