フレアやゴーストの発生し易い条件とは

2020/02/08:発行
2020/02/14:追記

目次



1. はじめに


逆光で撮れば、フレアーやゴーストが発生する。


逆光で撮るとフレアーやゴーストが発生する

当たり前に知られている話なのですが、ならば広角と望遠では、どちらがフレアやゴーストが発生し易いのでしょうか?

また絞りを開けた場合と絞った場合では、どちらが発生し易いのでしょうか?

そしてまた、フレアやゴーストに対するフィルターの影響度はどの程度なのでしょうか?

更には、これ以外に発生し易い条件は無いのでしょうか?

ネットで調べて良く分からないので、本サイトが系統立てて調べてみました。

その結果、いくつか重要な事に気が付きましたので、ご報告したいと思います。


2. 試験条件


試験結果の前に、先ずは試験条件をお伝えしておきます。

当初は手っ取り早く室内を暗くして、懐中電灯の光をレンズに照射して撮影すれば何か分かるだろうと思って試験を開始したのですが、いかんせんこれでは一般の撮影でどの程度のフレアになるのか皆目見当が付きません。


暗い室内で懐中電灯の光を撮っても一般の撮影条件とリンクしない

それではという事で、次は下の様な風景を逆光で撮影してみたものの、この様な写真では背景が複雑過ぎてどこにフレアがあるか分かりません。



それやこれやで分かった事は、屋外で黒い壁を逆光で撮るのが一番現実的でフレアの発生状況が分かり易いという事なのですが、生憎そんな理想的な黒い壁は滅多に存在しません。

という訳で、やむを得ず黒い岩肌を撮ってみる事にしました。

使用する機材は、手元にあるキヤノンのEOS RPと24-105mm F4.0のズームレンズです。


試験に使ったEOS RP + RF24-105mm F4 L IS USM

いずれも比較的新しいモデルですので、逆光に対する現行機の実力も知る事ができます。


3. 試験結果


それではいよいよ、逆光で黒い岩肌を撮った写真をご紹介します。

なお以下の試験は、全てフード無しで撮影しています。

フィルター付き

最初にお見せするのはフィルター付きの画像なのですが、見事にフレアやゴーストが発生しています。


フィルター付きの逆光比較

先ず絞りの違いから見ていきますと、絞った方がゴーストがクッキリ確認でき、絞りを開けると徐々に大きく薄くなっていくのが分かります。

ですので、見え方は絞った方が目立ちますが、絞りを開けた場合も逆光に伴う画質の低下は、同じ様にあるという事です。

次に焦点距離による違いですが、これを見る限り広角が目立つものの、望遠側でも同じ様にフレアとして画像を低下させているのが分かります

そして更に興味深いのは、焦点距離50mmの絞りF22の画像を見て頂きたいのですが、何と画像にレンズ正面が映っているではありませんか。

更に良く見ると、絞り開放でもレンズの正面が写っているのが分かります。

これはどうやら、フィルターの裏面にレンズの正面が反射して写っている様です。

そう思ってレンズの正面を見ると、確かに直射日光が当たれば光りそうな感じです。


理想を言えば真っ黒であってほしいレンズの正面

なおこのフィルターは安物なのですが、逆光撮影においてはフードと共にフィルターの重要性を痛感させる試験結果です。


フィルター無し

それでは次にフィルター無しです。


フィルター無しの逆光撮影

相変わらずフレアーが発生しているのですが、少なくともフィルター有りよりは明らかに程度が良くなっています。

特に焦点距離50mmで見れた、(フィルターに反射していた)レンズ前面の姿は完全に消えています。

同じ様に絞りの違いを見ていきますと、僅かに絞った方がフレアーを確認できますが、フィルター付きほど顕著な差は認められません。

また焦点距離の違いにおいても、広角が太陽が写っている事によってフレアーが目立ちますが、殆ど差はないと言えると思います。


ここまでのまとめ

ここまでをまとめると以下の様になります。

①フィルター有りの場合、絞った方がくっきりフレアーが確認できるが、このフレアーは絞りを開けると大きく薄くなっており、実質的画像に与える影響は同じである。

②フィルター有りの場合、広角が目立つものの、望遠側でも同じ様にフレアとして画像を低下させている。

③フィルター無しの場合、フィルター有りと同じ様な傾向はあるものの、フィルター有りほどの顕著な差は見い出せない。


フィルター有りの縦位置撮影

上記試験結果を踏まえて、次は場所を変えて縦位置(Portrait)で撮影してみます。


横位置(Landscape)と縦位置(Portrait)

その理由なのですが、以前同じレンズとフィルターの組み合わせで下の様な写真を撮った事があるからです。


EOS RP + RF24-105mm F4 L IS USM + フィルター

全体的にフレアが発生していますが、特に注目して頂きたいのが被写体の足元の強いフレアです。

この下部のフレアは撮影中にも気付き、一瞬コンビニ袋か何かが足元に飛んできたのかと思った程です。

その時点では、この強いフレアの原因がフィルターにあるとは露(つゆ)知らず、止む無くレンズの前に手をかざして遮光しようと四苦八苦したものです。

上の試験結果からすると、もしかしたらこの強いフレアの原因はフィルターのせいかもしれないと思い、早速再現試験をしたくなったという訳です。

果たしてこれと同じフレアが再現できるでしょうか。


フィルター有りの縦位置撮影

するとどうでしょう。

焦点距離50mmで見事に再現できました。

これを見る限り、フレアが発生する最悪条件は安いフィルターを付けて縦位置で撮影したときだと言えそうです。

この理由ですが、先ず太陽が上にある事から、直射日光は必然的にレンズ正面下側に最も強く当たる事になります。

次にその光がフィルターの裏面に反射して撮像素子に届きますが、横位置だとその明るい部分が多少カットされるのに対して、縦位置だとその光が全部撮像素子に写り込んでしまうという訳です。

これを図示すると以下の様になります。


直射日光がレンズ正面に当たるとその光がフィルター内側に反射して目立つフレアになる

レンズ自体の大きさやレンズ前面の形状も影響するでしょうが、レンズ正面の下側に直射日光が強く当たるのはどれも同じなので、フィルターを付けた状態での逆光縦位置撮影は要注意と言えます。


どんなレンズでも屋外の逆光撮影ではレンズ正面の下側が最も光が当たり易い

またレンズ正面がフィルターに反射するとなると、フィルター裏面のコーティングが重要なのと、レンズ正面が黒く(暗く)見えるレンズほど、フィルター装着時にフレアーが発生し難いと言えます。

なお画像には直接影響していないものの、レンズの正面にはレンズ名等の文字が打たれています。

本試験では直接画像には影響していませんが、フィルターを付ける人のために、レンズ正面の文字は極力避けほしいものです。


フィルター無しの縦位置撮影

ちなみにフィルターを外すと、縦位置撮影でも以下の様に先ほどの強いフレアは起きません。


フィルター無しの縦位置撮影

遮光した場合のフィルター有り
2020/2/9:以降追加

それでは次に、フィルター有りで、直射日光を遮った場合を見ていきたいと思います。


直射日光を遮ったフィルター有りの画像

これをご覧頂きます様に、遮光すればフレアは大幅に改善されます。

この場合は遮光板を使って、レンズ前面に当たる直射日光を完全に遮っているので、標準フードではここまで良化する事はないでしょう。(詳細はこちら

となると、遮光した場合のフィルター無しとどのくらい違うかが気にります。


遮光した場合のフィルター無し

次はフィルター無しで、直射日光を遮った場合です。


直射日光を遮ったフィルター有りの画像

これをご覧頂きます様に、直射日光を遮ってしまうえば、フィルターを付けても外しても、全く差はないと言えます。


4. まとめ


今回は、焦点距離や絞りの違いによるフレアの発生し易い条件を調べ様と思ったのすが、それ以上に重要な事が分かりましたので、それらを重要度の高い順に述べたいと思います。

①フィルター

フードの無い逆光撮影に於いては、フィルターがフレアの最大の発生要因である。

このフレアーは遮光によってある程度防止できるものの、直射日光が直接画角(画像)に入り込む朝夕の撮影においては、フィルターを外した方が賢明である。

さもなければ、(目立つ目立たないの差はあるものの)画像にレンズ正面の姿を写し込む事になる。

②縦位置撮影

フードが無くてフィルター付きの逆光撮影に於いては、レンズ正面下側が最も直射日光を受け易いので、縦位置撮影で画像下部に最もフレアーが発生し易い

この様な場合も、遮光でフレアを防げない場合は、フィルターを外す必要がある。

③絞りの影響

フィルター有りの場合、絞った方がフレアをくっきり確認できるが、このフレアーは絞りを開けると大きく薄くなっており、実質的に画像に与える影響は同じである。

フィルター無しの場合、フィルター有の様な絞りと焦点距離による顕著な差は見い出せない。

④焦点距離の影響

フィルター有りの場合、広角でフレアがシャープで目立つものの、望遠側でもぼやけたフレアが発生する。

フィルター無しの場合、フィルター有の様な顕著な差は見い出せない。

⑤遮光板

今更ながらですが、フレアを防ぐのに効果てき面なのは、遮光です。(ただし標準フードではない)

特に遮光板でレンズ正面に入ってくる直射日光を完全に遮れば、フィルター有無は関係なくなるほど良化します。

⑥故意にフレアを発生したい場合

もし故意にフレアの出た写真を撮りたいのならば、フードを外し、安いフィルターを付け、絞りを絞って、広角で、暗い背景を、逆光(直射日光がレンズに)で撮る。


さて、ここまで分かってくると、次は高級なフィルターにおけるフレアの程度はどれくらいなのか?

それについては次回改めて調べてみますので、お楽しみに。




フレアやゴーストの発生し易い条件とは





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