(1/2段にするか、1/3段にするか?)
カメラにおける最適な露出設定ステップ幅
2019/7:発行
はじめに
どちらが最適なのでしょうか?
最近のデジタルカメラでしたら、シャッター速度や絞り値のステップ幅を1/2段と1/3段から選べます。
EOS Rの露出設定ステップ設定画面
細かく設定できるのは、当然ながら1/3段なのですが、その場合(例えば)絞り値をF2.0から一気にF22に7段階変更するには、絞りダイヤルをカチ、カチ、カチ、カチ、カチ、カチ・・・と何と21クリックも回さなければなりません。
一方1/2段でしたら、(それでも多いのですが)14クリックで済みます。
となると、一体どちらがシャッターチャンスを逃さず、且つ自分の意図した写真が撮れるのでしょうか?
使う人によって異なると言うのが大方の意見なのかもしれませんが、本書ではどちらが合理的で最適なのか明確に結論を導き出したいと思います。
どんな結果になるか、お楽しみに。
シャッター速度における最適なステップ幅
ご存知の様に露出設定ステップ幅は、①シャッター速度と②絞り値と③露出補正の三つの項目に関連します。
ですので、先ずシャッター速度はどれくらいのステップ幅が一番良いのか考えてみます
多少の非難を覚悟の上、いきなり本書の見解を述べさせて頂きますと、シャッター速度のステップ幅は1段以上で十分です。
何故ならば、シャッター速度を1/2段や1/3段程度変えた所で、全くと言って良い程、画像に差が生じないからです。
例えば下にある噴水の写真ですが、上段の1/1000秒と1/125秒では3段(8倍)もの差がありますが、見比べてみても殆ど差が分からないのではないでしょうか?
ただし、さすがに1/1000秒と1/25秒の画像を見ると明らかに差がありますが、その差は何と5段(40倍)もあるのです。
確かにこの写真を更に拡大して見ればもっと違いを認識できるでしょうが、1/2段とか1/3段程度変えた程度では撮った写真には殆ど影響しないというのは分かって頂けると思います。
なお、もしかしたら動きの速い噴水だから違いが分からないが、もっとゆっくりした動きだったら、シャッター速度の違いが明確になる、なんて思う方がいらっしゃるのではないでしょうか?
逆です。
当然ながらもっとゆっくりした動きでしたら、余計に差が分からなくなります。
実際、人物写真でしたら1/500秒以上であれば殆ど差は分かりません。
という訳で、シャッター速度については(1/3段より)1/2段のステップの方が合理的と言えます。
ただししつこい様ですが、理想は1段です。
なお噴水の場合でしたら3段程度の差でも分からないのに、なぜ理想は1段と言うのかですが、問題は手ブレです。
手ブレの場合は、シャッター速度1段程度の差でも画像に影響しますので、最低でも1段程度のステップ幅がほしい所です。
絞り値における最適なステップ幅
次は絞り値です。
絞り値もシャッター速度と同様に、1段以上の差が無いと殆ど画像の違いを認識できません。
例えば下の写真は、85mm F1.2のレンズを使って開放から絞りを1段ずつ変えて撮ったものです。
絞りを1段ずつ変えて撮った写真
この場合、分かり易い様に後ろに点光源を配置しているので、そのボケの大きさから絞りが変わっていくのが分かります。
ちなみにボケの大きさは、絞り値に反比例しますので、F1.2におけるボケの直径はF1.8の1.4倍(正確には√2倍)になります。
ですが、この点光源が無い所を見比べてみて下さい。
絞りを1段くらい変えた程度では、その違いを明確に認識できない事をご理解頂けると思います。
ましてや1/3段や1/2段の違いなど、はっきり言って誰にもその差は分からないのです。
そう言うと、否やオレには絞り1/3段の違いが分かるし非常に重要だ、と言われる方もいらっしゃる事でしょう。
それはそれで良いのですが、その撮った写真の違いを第三者が認識できないのであれば、客観的な意味合いは非常に薄いと言えます。
ですので、本書においては、絞り値の最適なステップ幅は1/2段(ただし理想は1段)としたいと思います。
露出補正における最適なステップ幅
さて次は露出補正です。
これは写真の明るさに直結しますので、下の写真にあります様に1/3段の違いは間違いなく誰でも認識できます。
ですので、露出補正については1/3段のステップが必要なのは間違いないでしょう。
これについは特に異論は無いと思うのですが、いかがでしょうか?
だとしますと、これが根源なのです。
これに引っ張られて、操作性に直結する絞り値やシャッター速度のステップ幅も1/2段もしくは1/3段になってしまったのです。
異なるステップ幅をどう設定するか
さて、シャッター速度と絞り値は1/2段、露出補正については1/3段が必要だとしたら、カメラの設定はどうすれば良いでしょう?
それぞれのステップ幅を独立して設定できれば良いのですが、残念ながらそうはいきません。
何故ならば、現在市販されているカメラにおいては、ステップ幅を1/2段にしたら、シャッター速度も絞り値も露出補正も全て同じ1/2段のステップ幅になってしまうのです。
ですので、露出補正を1/3段で行うのであれば、やむなくシャッター速度も絞り値も、ステップ幅は1/3段にするしかない、と言えます。
もしくは露出補正も1/2段にすると、割り切るしかありません。
何だ結局本書の言う所の最適な設定はできないのか、とがっかりしないで下さい。
実は一部の機種においては、シャッター速度と絞り値は1/2段、露出補正は1/3段にできるのです。
その一部の機種とは、ソニーのフルサイズミラーレス一眼であるαシリーズや、フジフィルムのミラーレス一眼等です。
ご存知かもしれませんが、これらの機種は右肩に独立した露出補正ダイヤルを搭載しており、このダイヤルは1/3段刻(きざ)みになっています。
ソニーのα7シリーズには1/3段の露出補正ダイヤルを搭載している(写真はα7 III)
ですので、本機の露出設定ステップ幅を1/2段にすればシャッター速度と絞り値は1/2段にしたまま、露出補正ダイヤルを使って1/3段の露出補正調整できるのです。
本書の知っている限りでは、レンズ交換式のカメラではソニーとフジフィルムしかできないのが辛い所ですが、この技を知っていれば多少お役に立つのではないでしょうか?
まとめ
さて、それではまとめです。
1. 意図した撮影効果を明確に表現するためには、絞り値とシャッター速度のステップ幅は1段程度が理想である。(それ以下のステップ幅では、第三者が画像を見ても違いが分からない)
2. 一方露出補正については、1/3段程度の違いでも誰でも認識できる事から、ステップ幅はどうしても1/3段が必要である。
3. ところが現在市販されているカメラにおいては、シャッター速度と絞り値と露出補正は全て共通の1/3段もしくは1/2段しか選べない仕様になっている。
4. このため、1/3段の露出補正を行なうのであれば、やむなくシャッター速度と絞り値も1/3段に設定するしかない。
5. ただし1/3段刻みの露出補正ダイヤルを搭載しているカメラであれば、シャッター速度と絞り値のステップ幅は1/2段のまま、露出補正は1/3段でできる。
理想の露出設定ステップ幅
上記しました様に、現在市販されているカメラにおいては、無駄にシャッター速度や絞りのダイヤルをカチ、カチ、カチ・・・ファインダーの数値を見ながらと一生懸命回さなければなりません。
ところが、フィルム時代のAE露出が可能なカメラの場合、絞りが1/2段(もしくは1/3段)だったものの、少なくともシャッター速度は1段で露出補正が1/3段でした。
シャッター速度1段、絞り値1/2段、露出補正を1/3段で設定できたCanon A-1
昔に戻れとは言う気は全くありませんが、本書が思う(欲しい)理想の露出設定ステップ幅は以下の通りです。
露出モード | シャッター速度 | 絞り値 | 露出補正 | (ISO感度) |
---|---|---|---|---|
シャッター優先AE | 1段 | - | 1/3段 | 1段 |
絞り優先AE | - | 1段 | 1/3段 | 1段 |
プログラムAE | 1段 | 1段 | 1/3段 | 1段 |
マニュアル | 1/3段 | 1/3段 | - | 1段 |
理想の露出設定ステップ幅
どこかのカメラメーカーで、こんな我儘(わがまま)を聞いて頂けないものでしょうか?