暗闇に強い
フルサイズ高感度カメラベスト10(2019年版)
2019/8/17:発行
2020/2/22:誤記訂正
2020/2/22:誤記訂正
はじめに
星空を含む夜景の撮影においては、なるべくだったら高感度のカメラの方が使い易いのは間違いありません。
星空撮影は高感度カメラほど有利
となると、当然ながら撮像素子(1画素)の大きなフルサイズのカメラが有利なのは当たり前として、ではそれらの中でどれが一番高感度なのでしょうか?
という訳で、本書が数あるフルサイズカメラにおいて、どれが最も高感度で綺麗に撮れるのかを調べて、ランク付けをしてみました。
次は高感度カメラを入手したい、と思われている方には必見です。
なお2020年に発売された最新機種を含めたフルサイズ高感度カメラベスト10については、こちらをご覧下さい。
最大ISO感度
それでは先ずは手っ取り早く、カメラの仕様書から最大ISO感度を調べて、それを大きな順に並べてみたいと思います。
ご存知の通り、フィルムと同様に、ISO感度を上げれば画像は荒くなり、ノイズも増えていきます。
ですので、最高ISO感度だけでカメラの高感度特性は判断できないものの、ある程度の目安になるのは間違いありません。
下のチャートは、フルサイズカメラのISO感度スパンを横棒にして、それを最大ISO感度順に並べたものです。
フルサイズカメラのISO感度スパン(最大ISO感度順)
これをご覧頂きます様に、増感を含めた最大ISO感度のトップはニコンのプロ用モデルであるNikon D5の328万で、最下位はキヤノンの高精細モデルであるEOS 5Dsの3,200と、その差は倍率で100倍、段数(EV値)で8段も異なります。
最高ISO感度3,280,000を豪語するNikon D5
誤解のない様にお伝えしておきますと、EOS 5Dsが飛んでもなく劣っているのではなく、Nikon D5は画素数2,000万であらゆる条件下で写真が撮れる事を使命としているのに対して、5,000万画素超のEOS 5Dsはひたすら高精細に撮る事を使命としており、ISO感度を抑えて光をタップリ吸収しなければいけないからです。
高精細に特化した最高ISO感度12,800のキヤノンEOS 5Ds(5,000万画素)
またNikon D5が断トツで高感度かと言われれば、これはあくまでも非常時用の最大ISO感度ですので、一概にそうとも言い切れません。
という訳で、次はもっと現実的な最大常用ISO感度の順番で見てみたいと思います。
最大常用ISO感度
それでは下が、最大常用ISO感度の高い順に並べ変えたチャートです。
フルサイズカメラのISO感度スパン(最大常用ISO感度順)
これをご覧頂きます様に、この場合はペンタックスのK-1 IIと初代K-1が1位と2位を独占しました。
全域常用ISO感度として扱っているペンタックK-1 II(3600万画素)
ですがペンタックス機の場合、他社機と異なり(減感あるいは増感でISO感度を分類する事なく)全てを常用ISO感度として扱っています。
ですので、残念ながら他社と単純に比べるには無理があります。
推測ですが、本機(K-1 IIと初代K-1)の画素数はいずれも3,600万画素もありますので、恐らく最大常用ISO感度は、いずれも32,000程度ではないでしょうか。
ではカメラの高感度特性を、最大常用ISO感度で判断して良いものでしょうか?
それも早計でしょう。
なぜならば、最大ISO感度ほどではないにしても、最大常用ISO感度でも許容できないノイズが発生するからです。
ですので、カメラの高感度特性をランク付けするのであれば、これくらいであれば一般的な撮影にも使えるなと思える最大有効ISO感度で判断すべきです。
この最大有効ISO感度について、本書独自の経験則がありますので、次にご紹介したいと思います。
最大常用ISO感度の1/8が最大有効ISO感度
では一体どれくらいのISO感度ならば、一般的な撮影に使えるかについては、恐らく皆様がご自分のカメラで試写されて凡そその値を認識されている事と思います。
例えばですが、最大常用ISO感度が51,200のα7 IIIをお持ちだとします。
当然ISO51,200で撮影すればノイズが発生しますので、どんどんISO感度を下げて、ご自分で使えるぎりぎりの所を探されるとします。
その値は、ISO感度6,400前後ではないでしょうか?
だとしますと、最大常用ISO感度の1/8が最大有効ISO感度と言えます。
また常用最大ISO感度が32,000のα7R IIIをお持ちだとすると、使えるのはその1/8のISO4,000前後になるのはないでしょうか?
何が言いたいかと言えば、そのカメラの最大常用ISO感度の1/8が凡そ最大有効ISO感度になるという事です。
この経験則が正しいかどうか、是非ご自分のカメラで試して頂ければと思います。
という訳で、本書では今後この経験則にちょっとした捕捉を加えて、高感度カメラのランク付けを行ないたいと思います。
第1位:SONY α7S II(最大有効ISO感度12,800)
それではいきなりですが、本書が選んだ高感度カメラの第1位をご紹介したいと思います。
それはソニーの高感度カメラα7S IIです。
ソニーの高感度カメラα7S II
初代α7SではISO感度12,800では少なからずノイズが乗っていたのですが、後継機のα7S IIでは、文句なく最大有効ISO感度12,800を達成しています。
α7S F2.8 6秒 ISO12,800
画素数は1,200万しかありませんが、本機を堂々の第1位に推す事を、どなたもご異論は無いと思います。
ただしいかんせん、AFがコントラスト方式しか搭載されていないのが辛い所です。
恐らく次期α7S IIIは、最新の裏面照射型の1,200万画素撮像素子を搭載してくるのは間違いないでしょうが、果たしてこれに像面位相差AFセンサーを埋め込むのかどうかが見所です。
第2位:Nikon D5(最大有効ISO感度10,000)
続いて第2位は、ニコンのフラッグシップ機であるNikon D5です。
暗闇にめっぽう強いNikon D5
常用ISO感度はα7S IIと同じ102,400(10万)なのですが、α7S IIは1,200万画素に対してこちらは2,000万画素です。
理論的には当然ながら1画素が大きいα 7S IIの方が有利のため、本機のISO12,800では残念ながら多少ノイズが乗るのは事実です。
という訳で、本書としてはNikon D5に高感度第2位の名誉を授(さず)けたいと思います。
Nikon D5と聞くと、スポーツ/報道系のカメラと思われがちですが、どうしてどうして-4EVでも働くAFや、イルミネーションボタンまで搭載していますので、闇夜にもめっぽう強いカメラなのです。
第3位:EOS-1D X Mark II(最大有効ISO感度8,000)
続いてはキヤノンのフラッグシップEOS-1D X Mark IIです。
キヤノンのフラッグシップEOS-1D X Mark II
常用最大ISO感度が51,200の機種は他にも複数(ここでは4機種)あるのですが、それらは全て裏面照射型ながらも2,400万画素に対して本機はNikon D5と同じく2,000万画素です。
すなわち他機種よりも、2割も1画素の面積が大きい事になります。
おまけに筐体もデカいので、画像系の回路も存分に盛り込めますし、昇温に対しても有利です。
という訳で、第3位についても、どなたも異論がないと確信しております。
第4位:Nikon Z6/SONY α9/SONY α7 III
(最大有効ISO感度7,000)
第4位については、ソニーの裏面照射型撮像素子(2,400万画素)を搭載した3機種(Nikon Z6/SONY α9/SONY α7 III)にしたいと思います。
ソニーのミラーレス一眼α7III(左)とα9(右)
最大常用ISO感度51,200は、この3機種以外に独自の撮像素子を搭載したLUMIX S1があります。
これは実際に比べてみなければ何とも言えないものの、ソニーの裏面撮像素子は受光面を広く取れる分だけ明らかにLUMIX S1より有利です。
また実際にα7 IIIを使ってみた所、ISO感度6,400でも全く問題なく使えた事から最大有効ISO感度を7,000とさせて頂きました。
SONY α7 III ISO6400
という訳で、第4位はこの3機種(Nikon Z6/SONY α9/SONY α7 III)にしたいと思います。
第7位:LUMIX S1(最大有効ISO感度6,400)
続く第7位は、LUMIX S1です。
パナソニックのプロ用ミラーレス一眼LUMIX S1
6位ではなく7位にした理由は、前述の3機種はSONY製の裏面照射型撮像素子(2,400万画素)を搭載搭載しているのに対して、Lumix S1は従来型の表面照射型撮像素子(2,400万画素)を搭載している事から、それらよりは理論上高感度特性は劣るであろうという事からです。
アナログの増幅回路でかなり頑張っているでしょうが、やはり集光面積の大きい方に軍配を上げておきたいと思います。
と言う訳で、本機の最大有効ISO感度は6,400とさせて頂きます。
第8位:キヤノン EOS R/EOS RP/EOS 6D II
(最大有効ISO感度5,000)
第8位はキヤノン軍団になります。
キヤノンが満を持して発売したミラーレス一眼のEOS R(標準機)とEOS RP(入門機)
EOS Rは一眼レフのEOS 5D IVと同じ3,000万画素に対して、EOS RPとEOS 6D IIは2,600万画素の撮像素子を使っています。
ですので、EOS RPとEOS 6D IIはもう少し高感度でも良いのではないかと思うのですが、むしろEOS Rが頑張ったと言うべきかもしれません。
EOS R ISO6400
実際EOS 5D IVの最大常用ISO感度が32,000だったのに対して、同じ撮像素子を流用したEOS Rは40,000に上がっていますので、最大有効ISO感度を5,000としたいと思います。
第11位:α7R IV/α7R III/K-1/K-1 II
(最大有効ISO感度4,000)
ついでなので第10位以降も見ておきましょう。
第11位には、裏面照射型の高精細撮像素子を搭載したソニーのα7R IVとα7R IIIの2機種が入ります。
裏面照射型の高精細撮像素子を搭載したソニーのα7R IVとα7R III
α7R IIIは4240万画素なのに対して、α7R IVは世界初の6100万画素を達成しています。
となるとα7R IVの高感度特性はα7R IIIより劣るはずなのですが、いずれも最大常用ISO感度32,000を達成しているのは立派です。
また先にご紹介したペンタックスのK-1とK-1 II(いずれも3600万画素)、それにEOS 5D IV(3000万画素)も恐らくこの辺りに入ると思われます。
ペンタックスのK-1 II
なおこの辺りのクラスになると、この下のクラスであるAPS-Cサイズや4/3サイズのカメラと同じくらいの感度になります。
第15位:Nikon D850/Nikon Z7
(最大有効ISO感度3,200)
第15位は、 Nikon D850とNikon Z7です。
Nikon D850(左)とNikon Z7(右)
両機はいずれもソニーの裏面照射型4200万画素の撮像素子をカスタマイズして使用しているのですが、最小常用ISO感度を64にしている事から、最大常用ISO感度が25,600に抑えらえています。
とは言いながら、むしろ低感度特性が優れている事が、両機の大きなアドバンテージと言えるかもしれません。
まとめ
上記をまとめますと以下の様になります。
順位 (注) |
機種 | 画素数 | 最大有効 ISO感度 |
最大常用 ISO感度 |
---|---|---|---|---|
1位 | SONY α7S II | 1,220万 | 12,800 | 102,400 |
2位 | Nikon D5 | 2,082万 | 10,000 | 102,400 |
3位 | EOS-1 DX II | 2,020万 | 8,000 | 51, 200 |
4位 | SONY α9 SONY α7 III Nikon Z6 |
2,420万 2,420万 2,450万 |
7,000 | 51,200 |
7位 | LUMIX S1 | 2,420万 | 6,400 | 51,200 |
8位 | EOS RP EOS 6D II EOS R |
2,620万 2,620万 3,030万 |
5,000 | 40, 000 |
11位 | EOS 5D IV Pentax K-1 Pentax K-1 II SONY α7R III SONY α7R IV |
3,030万 3,640万 3,640万 4,240万 6,100万 |
4,000 | 32,000 |
15位 | Nikon Z7 Nikon D850 |
4,575万 | 3,200 | 25,600 |
17位 | LUMIX S1R | 4,730万 | 3,000 | 25,600 |
18位 | EOS 5Ds | 5,060万 | 800 | 6,400 |
注:機種が複数ある場合は、画素数が少ない順に記載しています。
もしひたすら高感度カメラに興味があるのでしたら、次期α7S IIIが断然お勧めと言えます。
ただし価格は30万円以上になるのは間違いないので、更なる軍資金の捻出が必要です。
またもしこの下のクラス(APS-Cサイズ、4/3サイズ等)の高感度カメラを知りたければ、次をご覧願います。
改訂履歴 | |
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2019/8/17 | 新規発行 |
2020/2/22 | LumixのISO感度が間違っていた(拡張ISO感度の注記有り)ので修正 |