はじめに本サイトの読者の方より、質問を頂きました。
昔から写真をやっている方でしたら、ズームレンズの性能は両端の焦点距離を割り算するズーム比で表すもので、引き算するものではないと単純に思われるかもしれませんが、言われてみると確かに不思議です。 また望遠レンズは、85mm、105mm、135mm、200mm、300mmと二桁以上の差で進みながら、広角レンズは35mm、28mm、24mm、17mmと一桁ずつの差で進みます。 もしかしたら何か面白い事が潜んでいるかもしれないので、早速この謎を調べてみたいと思います。 見え方それでは各焦点距離における画角を数値で調べる前に、それぞれの焦点距離における画像を見てみておきましょう。 実際に撮影するのも大変なので、ここでは手っ取り早くネットで提供されているDOF提供の被写界深度シミュレーションの画像を使ってみたいと思います。 25mmレンズ 125mmレンズ 上の画像を見て頂きます様に、25mmと125mmでは同じ所から撮った写真なのに、被写体の大きさも背景の写る範囲もかなり違います。 具体的には、125mmの画像は25mmに対して、写る範囲は1/5になり、これに伴って被写体の大きさが5倍に拡大されています。 次に100mmと200mmを比べると以下の様になります。 200mmレンズ 300mmレンズ この場合も、300mmにおける顔の大きさが、200mmに対して1.5倍になっています。 焦点距離の違いを倍率で考えると、それぞれ5倍と1.5倍で、画像の見え方とは辻褄が合っています。 ですが、なぜか引き算した焦点距離の違いは同じ100mmでありながら、なぜ見え方はこんなにも違うのでしょうか? 画角それでは次に、それぞれの焦点距離における画角を調べてみましょう。 ちなみに画角は以下の計算で求める事ができます。 それから求めた画角は以下の様になります。
上の表をご覧頂きます様に25mmの画角は125mmの画角の4.2倍なのに対して、200mmの画角は300mmの画角の1.5倍しかありません。 これを図で表すと以下の様になります。 引き算した差は同じ100mmなのに、なぜこんなに違うのでしょうか? という訳で、試しに焦点距離が1mm増えた場合の画角を求めて、先ほどの表に追加してみます。
これでかなり疑問が解消するのではないでしょうか。 そうなのです。 焦点距離が1mm変化した場合の画角の変化量は、元のレンズの焦点距離によって大きく異なるのです。 すなわち、焦点距離と画角とは比例せず、望遠になればなるほど、焦点距離が1mm変わっても画角の変化量は小さくなるのです。 焦点距離と画角の変化量そこまで分かれば簡単です。 なぜ比例しないかは、先ほどお見せした式を見れば一目瞭然です。 ここでπ=3.14とすれば、180/π×2は114.6になります。 これを先ほどの式に入れると、以下の様になります。 ですので、画角は焦点距離の逆数のatan(アークタンジェント)になり、焦点距離が長くなればなるほど画角の変化が小さくなるという訳です。 この焦点距離と画角の関係をグラフにすると以下の様になります。 これをご覧頂きます様に、焦点距離が50mm以下ですと、画角の変化が大きいのに対して、焦点距離が100mmを超えると焦点距離が増えても画角は殆ど変化しないのが分かります。 ですので、前述の25mmと125mmの画角と200mmと300mmの画角を比べると、焦点距離の差は同じ100mmでありながら、上のグラフの様に画角は62度と4度で、両者は大きく異なる事が分かります。 また下のチャートの様に、レンズの焦点距離は画角を考慮して決められているのが分かります。 レンズの焦点距離と画角の関係 なお上のチャートをご覧頂きますます様に、広角や望遠より標準系レンズ(35mm-50mm-85mm)で画角が大きく変化しているのが分かります。 焦点距離と被写体の大きさ今までは焦点距離と画角の関係について見てきましたが、次に焦点距離と被写体の大きさについて考えてみます。 下の図は、先ほど画角の説明で使用したものに、写る幅を追加したものです。 焦点距離と写る範囲の関係 これをご覧頂きます様に、写る範囲を比べると25mmと125mmの場合で1:5、200mmと300mmの場合で1:1.5になっています。 逆に言えば、同じ距離から同じ被写体を撮ると、25mmに対して125mmの方が5倍大きく、200mmに対して300mmの方が1.5倍大きく写せる事になります。 これは前述の画像と一致します。 では、これをまたグラフで表すとどうなるでしょうか? 先ほどの画角のグラフと比べると、びっくりする程シンプルな直線のグラフになります。 上のグラフは、50mmレンズで撮った場合の被写体の大きさを100%として、各焦点距離で撮った場合の被写体の大きさを表しています。 ですので、50mmのレンズで撮った場合と比べて、100mmのレンズで撮ると被写体は200%(2倍)の大きさになり、200mmのレンズだと400%(4倍)の大きさに写る事になります。 それではこのグラフで、焦点距離100mmの差がどうなるか見てみましょう。 すると上のチャートの様に、例えば25mmのレンズでしたら写る大きさは50%になり、125mmのレンズでしたら写る大きさは250%となり、両者の比率は5倍になります。 また例えば200mmのレンズでしたら写る大きさは400%で、300mmのレンズでしたら写る大きさは600%となり、比率は1.5倍になります。 という訳で、焦点距離が100mmずつ増えると写る大きさは常に200%ずつ増えていくのですが、広角レンズですと元の大きさ(分母)が小さいので、比率で見ると大きくなるという訳です。 全く同じではないのですが、毎年の売り上げが同じ様に増えたとしても、伸び率は年々少なくなっていくのと同じ様な理屈です。 これについて、下のある会社の売り上げのチャートを使ってご説明したいと思います。 このチャートをご覧頂きます様に、この会社は毎年10ポイントずつ売り上げが伸びています。 ですが、この会社の伸び率を計算すると、2011年の伸び率は以下の様になります。 次に2017年の伸び率は以下の様になります。 すなわち売る上げの差は毎年同じなのですが、伸び率として見ると母数(前年の売り上げ)が大きくなるほど小さくなると言う訳です。 却って分かり難くなった様な気もしないではありませんが、こんな説明でご納得頂けますでしょうか? まとめ
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