決定的瞬間撮影方法
2021/04/24:発行
はじめに
突然ですが、クルマの空走距離をご存知でしょうか。
停止距離=空走距離+制動距離
クルマを運転中に危険を察知してからブレーキを踏むまでに、クルマが進む距離を指します。
その昔、教習所で習われたのではないでしょうか。
この空走距離ですが、その発生原因は人がアッと思ってからブレーキを踏むまで、0.6~1.5秒の遅延が発生するためです。
時速60kmで走行中、アッと思っても17mもそのまま走り続けているのです。
写真撮影の場合、ブレーキを踏む足ではなくシャッターボタンを押す指がアクチュエーターになりますので、それより多少早く反応するでしょうが、それでもアッと思ってシャッターボタンを押すまでに1秒前後の遅延が生じているのです。
更にシャッターボタンを押してから撮影が完了するまでカメラ側の遅延もありますので、ここぞと思った時にシャッターボタンを押した所で、その瞬間をとっくに逃しているのは間違いありません。
すなわち、普通に写真を撮っている限り決定的瞬間を撮る事は決してできないという事です。
このため、今時なら闇雲(やみくも)に連写でカシャカシャ撮り続ける事になるのですが、それでも撮影枚数が増えるだけで、そうそうウマい具合に決定的瞬間は撮れません。
そう考えると、ここぞと思った時にシャッターボタンを押すと、1秒前の写真が数枚撮れるのが理想と言えます。
そんな事は不可能だと思われるかもしれませんが、実はもう既に可能なのです。
プリ撮影
各社によって名称が異なりますが、それがプリ撮影機能です。
これはシャッターボタンを半押ししている間は、常時画像情報をバッファーに書き込んでおき、シャッターボタンを押すと、その瞬間より以前の写真をメモリーカードに保存してくれるという画期的な機能です。
ちょうどクルマのドライブレコーダが、運転中に常に数分間の画像をバッファーに読み込んでいて、何かの衝撃があったらその内容をメモリーカードに書き込みを行ない、決定的瞬間を録画できると同じ仕組みです。
ところがこの機能は、何故かAPS-Cサイズより小さい機種しかまだ搭載されていません。
OMD E-M1 Mark II プロキャプチャーモード |
LUMIX G9 PRO プリ連写機能 |
X-T3
プリ撮影 |
EOS M6 Mark II プリ撮影 |
その理由は電子シャッターを使うため、画像歪が気なるからなのでしょう。
ですがα1は電子シャッターのスキャン速度1/200秒を達成し、EOS R5やR6も1/60秒を達成していますので、そろそろフルサイズ機にも搭載しても良いのではないでしょうか。
ただし現在のプリ撮影機能は連写に主眼を置いていますので、それですと下手な鉄砲並みとは言わないまでも、やはりデータ量が増えてしまいます。
また人物写真程度でしたら、正にアッと思った1秒前の写真が数枚撮れているだけで、かなり歩留まりが上がります。
そんな訳で、いつかフルサイズ機にプレ撮影モードが追加されて、記録する枚数と遡る秒数が設定できる様になると、写真撮影のスタイルが一気に変わるかもしれません。