ボケ易い単焦点レンズのベスト15
(お勧めポートレート用レンズ)
第5位:135mm F1.8
上半身撮影距離:3.2m
そして、第5位が135mm F1.8です。ボケ量の計算をする前は、85mm F1.2よりこちらの方がボケ易いと思っていたのですが、違いました。
このクラスは、当初SONYの独擅場(どくせんじょう)だったのですが、2017/4にシグマから強力なライバルが表れました。
このシグマのレンズが出る前は、価格も重量もキヤノンの85mm F1.2の方が上だったなので、重さとボケ量には相関があるかもしれない、と書いていたのですが(シグマのレンズが出て)重さについては僅かに逆転してしまいました。
SONY 135mm F1.8 ZA |
比較 | CANON EF 85mm F1.2 |
比較 | SIGMA 135mm F1.8 DG |
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ボケ量 | 167% | < | 179% | > | 167% |
価格 | 180,000円 | < | 235,000円 | > | 150,000円 |
重さ | 995g | < | 1,025g | < | 1,130g |
SONYの135mm F1.8 ZAにはAF駆動モーターが内蔵されていなかったので、そのせいで軽かったのかもしれません。
そんな事を言っていたら、何とそのSONYから妥当シグマの命を背負った新135mm F1.8レンズが登場しました。
前置きはこれくらいにして、それでは先ずSONYの初代135mm F1.8レンズから見ていきましょう。
SONY (ZEISS) Sonnar T* 135mm F1.8 ZA
SONY (ZEISS) Sonnar T* 135mm F1.8 ZA (15万円 995g)
(AFモーター無し、手ブレ補正無し)
装着例
α99 II + 135mm F1.8 ZA (1/6000, F1.8, ISO100)
SONY (ZEISS) Sonnar T* 135mm F1.8 ZA(2006/10発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.72m | 77mm | φ88mm ×114.5mm | 995g |
ピント機構 | IF(インターナルフォーカシング) | ||
AFモーター | ボディー内モーター駆動 | ||
M/Aモード | AF時にフォーカスリングが回転しないオートクラッチ機構を搭載。 |
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コーティング | N/A | ||
絞り形状 | 9枚円形絞り | ||
その他 | フォーカスホールドボタン搭載 |
本レンズは、生憎発売が2006年と今から10年以上も前の設計なので、仕様上は見るべきものはありませんと言いたい所ですが、最短撮影距離が0.72mというのはかなり評価できます。
実際85mmレンズでも最短撮影距離は0.85m程度ですし、撮影倍率は0.25倍で50mm標準レンズの0.15倍を凌ぐ値です。
この辺りは、さすがZEISSのロゴが付いているだけの事がある、と言いたい所です。
更にこれだけ重いレンズでありながら、ボディー内モーター駆動ですので、AF速度は全く期待できないと書きたい所ですが、一部のミラーレス機と比べれば余程まともです。
またこのレンズのMTFを見ると、開放でも中心部は90%(10本/mm)以上のコントラスト比を達成していますので、前出の85mm F1.2よりボケ量は多少劣るものの、もし高画質を求めるのでしたら、こちらを選んだ方が良いかもしれません。
Sonnar T* 135mm F1.8 ZAのMTF
もっと付け加えると、今後ご紹介する平均的な85mm F1.4のレンズより、こちらの方がMTFは優秀です。
SIGMA 135mm F1.8 DG HSM
10年以上も前のレンズを褒めちぎってしまいましたが、それでは次に(それから見れば)ブランニューモデルとも言える2017年に発売されたSIGMAの135mm F1.8 DG HSMを見てみましょう。
SIGMA 135mm F1.8 DG HSM
SIGMA 135mm F1.8 DG HSM(2017/4発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.88m | 82mm | φ91.4mm ×114.9mm | 1,130g |
ピント機構 | IF(インターナルフォーカシング) | ||
AFモーター | 大型HSM(Hyper Sonic Motor)搭載 | ||
M/Aモード | オートフォーカス作動中でも、フォーカスリングを回すだけでマニュアルでのピント合わせが可能なフルタイムマニュアル機構を搭載 |
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コーティング | N/A | ||
絞り形状 | 9枚円形絞り | ||
マウント | キヤノンEF、シグマSA、ニコンF | ||
その他 | AF/MF切り替えスイッチ 焦点距離切り替えスイッチ |
SONYのレンズも十分大きくて重かったのですが、既に伝えした様にSIGMAはそれより更に大きく重くなりました。
そしてもう一つ気になるのが、本レンズにフォーカスリミッターが付いた事です。
フォーカスリミッターはAFの動作時間を短縮するものと思われていますが、ところがどっこい、それだけではありません。
例えば動いている人物を撮影する場合、全く必要のない背景にピントが合うのを防いでくれるのです。
最近のカメラには本体側にこの機能が付いている場合がありますが、メニューから呼び出して使うのが手間なので、この様にレンズ側に付いているのは非常に助かります。
と安易に褒めてしまいましたが、リミッターの切り換えとなる距離1.5mとは135mmで顔のアップになります。
それを基準に、近い場合と遠い場合の選択しかできませんので、ポートレート撮影では殆ど使う事は無さそうです。
それはともかく、驚くべきはそのMTFです。
SIGMA 135mm F1.8 DG HSMのMTFチャート
これをSONY 135mm F1.8 ZAのMTFチャートと比べてみると、下にあります様にSIGMAの開放時におけるMTFは、SONYより(遥かにとは言わないまでも)明らかに優れています。
SONY 135mm F1.8 ZA(青)とSIGMA 135mm F1.8 DG(赤)のMTFの比較
ネットで調べると解像度も素晴らしいという事ですので、相当に優秀なレンズの様です。
いつの間にSIGMAはこんなに力を付けたのでしょうか。
SONY FE 135mm F1.8 GM
135mm F1.8だったらSIGMAかなと思っていた所に、SONYから2019/4に新しくEマウントのFE 135mm F1.8が発売されました。
SONY FE 135mm F1.8 GM(2019/4発売) | |||
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最短撮影距離 | フィルター径 | サイズ | 質量 |
0.7m | 82mm | φ90mm ×127mm | 950g |
ピント機構 | フローティングフォーカス機構採用 | ||
AFモーター | XD(extreme dynamic)リニアモーターを4基搭載 | ||
MFモード | 回転角度に対するバイワイヤー方式 | ||
コーティング | N/A | ||
絞り形状 | 9枚円形絞り | ||
その他 | AF/MF切り替えスイッチ フォーカスレンジリミッター クリック切り換え可能な絞りリング カスタマイズ可能なフォーカスホールドボタンを2カ所配置 |
余談ですが、その3年前に発売されたSONYのFE 85mm F1.4 GMは、AF動作時にかなりの摺動音がして周囲を驚かせていたのですが、さすがに市場から不満の声が寄せられたのか、本レンズでは4基のリニアモーターを搭載して静音化を達成しています。
またフォーカスレンジリミッターや、フォーカスホールドボタンを2カ所設けるなどの改善も図っています。
ただしフォーカスリミッターの設定値は、①FULLと②0.7m(両目のアップ)-2m(肩から上のアップ)、③1.5m(顔のアップ)-∞ですので、ポートレートでは結局FULLを使うしか無さそうです。
できれば何かの拍子で背景(無限遠)にピントが飛ばない様に、0.7m-12mくらいの設定を作って貰えないものでしょうか。
とは言え、本レンズの最大の見所はそのMTFです。
先ほどSIGMAのレンズを褒め称(たた)えましたが、何とそれをも軽く凌(しの)いでいます。
SONY FE 135mm F1.8 GMのMTFチャート
上のチャートをご覧頂きます様に、空間周波数10本のMTF(赤線)は、放射線状も同心円状も全域でほぼ100%の天井にこびり付いています。
これは1枚のチャートに転記する必要もないほど、本クラスでぶっちぎりの性能です。
と言うより、他の異なる焦点距離のレンズにおいても、(空間周波数10本で)これほどMTFの良好なレンズは見た事がありません。
もしかしたら、レンズの設計/製造技術は頂点に達してきているのではないか、と思わせるほどです。