超広角で撮れる最強水中カメラはどれか?
2020/03/03:発行
2020/04/04:更新
2020/04/04:更新
はじめに
水中写真を何度か撮った事がある方でしたら、水中カメラにとって一番大事な性能は何だと思われるでしょうか。
水中では暗くなるので感度の高い方が良いとか、被写界深度が深い方が良いとか、耐水深度とか、操作性とか、小型軽量とか、ストロボとか多々あるでしょうが、やはり優先度が最も高いのは超広角レンズが使える事ではないでしょうか。
実際フィルム時代の水中写真は、ニコンの水中カメラであるNikonosと15mmレンズ(もしくは20mmレンズ)の独擅場と言っても良いほどでした。
名機Nikonos Vと羨望の的だったUW 15mm F2.8レンズ
特に水中では被写体が大きく見える(焦点距離が4/3倍に伸びる)ので、下の表にあります様に陸上で超広角でも水中では並みの広角レンズになってしまいます。
場所\種類 | 広角 | 超広角 | 魚眼 | ||
地上 | 24mm | 21mm | 18mm | 15mm | 12mm |
水中 | 32mm | 28mm | 24mm | 20mm | 16mm |
陸上と水中におけるレンズの焦点距離の変化
ですので、最低でも18mm(水中で24mm)程度、理想を言えば15mm(水中で20mm)以下の超広角レンズが欲しい所です。
という訳で、今回は超広角撮影が可能な水中での最強カメラを探ってみたいと思います。
毎度の事ながら予想外の結末になりますので、お楽しみに。
フルサイズ
そうなると、真っ先に思い付くのはフルサイズのカメラとそれ用水中ハウジングでしょう。
これでしたら、超広角レンズはふんだんにありまし、ISO感度もその気になれば6400程度までアップできます。
しかしながら、水中ハウジングも大きいですし、そもそもカメラ本体も水中ハウジングの価格も高くて、仕事にでも使うのでなければ、ちょっとやそっとでは手も足も出ません。
と言う訳で、早々に退散して次にいこうと思ったのですが、ちょっとお待ちください。
何ともっと廉価な水中ハウジングがありました。
それが中華メーカーであるSea FrogsのSONY α7 III/α7R III用の水中ハウジングケース です。
ご覧の様にハウジングのお値段は73,800円ですので、先ほどのSEA&SEAの1/6程です。
それで超広角レンズ用のドームポートまで付いているのですから、驚きです。
そしてこのドームポートを付けると、以下のレンズが使えるそうです。
Sony FE 12-24mm F4G (*1)
Sony FE 24mm F1.4 GM (*2)
Sony Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA (*2)
Sony FE 16-35mm F/4 ZA OSS (*1)
Sony FE 24-70mm F/4 ZA OSS (*3)
Sony FE 55mm F1.8 ZA Carl Zeiss Sonnar T* (*2)
Sony FE 85mm F1.8 (*2)
Sony FE 28mm F2 + Fisheye Converter SEL057FEC (*4)
Sony FE 28mm F2 + Ultra Wide Converter SEL075UWC (*2)
Sony FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS (*1)
Tamron 17-28mm F2.8 Di III RXD (*5)
*1:Autofocus only, Manual zoom gear included
*2:No manual focus available
*3: Autofocus only, Manual zoom gear -purchase here)
*4:No manual focus available.Minor vignetting effect
*5:Autofocus only, No manual zoom gear
Sony FE 24mm F1.4 GM (*2)
Sony Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA (*2)
Sony FE 16-35mm F/4 ZA OSS (*1)
Sony FE 24-70mm F/4 ZA OSS (*3)
Sony FE 55mm F1.8 ZA Carl Zeiss Sonnar T* (*2)
Sony FE 85mm F1.8 (*2)
Sony FE 28mm F2 + Fisheye Converter SEL057FEC (*4)
Sony FE 28mm F2 + Ultra Wide Converter SEL075UWC (*2)
Sony FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS (*1)
Tamron 17-28mm F2.8 Di III RXD (*5)
*1:Autofocus only, Manual zoom gear included
*2:No manual focus available
*3: Autofocus only, Manual zoom gear -purchase here)
*4:No manual focus available.Minor vignetting effect
*5:Autofocus only, No manual zoom gear
このレンズ群の中で目を惹くのは、FE 12-24mm F4とFE 16-35mm F4でしょう。
FE 12-24mm F4 |
FE 16-35mm F4 |
これですと、水中でも16mmや21mm相当の超広角レンズとして使用できます。
ただし如何せんレンズだけでも値段が10万円以上と高いのと、両レンズとも開放値がF4と暗めなのが気になります。
そこで本書がお勧めなのが、FE 28mm F2とこのレンズ専用のフィッシュアイコンバータ(SEL057FEC)の組み合わせです。
α7 III |
FE 28mm F2 |
ウルトラワイドコンバータ SEL075UWC (21mm) |
フィッシュアイコンバータ SEL057FEC (16mm) |
この二つを組み合わせる事によって、16mmの魚眼レンズ(水中で21mm)として使えるのです。
オマケにレンズの開放値はF2のままで、お値段も10万円を切りますので、かなりお勧めです。
気になる総額は、38万円です。
それでもまだ高いな、と思われる方に本書独自の裏技をご紹介しましょう。
ご存知かもしれませんが、ソニーのミラーレス一眼は、フルサイズもAPS-Cサイズも同じレンズマウントを使用しています。
このため、画素数は減るものの、その気になればフルサイズのカメラに価格の安いAPS-Cサイズ用の超広角レンズも使えるのです。
E 10-18mm F4 (換算15-27mm) |
E 16mm F2.8 (換算24mm) |
ウルトラワイドコンバータ VCL-ECU2(換算18mm) |
フィッシュアイコンバータ VCL-ECF2(換算15mm) |
この中でお勧めなのが、これまたE 16mm F2.8(フルサイズ換算24mm)とフィッシュアイコンバータVCL-ECF2の組み合わせで、これですとフルサイズ換算で15mm相当(水中で20mm)の超広角レンズになります。
この場合の総額は33万円と僅かではありますが、お安くなります。
ただしフルサイズのレンズより全長が短くなるため、水中ハウジングに入るのは間違いありませんが、レンズが奥まってしまいケラレが発生する可能性がある事ご容赦願います。
APS-Cサイズ
次はAPS-Cサイズです。
これも中華Sea Frogsから調べてみたいと思います。
すると早速見つかったのが、やはりソニーのα6000シリーズ用のWaterproof housing for Sony A6xxx series ($522.00 USD)です。
この水中ハウジングは、前段でお伝えしたソニーのAPS-Cサイズ用のレンズが使えるので、カメラを含めたトータルの値段はフルサイズより断然(半分近く)安くなる筈です。
SONY α6400 |
E 16mm F2.8 (換算24mm) |
フィッシュアイコンバータ VCL-ECF2(換算15mm) |
そう思って水中ハウジングを7万円で計算してみると、ぎりぎり20万円に収まります。
これはかなり魅力的ではないでしょうか。
ただしこの水中ハウジングは、日本国内では発売していない様なので、更に別を探してみると下のモデルがありました。
ただしこの水中ハウジングの場合、搭載できる一番の広角レンズはE 16-50mm F3.5-5.6 (水中でフルサイズ換算32-100mm)ですので、どうみても役不足です。
これ以外にも以前幣サイトでご紹介した、キヤノンの防水ジャケット(WP-DC56)もありますが、これもカメラのレンズが15-45mm(水中でフルサイズ換算32-96mm)ですので、全く物足りません。
という訳で、残念ながらAPS-Cサイズで超広角レンズをサポートしている水中ハウジングは、海外から取り寄せない限り無さそうです。
マイクロ4/3サイズ
続いては、オリンパスとパナソニックが主導しているマイクロ4/3です。
ここは、超広角レンズをサポートした水中ハウジングがあります。
というのは、オリンパスが以前から水中写真にも力を入れているからです。
上の器材は見るからに高そう(実際に総額36万円)なのですが、このセットがあれば取り敢えず水中で21mm相当の撮影が可能です。
なお下にご紹介する一つ前のモデルでしたら、中古で手に入れられるかもしれません。
PT-EP13 |
PPO-EP02 |
E-M5 Mark II |
とは言え、やはり仕事で使うのでなければ、簡単には手が出ません。
1型サイズ
続いては、1型サイズを見てみましょう。
1型サイズの撮像素子を搭載したカメラ用の水中ハウジングや、水中カメラは下の様に結構あります。
MPK-URX100A 防水ケース |
DSC-RX100Va 24-70mm F1.8-2.8 |
RX0 II 24mm F4 |
WP-DC55 防水ケース |
PowerShot G7 X MII 24-100mm F1.8-2.8 |
ところが悲しい事に、どれもレンズも広角側がフルサイズ換算で24mm(水中で33mm)なのです。
これのどれか1台でも、フルサイズ換算で広角側15mm(水中で20mm)程度の機種があれば、どんなにすばらしい事だったでしょう。
こんな事をお伝えしても全く意味がないのですが、実は超広角レンズ(18mm/水中で24mm)を搭載したの1型サイズのカメラはあったのです。
市場に投入される事が無かったNikon DL18-50 f/1.8-2.8
それが上のNikon DL18-50 f/1.8-2.8です。
あったと言うと少々語幣があるかもしれませんが、発売直前に熊本地震があり、更に当時のニコンの経営環境等から発売中止になってしまいました。
これに水中ハウジングがあれば、水中で24mm相当の写真が気軽に撮れたのですから、それはそれは残念な事です。
残念と言えば、ついでにもう一台ご紹介しておきましょう。
それが下にあります、同じくニコンのレンズ交換式水中カメラのNikon 1 AW1です。
フルサイズ換算34-74mmのズームレンズを搭載したNikon 1 AW1
これも既に生産中止になってしまいましたが、もしまだこのNikon 1シリーズが健在でしたら、もしかしたら水中でも使える超広角レンズも出ていたかもしれません。
フィルム時代には水中カメラの大御所であったニコンなのですが、今は殆どその面影はありません。
1型未満
1型未満の撮像素子を搭載する水中カメラは、以下の様に健在です。
OLYMPUS Tough TG-6 |
Nikon COOLPIX W300 |
FUJIFILM XP130 |
Nikon COOLPIX W150 |
PENTAX WG-10 |
ところが、搭載レンズの広角側はどれも押し並べて25~28mm程度(水中で33~37mm)しかありません。
他社機と差別化するために、もっと超広角寄りのレンズを搭載したモデルを出せば良いのにと思うのですが、聞いては頂けない様です。
と思っていたら、ありました。
それがアクションカメラ、或いはウェアラブルカメラと呼ばれる小型カメラです。
HERO6 |
HERO7 |
HERO8 |
KeyMission 170 |
Campark X20 |
これらはいずれも、フルサイズ換算で15mm程度の固定焦点レンズを搭載していますので、水中でも20mmの超広角撮影をピント合わせに気を使う事もなく、気楽に楽しめます。
またISO感度も、何とかISO1600程度まででしたら使用可能です。
ついでにお伝えしますと、GoPro用に中華製のドームポートがいくつか発売されています。
これを使うと、ネットで良く見る半水中写真が撮れますので、お勧めです。
なおこのジャンルにおいては、ご存知の様にGoProとそれを真似た中華製アクションカメラが市場を独占しているのですが、何とあのニコンからも(国産で唯一)似た様なモデルを出していたのです。
ただしこれ(KeyMission 170)も、通信系のファーム等に問題を抱えたまま既に生産中止になっています。
水中用レンズプロテクターを装着したニコンのKeyMission 170
ただし水中撮影に特化すればそれなりに撮れますので、ニコン好きの方にはお勧めではないでしょうか。
と思って調べてみると、意外に優れものではありませんか。
レンズはフルサイズ換算で15mm相当ですので、これでしたら水中でも20mmの超広角となり、このままで水深10mまで使用できます。
有効画素数が800万画素と聞いて、もしかしたらISO3200まで使えるかもしれないと思ったのですが、残念ながら総画素数が1200万なので、ISO感度は1600まででした。
とは言え、4Kモニターで見る限りフルサイズの水中カメラと比べても遜色のない写真が撮れるのは間違いありません。
そして何と言っても、本機のレンズがはじめにでご紹介した、UW-Nikkor 15mm F2.8と同じスペックだというのが泣かせるではありませんか。
UW-Nikkor 15mm F2.8(水中で20mm)
恐らくニコンの技術者も、このレンズを少なからず意識したのは間違いないでしょう。
さらに嬉しい事に、UW-Nikkor 15mm F2.8は水中専用で陸上ではピントが合わず使えなかったのですが、本機(KeyMission 170)は水中用レンズプロテクターを装着すれば陸上でも水中でも使えるのです。
既に生産中止ですが、まだ新品在庫で3万円以下で購入可能です。
という訳で、本書の選ぶ超広角で撮れる最強水中カメラはこのKeyMission 170にしたいと思います。
どうしてどうして、NIKONOSのDNAはまだまだ生き残っています。
スマートフォン
もしかしたら、ここまでお読み頂いた方で、この夏は前出のアクションカメラを持って水中写真でも撮ってみようと思った方はいらっしゃらないでしょうか。
そんな貴方に、耳寄りな情報をお知らせしたいと思います。
最近のスマートフォンには複数のカメラが搭載されてきました。
iPhone11 Proはフルサイズ換算で13mm(水中で17mm)の超広角レンズを搭載
例えばiPhone11 Proにおては、何とフルサイズ換算で13mmの超広角レンズを搭載したのです。
これでしたら、水中で何と17mmもの超広角になりますので、前出のアクションカメラを凌ぐダイナミックな写真が撮れます。
ですので、これを市販の防水ジャケットに入れれば、それだけで超広角レンズ搭載の水中カメラになります。
ただしこの場合、水圧が直接スマホに掛かるので、さすがに深く潜る事はできませんが、シュノーケリング程度でしたら楽勝です。
既に超広角レンズ搭載の最新スマホをお持ちの方でしたら、断然お勧めです。
まとめ
それではまとめです。
①フルサイズにおいては、Sea Frogsのα7 III用の水中ハウジングケース がお勧めである。
ただしゼロから揃えるとなると、一式で軽く30万円を超える事を考えると、余程の目的がない限り余り現実的とは言えない。
②APS-Cサイズにおいても。サードパーティー製の水中ハウジングがいくつか存在するものの、国内で入手可能な廉価版においては水中で24mm以上の広角で撮れる適当な物は見当たらない。
③マイクロ4/3サイズにおいては、オリンパスから本格的な水中ハウジングが発売されているが、やはり高価である。
④1型サイズにおいては、複数水中ハウジング等が発売されているが、いずれも水中で33mmの広角と凡庸である。
④1型未満においては、国内各社から水中カメラが発売されているものの、やはり広角側は凡庸である。
⑤ただしアクションカメラは15mm(水中で20mm)前後の超広角レンズを搭載しているので、小型の水中カメラとしてはうってつけとも言える。
⑥更に最近のスマートフォンにおいては、13~16mm(水中で17~21mm)の超広角レンズを搭載しているモデルがあるので、この場合防水ジャケットに入れればシュノーケリング程度であれば十分撮影を楽しめる。
⑦本書の一押は、水中でも20mmの超広角で撮れて価格も安いニコンのKeyMission 170である。
水中用レンズプロテクターを装着したニコンのKeyMission 170
いつか本機で撮った水中写真をお見せしたいと思いますので、お楽しみに。