ミラーレス一眼には
普通の偏光(PL)フィルターが使える

2018/1:発行

目次


   1. はじめに
   2. 一眼レフには、なぜ円偏光フィルターが必要か
   3. ミラーレス一眼には、なぜ円偏光フィルターが必要ないのか
   4. 偏光フィルターのメリット
   5. 円偏光フィルターと偏光フィルターの性能の違い
   6. Kenkoの気になる記事
   7. まとめ

1. はじめに


偏光フィルターの撮り比べをしていたら、飛んでもない事に気が付きました。

恐らく写真を趣味にしている方でしたら、何方もデジタルカメラで偏光フィルターを使う場合、円偏光(CPL)フィルターが必要だと思われている事でしょう。

ところがどっこい。

ミラーレス一眼であれば、従来の偏光(PL)フィルターが使えるのです。

なぜミラーレス一眼では従来の一般的な偏光フィルターが使えるのか。

またそれが使えると、どんなメリットがあるのかを、簡単にお伝えしたいと思います。


2. 一眼レフには、なぜ円偏光フィルターが必要か


それでは先ず、なぜ一眼レフに円偏光フィルターが必要なのかをお伝えしたいと思います。

その理由は、一眼レフにはAF用センサーに光を導くためのサブミラーが付いているからです。


一眼レフカメラにはハーフミラーが付いている

ご存じの通り、偏光フィルターにはガラスや金属面の反射を抑える効果があります。


偏光フィルターを使うとガラスや金属の乱反射を抑えられる

このため偏光フィルターを装着すると、サブミラーからAFセンサーに当たる光を大幅に低下させ、AFがうまく働かない場合があるのです。

重要な個所なのでもっと正確に述べると、デジタル一眼レフに偏光フィルターを装着して(偏光効果を最大限にするために)フィルターを回転させると、フィルターの回転角度によってはハーフミラーからAFセンサーに当たる光を大幅にカットしてしまう場合があるのです。


偏光フィルターの回転角度によっては、AFセンサーに当たる光が少なくなる

このため、偏光フィルターの回転角度によっては、AFが問題なく動くときもあれば、全く動かない場合もあるという事です。

なお、AFが正常に動くときとそうでないときの確率は、(正確にはいえませんが)動かないときの方が少ないと言えます。

これは液晶テレビを偏光フィルターを回転させながら見ると、真っ黒に見えるフィルターの回転角度はかなり狭い領域になる事からも凡そ分かって頂けると思います。

ところが円偏光フィルターを使用すると、フィルターを通過して偏光した光の向きが時間と共に回転するので、AFセンサーへ当たる光は(フィルター無しと比べて)多少減るものの、AFは働き続ける事が可能になります。


3. ミラーレス一眼には、なぜ円偏光フィルターが必要ないのか


それに対してミラーレス一眼は、専用のAFセンサーは無く、代わりに撮像素子を使ったコントラストAF、もしくは撮像素子上に埋め込まれた像面位相差AFを採用しているため、ハーフミラーは存在しません。


ミラーレス一眼にはミラーが存在しない

ですので一般的な偏光フィルターを使っても、AFがその影響を受ける事は殆どありません。

なお殆ど無いというのは、偏光フィルターを使うと1~2段階ほど光量が低下するため、それによって多少AFの感度が鈍くなるという事です。


4. 偏光フィルターのメリット


それでは円偏光フィルターではなく、偏光フィルターを使える事のメリットをご紹介したいと思います。

と言っても誰でも思い付く事なのですが、とにかく偏光フィルターは円偏光フィルターより断然安いという事です。


Kenko PRO1D

Kenko Zeta

Quint CPL

K&F CPL

Kenko PL

一番左にあるKenkoのPRO1D CPLは高価な円偏光フィルターで、67mmサイズで7000円近くもします。

それで驚いてはいけません。

その隣のKenko Zeta Quint CPLに至っては、脅威の17000円で、安いレンズが1本買えそうな値段です。

とは言え、その隣の K&F Concept のC偏光フィルターは、同じ67mmサイズで1500円程度で購入できます。

撮り比べてみると、多少偏光効果はKenkoより劣る気もしますが、普通の撮影には十分使えます。

ただし、安いのにはそれなりの理由があって、殆どの場合コーティングが施されていないので、逆光で撮るとフレアーが発生する可能性があるので、ご注意願います。

そして最後は一般的な偏光フィルターです。

Kenkoは今更偏光フィルターを作る気は殆ど無い様で、アマゾンで調べてもサイズは37mm、43mm、52mmの3種類しかありませんでした。

またKenkoのHPで調べても、殆どが受注生産になっています。

となれば他社の偏光フィルターが断然お勧めになり、MARUMI カメラ用 フィルム専用 フィルター PL67mm が1700円と非常にリーズナブルな価格になります。


5. 円偏光フィルターと変更フィルターの性能の違い


それでは円偏光フィルターと変更フィルターの性能の違いですが、詳細はこちらを見て頂くとして、結論からすると安い変更フィルターは高価な円偏光フィルターと同じ、もしくは上の偏光性能を持っていると言えます。

ですので、ミラーレス一眼をお持ちの方は、安い変更フィルターを購入される事を強くお勧めします。


6. Kenkoの気になる記事


さてミラーレス一眼においては良い事づくめの偏光フィルターですが、気になる事が1点あります。

それは以下のKenkoの公式HPにある以下のFAQの回答です。


何でしょう、この失礼な回答は。

使えるかどうか訊いているのに、お勧めしませんとあります。

おまけに画質に影響があるとしながら、どういう影響があるかも書かれていません。

だったらCPLならば、その影響が無いと言えるのでしょうか?

ちなみミラーレス一眼(ソニーα7R II)に偏光フィルターを装着して撮った写真が以下になりますが、どんな影響があるのでしょうか?


ミラーレス一眼(ソニーα7R II)で撮影した偏光フィルター無し(左)と有り(右)の写真

当然ながらAFも問題なく作動します。

どんな影響があるか、是非教えて頂きたいものです。


7. まとめ


①ミラーレス一眼であれば、円偏光フィルターではなく、偏光フィルターを使ってもAFは正常に働く。

②円偏光フィルターより、偏光フィルターの方が光学特性は良く、価格も安い。

③KenkoのFAQにはミラーレス一眼には円偏光フィルターを勧めているが、根拠が全く示されていない。

④以上の事より、ミラーレス一眼には偏光フィルターを使うのが合理的である。



ミラーレス一眼には普通の偏光(PL)フィルターが使える




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