今どきAEロックボタンは必要なのか?

2020/02:発行

目次



1. はじめに


今どきのカメラでしたら、当たり前の様に付いているAEロックボタン。


SONY α7 IIIのAEロックボタン

用途はご存知の様に、AEモード時に露出を補正するためです。


EOS Kiss MのAEロックの使い方に関する説明図

ですが、今どきAEロックボタンは本当に必要なのでしょうか?

今回はそんな疑問に迫ってみたいと思います。


2. いつからAEロックボタンは付いたのか?


年配の方でしたらご存知かもしれませんが、念のためにいつ頃何のためにAEロックボタンが追加されたのかをお知らせしておきたいと思います。

1960年代、マニュアル露出のNikon Fが一眼レフ市場を席捲しているときは、まだAEロックなるボタンはどこにも存在していませんでした。


TTL露出計を搭載したNikon F フォトミックFTn(後期モデル)

ではいつから搭載されたかと言えば、当然ながらAE機能、すなわち自動露出機構が一眼レフにも盛り込まれる様になってからです。

具体的には、1970年代から各社の汎用一眼レフに絞り優先AEやシャッター優先AEが搭載され、それに伴ってAEロックボタンが新たに搭載されました。


シャッター優先AEのCanon EF(1973年発売)に搭載されたAEロックボタン(赤丸)


3. AEロックボタンは何のために追加されたのか?


では一体何のためにAEロックボタンが追加されたのでしょう?

先ずそれ以前のマニュアル露出の一眼レフでしたら、露出メーターの指針を見ながらシャッター速度と絞り値の両方を人が操作して露出を決定していました。


Nikon F2 Photomic Aの露出表示

ですので、例えば逆光の撮影であれば、指針よりも絞りを開けたり、シャッター速度を遅くする事で対処できます。


マニュアル露出の一眼レフなら簡単に露出補正ができる

一方自動露出の場合、シャッター速度(もしくは絞り値)を決定したら絞り値(もしくはシャッター速度)は適正露出になる様に自動で設定されます。

このため、逆光補正を行う場合は、何らかの補正手段が必要となります。

そこで登場するのがAEロックです。

例えば逆光で人物を撮る場合、そのままシャッターボタンを押すと、周囲の明るさにつられて、人物は暗く写ってしまいます。

このため、先ずは人物同じくらい暗い個所にカメラのレンズを向け、そこでAEロックボタンを押します。

AEロックボタンを押したまま、また人物を画面に入れて撮影すれば、人物を明るく撮れるという訳です。


4. 露出補正のもう一つの手段


先ほどAEロックボタンの使い方をご紹介しましたが、実は自動露出のカメラにおいてもう一つ露出補正を行う方法があるので、それもご紹介しておきたいと思います。

それはISO感度を調整する方法です。


ISO感度を応用して搭載された露出補正ダイヤル(ニコマートEL)

例えばISO100のフィルムを装填している場合、逆光でもう少し明るく撮りたい場合は、ISO感度を50にしてやれば(カメラは感度が低いフィルムを装填されていると思い)人物を明るく撮る事が可能です。


5. 評価測光の出現


そうは言っても、カメラの向きを変えてAEロックしたり、露出補正ダイヤルをクルクル回すのも面倒です。

そこで出現したのが、評価測光(分割測光/マルチパターン測光)です。


Nikon FAの5分割測光領域

これが何をしているかと言えば、カメラが被写体を判断し、もし逆光だと思ったら自動的に露出を明るくしてくれるというものです。


本格的な評価測光(マルチパタン測光)機能を搭載したNikon FA(1983年発売)

この時代のカメラは測光領域を5分割して輝度差や最大輝度から逆光かどうかを判断するくらいでしたが、今どきのデジタルカメラでしたら人物の顔まで判断できますので、人物の適正露出を判断するくらい朝飯前です。

これによって、撮影者はAEロックなどする事なく、好みの構図のままシャッターボタンを押すだけで適正露出を得る事ができる様になったという訳です。


6. AEロックボタンは必要か


さてすっかり前置きが長くなってしまいましたが、それでは今どきAEロックボタンが必要かどうか考えてみます。

従来は以上の理由でAEロックボタンが付いていましたが、果たして今もそれが必要でしょうか?

と言うのは、フィルム時代のカメラは、フィルムの現像が終わるまで撮った画像を見る事はできませんでした。

ところが今は、撮った直後にその画像が確認できるのです。

更にミラーレス一眼においては、撮る前に既にこれから撮る画像が確認できるのです。

ですので、仮に逆光の人物を撮ろうとすると、既に人物が暗くなった画像をファインダーで確認できてしまいます。

となると、わざわざ暗い方向にカメラのレンズを向け、そこでAEロックボタンを押して、また人物を画面に入れて撮影するなどという面倒な事を行うでしょうか?

有り得ないでしょう。

だったら人物が丁度良い明るさになる様に、露出補正ダイヤルを回すか、評価測光にお任せすれば良いだけです。

という訳で、今どきAEロックなんか必要なさそうだと思って来られてきた所で、いよいよ本題です。


7. まとめ


いかがでしたでしょうか。

以上をまとめますと以下の様になります。

①元々のAEロックの目的は、AE(自動露出)において露出補正を簡単に行う事であった。

②しかしながら最近のデジタルカメラにおいては、評価測光が発達してきた事や、露出補正ダイヤルで簡単に露出補正できる事から、AEロックを使う必要性が薄れてきた。

③という訳で、元々の目的である露出補正のためのAEロックボタンは、露出補正が容易になり、評価測光が進んだ現在においては無用の長物と言える。


という訳で、もし今までにAEロックボタンを積極的に使っていらっしゃらない様でしたら、AEロックボタンをもっと使用頻度の高いボタンに登録し直しましょう。

と言いたい所ですが、③のまとめをじっくり読んで頂けますでしょうか。

AEロックボタンは、元々の目的である露出補正のために使うのでしたら無用の長物と言えます。

ですが、本来の目的以外に有効な使い方があるのでれば、依然有用と言えます。

次に本記事の本題とも言えるその話をさせて頂きますので、是非とも次を覗いて頂けます様お願い致します。




今どきAEロックボタンは必要なのか?





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