画像サイズと画質の話
(基本は300万画素とNORMAL画質)

2015/11:発行
2020/12:更新

目次


 1: はじめに
 2: 画像サイズは300万画素で充分
 3: 画質はNORMALで充分
 4: なぜ画質が変わらないのか
 5: 縦横比は3:2が基本
 6: まとめ

1: はじめに


最新のカメラを購入された貴方。

カメラにバッテリーをセットして試し撮りを行ったら、次に行うのは初期設定でしょう。

そして真っ先に悩むのは、画像サイズ(記録画素数)と画質ではないでしょうか?


SONY α7 IIIの画質と画像サイズと縦横比のメニュー画面

当然画像サイズが大きい方が綺麗に見えるのかもしれませんが、それではファイル容量が大きくなって扱うのに持て余してしまいます。

かと言って、余りに小さいとわざわざ高いカメラを購入した意味が無くなってしまいます。

このため操作説明書を見ると、プリントする用紙サイズで画像サイズを選ぶ目安が書かれていますが、それだけは今一つ良く分かりません。


Canon IXY 170(2000万画素)のユーザーズガイド抜粋

何故ならば、今時カメラの画像を見るのに最も一般的なのは、フルハイビジョンのテレビPC携帯端末にも関わらず、何故かカメラのマニュアルには、モニターについての記述が一切無いからです。

またフェイスブックインスタグラムに投稿するのは、どれくらいの画素数が必要なのでしょうか?

更には、これからの4Kモニター8Kモニターで見る事を考えると、どれくらいのサイズで撮っておけば良いのでしょうか?

そして画質のファインノーマルの違いはどの程度で、通常の写真だったらどちらを選択しておけば良いのでしょう。

という訳で、貴方にとって最適な画像サイズと画質の目易を提供したいと思います。

これさえご覧頂ければ、今までの疑問が全て解消する事請け合いです。

 2: 画像サイズは300万画素で充分


画像サイズについては、悩む必要は一切ありません。

最近のカメラの場合、画素数はコンパクトカメラでさえ2,000万画素、デジタル一眼レフでは最大で5,000万画素以上にも達しています。

 

ですが、一般的な用途でしたら画像サイズはたったの300万画素(3M)もあれば十分なのです。

これだけあれば、ご自宅にある207万画素のフルハイビジョンテレビに問題なく表示きますし、葉書サイズのプリントを行っても粒子荒れも起きませんし、フェイスブックにもインスタグラムにも最高画質でアップできます。

良く誤解されている方も多いのですが、画像サイズを300万画素以上に大きくしても、フルハイビジョンテレビや葉書サイズのプリントを行う限りにおいては、出力される画像に全く変化はないのです。

例えば2400万画素の写真を207万画素のフルハイビジョンの映しても、300万画素の写真と同じなのです。

またフェイスブックの場合、推奨画素は長手方向が720画素/960画素/2048画素の3種類ですので、もし縦横比が3:2の画像の場合、最大でも280万画素で十分なのです。


フェイスブックの推奨画像サイズ(外枠を含めて3種類)

一方インスタグラムの場合、推奨画像サイズは正方形の1080x1080画素なので、全画素数はたったの116万画素しかないのです


インスタグラムの推奨画像サイズ

そしてツイッターの画像に至っては、たったの13万画素しかないのです。


ですので300万画素あれば、普段の用途には全く支障なく使えるのです。

悪い事は言いません、今すぐ300万画素という数字を覚えてください!

それではカメラで300万画素をどうやって選択するかですが、カメラにおける画像サイズの選択は、一般的にL、M、Sの3種類から選択する様になっています。

ですので、下の表にあります様に、どんなカメラであっても最少のSサイズを選択しておけば、必然的に300万画素以上の画像になります。

撮像素子の種類 画素数 最少サイズの画素数
フルサイズ 2400~ 5000万画素 (24~50Mpix) 600万画素 (6Mpix)前後
APS-Cサイズ 1600~ 2400万画素 (16~24Mpix) 400万画素 (4Mpix)前後
4/3サイズ 1200~ 1600万画素 (12~16Mpix ) 300万画素 (3Mpix)前後
(一部100万画素有り)
コンパクトカメラ 1200~ 2000万画素 (10~20Mpix) 300万画素 (3Mpix)前後
スマホ 800~ 2000万画素 (8~20Mpix) 800~ 2000万画素
(8~20Mpix)

という訳で、くどい様ですが余程の理由が無い限り、画像サイズは最少サイズのSにしておけば十分です。

なおここで言う余程の理由とは、フルハイビジョンテレビ以上の高解像度モニター(例えば4Kテレビ)で写真を見る、或いは葉書サイズ以上にプリントする場合になりますが、実際には殆どあり得ないと言えるでしょう。

ちなみにもし4Kテレビで見る場合は1000万画素、8Kテレビでしたら4000万画素が必要になり、A4サイズでプリントするとなると800万画素が必要になります。

なお写真を再生するモニターに関してもう少し詳しく知りたい方は、一目で分かる画素数と解像度の関係をご覧ください。


3: 画質はNORMALで充分


次は画質です。

ここで言う画質とは、画像データの圧縮率の事なのですが、その説明は後程お伝えするとして、画質の違いは実際にご自分のカメラで試して頂くのが一番良いでしょう。

ですがそれも面倒でしょうから、本書が代わりに調べてみたいと思います。

一般的なカメラでは、画質をBASIC、NORMAL、FINE(或いはNORMAL、FINE、EXFINE)の3段階程度に選択できます。

ですので、同じ被写体を異なる画質で撮って、それらがどの程度違うか見比べてみれば違いが分かります。

そして、行き着く結論は何方も同じだと思います。

画質を変えても、違いが全く判らない。

ですので、余程の理由がない限り、画質はNORMALで十分なのです。

それでは、実際にカメラの画質を変えてどれくらい画像が変わるかお見せする前に、そもそもメーカーはどの画質を選択する様に勧めているのか、各社の公式HPから追ってみたいと思います。

いずれも公式HPの原文のまま記載しています。

キヤノンの見解

FINEと NORMALの違いは、圧縮率による画質の違いを表しています。

同じ記録画素数のときは、 FINEの方がきれいです。

NORMALを選ぶと画質は少し落ちますが、 FINEよりもカードに多く記録できます。

なお、S2、S3(キヤノン機で最も小さな画像サイズ)はともにFINEの画質です。

ニコンの見解

圧縮率による画像の違いについて、下の画像の一部を拡大して、FINE、NORMAL、BASICの画質の違いを比較します




このように拡大すると圧縮率の高い画像はノイズが目立つようになります。

拡大しなければ、ノイズの差は目立たなくなります。



富士フィルムの見解

デジタルカメラの記録形式であるJPEG形式は、画像を圧縮してメディアに記録され「FINE」は圧縮率が低く、「NORMAL」は中程度の圧縮率となっています。

圧縮率を高くすると、ブロックノイズと呼ばれる現象が発生しやすくなり画像が粗くなるため、圧縮率の低いFINEの方が画質は良いということになりますが、目に見えるほどの差はありません

通常であればNORMALで十分ですが、より良い画質を求める場合にはFINEをおすすめします

リコーの見解

記録された静止画のファイルの大きさは、画質モードと画質サイズの設定によって変わります。

画質モードは、N (Normal)、F (Fine)、NC (非圧縮) の 3 種類があります。

モード 内容
Normal モード 画像の圧縮率が高くなりファイルのサイズは小さくなります。通常はこのモードで撮影します。
Fine モード 画像の圧縮率は低くなりファイルサイズは大きくなりますが、Normal モードより高画質になります。
NC モード 非圧縮の TIFF ファイル (YUV-TIFF フォーマット) に保存されます。FineやNormalより鮮明な画像になりますが、ファイルサイズが大きくなり、撮影時の記録時間が長くなります。

以上が各社の見解なのですが、いかがでしょう。

画質を数値で表すのが難しいので、こういう表現になるしかないのかもしれません。

ただしその中でも、富士フィルムとニコンはかなり真実に近い表現をしていると思います。

すなわち、理論上は確かにFINEの方が画質は良いはずなのですが、見た目には殆ど変らないという事です。

ですが本書ではもっと断言します。

FINEと NORMALの圧縮率の差が5割程度であれば、人が見ても画質の差は分からない。

とういう訳で、早速画質を変えた画像を見てみましょう。

VGAサイズにおけるFINEとNORMALの差

下の写真は、VGAサイズ(30万画素の非常に小さな、本書の様なインターネット表示用の画像サイズ)のFINEとNORMALで撮影していますが、全く差が分からないと思います。

FINE                   NORMAL
 
VGA(640x480)サイズ 123kB          VGA(640x480)サイズ 100kB

画像が小さいから違いが分からないと思われる方に、一部分(画像右のペン挿し部分)を等倍以上に拡大したのが以下の写真です。

FINE                   NORMAL
 
VGA(640x480)サイズ 123kB         VGA(640x480)サイズ 100kB

等倍以上に拡大したので、斜め線のギザギザが見えますが、この2枚を見比べても全く差が分からないと思います。

できる事なら、この辺にブロックノイズが見れますと言いたい所なのですが、それすら分かりません。


2400万画素におけるEXFINEとNORMALの差

上段の写真はVGAサイズとかなり小さな画像サイズで、圧縮率も2割程度しか変わりませんでした。

このため、次はもっと大きな画像サイズ(2400万画素)で、且つ圧縮率も大幅に異なるFINEとNORMALの画像を見比べてみたいと思います。

FINE                   NORMAL
 24Mpix(6000x4000)サイズ 16.0MB     24Mpix(6000x4000)サイズ 5.1MB

上の2枚の写真をじっくり見比べてみても、相変わらず差は分からないでしょう。

下の写真は、またその一部分を拡大したものです。

FINE                   NORMAL
 24Mpix(6000x4000)サイズ 16.0MB     24Mpix(6000x4000)サイズ 5.1MB

何をどうやっても差を感じない事を、分かって頂ければと思います。

嘘だと思われる方は、是非一度お手持ちのカメラで同じ被写体をFINEとNORMALで撮って、見比べてみて頂ければと思います。

間違いなく差が無い事に驚かれると思います。


4: なぜ画質が変わらないのか

201/11:追記

こうなると、だったらなぜNORMALとFINEで、見た目で差が無いのか不思議に思われるでしょう。

答えは至極簡単です。

画像の圧縮を行う場合、同じ色の部分を重点的に圧縮するからです。

例えば先ほどの画像でしたら、赤く囲んだ白い部分や、白く囲んだグレーの部分、さらに黄色く囲んだ黒いがあります。


画像の圧縮は色の変化の少ない所で行われるので見た目で分からない

これらの部分は殆ど色に変化がありませんので、1画素ずつ色情報を持たなくても、面(正方形のブロック)で色情報を持たせてやるのです。

そうする事で、画像データの容量を大幅に減らせるという訳です。

ですので真っ青な空だけを撮って圧縮すると、とてつもなく容量を減らせます。

ただし鉛筆立ての様に、色が細かく変化する場合は、そのまま1画素ずつの色情報を持っているという訳です。

だから見た目では全く区別がつかないのです。

ですので、もしNORMALとFINEを別の言い方で説明すると、以下の様になります。

NORMAL 最新の圧縮技術を使って、似た様な色の部分だけを面の色情報に変換してデータ容量を圧縮した画像。
FINE 圧縮を手抜きして、殆ど撮ったままの画像。

こう説明すれば、NORMALを使うのも抵抗ないでしょう。


5: 縦横比は3:2が基本


大した話ではないのですが、ついでにこの話もしておきたいと思います。

カメラには縦横比を選べる様になっていますが、これは撮像素子の縦横比のままにしておきましょう。


EOS Kiss Mの縦横比変更画面

具体的には35mmフルサイズやAPS-Cサイズ等殆どのカメラならば3:2、唯一フォーサーズシステム対応カメラならば4:3です。

理由は以下の通りです。

①撮像素子の全面を使うので、無駄が無い。

下の図は撮像素子の縦横比が3:2の場合ですが、1:1や4:3にすると左右がカットされ、16:9にすると上下がカットされた画像が保存されてしまうのです。

だったら撮影時は広い画面で記録しておき、後でトリミングした方が余程合理的です。

②写真をプリントする場合、用紙のサイズがワイド画面の16:9より3:2(もしくは4:3)に近い。

③3:2の画像でも、ハイビジョンにフル画面で出力できる。

という訳で、写真を16:9のモニターでしか見ないという方以外は、3:2(もしくは4:3)を選択するべきです。


6: まとめ


とは言え、折角高いカメラを購入して、常に300万画素+ノーマル画質+縦横比3:2では、寂し過ぎますので、以下でいかがでしょうか?

用途 画素数 画質 縦横比
(4/3カメラ)
理由
一般
メモ
300
万画素
NORMAL 3:2
(4:3)
フルハイビジョンテレビにも、葉書サイズプリントにも、SNSにも最高画質で対応できる。
自撮り
ペット
800
万画素
NORMAL 3:2
(4:3)
メモよりは少し良く撮りたい。
もしかしたらA4サイズにプリントするかもしれない。
家族写真 1,200
万画素
FINE 3:2
(4:3)
ペットや自撮りの写真よりは高画素にしないとマズイ。
もしかしたら今後4Kテレビで見るかもしれない。
旅行写真
記念写真
2,400
万画素
FINE 3:2
(4:3)
折角なので、高画素で撮っておこう。
場合によっては、大きくプリントするかもしれない。
絶景写真
ポートレート
最大画素
RAW
ファイル
最高画質 3:2
(4:3)
絶景の風景や美人のポートレート写真だったら、面倒なRAW現像だってやるかもしれない。

尚お話していませんでしたが、上の表にあるRAWファイルとは撮像素子が読み込んだ光りの明るさをAD変換しただけの画像データで、そのままでは一般的なJPEGファイルと同じ様に画像として見る事はできません。

このため、後でPCを使ってJPEGファイルに変換する現像処理が必要なのですが、色味や明るさをレタッチアプリの様に劣化させる事なく変えられますので、更に慣れてきたら挑戦してみて下さい。

本書がお役に立てば幸いです。




画像サイズ(記録画素数)と画質の話





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