誰にでも簡単に撮れる
カメラで星空を撮る方法

2015/6:発行

はじめに


さあ、夜空にまたたく星達を撮ってみましょう。


さそり座と天の川 at 6月中旬 on 渡嘉敷島(F4.0 30秒 ISO3200 15mm)

とは言っても、ご自分のカメラで星なんて絶対に撮れないと思われている方も多いのではないでしょうか?

ところが最近のカメラは非常に性能が良くなってきましたので、マニュアルフォーカスとマニュアル露出のできるでしたら、きちんと設定すれば間違いなく星空を写せるのです。

とは言え、何も知らずにいきなり夜空に向かってシャッターを切っても、真っ暗な画像が写るだけです。

という訳で、ここではお手持ちのカメラで星空を撮影する方法をご紹介します。

カメラの種類によって多少設定方法が異なるのですが、是非試して頂ければと思います。


星空撮影の概要


詳細をお話する前に、星空撮影の概要をお話しておきます。

星さえ見えていれば、カメラを以下の様にセットすれば、間違いなく星は写ります。

①ISO感度を3200にする。

②絞りをF4にする。

③シャッタースピードを30秒にする。

④ピントを∞(無限遠)にセットする。

⑤カメラを三脚にセットして、星空に向かってシャッターを切る。


ここで是非、以下の3点について覚えて頂ければと思います。

ISO3200、絞りF4、シャッタースピード30秒

そうすれば、本書を見なくてもいつでもどこでも星空を写せます。

本サイトも色々なカメラやレンズで撮影してみましたが、この組み合わせが一番妥当(明るくもなく、暗くも無い中心的)な露出だと思います。

これを中心に、周囲の環境やご自分のイメージに合わせてアンダーやオーバーの露出にして頂ければと思います。

なお一部のネットの記事に、安いカメラだと写らない、イメージセンサーが小さいと不利だ、レンズの焦点距離が違うと露出も異なる等の記述も見られますが、それらはとんでもない間違いです。

どんなに小さくても、どんなに安くても、どんな焦点距離のレンズ(広角であっても望遠)であっても、ISO3200、絞りF4、シャッタースピード30秒をセットできれば、同じ明るさで星空は写ります。


適正露出について

折角ですので、ここで適正露出についてお話しておきたいと思います。

先ず露出(exposure)とは、カメラのフィルムやカメラのイメージセンサーに光を当てる事を指します。

そして適正露出とは、被写体が暗くもなく、かと言って明る過ぎる事もない、丁度良いアンバイで写っている事を指します。

その昔(今もまだありますが)、フィルムケースに以下の様な表が付いているのをご覧になった事はないでしょうか?



これはそのフィルム(この場合ISO100)を使用する場合における、適正となるシャッタースピードと絞り値を示しています。

例えば快晴の屋外で写真を撮る場合、シャッタースピードを1/250秒にして、絞りをF11にしておけば、間違いなく綺麗な写真が撮れるのです。

そしてこれは、(上記ラベルに注意書きが一切記ない様に)使用するカメラやレンズの種類には全く関係しないのです。

露出と聞くとかなり難しいものと思われるかもしれませんが、単にISO感度とシャッタースピードと絞りの組みあわせの事で、その目安となる数値を覚えてしまえば、露出計が無くても誰でも簡単に綺麗な写真が撮れるのです。

適正露出は、レンズの焦点距離やイメージセンサーの大きさで変わる事は、決してない事をご理解頂けましたでしょうか。



星空撮影の準備


さて概要を分かって頂いた所で、実際に星空撮影の準備をしましょう。

必要な物は、以下の4点です。

1: カメラ


先ずはカメラなのですが、ご自分のカメラが星空を撮影できる性能を有しているかどうか、念のために確認しておきましょう。

星空撮影に必要な性能は以下の通りです。

項目 撮影可能条件
マニュアル露出 可能
マニュアルフォーカス 可能
シャッタースピード できれば30秒以上
ISO感度 できれば3200以上

なおシャッタースピードが15秒、あるいはISO感度が1600でも、多少暗くなりますが星空を撮影する事は可能ですので、試しに撮ってみる事をお勧めします。

なお少々古いのですが、以下の様なレンズ交換可能なミラーレス一眼でしたら、上記条件を満足していますので、間違いなく星空を撮影できます。

       
Panasonic    Olimpus      Canon         Sony       Pentax
GM1S      E-PL6      EOS M3      α5000       Q7

   
 Nikon     Fuji Film
Nikon1 J5    X-A2

またなるべく安いカメラとなったら、以下の様な2012年以降の中古のカメラが良いかもしれません。
またレンズが交換できなくても、以下の様な少し高価で高機能のコンパクトカメラでも、星空の撮影が可能です。

       
Canon     Fuji Film     Panasonic     Nikon     Olympus
 G16       XQ2S      LX100      P7800       XZ-1 

ただし以下のカメラは、残念ながら星空の撮影は不可能と思った方が良さそうです。

種類 星空撮影不能の理由
コンパクトカメラ マニュアル露出、及びマニュアルフォーカスができない。
スマートフォン 同上
昔のカメラ
(おおよそ2010年以前)
最大ISO感度が400程度で3200に達しない。


2: レンズ


レンズはお手元のカメラに装着されている物で可能ですが、理想を言えば広角で明るいレンズの方が星空撮影には向いています。

なお本書ではF4.0以上の明るさのレンズを使う事で記述しています。

またズームレンズの場合、広角側にした方が星や周囲の景色がたくさん写りお勧めです。


3: 三脚


普通の記念撮影でしたらカメラをテーブルの上に置けば良いのですが、斜め上を撮るにはどうしても三脚が必要になります。

もしお持ちでなければ、購入が必要になります。

         

ただし地面に置いて、上を向かせるだけですので、上記の様に小型の物で十分です。

4: 電池の充電


ご存じかもしれませんが、昼間の撮影より夜間の撮影の方が断然電気を多く消費します。

その理由は、少ない光量を電気を一杯使って増幅するからです。

おまけにその状態を長時間続けますので、電池がどんどん消耗する事になります。

このため、星空撮影の前には、電池をフル充電しておきましょう。

なおフル充電さえしておけば、確実に数十枚撮影できますので、これだけのために予備の電池を買う必要はありません。




カメラの事前設定


星空を撮影するには、下記します様に全部で7項目ものカメラの設定を変えなければなりません。

暗い所で行うと手間取りますので、事前に明るい所でやっておきましょう。

1: 長時間ノイズ低減の解除


夜間の長時間露光においては、長時間ノイズ低減の設定を行うべきなのですが、先ずはそれを解除します。

その理由は、撮影時間が非常に長くなるからです。

そもそも長時間ノイズ低減とは、長時間撮影時の画像の中には電気的な余分なノイズが入っているので、被写体撮影後に真っ黒の画像を同じ時間だけ撮影して、そのノイズ分を被写体撮影時の画像から差し引いてやろうというものです。

 
ノイズ低減無し            ノイズ低減有り

ですから、もし30秒間の露光を行うと、同じく30秒間の真っ黒画像の撮影が行われますので、トータルで1分間何もできなくなってしまいます。

本番撮影ならしかたがないのですが、先ずはピントや露出や構図の確認をしなければいけない時に、この余分な30秒は甚だ無駄です。

さらに真っ黒画像を撮影しますので、電池もその分多く消耗します。

という訳で、長時間ノイズ低減を解除します。

解除方法は機種毎に異なりますが、恐らくメニューの中に”長時間ノイズ低減”、あるいは”長秒時ノイズ低減”という項目があると思いますので、その設定をOFFにします。


2: 2秒タイマーのセット


次に2秒タイマーをセットします。

これはシャッターボタンを押してから2秒後に撮影を開始する機能で、シャッターボタンを押したときの振動で、星空がブレる事を防止してくれます。

この設定も機種毎に異なりますが、恐らく背面のコントロールホイールにタイマーのマーク(下図の◀印部)が付いたボタンがあると思いますので、それを押して2秒タイマーを設定します。


   
  タイマーのマーク     コントロールホイール

なおこれも手間でしら、スキップして頂いて構いません。

その代わりシャッターボタンを押すときは、そっと押して、それからそっと指を離して下さい。


3: ホワイトバランスの設定


ホワイトバランスは恐らくデフォルトのままでしたらオートになっていると思いますので、そのままで構いません。

ただし実際星空を撮ると、赤みを掛けたかったり、逆にもっと青みを掛けたくなったりします。


WB: オート          WB:蛍光灯          WB:太陽光

その時に備えて、ホワイトバランスの調整方法も事前に確認しておきましょう。

もし赤味を付けたいのでしたら、色温度を低めの4000K前後にするか、蛍光灯を選択します。

もし青味を付けたければ、太陽光、日陰、曇天を選択します。

ホワイトバランスの設定も、メニュー画面の中にあると思います。


4: 手ブレ補正機能の解除


三脚を使って撮影する場合、手ブレ補正機能は却ってブレの原因になりかねません。

このため手ブレ補正機能の付いたレンズを付けている場合は、この機能をOFFにします。

この設定は、レンズやカメラ本体に切り替えスイッチがあったり、メニューから呼び出したりと様々ですので、もしどうしても分からなければマニュアルを調べてみて下さい。

 
レンズの手ブレ補正スイッチ    メニューの手ブレ補正切り替え


5: マニュアルフォーカスの設定


次はいよいよ、マニュアルフォーカスの設定です。

星空は、暗過ぎてカメラのオートフォーカスが正しく働かないため、マニュアルフォーカスでピントを合わせる必要があります。

今までの設定は単純にON/OFFの設定変更だったのですが、これはピントの調整を行うので、一番の難所と言えます。

また一昔前のカメラでしたら、レンズにピントリングと距離目盛が付いていたので、簡単に無限遠(∞)に設定できたのですが、今はAF(オートフォーカス)が主流のため以下の手順が必要です。

先ずメニューの中にフォーカスモードという設定があると思いますので、その中のマニュアルフォーカスを選択します。


次になるべく遠くにある物(建物、電柱等)にレンズを向け、ピントリングを回して(機種によってはレバー操作やダイヤル操作の場合も有ります)、モニター上に対象物がクッキリ写る様に調整します。

なお機種によっては、以下の様にピント合わせの領域を拡大する機能がありますので、活用してみて下さい。


なお今回は前準備の設定ですので、撮影現場に着いたら再度遠くの明るい物にカメラを向けてピント調整を行なった方が賢明です。

ピントが外れていると、折角の写真が台無しになりますので、この調整は慎重に行いましょう。


6: マニュアル露出設定


次は、マニュアル露出の設定です。

カメラの性能は非常に良くなってきており、今では殆どの場面は自動露出で撮れる様になってきました。

ですが、さすがに星空は光量が少なくて自動露出ではうまく撮れ切れません。

このため、以下の手順でマニュアル露出にして、絞りをF4.0、シャッタースピードを30秒にセットします。


先ず撮影モードダイヤル(機種によってはメニューから設定する場合も有り)を回して、M(マニュアル)を選択します。


次に、ダイヤルもしくはボタンを操作して、絞りをF4.0、シャッタースピードを30秒にセットします。


7: ISO感度の設定


ISO感度とは、一昔前のカメラのフィルムの感度に当たります。

この数字が大きければ大きいほど、ほんの小さな光でも写す事ができますが、余りに大きくするとその幣害として前述しました画像に電気的なノイズが乗って、ざらついた画像になります。

ですので何事もほどほどが肝要です。

星空の場合、メニューの中からでISO感度設定を選択して、ISO感度を3200に設定します。


8: 動作確認


設定が完了したら、最後に以下の手順で動作確認を行いましょう。

①どこか暗めの所(照明を消した室内、あるいは押し入れの奥)にカメラを向けてシャッターを切ります。

②シャッターを押して2秒後にシャッターが開いて、30秒後にシャッターが閉じて真っ白な画像(もしくは薄らと何か写っている画像)がモニターに表示されれば、設定OKです。


9: フィルターを外してフードを付ける

2020/02/29:追記

従来は以上で事前準備は終わりだったのですが、重要な事が抜けていました。

それは、先ずフィルターを付けているのでしたら、外してください。

もし高価なフィルター(反射率0.03%以下)ならば付けておいても構いませんが、それ以外のフィルターでしたら外す事を強くお勧めします。

特に中国製の安いフィルターは、全くコーティングされていない様な物があり、絶対に装着してはいかません。

その理由ですが、星の撮影は非常に弱い光を増幅するため、周囲の微弱な光がレンズに入るとそれをフィルターが散乱させてしまい、コントラストを低下させてしまうからです。

更に安い中国製のフィルターは、微小なムラまであって、点(星)が流れてしまう事まであります。

星を撮るときは、フィルターを外しましょう。

また同じ理由でレンズフードも必ず付けましょう。


星空撮影


準備が完了したら、実際に以下の手順で星空の撮影を行いましょう。

①カメラを三脚にセットしたら、もう一度遠くの明るい物(例えば月や、遠くの街灯)にカメラを向けてピントがあっているかどうか確認します。

②もし合っていなければ、前述のマニュアルフォーカスの設定を再度行います。

③変わっていないと思いますが、もう1度絞りがF4.0でシャッタースピードが30秒で、ISO感度が3200になっている事をモニターで確認します。

④カメラの設定はそのままで、カメラを撮りたい星空に向けて、シャッターを切ります。

⑤もし撮影された画像が暗ければ、シャッタースピード調整ダイヤルを回してシャッタースピードを遅く(例えば60秒に)するか、絞り調整ダイヤルを回して絞りを開ける(例えばF2.8にする)か、メニューのISO感度設定でISO感度を上げ(例えばISO6400にし)ます。



F4.0             F4.0             F4.0
15秒             30秒             30秒
ISO3200           ISO3200           ISO6400
(EV-5.0)           (EV-6.0)           (EV-7.0)

⑥もし撮影された画像が明るければ、シャッタースピード調整ダイヤルを回してシャッタースピードを早く(例えば15秒に)するか、絞り調整ダイヤルを回して絞りを絞る(例えばF4.0にする)か、メニューのISO感度設定でISO感度下げ(例えばISO1600にし)ます。

⑦上記④~⑥を繰り返して適正露出になったら、色見を前述のホワイトバランスを変えて調整します。



もし青味を付けたいのでしたら、色温度を低めの4000K前後にするか、蛍光灯を選択します。


   WB: オート           WB:太陽光        WB:蛍光灯(昼白色)

もし赤味を付けたければ、太陽光、日陰、曇天を選択します。

その他各種設定がありますので、色々変えて撮影しておく事をお勧めします。

⑧好みの色味になったら、前述の長秒時ノイズ低減の設定をONにして、最終画像を撮ります。

いかがでしょうか?

素敵な写真が撮れましたでしょうか?


星空撮影モード解除


星空の撮影が終了したら、最後に星空撮影モードを解除しておきましょう。

さもないと翌日写真を撮ると、ピントは合わないし、画像は真っ白になったりと面食らう事に成ります。

①セルフタイマーを解除する。

②ホワイトバランスを”オート”に戻す。

③手ブレ補正機能を”ACTIVE/ON”にする。

④フォーカスモードを”AF-A”にする。

⑤露出モードをマニュアル以外(例えば”Pプログラムオート”或いは”おまかせシーン”等)にする。

⑦ISO感度を”オート100-3200”に変更する。


なお設定変更の詳細手順については、上段の手順書を参考に願います。




カメラで星空を撮る方法





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