動画おける画像のリサイズ方法による画質の差
2021/08/23:発行
1. はじめに
いきなりですが、先ずは質問です。
以下のソニーのα7シリーズで、今時一般的なフルサイズの4K30P動画を撮るとしたら、どれが最も画質が良いでしょうか?
ちなみに一番左が6100万画素のα7R IV、中央が2400万画素のα7III 、一番右が1200万画素のα7S IIIです。
本来でしたら、3台で撮り比べをするのが一番なのですが、弱小サイトにそんな事をする余裕もお金もありません。
ですが、そんな事をしないでも凡その優劣を判断する事は可能なのです。
そんな訳で今回は、動画おける画像のリサイズ方法(読み込み方法)の違いによる画質の差についてお話ししたいと思います。
動画おける画像のリサイズ方法
それでは先ず、動画おける画像のリサイズ方法をご紹介します。
これには以下の3種類があります。
1. オーバーサンプリング
先ず一つ目がオーバーサンプリングです。
これは撮像素子の全画素を読み込むものの、読み込んだ複数の画素をひとまとめにして、1個の画素として扱う方式です。
オーバーサンプリングのイメージ図
この場合、当然解像度は落ちますが、感度がアップし画質も良くなります。
6K動画から4K動画を生成というのが。これです。
またこれは、ピクセルビニングとか、パナソニックでは画素加算と読んだりしています。
2. 画素間引き
次は画素間引きです。
これは、撮像素子上の本来ある画素の一部だけを間引いて読み込む手法です。
画素間引きのイメージ図
これによって、クロップする事無く撮像素子全域の画像を読み込めるものの、直線はギザギザになり画質も大幅に低下します。
またこれは、ラインスキップとか、ソニーでは画素加算と読んだりしています。
3. ドットバイドット
最後はドットバイドットです。
これは動画と同じ画素数を、そのまま全画素を読み込む方法です。
ドットバイドットのイメージ図
この場合、静止画の画像のリサイズ方法と同じですので、静止画と同じ様な画質が得られます。
どれが一番画質が良いのか
それでは次に、この3種類の画像取り込み方法においてどれが一番画質が良いのか考えてみます。
当然ながら、画素間引きが一番画質が悪いのですが、一番良い画質はどれなのでしょう。
何となくオーバーサンプリングが一番良いのではないかと考えてしまいますが、よくよく考えてみると一番はドットバイドットでしょう。
何しろ、オーバーサンプリングは複数の画素を1画素として処理するのに対して、ドットバイドットは元々大きな画素を1画素として処理するのですから、シンプルで受光面積が大きい分画質が良いのは間違いありません。
そんな訳で、画質の良い順番は以下の通りです。
ドットバイドット > オーバーサンプリング > 画素間引き
どの機種が最も動画の画質が良いのか?
そこまで知って頂いた上で、先ほどの3機種においてどれが一番動画の画質が良いのかを考えてみます。
1. α7R IV
先ずα7R IVですが、この動画性能をソニーのHPから抜粋したのが、以下になります。
α7R IVの動画に関する説明
これを読むと、一見フルサイズで4K動画を撮っても6Kのオーバーサンプリングで画像を取り込んでいる様に思ってしまいますが、実は6Kのオーバーサンプリングはスーパー35mm(APS-Cに近いサイズ)にクロップした場合だけなのです。
フルサイズの場合、何も書かれていないという事は、画素間引きをしているという事です。
何故ならば、4K動画の場合800万画素しか必要ないので、6100万画素から4K動画を生成するには、(オーバーサンプリでなければ)画素間引きをするしかないからです。
このため、α7R IVで撮ったフルサイズの4K動画は一番画質が悪いと言えます。
2. α7 III
次はα7 IIIです。
これをまたソニーのHPから持って来ると以下の様になります。
α7 IIIの動画に関する説明
これをご覧頂きます様に、今回はフルサイズで6Kのオーバーサンプリングをしていると明記されていますので、これは間違いなく2番目に動画の画質が良いと言えます。
3. α7S III
それでは最後にα7S IIIです。
これをまたソニーのHPから抜粋すると、以下の様になります。
α7S IIIの動画に関する説明
これを読む限りオーバーサンプリングではなく、間引きもしていないとの事なので、ドットバイドットと見て良さそうです。
なお画素数から判断すると、僅かにオーバーサンプリングしているのですが、ここではドットバイドットとしておきます。
という訳で、フルサイズの4K動画で最も画質が良いのは、α7S IIIと言えます。
まとめ
それではまとめです。
①動画の画像読み取り方法は、オーバーサンプリング、画素間引き、ドットバイドット、の3種類がある。
②この中で画質の良い順番は、理論上以下の様になる。
ドットバイドット > オーバーサンプリング > 画素間引き
③その観点から見ると、フルサイズの4K30P動画であれば、以下の機種の順で画質が良いと言える。
α7S III > α7 III > α7R IV
ご納得頂けますでしょうか。
更新
2021/09/01(水)
YouTubeを見ていたら、非常に興味深い動画を見つけました。
それによると、EOS R5の4K動画は、ソニーのα7S IIIよりも高解像度との事です。
先日α7S IIIは1200万画素で、ドットバイドットに近い読み込み行なっているので、4K動画は最も優れているはずだとお伝えしたのに、何という事でしょう。
となると、以前お伝えしました以下の順位も間違いだという事になります。
ドットバイドット > オーバーサンプリング > 画素間引き
ですが、ですが、
EOS R5が高解像度なのは、4K30Pの高画質モードのときだけとの事です。
何だその高画質モードとは、と思って調べてみると、どうやらそれこそが正に8Kオーバーサンプリングによる4K動画の様です。
すなわち、EOS R5の4K30Pの高画質モードは、ピッタリ4倍の画像情報から作り出されているのです。
という事は、よくピクセルビンディングの説明で使われている2×2の4画素を1画素にまとめているのと正に同じなのです。
ピクセルビニングのイメージ図
では2×2画素を一つにまとめるとどんな良い事があるかと言えば、思い付くのはカメラのカラーフィルターに使われているベイヤー配列です。
ベイヤー配列
ご存知の様にベイヤー配列は、赤青緑の4つの受光素子が1組となっているのですが、実際には各受光素子に補完した3色の色情報を持たせて4画素として出力しています。
ですが、一つの光をこの4つの受光素子に分割し、それぞれの受光素子が受け取った光の量をこの2×2の大きさの色情報だとすれば、解像度は1/4になるものの全く色補完のない純粋な画像を再現できます。
色補完がないという事は、単にモアレや偽色が無いと思われるかもしれませんが、見た目の最も顕著な差は解像度が大幅に上がる事です。
実際シグマのFoveonセンサーで撮られた色補完の無い写真を見て驚くのは、その解像度の高さです。
Foveonセンサーを搭載したシグマdp2 Quattro
EOS R5の4K30Pが、ソニーのα7S IIIより優れているのは、恐らくこれが理由ではないでしょうか。
そんな訳で、先の順位は以下の様に改めたいと思いますが、いかがでしょう。
4倍オーバーサンプリング >ドットバイドット >端数オーバーサンプリング >画素間引き
キヤノンもこの事をもっとアピールすれば良いのにと思うのですが、どうしてしないのでしょう。
また同じく8K30P動画が撮れるソニーのα1の4K動画も気になる所です。