SONY α1とEOS R5の動画性能を比べてみた
2021/02/10:発行
はじめに
ソニー初のフラッグシップ機となるSONY α1が発表されました。
となると、EOS R5の動画性能と比べてみたくなるのが人情です。
SONY α1とEOS R5のどちらの動画性能が優れているのか
ところが静止画の仕様書と違って、動画の仕様書はメーカーによって書き方がまちまちで、おいそれとは比較できません。(下はEOS R5の動画の仕様表)
EOS R5の動画の仕様表(SONY α1はこちら)
そんな訳で、幣サイト独自のまとめ方で、両者の性能を比較してみたいと思います。
どんな結果になるかお楽しみに。
8Kの動画性能を比較する
それでは早速8K動画を比べてみます。(項目の詳細についてはこちら)
項目\機種 | SONY α1 | EOS R5 |
撮像素子 | 5010万画素 | 4500万画素 |
動画モード | 8K30P | 8K30P |
動画ISO感度 | ISO100-32000 | ISO100-25600 |
動画サイズ (画素数) |
8K UHD(7680×4320) | 8K DCI(8192×4320) 8K UHD(7680×4320) |
ガンマ補正 | S-Log1,2,3、Movie、 Still、ITU709、HLG2等 |
Canon Log |
撮影範囲 (クロップ) |
全画面 (8.6Kオーバーサンプリング) |
全画面 |
カラーサンプリング | 4:2:0 | 4:2:2 4:2:0 |
ビット深度 | 10bit | 10bit 8bit |
記録フォーマット | XAVC HS | MP4 |
フレーム内圧縮 | H.265 | H.265 |
フレーム間圧縮 | Long GOP | All-I IPB(標準) IPB(軽量) |
RAW記録 | 不可 | 12bit RAW対応 (2600Mbps) |
ダイナミックレンジ | 15+ストップ (S-Log3時) |
不明 |
HDMI出力 | 8K(4:2:0 8bit) | 4K出力 |
プロキシー動画 | FHD(1920×1080) HD(1280×720) |
4K DCI(4096x2160) |
撮影時間 | 30分 (400Mbps) |
20分 (470~2600Mbps) |
この表をご覧頂きます様に、α1がEOS R5に勝っている点は、ISO感度が1/3段高く、ガンマ補正の種類が豊富で、8.6Kのオーバーサンプリングで、プロキシー動画がFHDやHDの小解像度の動画が撮れ、低ビットレートながら8KのままHDMI出力できるる事です。
ただし動画サイズ、カラーサンプリング、フレーム内圧縮、フレーム間圧縮は全て固定になっています。
一方EOS R5は、シネマ業界基準のDCI規格のサイズにも対応し、4:2:2と4:2:0のカラーサンプリング、8bitと10bitのビット深度、IPBとAll-Iのフレーム間圧縮の選択が可能で、おまけに12bit RAW撮影が可能です。
という事は、α1は取り敢えず8K30P動画を最大限圧縮して手軽に撮れますと言うのが売りなのに対して、EOS R5は(設定を変える事によって)ハイアマチュアからハリウッドのシネマ業界からまでもターゲットにした全方向対応モデルと言えます。
ですので、両機とも密閉された筐体である以上、EOS R5の方が昇温に不利なのは仕方のない事でしょう。
そんな訳で、この勝負はキヤノンの圧勝としたいのですが、いかがでしょうか。
撮影時間
ところで、上の表をまとめていて、奇妙な事に気付きました。
それは、EOS R5の連続撮影時間です。
下にあります様に、キヤノンの公式HPによれば、通常撮影でもRAW撮影でも8K30Pにおける連続撮影可能時間は約20分となっています。
当然ながら、撮像素子から読み込んだデータをそのままメモリーに記録するRAW撮影と、間引きや圧縮をふんだんに行なう通常撮影とでは、データ量が大きく異なります。
にも関わらず、昇温に伴う連続撮影可能時間が両者同じというのは、どうも解(げ)せません。
また通常撮影においても、EOS R5は2種類のカラーサンプリング方式と2種類のビット深度、それに2種類のフレーム間圧縮の選択が可能ですので、それらの組み合わせによってデータ量は異なります。
にも関わらず、通常撮影時における連続撮影可能時間も一律に20分というのは、どう考えても不可解です。
そんな訳で、試しにEOS R5のビットレートを調べてみる事にします。
するとご覧の通り、RAW撮影時のビットレートは2600Mbpsにも関わらず、通常撮影におけるビットレートは470~1300Mbpsしかないではありませんか。
にも関わらず、RAW撮影時も通常撮影時も、昇温に伴う連続撮影時間が一律に約20分とは、これ如何(いか)に?
確かにビットレートが小さいという事は、それだけ演算処理の大変な圧縮処理を多くしている事になりまので、一概にビットレートが小さければ昇温に有利という訳ではないのですが、それでも一律同じ連続撮影時間というのはどうみても不可解です。
ですのでもしこれが事実だとしたら、EOS R5の連続撮影時間は実際の昇温よりも、安全を見て一律に録画を早めに停止させているのかもしれません。
ついでにα1の8K30Pにおけるビットレートを調べると、これまたビックリです。
以下の様に8K動画は最大限圧縮する一種類しかないのですが、そのビットレートはたったの400Mbpsしかないのです。
という事は、α1のデータ処理能力はEOS R5(最大2600Mbps)の1/6以下という事です。
先程もお伝えしました様に、圧縮処理もそれなりに大変なので、そうは一概には言えないものの、動画性能についてはEOS R5の圧勝というのも、これで再認識して頂けたのではないでしょうか。
いずれにしろ、気軽に8K動画を気楽に楽しむのならばデータ容量が小さいα1、業務にも使うのならば断然EOS R5と言うのもこれでよりご納得頂ける事でしょう。
更にEOS R5も、ビットレートを最小となる470MbpsになるCanon Log:OFF、HDR PQ:OFF、IPB:ONで撮れば、α1並みに連続撮影時間が延びる可能性は十分あります。
とは言いながら、これ以上は現品を使って試験してみるしかないのですが、少なくとも30分と20分を比較してα1の方が放熱性能が優れていると言うのは、(木を見て森を見ずの如く)全く以ってナンセンスな話だというのはご理解頂ける事でしょう。
4K60Pの動画性能を比較する
それでは次に4K60Pの動画性能を比べてみます。
項目\機種 | SONY α1 | EOS R5 |
動画サイズ (画素数) |
4K UHD(3840×2160) | 4K DCI(4096×2160) 4K UHD(3840×2160) |
ガンマ補正 | S-Log1,2,3、Movie、Still、 ITU709、HLG2等 |
Canon Log |
撮影範囲 (クロップ) |
全画素 (クロップ無し) |
全画素 (クロップ無し) |
カラーサンプリング | 4:2:2 4:2:0 |
4:2:2 4:2:0 |
ビット深度 | 10bit | 10bit 8bit |
記録フォーマット | XAVC HS XAVC S XAVC S-I |
MP4 |
フレーム内圧縮 | H.265 H.264 |
H.265 H.264 |
フレーム間圧縮 | All I Long GOP |
All-I IPB(標準) IPB(軽量) |
RAW記録 | N/A | N/A |
ダイナミックレンジ | 15+ストップ(S-Log3時) | 不明 |
HDMI出力 | 可 | 可 |
プロキシー動画 | FHD(1920×1080) HD(1280×720) |
不可 |
撮影時間 | 不明 | 35分 |
上の表をご覧頂きます様に、4K60P動画については両者ともほぼ同じで、α1がガンマ補正が豊富でプロキシー動画に対応しており、EOS R5が4K DCIにも対応している事が違いになります。
なおα1の場合、スーパー35mm(APS-Cに近いサイズ)にクロップして4K動画を撮ると、下の図にあります様に5.8Kのオーバーサンプリングになり(フルサイズより)画質が良くなる事を売りにしています。
α1の5.8Kオーバーサンプリングのイメージ図
しかしながらEOS R5の場合、UHDの4K30Pに限定されますが、フルサイズのまま8.2Kのオーバーサンプリングによる高画質化が可能なのです。
EOS R5の場合、UHDの4K30Pにおいて高画質を選択できる
どちらが魅力的かと言えば、当然ながらフルサイズで8.2KオーバーサンプリングのEOS R5でしょう。
もちろんα1の方が解像度が上ですので、理論上はフルサイズのまま9K程度のオーバーサンプリングができる筈なのですが、映像エンジンの処理速度の差がここで出てしまう様です。
この辺を見ると、やはりどうしてもEOS R5の方が格上に見えてしまいます。
なお4Kで極力綺麗な動画を撮りたいのならば、α1の場合はスーパー35mmのクロップ、EOS R5の場合でしたら4K30Pの4K高画質を使うのがお勧めです。
まとめ
それではまとめです。
①α1の8K30P動画は、EOS R5と比べてISO感度が1/3段高く、ガンマ補正の種類が豊富で、8.6Kのオーバーサンプリングで、小解像度のプロキシー動画の同時録画可能という長所があるものの、間引きと圧縮を最大にした通常撮影しかできない。
②それに対してEOS R5は、間引き方法や圧縮方法を選択でき、更にはRAW撮影にも、HDMI出力にも対応しており、ハイアマチュアからハリウッドのプロを含めた全方向対応モデルと言える。
③EOS R5における8K30Pの連続撮影時間は一律20分となっているが、間引きと圧縮を最大にした(ビットレートを最小にした)通常撮影の場合、連続撮影時間は延びる可能性がある。
④4K60Pについては、ガンマ補正が豊富な事とプロキシー動画が撮れる事においてα1の方が優れているものの、映像エンジンの処理能力は明らかにEOS R5の方が勝っている。