EOS Kiss Mで星空と人物を撮る方法
2020/03/28:発行
目次
1. はじめに
2. 星空撮影の準備
3. カメラの事前設定
4. 星空撮影
5. 星空と人物の撮影
6. 星空撮影モード解除
2. 星空撮影の準備
3. カメラの事前設定
4. 星空撮影
5. 星空と人物の撮影
6. 星空撮影モード解除
1. はじめに
さあ、夜空にまたたく星達を背景に人物を撮ってみましょう。
Canon PowerShot G1 X Mark III (F2.8 15秒 ISO3200)
フィルムカメラの時代は、フィルム感度の問題からそこそこ敷居が高かった星の撮影ですが、今ならマニュアルフォーカスとマニュアル露出のできるカメラでしたら、間違いなく写せます。
ですが分かり難いマニュアルをひっくり返して、手持ちのカメラの設定方法を調べるのは本当に苦労します。
という訳で、マニュアルを一切見ないで星空と人物を撮影する方法を機種別にご用意しました。
その第1弾はEOS Kiss Mです。
小型軽量のEOS Kiss M
設定がそれなりに面倒ですが、撮ってみれば意外に簡単ですので、是非お試しあれ。
2. 星空撮影の準備
それでは先ず星空撮影の準備をします。
必要な物は、以下の通りです。
1: カメラ
ここではキヤノンの入門機であるEOS Kiss Mを使用します。
EOS Kiss M |
EOS M5 |
EOS M3 |
EOS M2 |
EOS M |
EOS Kiss Mは、ミラーレス一眼であるEOS Mシリーズから派生した入門機という扱いですが、発売が新しい分だけ、主流のEOS M5よりも連写速度、AF性能等が優れています。
またKissという商品名も国内市場に浸透しているせいか、キヤノンの売れ筋モデルになっています。
ただし使われている撮像素子はEOS M5と共通ですので、星空撮影でしたらどちらも同じ実力と思った方が良いかもしれません。
2: レンズ
標準レンズは既にカメラに装着されていると思いますが、星空撮影ではどちらかと言えば広角レンズの方が、星や周囲の木々がたくさん写って印象的な写真に仕上がります。
標準ズームレンズであるEF-M15-45 IS STMでも十分星空を撮れますが、折角ですので、もう少し広角レンズも見ておきたいと思います。
EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM |
EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM |
両レンズ用の 純正フードEW-53 |
と言っても他に広角レンズは1本しかないのですが、このEF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMは少々お高いもののフルサイズ換算で18-35mmの超広角ズームですのでかなりお勧めになります。
なお光量の少ない夜間撮影の方が、レンズの曇り汚れ、或いは周辺の明かりの影響を受け易いので、事前にレンズ表面の清掃や、フード(もしあれば)の準備もしておきましょう。
と以前は言っていたのですが、何度か撮ってようやく気が付いたのですが、星空撮影においてフードは必需品です。
この後述べます様に、星空撮影ではISO感度を3200まで上げ、シャッタースピードを30秒にまで遅くします。
という事は、昼間にISO100で1/500秒で撮るのと比べると、何とレンズに入ってくる光を52万倍に増幅しているのです。
と言う事は、目で見て気が付ないほどの僅かな外光でも、懐中電灯並みの明るさに増幅してしまうのです。
騙されたと思って、(昼間の撮影以上に)フードは必ず装着しましょう。
また上の専用レンズ群の中で長い名称の中にIS(Image Stabilizer)と付いていたら、手振れ補正機能の付いたレンズの事です。
後述しますが、このレンズを使って三脚撮影する場合は、手振れ補正機能をOFFにした方が安定した撮影が可能になります。
3: 三脚
普通の記念撮影でしたらカメラをテーブルの上に置けば良いのですが、斜め上を撮るにはどうしても三脚が必要になります。
ただし地面に置いて、上を向かせるだけですので、小型の物で十分なのですが、余りに低いとモニターが見えないので、前述の様に鏡を準備した方が良いかもしれません。
4: 予備の電池
ご存じかもしれませんが、昼間の撮影より夜間の撮影の方が断然電気を多く消費します。
その理由は、少ない光量を電気の力を一杯使って増幅するからです。
おまけにその状態を長時間続けますので、電池(LP-E12 )がどんどん消耗する事になります。
このため、星空撮影には予備の電池を用意するか、もし手持ちの電池が1個しかなければ、事前にフル充電しておく事をお勧めします。
5: リモコン
その他として、シャッターを押した際の振動を防ぐためのリモコン(RC-6、BR-E1)もあります。
ですが、無い場合に備えてここでは後述の2秒タイマーを使います。
3. カメラの事前設定
星空を撮影するには、全部で7項目ものカメラの設定を変えなければなりません。
暗い所で行うと時間が掛りますので、事前に明るい所でやっておきましょう。
1: 長秒時露光のノイズ低減の解除
夜間の長時間露光においては、長秒時露光のノイズ低減の設定を行うべきなのですが、先ずはそれを解除します。
その理由は、撮影時間が非常に長くなるからです。
そもそも長秒時露光のノイズ低減とは、長時間撮影時の画像の中には電気的な余分なノイズが入っているので、被写体撮影後に真っ黒の画像を同じ時間だけ撮影して、そのノイズ分を被写体撮影時の画像から差し引いてやろうというものです。
ノイズリダクション無し ノイズリダクション有り
ですから、もし30秒間の露光を行うと、同じく30秒間の真っ黒画像の撮影が行われますので、トータルで1分間何もできなくなってしまいます。
本番撮影ならしかたがないのですが、先ずはピントや露出や構図の確認をしなければいけない時に、この余分な30秒は甚だ無駄です。
さらに30秒も真っ黒画像を撮影しますので、電池もその分多く消耗します。
という訳で、本番撮影前は長秒時露光のノイズ低減は以下の手順でOFFにしておきます。
①メニューボタンを押してメニューを表示します。
②表示されたメニューから長秒時露光のノイズ低減(📷カメラマークの5)を選んで、メニューの中からOFFを選択する。
④SETボタンを押して終了する。
これで長秒時露光のノイズ低減はOFFに設定されました。
露出や構図等が決まって本番の撮影時には、この設定をONにして下さい。
2: 2秒タイマーのセット
前記しました様に、シャッターを押した際の振動を防ぐため、以下の手順で2秒タイマーをセットします。
①Qボタンを押してメニューを表示する。
②表示されたメニューから、○2(2秒タイマー)を選択する。
上図で選択しているのは10秒タイマーなので、右隣の2秒タイマーを選択します。
④SETボタンを押して終了する。
ホワイトバランスの設定
ホワイトバランスは恐らくデフォルトのままでしたらオートになっていると思いますので、そのままで構いません。
ただし実際星空を撮ると、赤みを掛けたかったり、逆にもっと青みを掛けたくなったりします。
その時に備えて、ホワイトバランスの調整方法も事前に確認しておきましょう。
①Qボタンを押してメニューを表示する。
②もし色味を変えたい場合は、下メニューからホワイトバランスの設定を変更する。
通常はAWB(オートホワイトバランス)で構いません。
3: 手振れ補正機能の解除
三脚を使って撮影する場合、手振れ補正機能は却ってブレの原因になりかねません。
このため手振れ補正機能の付いたレンズ(レンズ名にISと付いているもの)を付けている場合は、以下の手順で手振れ補正機能をOFFにします。
もし使用するレンズに手振れ補正機能がなければ、次に進んで下さい。
①メニューボタンを押してメニューを表示します。
②表示されたメニューから手振れ補正(📷カメラマークの7)を選んで、メニューの中から”切”を選択する。
④SETボタンを押して終了する。
これで手ブレ補正はOFFになりましたが、昼間の撮影の前に必ずONにしておきましょう。
5: マニュアル露出設定
次は、マニュアル露出の設定です。
カメラの性能は非常に良くなってきており、今では殆どの場面は自動露出で撮れる様になってきました。
ですが、さすがに星空は光量が少なくて自動露出ではうまく撮れ切れません。
このため、以下の手順でマニュアル露出にして、絞りをF4、シャッタースピードを30秒にセットします。
①モードダイヤルを回して、M(マニュアル)にセットする。
②電子ダイヤルを回して、シャッタースピードを30秒にセットする。
電子ダイヤル
③本体背面にある▲ボタンを押しながら電子ダイヤルを回して、絞りをF4にセットする。
絞り数値/露出補正ボタン(赤丸部)
このままの状態で、続いてISO感度の設定を行います。
6: ISO感度の設定
ISO感度とは、以前主流でしたフィルムの感度に当たります。
この数字が大きければ大きいほど、小さな光でも写す事ができますが、余りに大きくするとその幣害として画像に電気的なノイズが乗って、ざらついた画像になります。
ですので何事もほどほどが肝要です。
星空の場合、以下の手順でISO感度を3200に設定します。
①モニター上のISOのタブをタッチする。
②◀▶ボタンを押して、ISO感度を3200に設定する。
③SETボタンを押して設定を完了する。
7: マニュアルフォーカスの設定
次はいよいよ、マニュアルフォーカスの設定です。
一昔前のカメラでしたら、レンズにピントリングが付いていたので、簡単に無限遠(∞)に固定できたのですが、今はAF(オートフォーカス)が主流のため以下の手順が必要です。
①Qボタンを押してメニューを表示する。
②マニュアルフォーカスを選択する。
②遠くの街灯や建物にピントが合う様にフォーカスリングを回してピントを合わせる。
③もしピントが合わせにくい場合、下のボタンを押して画像を拡大してピント合わせを行う。
④電源を切って終了する。
なお今回は前準備の設定ですので、撮影現場に着いたら再度遠くの明るい物(街灯や月)にカメラを向けてピント調整を行ないます。
8: レンズの清掃
カメラのセッティングが終了したら、最後にレンズの清掃をしておきましょう。
夜間の撮影は昼間の撮影以上に外乱の光が写真に影響してしまいます。
うっかりレンズに指紋でも付いていると明らかにコントラストが低下しますので、しっかり清掃しておきます。
またもし完璧を望まれるのでしたら、フィルターを外しておいた方が良いかもしれません。
と、以前は書いていたのですが、今は違います。
フードの所でもお伝えしました様に、外光の影響を少しでも減らすために、躊躇なくフィルターは外しましょう。
10. ストロボの設定
従来は以上で設定は完了だったのですが、今回は星空を背景に人物も撮るために、内蔵ストロボも準備しておきましょう。
自動調光で発光させる手もあるのですが、殆どがストロボの光が強くて人物が真っ白になるか、撮るたびにストロボの発光量が変わってしまうので、ここではマニュアル調光で発光量は最低にしておきます。
①内蔵ストロボを持ち上げる。
②▶ボタンを押してストロボ発光のメニューを表示し、◀▶ボタンを押して⚡高圧マーク(常時発光)を選択する。
これでストロボを持ち上げれば、常にストロボが発光する様になります。
③ストロボの発光量をマニュアルで調整するため、メニューボタンを押す。
④表示されたメニューから、ストロボ制御(📷カメラマークの1)を選択する。
⑤ストロボ制御のメニューから、内蔵ストロボ機能設定を選択する。
⑥内蔵ストロボ機能設定のメニューからマニュアル発光を選ぶ。
⑦同じく内蔵ストロボ機能設定のメニューから発光量を選び、小を選ぶ。
これで常時ストロボが最小光量で発光します。
9: 動作確認
設定が完了したら、最後に動作確認を行います。
①どこか暗めの所にカメラを向けてシャッターを切ります。
②シャッターを押して2秒後にシャッターが開いて、30秒後にシャッターが閉じて真っ白な画像(もしくは薄らと何か写っている画像)がモニターに表示されれば、設定OKです。
③最後にストロボを持ち上げてシャッターを切って、ストロボが発光する事を確認します。
このときストロボの光がまだ強いと思いますので、ストロボの光量を抑えるために、ストロボの前を白いハンカチ等で塞ぎ、被写体が適正露出になる様調整できる事を確認します。
4. 星空撮影
準備が完了したら、先ずは星空だけの写真を撮ってみましょう。
なおしつこい様ですが、フィルターを外して、フードを付けるのをくれぐれも忘れないで下さい。
①カメラを三脚にセットしたら、もう一度遠くの明るい物(例えば月や、遠くの街灯)にカメラを向けてピントがあっているかどうか確認します。
②もし合っていなければ、前述のマニュアルフォーカスの設定を再度行います。
③変わっていないと思いますが、もう1度絞りがF4でシャッタースピードが30秒で、ISO感度が3200になっている事をモニターで確認します。
④カメラの設定はそのままで、カメラを撮りたい星空に向けて、シャッターを切ります。
⑤もし撮影された画像が暗ければ、電子ダイヤルを回してシャッタースピードを遅く(例えばBにセットしシャッターボタンを60秒間押し続ける)するか、▲ボタンを押しながら電子ダイヤルを回して絞りを開ける(例えばF2.8にする)か、前述のISO感度設定で◀▶ボタンを押してISO感度を上げ(例えばISO6400にし)ます。
F4.0 F4.0 F4.0
15秒 30秒 30秒
ISO3200 ISO3200 ISO6400
⑥もし撮影された画像が明るければ、電子ダイヤルを回してシャッタースピードを早く(例えば15秒に)するか、▲ボタンを押しながら電子ダイヤルを回して絞りを絞る(例えばF5.6にする)か、前述のISO感度設定で◀▶ボタンを押してISO感度を下げ(例えばISO1600にし)ます。
⑦上記④~⑥を繰り返して適正露出になったら、色見を前述のホワイトバランスを変えて調整します。
もし赤味を付けたいのでしたら、色温度を低めの4000K前後にするか、蛍光灯を選択します。
WB: オート WB:太陽光 WB:蛍光灯(昼白色)
もし青味を付けたければ、太陽光、日陰、曇天を選択します。
その他以下の様に各種設定がありますので、色々変えて撮影しておく事をお勧めします。
⑧好みの色味になったら、前述の長秒時ノイズ低減の設定をONにして、最終画像を撮ります。
5. 星空と人物の撮影
星空が撮れる様になったら、次に人物も一緒に撮ってみます。
①それには先ず、レンズのピント位置を人物と背景の中間に合わせます。(人物と星の両方にピントを合わせるため)
もし難しい様でしたら、多少星がボケる事になりますが、人物に合わせても構いません。
なお、EOS Kiss Mのレンズには距離指標が無いので少々ハードルが高いのですが、理想を言えばレンズのピント位置を3.1mに設定する事です。
具体的には、レンズから3.1mの位置に人物に立って貰い、そこでマニュアルでピントを合わせます。
そうすると、絞りF4でしたら1.6m~∞まで常にピントが合いますので、以降はこの範囲内であれば多少カメラと人物との距離が変わっても、一切ピント合わせしないで済むのです。
24mm相当で絞りF4であれば、撮影距離3.1mにすると1.6m~∞まで常にピントが合う
これはかなりオイシイ話ではないでしょうか。
②次にホワイトバランスをAWB、もしくはフラッシュに設定します。
③最後にストロボを持ち上げて、シャッターを切ります。
もし被写体が明る過ぎる場合は、練習した様にハンカチ等でストロボの光量を抑えます。
いかがでしょうか?
素敵な写真が撮れましたでしょうか?
6. 星空撮影モード解除
星空の撮影が終了したら、忘れずに星空撮影モードを解除しておきましょう。
さもないと次に写真を撮ると、ピントは合わないし、画像は真っ白になったりと面食らう事に成ります。
解除が必要な設定は以下の通りです。
①セルフタイマーを解除する。
②ホワイトバランスを”AWB”に戻す。
③手振れ補正をONにする。
④レンズのフォーカスモードをAFにする。
⑤モードダイヤルを回して、M(マニュアル)以外にセットする。
⑥ISO感度を”オート”に変更する。
⑦ストロボを自動調光に戻す。
なお設定変更の詳細については、上記手順書を参考に願います。