ボケ易い単焦点レンズのベスト15
(お勧めポートレート用レンズ)
第12位:50mm F1.2
上半身撮影距離:1.2m
第12位は50mm F1.2です。AI Nikkor 50mm f/1.2S |
EF50mm F1.2L USM |
RF50mm F1.2 L USM |
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S |
これもニコンとキヤノンから発売されていますが、残念ながらニコンのレンズはマニュアルフォーカスです。
キヤノンはAFですが、価格が高い割にはボケ量はそれ程ではないため、残念ながらさほどお勧めとは言えません。
と今までは言っていたのですが、2018年10月にキヤノンからミラーレス一眼用のRF 50mm F1.2L USMが発売されましたので、心を入れ替えて詳細を載せてみました。
AI Nikkor 50mm f/1.2S
先程お伝えしました様に、ニコンは依然マニュアルフォーカスの50mm F1.2を発売しています。
AI Nikkor 50mm f/1.2S(1981/9発売) | |||
---|---|---|---|
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.5m | 52mm | φ69mm×59mm | 360g |
ピント機構 | マニュアルフォーカシング | ||
絞り羽根 | 9枚 | ||
操作性等 | 距離目盛、被写界深度表示、絞り環有り |
この理由は、数十年間も頑なに維持された44mm径のニコンFマウントでは、F1.2を達成するのが精一杯で、とてもAFに対応できる様な光学的な余裕がなかった事は想像に難くありません。
それでもニコンユーザーの為に、マニュアルフォーカスレンズを作り続けるニコンの姿勢には頭が下がります。
生憎MTFのデータはありませんが、それでとやかく言う必要もないでしょう。
なおニコンのミラーレス一眼用であるZマウントレンズのロードマップによれば、2020年に50mm F1.2レンズが登場するそうです。
Zマウントレンズのロードマップ
どんなレンズが登場するか、今から楽しみです。
Canon EF50mm F1.2L USM
そして次にご紹介するのは、2007年に発売されたCanon EF50mm F1.2L USMです。
Canon EF50mm F1.2L USM
EF50mm F1.2L USM(2007/1発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.45m | 72mm | φ86mm×66mm | 590g |
AFモーター | リングUSN(超音波モーター) | ||
レンズ | 大口径非球面レンズ採用 | ||
絞り羽根 | 8枚 | ||
操作性等 | フルタイムマニュアルフォーカス採用 防塵・防滴構造 |
キヤノンもニコンと同様にマニュアルレンズ時代から50mm F1.2(New FD50mm F1.2LとNew FD50mm F1.2)レンズをリリースしていますが、EFレンズは全くの新設計になります。
1980年に発売されたNew FD50mm F1.2L
ただしMTFについては、これだけ見ると、残念ながら余り良いとは言えません。
EF50mm F1.2L USMのMTFチャート
ただし下にあります自社の(標準中の標準と言われた)EF50mm F1.4のMTFと比べれば、十分過ぎるほど健闘していると言えるでしょう。
EF50mm F1.4 USMのMTFチャート
ですが、キヤノンの底力はそんなものではありません。
RF50mm F1.2 L USM
本カテゴリーの最大の目玉はこれでしょう。
2018年に発売された、Canon RF50mm F1.2 L USMです。
Canon RF50mm F1.2 L USM
RF50mm F1.2 L USM(2018/10発売) | |||
---|---|---|---|
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.4m | 77mm | φ90mm×108mm | 950g |
AFモーター | リングUSN(超音波モーター) | ||
レンズ | 9群15枚、非球面レンズ3枚、UDレンズ1枚 | ||
コーティング | フッ素コーティング、 ASC(Air Sphere Coating) |
||
絞り羽根 | 10枚 | ||
操作性等 | フルタイムマニュアルフォーカス コントロールリング搭載、防塵・防滴構造 |
上の表をEF50mm F1.2L USMと比べると、大きさ以外は、最短撮影距離から、絞り羽根の枚数に至るまで、徹底して旧来のEF50mm F1.2L USMを超える事を目指して開発されたのが分かります。
そして驚くべきは、そのMTFです。
RF50mm F1.2 L USMのMTFチャート
この世の物とは思えない程と言うと言い過ぎでしょうが、前述のEF50mm F1.2L USMと比べれば格段に良くなっています。
EOS R + RF50mm F1.2L USM(F1.2 1/500秒 ISO6400)
また比較的評判の高い、シグマのArtレンズである50mm F1.4 DG HSMの開放(下図参照)と比べても、良い値です。
SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM
当初30万円以上もするブランニューレンズですので、当然と言えば当然なのかもしれませんが、技術の進歩には驚かされます。
それと共に、何故キヤノンのミラーレス一眼の発売が2018年にまで持ち越されたのかの理由も、何となく分かる様な気がします。
当然ながらカメラ本体の性能も重要ですが、もっと大事なのは、やはりレンズの性能なのかもしれません。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
2021/1/30:追記
そうこうしていたら、噂のNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sが2020年に発売されました。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
全長はキヤノンのRF50mm F1.2より42mmも伸びて、昨今のミラーレス一眼で良く見られる胴長の外観です。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S(2020/12発売) | |||
---|---|---|---|
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.45m | 82mm | φ90mm×150mm | 1090g |
AFモーター | ステッピングモーター2個 | ||
レンズ | 15群17枚、非球面レンズ3枚、EDレンズ2枚 | ||
コーティング | ナノクリスタルコートアルネオコート | ||
絞り羽根 | 9枚 | ||
操作性等 | インナーフォーカス、被写界深度表示 コントロールリング搭載、防塵・防滴構造 ファンクションボタン |
またこのギッシリ詰まったレンズに思わず溜息が漏れます。
となると、かなりMTF値に期待が持てます。
そう思ってみると、何とMTFはキヤノンを抜いてしまっています。
2枚のチャートを見比べるだけでも違いが分かりますが、同じチャートに重ねてみると以下の様になります。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 SとRF50mm F1.2L USMの10本/mmのMTF比較
これをご覧頂けます様に、同心円のMTFはキヤノンとほぼ同じなのですが、放射方向のMTFが明らかに優れています。
これこそ正に、(一眼レフ時代のF1.2のレンズと比べると)この世の物とは思えない、と言っても良いのではないでしょうか。
おまけにRF50mm F1.2L USMの市場価格が現在30万円前後に対して、NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sは25万円前後と5万円以上安いのですから、もう絶句ものです。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sのメーカー希望小売価格は税込みで309,320円ですので、これから上がっていくのかもしれません。
標準レンズの画角がお好きな方なら、このレンズを使うためにNikon Zシーズを購入する価値は十分あります。
ちなみにこのMTFがどれくらい凄いのか、ついでにフルサイズミラーレス一眼で先行したソニーのPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAのMTFを同じ土俵(チャート)に載せて比べてみたいと思います。
ニコンとキヤノンのF1.2とソニーのF1.4レンズとの比較(いずれも開放時)
すると上のチャートをご覧頂けます様に、ソニーのF1.4レンズが放射方向の周辺部で良くなっていますが、それが以外は全てF1.2のレンズの方が上ではありませんか。
高いから当然だと思われるかもしれませんが、一昔でしたら高くてもF1.4のレンズの方がMTFが良いのは当たり前の事でした。
またF1.2のレンズを絞っても、F1.4のレンズには敵いませんでした。
にも関わらず、F1.2とF1.4の開放同士の比較でこれなのです。
これからすると、技術の進歩と共に、ミラーレスになってフランジバックの縛りが無くなったのが、かなり効いているのは間違いないでしょう。
更にニコンの場合は、60年以上もFマウントの小径(φ44)に縛られていたので、そういう意味では二重の縛りから解放された事による爆発力は、我々の想像を遥かに超えたものなのかもしれません。
FE 50mm F1.2 GM
2021/3/17:追記
ニコンのNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sを散々褒めちぎってしまったのですが、よもやこれに迫るレンズが出るとは夢にも思ってもいませんでした。
それも、他社よりマウント径が小さなソニーから出たのですから、これは正に事件です。
それがソニーのFE 50mm F1.2 GMです。
SONY FE 50mm F1.2 GM
下の表にあります様に、外形も重さも前述の2本より小さく軽くなっています。
SONY FE 50mm F1.2 GM(2021/4発売) | |||
---|---|---|---|
最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.4m | 72mm | Φ87mm×108mm | 778g |
AFモーター | リニアモータ4個 | ||
レンズ | 10群14枚、超硬度非球面レンズ3枚 | ||
コーティング | ナノARコーティングII、フッ素コーティング | ||
絞り羽根 | 11枚 | ||
操作性等 | インナーフォーカス、フォーカスホールドボタン2個 クリックのON/OFF可能な絞り環、防塵・防滴構造 |
更に10群14枚と、レンズの枚数も最も少ないのです。
にも関わらず、MTFは以下の様に前述の2本に迫る性能なのです。
これを先ほどのチャートに入れると以下の様になります。
ミラーレス機用50mm F1.2レンズの10本/mmのMTF比較
これをご覧頂きます様にFE 50mm F1.2 GMのMTFは、他の2本より放射方向の周辺部で劣っているものの、それ以外では他の2本よりも優れているのです。
これをどうしても順位付けして欲しいと思われる方に、MTFの平均値を計算した表が以下になります。
方向\レンズ | RF | Z | FE |
放射方向 | 0.88 | 0.92 | 0.94 |
同心円方向 | 0.94 | 0.95 | 0.93 |
総合 | 0.91 | 0.93 | 0.94 |
MTFの平均値
これをご覧頂きます様に、放射方向の1位はFE 50mm F1.2 GM、同心円方向の1位はNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sと言う事になります。
これを更に集計すると、総合トップはFE 50mm F1.2 GMになるのです。
50mm F1.2の使い方
さてボケの観点から見れば、むしろボケ難いと言える50mm F1.2レンズですが、ではどう使いこなせば良いのでしょうか。
先ず本レンズの最大のアドバンテージと言えるのは、他のボケ易いレンズと比べて、画角が広いという事です。
ですので、全身を撮影するのに50mmレンズであれば4m離れれば撮れるのですが、85mmレンズの場合でしたら6.8mも離れなければなりません。
50mm F1.2レンズ(被写体までの距離4m)
またもし4m以上被写体から離れられない場合、85mmレンズの場合、以下の様に膝上までしか撮れないのです。
85mm F1.2レンズ(被写体までの距離4m)
ただし背景が遠い場合、当然ながら85mmレンズの方が背景がボケ易いのは間違いありません。
ところが面白い事に、(被写体までの距離を調整して)被写体を同じ様な大きさの全身像にし、更に背景まで0.5mとした場合、背景のボケ量は85mmレンズとかなり似た大きさになります。
被写体を全身撮影し、被写体から背景までの距離が0.5mの場合のボケ量
ですので、強いて言えばスタジオの様にワーキングスペースが限られる場所で、白壁の前で全身像を撮影する場合に本レンズは向いていると言えるかもしれません。