オリンパスペンE-PL6で星空を撮る方法
2015/8:発行
目次
1. はじめに
さあ、夜空にまたたく星達を撮ってみましょう。
さそり座と天の川 in 渡嘉敷島(F4.0 30秒 ISO3200 16mm)
フィルムカメラの時代は、フィルム感度の問題からそこそこ敷居が高かった星の撮影ですが、今ならマニュアルフォーカスとマニュアル露出のできるカメラでしたら、間違いなく写せます。
ですが分かり難いマニュアルをひっくり返して、手持ちのカメラの設定方法を調べるのは本当に苦労します。
という訳で、マニュアルを一切見ないで星空を撮影する方法を機種別にご用意しました。
その第5弾はオリンパスの代表機種、OLYMPUS PEN Lite E-PL6です。
なおオリンパスペンの操作方式はどのモデルも殆ど差はありませんので、本書を参考にして頂ければどのモデルでも対応できると思います。
2. 星空撮影の準備
それでは先ず星空撮影の準備をします。
必要な物は、以下の通りです。
1: カメラ
ここではオリンパスPEN Liteの5代目であるE-PL6を使用します。
E-PL8 E-PL7 E-PL6 E-PL5 E-PL3
E-PL2 E-P5 E-P3 E-P2 E-P1
2: レンズ
レンズは既にカメラに装着されていると思いますが、星空撮影ではどちらかと言えば広角レンズの方が、星がたくさん写って印象的な写真に仕上がります。
またなるべく明るいレンズ(開放絞り値が小さいレンズ)の方が、シャッタースピードを早くできるので星空撮影には向いているのですが、人物も一緒に撮るためには被写界深度を深くするため、F2.8程度で十分です。
という訳で、その観点でオリンパスの交換レンズを見てみましょう。
なお4/3用レンズの場合、焦点距離を2倍すればフルサイズ換算の焦点距離になりますので、例えば焦点距離12mmのレンズでしたら、フルサイズで24mmのレンズの画角に相当します。
8mm F1.8 |
9mm F8.0 |
12mm F2.0 |
15mm F8.0 |
17mm F1.8 |
上をご覧頂きます様にソコソコ明るい単焦点の広角レンズが揃っています。
その中でもお勧めなのが、少々お高いですがやはり魚眼レンズの8mm F1.8 Fisheyeでしょう。
また、この中で異色なのがボディキャップレンズと呼ばれる超薄型のボディキャップ兼用のレンズです。
E-PL6とボディキャップレンズ
F8と暗いのがネック(星空撮影で2分以上の長時間露出が必要)ですが、広角の15mmと9mmの魚眼レンズもあります。
広角系ズームレンズ
7-14mm F2.8 |
9-18mmF4.0-5.6 |
12-24mmF2.8 |
12-50mm F3.5-6.3 |
続いては広角ズームです。
これも超広角ズームの7-14mm F2.8がお勧めなのですが、やはり高いのが難点です。
このため、コストを考えると広角ズームの9-18mmF4.0-5.6辺りが妥当かもしれません。
標準系ズームレンズ
14-42mm F3.5-5.6 II R |
14-42mm F3.5-5.6EZ |
また画角は狭くなりますが、上にある標準系ズームでも十分撮れますので、ご安心下さい。
ただし更なる打開策があります。
以下の様に標準ズームの14-42mm F3.5-5.6 II R用に、超広角と魚眼用のレンズコンバーターが用意されています。
14-42mm F3.5-5.6 II R用レンズコンバーター
ワイドコンバーター |
フィッシュアイ コンバーター |
コンバータセット |
これを付けても開放値は変わりませんし、比較的安価ですので、既にこの標準ズームをお持ちの方には断トツのお勧めになります。
なお一眼レフ用の4/3交換レンズも使用可能ですが、変換アダプターが必要になります。
そして忘れてはいけないのが、レンズフードです。
暗くてなぜフードが必要なのかと思われるかもしれませんが、星空撮影においては街路灯や街明かりが大敵なのです。
横からの微(かす)かな光が前面レンズに当たるだけでゴーストやコントラストの無い写真になりますので、必ずレンズフードは付けておきましょう。
フード
12mm F2.0用 |
17mm F1.8用 |
45mm F1.8用 |
9-18mm用 |
12-50mm用 |
そしてもう一つ忘れてはいけないのは、オリンパスのペンシリーズはパナソニックのマイクロ4/3用レンズもそのまま使える事です。
という訳で、パナソニックのマイクロ4/3用レンズも見ておきましょう。
パナソニックのマイクロ4/3用レンズ
FISHEYE 8mm F3.5 |
14mm F2.5 |
14-42mm F3.5-5.6 |
7-14mm F4.0 |
12-35mm F2.8 |
敢えて他社製レンズを使う必要もないのですが、魚眼レンズの8mm F3.5と広角レンズの14mm F2.5はかなりお安いので、検討してみる価値はありそうです。
3: 三脚
普通の記念撮影でしたらカメラをテーブルの上に置けば良いのですが、斜め上を撮るにはどうしても三脚が必要になります。
ただし地面に置いて、上を向かせるだけですので、小型の物で十分です。
4: 予備の電池
ご存じかもしれませんが、昼間の撮影より夜間の撮影の方が断然電気を多く消費します。
その理由は、少ない光量を電気を一杯使って増幅するからです。
おまけにその状態を長時間続けますので、電池がどんどん消耗する事になります。
このため、星空撮影には予備の電池を用意するか、もし手持ちの電池が1個しかなければ、事前にフル充電しておく事をお勧めします。
5: リモコン
その他として、シャッターを押した際の振動を防ぐためのリモコンもありますが、無い場合に備えてここでは後述の2秒タイマーを使います。
3. カメラの事前設定
星空を撮影するには、全部で7項目ものカメラの設定を変えなければなりません。
暗い所で行うと時間が掛りますので、事前に明るい所でやっておきましょう。
1: 長秒時ノイズ低減の解除
夜間の長時間露光においては、本来長時間ノイズ低減の設定を行うべきなのですが、先ずはそれを解除します。
その理由は簡単で、撮影時間が非常に長くなるのを防ぐためです。
そもそも長時間ノイズ低減とは、長時間撮影時の画像の中には電気的なノイズが沢山入っているので、被写体撮影後に真っ黒の画像を同じ時間だけ撮影して、そのノイズ分を被写体撮影時の画像から差し引いてやろうというものです。
ノイズリダクション無し ノイズリダクション有り
ですから、もし30秒間の露光を行うと、同じく30秒間の真っ黒画像の撮影が行われますので、トータルで1分間何もできなくなってしまいます。
本番撮影ならしかたがないのですが、先ずはピントや露出や構図の確認をしなければいけない時に、この余分な30秒は甚だ無駄です。
さらに真っ黒画像を撮影しますので、電池もその分多く消耗します。
という訳で、本番撮影の前は長秒時ノイズ低減は以下の手順でOFFにしておきます。
①MENUボタンを押して、メニューを表示する。
②スパナマークを選択して、セットアップメニューを表示する。
セットアップメニュー
③”歯車/端子メニュー表示”を選択して、”歯車(カスタム)メニュー表示”をONにする。
カスタムメニュー
④”歯車マーク”を選択して、”カスタムメニュー”を表示する。
⑤”カスタムメニュー”から”露出/測光/ISO”を選択し、”長秒時ノイズ低減”をOFFにする。
⑥OKボタンを押して設定内容を確定する。
⑦繰り返しMENUボタンを押して、メニューを終了する。
2: 2秒タイマーのセット
前記しました様に、シャッターを押した際の振動を防ぐため、以下の手順で2秒タイマーをセットします。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②表示されたメニューから、セルフタイマー2s(2秒タイマー)を選択する。
③OKボタンを押して終了する。
3: ホワイトバランスの設定
ホワイトバランスは恐らくデフォルトのままでしたらオートになっていると思いますので、そのままで構いません。
ただし実際星空を撮ると、赤みを掛けたかったり、逆にもっと青みを掛けたくなったりします。
その時に備えて、ホワイトバランスの調整方法も事前に確認しておきましょう。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、WB(ホワイトバランス)方式を選択する。
③表示されたメニューから、ホワイトバランスの設定がオートになっている事を確認する。
④OKボタンを押して終了する。
4: 手ブレ補正機能の解除
三脚を使って撮影する場合、手ブレ補正機能は却ってブレの原因になりかねません。
このため通常でしたら手ブレ補正機能をOFFにするのですが、本機の場合2秒を超えるシャッター速度では、手ぶれ補正は作動しませんので、何もしないで大丈夫です。
ここで手ブレ補正をOFFにすると、設定を戻し忘れて、却って通常撮影で手ブレ補正無しで撮る事になりますので、何もしないのが一番です。
5: マニュアルフォーカスの設定
星空は光量が少ないため、オートフォーカスは働きません。
このため、以下の手順でマニュアルフォーカスに設定します。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、フォーカス方式(下の表示の場合S-AF)を選択する。
③表示されたメニューから、MF(マニュアルフォーカス)を選択する。
④OKボタンを押して終了する。
以上でマニュアルフォーカスが可能になりましたので、これで遠くの被写体にカメラを向けて、レンズのフォーカスリングを回せばピントが合います。
レンズに付いているフォーカスリングを回してピントを合わせる
ただしより正確にピントを合わせるため、フォーカスリングを回したとき、自動的に画像が拡大される様な設定を行います。
これをMFアシスト機能と呼び、以下の手順で行ないます。
⑤MENUボタンを押して、メニューを表示する。
⑥”歯車マーク”を選択して、”カスタムメニュー”を表示する。
⑦”カスタムメニュー”から”AM/MF”を選択し、”MFアシスト”をONにする。
⑥OKボタンを押して設定内容を確定する。
⑦MENUボタンを押して、メニューを終了する。
⑧遠くの被写体にカメラを向けて、レンズのフォーカスリングを回してピントを合わせる。
なお今回は前準備のピント調整ですので、撮影現場に着いたら再度遠くの明るい物にカメラを向けてピント調整を行ないます。
6: マニュアル露出設定
次は、マニュアル露出の設定です。
カメラの性能は非常に良くなってきており、今では殆どの場面は自動露出で撮れる様になってきました。
ですが、さすがに星空は光量が少なくて自動露出ではうまく撮れません。
このため、以下の手順でマニュアル露出にして、絞りをF4、シャッタースピードを30秒にセットします。
①モードダイヤルをMにセットする。
②上下(▲▼)ボタンを押してシャッター速度を30秒にセットする。
③左右ボタンで絞り値をF4に設定します。
7: ISO感度の設定
ISO感度とは、昔使っていたフィルムの感度に当たります。
この数字が大きければ大きいほど、小さな光でも写す事ができますが、余りに大きくするとその幣害として画像に電気的なノイズが乗って、ざらついた画像になります。
ですので何事もほどほどが肝要です。
星空の場合、以下の手順でISO感度を3200に設定します。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、ISO感度を選択する。
③表示されたメニューから、3200を選択する。
④OKボタンを押して終了する。
8: レンズの清掃
カメラのセッティングが終了したら、最後にレンズの清掃をしておきましょう。
フードの所でもお話ししました様に、夜間の撮影は昼間の撮影以上に外乱の光が写真に影響してしまいます。
うっかりレンズに指紋でも付いていると明らかにコントラストが低下しますので、しっかり清掃しておきます。
またもし完璧を望まれるのでしたら、フィルターも外しておいた方が良いかもしれません。
9: 動作確認
設定が完了したら、最後に動作確認を行いましょう。
①どこか暗めの所にカメラを向けてシャッターを切ります。
②シャッターを押して2秒後にシャッターが開いて、30秒後にシャッターが閉じて真っ白な画像(もしくは薄らと何か写っている画像)がモニターに表示されれば、設定OKです。
4. 星空撮影
準備が完了したら、実際に星空の撮影を行いましょう。
①カメラを三脚にセットしたら、もう一度遠くの明るい物(例えば月や、遠くの街灯)にカメラを向けてピントがあっているかどうか確認します。
②もし合っていなければ、前述のマニュアルフォーカスの設定を再度行います。
③変わっていないと思いますが、もう1度絞りがF4でシャッタースピードが30秒で、ISO感度が3200になっている事をモニターで確認します。
④カメラの設定はそのままで、カメラを撮りたい星空に向けて、シャッターを切ります。
⑤もし撮影された画像が暗ければ、上下ボタンを押してシャッタースピードを遅く(例えば60秒に)するか、左右ボタンを押して絞りを開ける(例えばF2.8にする)か、前述のISO感度設定を呼び出してISO感度を上げ(例えばISO6400にし)ます。
F4.0 F4.0 F4.0
15秒 30秒 30秒
ISO3200 ISO3200 ISO6400
⑥もし撮影された画像が明るければ、上記と反対にします。
⑦上記④~⑥を繰り返して適正露出になったら、色見を前述のホワイトバランスを変えて調整します。
もし赤味を付けたいのでしたら、色温度を低めの4000K前後にするか、蛍光灯を選択します。
WB: オート WB:太陽光 WB:蛍光灯(昼白色)
もし青味を付けたければ、太陽光、日陰、曇天を選択します。
その他各種設定がありますので、色々変えて撮影しておく事をお勧めします。
⑧好みの色味になったら、前述の長秒時ノイズ低減の設定をONにして、最終画像を撮ります。
いかがでしょうか?
素敵な写真が撮れましたでしょうか?