デジタルカメラ便覧

2014/10:発行
2018/01:更新

はじめに


さあー、前章の理論編でカメラの特徴を掴んで頂いた所で、いよいよ待ちに待ったカメラとそのレンズ選びです。

でもその前に、下のデジタルカメラ分類チャートから全体像を把握しておきましょう。

デジタルカメラ分類チャート
特徴 撮像素子 カメラ構成 メーカー
大型
ボケ易い
画像情報多








画像情報少
ボケ難い
小型
フルサイズ
(100%)
1: 一眼レフ Nikon, Canon, Sony, Pentax
2: ミラーレス Sony, Nikon, Canon, Panasonic
3: コンパクト Sony
APS-Cサイズ
(43-38%)
4: 一眼レフ Canon, Nikon, Pentax, Sony, Sigma
5: ミラーレス Sony, Fuji, Canon, Nikon, Sigma, Ricoh
6: コンパクト Fuji, Ricoh, Nikon, Canon, Sigma
4/3サイズ
(26%)
7: 一眼レフ Olympus
8: ミラーレス Olympus, Panasonic
9: コンパクト Panasonic
1インチサイズ
(14%)
10: 一眼レフ N/A
11: ミラーレス Nikon
12: コンパクト Sony, Canon, Panasonic, Nikon
小サイズ
(14%未満)
13:ミラーレス Pentax
14:コンパクト Many

このチャートを簡単にご説明しますと、先ず左側が撮像素子のサイズで、上から下へ行くにつれて徐々に小さくなっています。

次に分類の2段目が、お馴染みのカメラ構成の3種類です。

このシンプルなチャートに分類すれば、店頭にあるカオス状態のカメラ達が、全て一目瞭然に分類できるという訳でする。

全体像が把握できた所で、いよいよカメラ選びです。

順番としては、当然ながら値段の高い上から順から見てみましょう。


フルサイズ一眼レフ


その前に、衝撃的な事をお伝えしたいと思います。

今まで高級カメラ市場を牽引してきたフルサイズ対応デジタル一眼レフですが、残念ながらこれから徐々に非主流になっていく可能性があります。

なぜならば、これからは小型で更に高性能なミラーレス一眼が間違いなく台頭してくるからです。

実際2016年に発表されたキヤノンの中期経営計画においても、ついにミラーレス一眼の商品力強化が盛り込まれました。


CMJ(キヤノンマーケッティングジャパン)2016年~2018年中期経営計画

当然ながら”一眼レフ以上に”という言葉は入っていませんが、徐々に一眼レフからミラーレス一眼に軸足を移していくのは間違いありません。

一方一眼レフ市場で双璧となるニコンの2015年中期計画においても、ミラーレス一眼(ノンフレックスカメラ)の強化が挙げられています。


ニコン2015年中期経営計画

ですので、今後両者からフルサイズのミラーレス機が発売されるのは間違いありませんので、どうしても一眼レフでないと困るという方以外には余りお勧めではありません。

ですが、この分野においてはフィルム時代からの豊富なレンズが揃っているのも事実ですので、何はともあれ一度は使ってみようと思う方向けに、新旧の製品を含めて一堂にご紹介したいと思います。

なおここでも一言お伝えしておきますと、フィルム時代のレンズをデジタルカメラに使うと、間違いなくレンズの荒が目立っってしまい、実際の所ほとんど使いものにならない事をお伝えしておきます。

さて、すっかり前置きが長くなって(水を注して)しまいましたが、フルサイズの撮像素子を搭載したデジタル一眼レフカメラを発売しているのは、国内ではニコン、キヤノン、ソニーの3社しかありませんでした。

ところが2016年に、リコーのペンタックが新たに参入してきました。

はたして勝算はあるのでしょうか?

と言いながら、メーカ毎に順を追って見ていきましょう。


ニコン


現在ニコンは7機種のフルサイズ一眼レフをラインアップしており、EOSの6機種を上回っています。

ニコンの番号体系は、下の表にあります様に1桁モデルがフラッグシップ、3桁モデルがフルサイズ機になります。

ニコンのフルサイズ一眼レフの番号体系
モデル シリーズ 特徴
1桁モデル D1桁 プロご用達のフラッグシップ
2桁モデル D70
D80
D90
初期APS-Cサイズ対応モデル
後に4桁モデルに移行
3桁モデル D800 高級機
D700 中級機
D600 入門機(生産中止)
系列外モデル Df ノスタルジック指向モデル

なお上の表にはありませんが、4桁モデルがAPS-Cサイズ機専用になります。

また余談ですが、現在2桁モデルがないのは、現在一桁のフラッグシップが今後2桁になる場合に備えているのかもしれません。

そして1桁、3桁、4桁モデルにおいては、数字が大きい程高級機になります。

ただし3桁モデルには、D500というAPC-Cサイズの最上位機種がありますが、これはAPS-Cサイズ一眼レフの項でご紹介します。


1. 1桁モデル

ニコンの1桁モデルである旗艦モデルは、1999年発売のD1から2020年発売のD6まで進んでいます。


ニコン初のカメラ旗艦、NIKON D1(APS-Cサイズ274万画素)

さすがにNIKON D1やD2は発売から既に10年以上が経過していますので、本書では2007年発売のNIKON D3から見ていきたいと思います。


NIKON D6

なおもしかしたら、D6でNikon D一桁シリーズは終わるかもしれません。


NIKON D5

NIKON D4S

NIKON D4

NIKON D3S

NIKON D3X

1桁機は値段も風格も別格ですのでほとんど高嶺の花ですが、簡単に特徴をまとめると以下の様になっています。

モデル 特徴 連写 シャッター速度 ISO感度
(拡張)
画素数
NIKON D6
2020/6
D5に対して測距点(105点)全てをクロスセンサーとし、-4.5EVの低輝度にもAFが可能になった。
また連写もAF/AE追随で14コマ/秒を達成。
画像処理エンジンが最新のEXPEED6になったが、撮像素子は変わらず、ISO感度も同じ。
このため、ライブビューAFは依然コントラスト検出方式のまま。
記録メディアがCFexpress(TypeB)となり、Bluetooth、GPS(みちびき対応)を内蔵。
14コマ/秒 30
-
1/8k
B, T
100 - 102,400
(30 - 3,280k)
2,082
万画素
NIKON D5
2016/3
闇夜で最強の最大ISO感度328万、-4EVでも働くAF機能、イルミネーションボタン、236万ドットの高解像度タッチパネルモニター、4K(30p)動画機能を新規搭載。
連写速度は12コマ/秒でEOS-DXIIに劣るが、3倍もの低消費電力を達成。
12コマ/秒
(ミラーアップで
14コマ/秒)
30
-
1/8k
B, T
100 - 102,400
(30 - 3,280k)
2,082
万画素
NIKON D4S
2014/3
D4に対して、AF性能向上、画質向上、AWB向上等実施。 11コマ/秒 30
-
1/8k
B, T
100 - 25,600
(50 - 204,800
1,623
万画素
NIKON D4
2012/3
光学ファインダーを使った撮影時の顔認識を実現、-2EVでも働く51ポイントのAF、11コマ/秒の超高速連写、無音撮影、APS-CベースのFHD動画対応、無線LAN搭載。 11コマ/秒 30
-
1/8k
B, T
100 - 25,600
(50 - 204,800)
1,623
万画素
NIKON D3S
2009/11
D3に対して画素数を抑えて感度アップを図る。
撮像素子のクリーニング機能の新規搭載、操作性、動画撮影機能向上。
11コマ/秒
(APS-C)
30
-
1/8k
B
200 - 12,800
(100 - 102,400)
1,210
万画素
NIKON D3X
2008/12
D3に高精細の撮像素子を搭載したモデル。
操作性や基本性能はD3と変わらず。
11コマ/秒
(APS-C)
30
-
1/8k
B
100 -
1,600
(50 - 6,400)
2,450
万画素
NIKON D3
2007/11
ニコン初のフルサイズセンサーを搭載。最高感度がISO6400、拡張でISO25600、APS-Cサイズで約9コマ/秒の高速連写、51点のAFポイント、92万ドット高精細液晶モニター、2種類のライブビュー機能 、AF微調節や焦点距離手動入力機能を搭載 11コマ/秒
(APS-C)
30
-
1/8k
B
200-
6,400
(100 - 25,600)
1,210
万画素

この表をご覧頂きます様に、1桁モデルは当時の最先端技術を惜しみなく投入している事が分かります。

一方で、もう一つ興味深い事が分かります。

例えば、D3程度の性能でしたら、さすがに連写速度は適わないものの、最新のカメラならば普及機クラスでも同じ性能の機種が出回っています。

一昔と違って、技術の進歩が確実に速くなっているのは間違いありません。

何はともあれ、このフラッグシップ機を使いこなすには、十分な資金と体力が必要です。


2. 3桁モデル

次は多少手の届く可能性のある3桁モデルです。

今の所ニコンでは、D800シリーズを高級機、D700シリーズを中級機、D600シリーズを入門機としている様です。

【D800シリーズ】

D800シリーズの特徴は高画素の撮像素子を搭載している事で、ちょうどEOS 5D系の競合機になります。

最新のD850はもしかしたら最後の高級一眼レフになるかもしれないとの思いがあるのか、完成度の高さは折り紙付きです。


完成度の高いNikon D850


NIKON D850

NIKON D810A

NIKON D810

NIKON D800E

NIKON D800

新旧モデルの特徴を簡単に述べておきますと以下の通りです。

モデル 特徴 ストロボ モニター 連写 シャッター速度 ISO感度
(拡張)
画素数
D850
2017/9
4689万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用。連写はボディ単体で7コマ/秒、ブースター接続で9コマ/秒が可能。D5と同じ153点AFシステム、ボタンイルミネーションを採用し、倍率約0.75倍の光学ファインダーも新搭載。
4K UHD(3840×2160)/30p動画も可能になる。内蔵ストロボが廃止された。
外付け チルト式 7コマ/秒 30
-
1/8000

B, T
64-25,600
(32-102,400)
4,575
万画素
D810A
2015/5
天体撮影専用の高精細追求の特殊モデル 内蔵 固定 5コマ/秒 64-12,800
(32- 51,200)
3,635
万画素
D810
2014/7
撮像素子を刷新した高精細追求モデルでローパスフィルターレスとしている。 内蔵 固定 5コマ/秒
D800E
2012/4
D800に対してローパスフィルターの効果を無効化したモデル。 内蔵 固定 4コマ/秒 100-6,400
(50- 25,600)
3,630
万画素
D800
2012/3
発売当時世界最多となる3630万画素の撮像素子を搭載したモデル。フルHD動画対応。 内蔵 固定 4コマ/秒

高画素でカメラとなると、現在EOS 5Dsの5000万画素、α7R IIの4800万画素が存在しますので、必要性はともかく3600万画素は少々見劣りする数値になっています。


【D700シリーズ】

D700シリーズは下位モデルのD300或いはD600とデザインを共通化しているため、プレミアム性でかなり損をしていますが実力はかなり上で、D800シリーズに対して、画素数を抑えたモデルと考えれば間違いないと思います。

なお初代のD700はD3の主要ユニットを流用してプロ~ハイアマチュアをターゲットとしていましたが、D750はハイアマチュアにターゲットを絞り、異なるユニットを搭載して小型化と独自性を打ち出しています。


内部構造を徹底的に見直し、ボディーの小型化を実現したD750

そして続くD780は、フラッグシップであるNikon D5とミラーレス一眼であるZ6の良いとこどりといった感じです。


内蔵フラッシュを廃止して頭がすっきりしたD780


NIKON D780

NIKON D750

NIKON D700

モデル 特徴 ストロボ モニター 連写
(電子)
シャッター速度 ISO感度
(拡張)
画素数
D780
2020/1
D750の後継機。
シャッター速度を1/8000秒にアップし、新たにBluetoothを内蔵したが、内蔵フラッシュは廃止。
画素数は前代と同じながらZ6と同じ裏面照射型CMOSセンサーを採用し、最大常用ISO感度が従来の4倍の51200にアップ。
ファインダー撮影ではD5のAFアルゴリズムを流用、ライブビュー撮影時においてはZ6のハイブリッドAFシステムや、タッチパネルモニターを採用し、-7EVの暗さまでAF対応。
フルフレームでの4K/30P対応。
外付け Tilt
236万
dot
7コマ/秒

(12コマ)
(15min)
30-
1/8000
B, T
100-
51,200
(50- 204,800)
2,450
万画素
D750
2014/9
下位モデルのD610と共通デザインであるが、D810との違いは画素数程度。
ニコンのフルサイズで初めてチルト式液晶モニターを搭載とWi-Fi機能搭載。-3EVから働くAF性能。フルHD(60P)対応。
内蔵 Tilt
129万
dot
6.5コマ/秒 30-
1/4000
B, T
100-
128,00
(32- 25,600)
2,432
万画素
D700
2008/7
D3の撮像素子とAF機構、シャッター機構を流用した中級機。
ブースターを使った高速連写と高感度が売り。撮像素子のクリーニング機構も搭載。
内蔵 固定 5コマ/秒 30-
1/8000
B
200-
6,400
(100- 25,600)
1,287
万画素
注:D750以降Wi-Fi搭載、D780以降Bluetooth搭載

もし10万円以下でニコンの一眼レフを購入したいのでしたら、D700の中古からになります。


【D600シリーズ】

D600シリーズはフルサイズの入門機としての役割を担っていますが、これといってスペックが見劣りする所はありませんので、とのかくニコンを使ってみたい方には良いかもしれません。

ただしモニターは固定です。


NIKON D610

NIKON D600

モデル 特徴 ストロボ モニター 連写 シャッター速度 ISO感度
(拡張)
画素数
D610
2013/10
D600の5.5コマ/秒から6コマ/秒に向上、3コマ/秒の静音連写モード追加、AWB(オートホワイトバランス)精度向上。 内蔵 固定 6コマ/秒 30
|
1/4000
B, T
100
|
6,400
(32- 25,600)
2,426
万画素
D600
2012/9
フルサイズ対応の廉価モデル。
フルHD(30P)にも対応。
内蔵 固定 5.5コマ/秒

D600シリーズも中古で10万円以下で購入できますが、試しに使う程度でしたらD3の流れを汲むD700の中古をお勧めします。


3. 系列外モデル

異色なのは、何と言ってもNIKON Dfでしょう。

このノスタルジックな外観を見て頂ければ、それだけでその価値が分かって頂けると思います。

 
    NIKON Df(フルサイズ)   Fuji Film X-T1(APS-Cサイズ)

この手のマニュアルの操作系を可能にしたカメラは、本機とフジフィルムのX-T1(APS-Cサイズ)の独擅場(どくせんじょう)と言えそうです。

Dfというニコンの番号体系から外れた製品名からも、この機種の特異性が伺えます。

いずれもその外観とは裏腹に、最新技術が詰め込まれているのが、隠れたヒットの要因ではないでしょうか?



NIKON Df(銀)

NIKON Df(黒)

モデル 特徴 ストロボ 連写 シャッター速度 ISO感度
(拡張)
画素数
NIKON Df
2013/11
ノスタルジックな外観を採用したハイアマチュア機。
画像系はNIKON D4を流用し高感度が特徴。動画機能は非搭載。
外付け 5.5コマ/秒 30-
1/4000
B, T
100- 25,600
(50- 204,800)
1,625
万画素

最近一眼カメラを携行するカメラ女子も増えてきましたが、こういうカメラを持つと(持っているだけで)かなり目立つのは間違いありません。

ただし本体だけで27万円もしますし、大柄ですので、どうみてもカメラ好きの高齢者しか買えそうもありません。

と昨年までは言っていたのですが、2016年9月になると本体価格が22~23万円に落ちていました。

それでもまだまだ高いのですが、少し一般のユーザーにも手が届きそうな価格になってきました。

なおこのモデルの場合、シルバーモデルの方が高いのが、ノスタルジックモデルの特徴を示しています。


ニコンレンズ群


ニコンのFマウントレンズは、60本(MFレンズ8本)もあります。

ですので、当然ながら明るい単焦点レンズも揃えてはいるのですが、残念ながら突出したものはありません。


35mm F1.4
14位

50mm F1.4
12位

85mm F1.4
5位

135mm F2.0
6位

180mm F2.8
8位

上の順位は市販単焦点レンズの中でボケ安い順番を表しており、強いて挙げれば85mm F1.4でしょうか。

もしかしたら、ニコンはポートレートの様な軟派の写真には余り興味がないのかもしれません。

と以前までは書いていたのですが、2016/8に105mm F1.4なるポートレート用の画期的なレンズを投入してきました。


105mm F1.4
2位

これは間違いなくキヤノンの85mm F1.2の対抗レンズと言っても良いでしょう。

またボケ量は市販レンズで8位なのですが、180mm F2.8の中古価格が5万円台なのが少々魅力です。

なおこれ以外にもFマウントのAPS-Cサイズ用のレンズが19本あり、キヤノンと違ってこれ等のレンズもフルサイズ一眼レフにも使用可能です。



ニコン/フルサイズ一眼レフ/デジタルカメラ便覧





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