AFロックによるピント誤差(コサイン誤差)はどれくらいか
2021/04/24:発行
はじめに
AFロックをご存知でしょうか。
中央の測距点を使ってAFでピントを合わせ、それからAFロックして構図を変えて撮影する昔ながらAFの使い方です。
その場合、ピントを合わせてからカメラを振るため、僅かながら測距誤差が生じます。
この誤差をコサイン誤差と呼んだりもしますが、この誤差はどれくらいなのでしょうか。
少々気になり調べてみましたので、その結果をお伝えしたいと思います。
なお当初は単純に計算で求められると思ったのですが、それが意外にややこしくて、結局簡単な作図をして求めています。
50mm F1.2の距離1.5m
先ずは50mmの標準レンズを使って、1.5m先の赤点にピントを合わせ、その後カメラを10度傾けてピント面がどれくらいズレるかを求めてみます。
50mmレンズで距離1.5mにピントを合わせ10度傾けた場合のピント誤差
50mmレンズの水平方向の画角は40度で、1.5mは人物の上半身が写るくらいの距離になります。
上の図をご覧頂きます様に、カメラを10度傾けると赤点にピントが合う平面までの距離は1.47mになります。
という事は3cm程、ピントがズレるという事です。
仮にこのレンズが50mmのF1.2だとしますと、距離1.5mでの被写界深度は±3cmになりますので、理論上は何とかピントが合って見える事になります。
ちなみにF1.4の場合、被写界深度は±3.5cmになります。
50mm F1.2の距離3m
次に、被写体までの距離を3mにしたのが下の図になります。
50mmレンズで距離3mにピントを合わせ10度傾けた場合のピント誤差
この場合、人物の全身がほぼ入る距離になります。
何となく距離が遠くなると誤差は小さくなるのではないかと思ったのですが、当然そんな事はなく、誤差は8cmと大きくなりました。
ただし距離が3mになると被写界深度も±12cmと深くなりますので、この場合は楽に被写界深度内に収まります。
そんな訳で、被写体から距離が離れている場合は、AFロックを使っても然程ピント外れの心配は無いのですが、距離が近い場合は、AFロックは使わない方が無難な様です。
とここまで書くと、AFロックを使えるか使えないかのボーダーラインの距離を数値で表したくなってきます。
85mm F1.2の距離1.5m
そのためには、レンズの焦点距離が変わるとどうなるのか、すなわち広角と望遠でどうなるかを知らなければなりません。
レンズの焦点距離(画角)が変わっても、ピント誤差は変わらない気がするのですが、どうでしょうか。
標準レンズの距離1.5mと条件を同じにして、85mmの中望遠レンズを使った場合を作図してみると、下の図の様に予想通り誤差は3cmのままで変化はありません。
85mmレンズで距離1.5mにピントを合わせ10度傾けた場合のピント誤差
ただしこの場合はバストアップの写真になり、85mm F1.2の被写界深度は±1cmになりますので、残念ながら赤点はボケる事になります。
ですが、画角が24度しかない中望遠レンズで、カメラを10度も傾けて合焦点をフレームの端ギリギリまで移動する事はかなり稀なケースだと思われます。
となるとカメラを5度傾けた場合の誤差は1.5cm程度と予想できますので、被写界深度の±1cmから僅かに外れるものの許容したくなるレベルです。
35mm F1.2の距離1.5m
また作図はありませんが、35mm F1.2の広角レンズですと、距離1.5mでの被写界深度は±6cmですので、誤差3mmでは全く問題ありません。
ただし更に広角レンズの場合は、カメラを振る角度が大きくなると予想されますので、仮に振る角度が20度だと誤差が6mmになり、これでピントの合う限界になります。
まとめ
そんな訳で、AFロックの使えるか使えないかのボーダーラインは被写体までの距離が1.5m近辺と言えそうです。
ただし今回の検証はあくまでもF1.2と非常に明るいレンズの場合で、これより暗いレンズだったり、カメラを振る角度が小さければ、これより近くてもAFロックは使える事になります。
という訳で、明るいレンズを使って近距離の被写体をカメラを大きく振って撮らない限り、コサイン誤差は然程気にしなくてもよさそうな感じです。
逆に言えば、マクロ撮影ではAFロックは使わない方が無難です。