EOS Rのがっかりした点27連発

2019/06/20:発行
2020/02/16:最終更新

目次



はじめに


ついに手に入れましたEOS R。

概ね期待通りの性能だったのですが、いくつかがっかりした点も少なからずあります。

恐らくキヤノンのカメラ部門(イメージコミュニケーション事業本部)も、後継機開発のためにEOS Rの問題点を調査している事でしょうから、これを読んで頂く事を期待して、いくつか指摘をしておきたいと思います。

なお詳細は後ほどお伝えしますが、良く言われるEOS Rにボディー内手ブレ補正が無いや、メモリーカードスロットが1基しかないと言うのは極めて妥当な判断なので全く取り上げていません事、ご容赦願います。



1. やっぱり右肩にほしい電源スイッチ


先ず最も気になる点が、電源スイッチが左肩にあって、片手で操作できない事です。


EOS Rの電源スイッチは左肩にある

今までソニーにα7シリーズを使っていた身からすれば、電源スイッチを片手(右手一つ)で操作できないのは、何とも不便でしょうがありません。


α7シリーズの電源スイッチは、シャッターボタン周囲にある

確かに従来のEOS一眼レフにおいても、左肩に電源スイッチがあるのですが、一眼レフは電池の消耗が少ないので、撮影の始めと終わりに操作するだけで済みます。


何しろ撮像素子が稼働するのは、シャッターボタンを押した時だけなのですから。

ところがミラーレス機は、電源ON時は常時撮像素子から画像を取り込んで電子ファインダー(もしくはモニター)に表示していますので、どんどん電池を消耗していく事になります。

このため、電池の消耗を抑えるためには、どうしてもコマメに電源をON/OFFする必要があります。

にもかかわらず、左肩に電源スイッチがあると、必ず右手でカメラを支えて左手で電源スイッチを操作しなければならないので、面倒な事この上ありません。

取り敢えずフルサイズミラーレスだけで調べてみると、ソニーだけでなく、ニコンもパナソニックも電源スイッチは右側にあります。


パナソニックのLumix S1の電源スイッチも右肩にある

そもそも自社のEOS Kiss Mでさえ、右肩に電源スイッチがあるのに、なぜEOS MシリーズやEOS Rは左肩に持ってきたのでしょう。


何故かEOS Kiss Mの電源スイッチは右側にある

もしこのままEOS Rの電源スイッチが左肩に鎮座するとなると、それはキヤノン機のとんでもない欠点としか言いようがありません。

だったら今まで一度も使った事のないLOCKボタン(正式名称:マルチ電子ロックボタン)を、電源スイッチとして交換してほしいくらいです。


今まで一度も使った事のないLOCKボタン

もしくは、LOCKボタンを殆ど電気を消耗しないスタンバイスイッチにしても構いません。

とここまで書いて、フトと疑問に思う事が出てきました。

左肩の電源スイッチが不便な事は、キヤノンの関係者だって十分認識している筈です。

にも拘わらず、何故これをOKとしたのか?

それで思い付いたのが、キヤノンのミラーレス機に搭載されているエコモードです。

もしかしたらこれを使う事によって、撮影中は常時電源スイッチをONしておけるのかもしれません。

という訳で、このエコモードの感触については、後ほどお伝えしたいと思います。


2. レンズの根元にほしいコントロールリング


次はレンズに追加されたコントロールリングです。

コントロールリングはレンズに追加されたリングで、このリングに絞りやシャッタースピードなどの設定機能を登録できます。


RFレンズに追加されたコントロールリング

この機能自体には全く不満は無いのですが、最大の不満はその位置です。

なぜレンズの先端に付けたのでしょうか?

実際にコントロールリングを使おうとすると、間違いなくその手前にあるフォーカスリングを触ってしまいます。

AFを使っているのならまだしも、マニュアルフォーカスでピントを合わせた後に間違えてフォーカスリングを回してしまったら、泣きたくなってします。

更には、フードを内側に被せた状態では、フードが邪魔でコントロールリングが回せないのです。

キヤノンのインタビュー記事を読むと以下との事ですが、恐らく100人中99人は根元の方が使い易いと回答するでしょう。

さまざまな位置を検討して試作を重ねた結果、この4本のレンズについては根本より先端のほうが操作しやすいだろう、という結論のもと先端にしました。

にもかかわらず先端に追加した理由については、キヤノンの公式HPの画像を見れば一目瞭然でしょう。


RFレンズの根元には回路基板が詰まっている

RFレンズの根本付近は、円周状の回路基板やフラットケーブルがぎっしり詰まっているので、コントロールリングを入れる余裕が無かったのでしょう。

今どきのAFレンズでしたら根元に回路基板があるのは普通なのですが、ソニーの一部のレンズにおいては、レンズの根本とは言わないもののフォーカスリングより手前に絞りリングがあります。


ソニーのFEレンズは根本側に絞りリングがある

またニコンのNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sにおいては、やはりレンズの根元にコントロールリングがあります。


NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sのコントロールリング

難しいのは分かりますが、(他のレンズとの整合性を失ってでも)今後のレンズは何とかレンズの手前側にコントロールリングを配置してほしいものです。

2020/2/8:追記

そんな事をいっていたら、何と言う事でしょう。

2019/11に発売されたRF70-200mm F2.8 L IS USMには、マウント側にコントロールリングがあるではありませんか。


RF70-200mm F2.8 L IS USMには、マウント側にコントロールリングがある

キヤノンに尋ねれば、全長が長い望遠系のズームレンズなので、コントロールリングを手前に持ってきたと言うかもしれませんが、それだったら程度の差こそあれどのレンズも同じ事です。

他のレンズもコントロールリングが手前にあってくれれば、どんなに使い易くなっていた事か。

本当に悔やまれます。


3. 意味の無いズームリングロックレバー


レンズ絡みでもう一つ言いたいのが、RF24-105mm F4 L ISの鏡筒に付いているズームリングロックレバーです。


RF24-105mm F4 L ISに付いているズームリングロックレバー

これは下の絵の様に、カメラを肩にぶら下げて運ぶ際、レンズのズーム部が伸びてしまうのを防ぐためとの事です。


ところが実際に本レンズを下に向けててみても、レンズは全く伸びないのです。

レンズもカメラも防塵防滴仕様ですので、レンズ内の機密性もある程度高い事から、そう簡単にレンズが伸びるとも思えません。

ズームの摺動抵抗が設計時、試作時、本生産時と徐々に重くなったのにかかわらず、何故かロックレバーだけが退化せずに生き残ったのでしょうか?

それとも経時変化によって、レンズが伸び易くなるのでしょうか?

或いはEFレンズの頃から、ズームレンズにはロックレバーを付ける決まりがキヤノンにはあるのでしょうか?

いずれにしろ、コスト意識の高い日本メーカーにおいて、こんな無駄な物を付けているのが不思議でしょうがありません。

そして必要の無い機能にお金を払わせられ方は、もっと悲惨です。


4. 外し難いフード


これも指摘する程の問題ではないかもしれませんが、レンズついでにこの話しもしておきましょう。

最近発売されたEFレンズと同様に、RFレンズのフードにはロック解除ボタンが追加されました。


       RFレンズフードのロック解除ボタン

一般的なレンズフードは、レンズに装着後ひねってクリックを超えた所で固定する様になっています。

ですので外すときも、フードを反対側にひねれば外れます。

ところが、RFレンズのフードには、ロック解除ボタンが追加されたため、フードを外すには先ずそのボタンの位置を手探りで探して、それを指で押してからひねる前工程が必要になりました。

どうなんでしょうか、このロック解除ボタンは?

必要なのでしょうか?

当然ながら、これが付いた事により、いつの間にかフードが傾むいたまま撮影する事による画像ケラレを防止できるとか、フードの脱落を防げる等のメリットがあるでしょうが、フードの取り外しが楽な従来方式の方が良かったと思うのは本書だけでしょうか?

このロック解除ボタンを付けるなら、使い込んでいく内にロック用クリックが甘くなるのを改善して貰った方が、余程便利ではないでしょうか。

それと、フードの下部には接地した際の擦れ跡がすぐ付くので、擦れ跡防止の小さな突起くらい付けてくれないもんでしょうか。


5. クリック音がほしいマルチファンクションバー


次はやはり、カメラ本体に追加されたマルチファンクションバーでしょう。

噂通り、あって良かったと言える程素晴らしい物ではありません。


評判の悪いマルチファンクションバー

ただし今どきでしたら、①絞り、②シャッタースピード、③ISO感度、④露出補正の4つの値を変える事から、無くても良いとは思いません。

本書では、前述のコントロールリングがフードが邪魔で使えない場合に備えて、取り敢えずISO感度を設定してみましたが、操作しても全く音が出ないので、今一つメリハリがなく右往左往します。

すなわち、設定したい値を通り越して、また戻るを繰り返す事になります。

恐らくキヤノンとしては動画撮影時における無音操作を意識して追加したのでしょうが、少なくともスチール写真を撮っているときは、初代のiPodの様にクリック音が出る様にすれば、もう少し評判が良くなるのではないでしょうか。


操作時にクリック音がするiPodのロータリーホィール

やってはくれないでしょうが、ダメ元で書いておきます。


6. 2工程増えるモードダイヤル


次はモードダイヤルです。
EOS Rのモードダイヤル

通常のモードダイヤルでしたら、ダイヤルを回して好みのモードを選択するだけ済みます。

ところが本機の場合、ダイヤル中央のMODEボタンを押して、次にその周囲の電子ダイヤルを回さなければいけないのです。

そしてそれを決定するため、最後にもう一度MODEボタン(もしくはシャッターボタン)を押さなければなりません。

ですので、通常のモードダイヤルより2工程も増えるのです。

さらに通常のモードダイヤルでしたら、電源をONする前にモードを変更する事が可能ですが、これでしたら電源をONした後しかモードを変えられません。

とは言いながら、これについては、物は考えようです。

確かに通常のモードダイヤルでしたら、電源のON/OFFに関わらずダイヤルを回すだけの1工程で済みます。

ですが、もしモードダイヤルにロックボタンがあったら、1工程の違いだとも言えます。



Lumix S1Rのロックボタン付きモードダイヤル

またモードダイヤルとサブ電子ダイヤルを共用する事で、ダイヤルが1個減った分コストダウンになります。

更にEOS Rの場合、ソフト的に撮影モードを選択するので、撮影モードを減らしたり、更に今後バージョンアップで撮影モードを増やしたりする事も理論的には可能です。


現在10項目あるEOS Rの撮影モード

例えば、MODEボタンを短押しにすると選択したモードだけが表示されて、長押しすると全てのモードを表示させる事も可能になります。

という訳で、これについては将来性を考慮して、(しぶしぶ)許容したいと思います。


7. やっぱり使い難いバリアングルモニター

2019/6/22:追記

慣れれば何とかなるかな、と思っていたのですが、やっぱり使い難いのがバリアングル式の背面モニターです。


モニターを180度開かないと、モニターを上にも下にも向けられない

とにかく、ちょっとモニターを上向きにしたいなと思っても、先ずはモニターを大きく180度回転しないといけないのですから。

それに対してチルト式ですと、モニターの下をちょっと持ち上げれば済むのです。


チルト式は操作が簡単

またバリアングルの場合、レンズの光軸と大きくずれているのは、やはり馴染めません。

自撮りや動画優先でなければ、この手のスチールカメラならやはりチルト式の方が明らかに便利です

ついでに言うと、バリアングルの場合、タッチパネルを操作する場合、前述の理由によりどうしても本体に格納した状態で行います。


モニターを格納した状態でパネルの操作をすると表示が消える

すると、近づけた指にファインダー下のセンサーが反応して、モニターの表示が消えてしまう(誰も覗いていないファインダー表示に切り替わる)のです。

また左肩にあるメニューボタンを押そうと右手を近づけると、それでまたファインダー下のセンサーが反応して、モニターの表示を消してしまいます。

それに対してチルト式の場合、少しモニターを引き出せ(チルトすれ)ば、モニターの位置検知センサーがOFFするため、モニター表示固定となって、表示が点いたり消えたりするのを防げます。

EOS RPクラスでしたらバリアングルでも良いでしょうが、EOS Rクラスは是非ともチルト式にしてほしいものです。


8. 引き出しても消えるモニター表示

2019/7/20:追記

これも前述の件に似ているのですが、やはりきちんと指摘しておかねばなりません。

それはバリアングルモニターを引き出しても、モニター表示に固定されない事です。

具体的には、バリアングルモニターを引き出しても、ファインダーに指を近づけると、モニターの表示が消えてファインダーに変わってしまうのです。

確かにバリアングルモニターを引き出しても、ファインダーを覗く事は可能ですが、普通に考えればモニター表示に固定すべきでしょう。

実際ソニーのαシリーズは、モニターを開くと完全にモニター表示だけになります。

にも関わらず、EOS Rにはバリアングルモニター格納を検知するセンサーが無いので、例えモニターが引き出された状態であっても、こんな事が起こるのです。

なんだその程度の事かと思われるかもしれませんが、実際にバリアングルモニターを使ってローアングルの縦位置撮影をやっている最中にモニターが点いたり消えたりしたら、たまったものではありません。

モニターを引き出したら、モニター表示に固定すべきです。

お詫びと訂正

2020/02/16:追記

その後気が付いたのですが、EOS Rのバリアングルモニターにも格納を検知するセンサーは搭載されていました。

それはモニターを反転して(裏面を上にして)閉じると、モニターの表示が消えるからです。

ですから、何とこのセンサーは二つの状態を検知しているのです。

一つは、モニターの格納を検知し、もう一つはモニターがどちらを向いているかを検知しているのです。

そんな凝った検知をしているにも関わらず、モニター引き出すと、モニター固定にならないのです。

仮にモニターを引き出していて、ファインダーで撮影したくなったら、表示先を切り換えるか、モニターを閉じればいいのです。

さもなければ、モニター引き出し時にAUTOにするかモニター固定にするか選択できる様にすれば良いのです。

何とかして頂けないものでしょうか?


9. 暗いと全く見えないファインダー


今までは操作系の話でしたが、次は性能に関する指摘です。

キヤノンの公式HPを見ると、下の様に星空でも被写体が見える筈なのですが、実際に撮りに行った所、星の点は見えるのですが、それ以外は真っ暗闇です。


特に最近流行の星空ポートレートを撮ろうとすると、被写体がどっちを向いているのかさえ分からないのです。


暗闇でEOS Rのファインダーを覗いても人物の姿は全く見えない

どうやら、F4のレンズでは上の様にはいかない様です。

α7 IIIでしたら、ブライトモニタリングを使えば肉眼で見えない物まで、浮かび上がってきます。

この点も早急にキャッチアップが必要です。


10. 使えないエコモード


EOS Rには二つの省エネモードがあります。

一つは節電機能、そしてもう一つは前述の電源スイッチの項で触れたエコモードです。

先ず節電機能については、操作説明書には以下の様に記載されています。


これは他社機でも普通に見られる機能ですので、問題ないでしょう。

そして次が、エコモードです。


この場合、ファインダーを覗いている分には表示は継続されるのですが、モニターを使って撮影しようとすると2秒後に画面が暗くなるので、3秒後にはもう2度とエコモードなんか使うものかと思ってしまいます。

一体この画面を暗くする2秒間と画面を消す10秒間は、何なのでしょうか?

ユーザーへの嫌がらせでしょうか?

キヤノンはモニターを見ながら2秒以上何も操作しないで撮影するユーザーはいない、と思っているのでしょうか?

このエコモードを使うユーザーは、限りなくゼロなのは間違いないでしょう。




EOS Rのがっかりした点27連発




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