星空ポートレートにおいて
人物と星の両方にピントを合わせる方法
2021/05/20:発行
目次
1. はじめに
下は、毎度お馴染みの星空ポートレートの写真です。
星空ポートレート(24mm、ISO8000、15秒、F4)
写真が小さくて恐縮ですが、拡大すると人物にはピントが合ってはいるものの、星は若干ボケて点ではなく小さな丸になっています。
それではこんな時、人物と星の両方にピントを合わせるには、どうすれば良いのでしょうか?
最も手っ取り早いのは、絞りを絞って被写界深度を深くしたい所ですが、ISO感度は既に8000にまで上げていますし、シャッタースピードも15秒ですので、これ以上遅くするは気が引けます。
また同じく被写界深度を深くするため、更に超広角のレンズを使ったり、被写体から離れたりすれば良いのですが、それでは人物がどんどん小さくなってしまいます。
星と人物にピントを合わせ様とすると、どうしても人物が小さくなる
実際星空ポートレート写真の大半において人物が小さいのは、これが大きな理由なのでしょう。
そんな訳で、こんな時(人物とカメラの距離が近い時)に人と星の両方にピントを合わせて撮る、誰も知らない画期的な方法をご紹介したいと思います。
2. 裏技
その方法ですが、APS-Cサイズにクロップすれば良いのです。
例えば上の写真の場合でしたら、被写体までの距離は2m程ですので、被写界深度は0.6m~1.3mです。
仮にピント位置を4.5mに設定しても、被写界深度は2m~17mで人物は被写界深度内に入るものの、残念ながら星は被写界深度内には入りません。
ではクロップを使うとどうなるでしょう。
その場合、焦点距離16mmのレンズを使えば、フルサイズの24mmと画角になります。
そして、ピント位置を3.4mに設定すれば、絞りはF4のままで被写界深度は何と1.7m~∞になるのです。
すなわち同じ画角の同じ露出設定でありながら、人物をもっとアップにしても人物と星の両方にピントを合わせる事ができるのです。
これはかなり美味しい話ではないでしょうか。
更にです。
もし絞りをF2.8にできるとしたら、ピント位置を4.6mすれば被写界深度は2.3m~∞と、フルサイズのF4より被写界深度を深くできるのです。
となると、シャッタースピードを1段早くしてブレを小さくするか、ISO感度を1段下げてノイズを低減する事もできるという訳です。
これでクロップのメリットをご理解頂けましたでしょうか。
3. なぜ?
それではなぜクロップしたらこんなに美味しい話になるのか、簡単にご説明しておきましょう。
それは、撮像素子が小さくなると、同じ画角と同じ絞り値であっても、被写界深度が深くなるからです。(詳細はこちら)
スマホで撮った写真は、背景までピントが合うのはこれが理由です。
4. どうして?
さて、ここまでお話すると、だったら何もわざわざフルサイズ機をクロップしないで、始めからAPS-Cサイズ機を使えば良いのに、と思われないでしょうか。
全く以ってその通りなのですが、その様なAPS-Cサイズ機が存在しないのです。
例えば2400万画素のフルサイズ機をAPS-Cサイズにクロップしたら、1000万画素のAPS-Cサイズ機と同じになります。
ところが今どきのAPS-Cサイズ機はどれも2400万画素以上で、その様な低画素で高感度のカメラがないからです。
どこかのメーカーからこの様なカメラを出してくれれば良いのですが、難しい様です。
5. まとめ
それでは最後にまとめです。
①星空ポートレートにおいて、人物と星の両方にピントを合わせたいのなら、クロップが有効である。
②この理由は撮像素子が小さくなると、同じ画角と同じ絞り値であっても、被写界深度が深くなるからである。
③もし小サイズ機において、画素数が小さくて高感度なカメラがあれば同様の写真が撮れるのであるが、現状その様なカメラは見当たらない。
なお今まではクロップを前提にお話ししましたが、フルサイズで撮った写真を後でAPS-Cサイズにトリミングしても同じ事になります。
ただしトリミングするとなるとフルサイズの超広角レンズが必要なのに対して、クロップですとAPS-Cサイズの超広角レンズで済むので、その分お安くなるという訳です。