異なる大きさの撮像素子でボケを同じにする方法

2020/08/22:発行
2020/11/10:更新

目次



1. はじめに


フォーマット(撮像素子のサイズ)の異なる複数のカメラを所有していて、こう思われた事はありませんでしょうか。

異なるフォーマットの2台のカメラで、背景のボケ(被写界深度)を同じにして撮影するにはどうすれば良いのか?

例えば、フルサイズの85mm F1.2のレンズと中判の110mm F2.0(フルサイズ換算で87mm)のレンズがあったとしましょう。


EOS R6

RF85mmF1.2

GFX 50S

GFX 110mm F2
フルサイズ 中判

その場合、画角はほぼ同じですが、では両者の絞りをいくつにすれば、同じ様に背景のボケた写真を撮る事ができるでしょうか?

或いは、フルサイズの50mm F1.8のレンズとAPS-Cサイズの35mm F1.8(フルサイズ換算で53mm)のレンズの場合、両者の絞りをいくつにすれば、同じボケの写真を撮る事ができるでしょうか。


 SONY α7 III

FE 50mm F1.8

SONY α6600

E 35mm F1.8
フルサイズ APS-Cサイズ

俄(にわ)かに分からないと思うのですが、実は簡単に求められるのです。

今回はその計算方法をお教えします。


2. 計算方法


それでは、早速その計算方法をお教えしましょう。

先ず前段でお伝えした、フルサイズの85mm F1.2のレンズと中判の110mm F2.0のレンズをお持ちの場合でしたら、以下の絞りにすれば両者は同じボケ(被写界深度)になります。

例\フォーマット フルサイズ 中判
例1 85mm F1.2 110mm F1.5
例2 85mm F1.6 110mm F2.0
フルサイズと中判で、同じ画角とボケになるレンズの焦点距離と絞り値

ではこの表の絞り値はどうやって求めたかと言えば、以下の通りです。


異なるフォーマットの絞り値=フルサイズの絞り値÷換算係数

フルサイズの絞り値=異なるフォーマットの絞り値×換算係数


そして、この換算係数とはフルサイズを基準とした各フォーマットの対角線比の逆数で、以下の値になります。

サイズ 中判 FULL APS-C APS-C
(Canon)
1.5型 4/3 1型 1/1.7型 1/2.3型
換算係数 0.8 1.0 1.5 1.6 1.9 2.0 2.7 4.6 5.5
段数 -0.6 0.0 1.2 1.4 1.9 2.0 2.9 4.4 4.9
フルサイズを基準とした場合の換算係数と段数

ですので、例えばフルサイズの85mm F1.2のレンズと同じボケになる中判の110mmのレンズの絞り値は、以下の様に求められます。

異なるフォーマットの絞り値 =フルサイズの絞り値÷換算係数
=F1.2÷0.8
F1.5

なお先ほどの換算係数の表に段数も表示していますが、これはF1.2を0.6段暗くすればF1.5になる事を示しています。

また中判の110mm F2.0のレンズと同じボケになるフルサイズの85mmのレンズの絞り値は、以下の様に求められます。

フルサイズの絞り値 =異なるフォーマットの絞り値÷換算係数
=F2.0×0.8
F1.6

どうです、簡単でしょう。

次に、フルサイズの50mm F1.8のレンズとAPS-Cサイズの35mm F1.8(フルサイズ換算で53mm)ののレンズをお持ちの場合でしたら、同じ様に計算すれば以下の表が求められます。

例\フォーマット フルサイズ APS-Cサイズ
例1 50mm F1.8 35mm F1.2(=1.8÷1.5)
例2 50mm F2.7(=1.8×1.5) 35mm F1.8
フルサイズとAPS-Cサイズで、同じ画角とボケになるレンズの焦点距離と絞り値

良くある2台持ちは、フルサイズ機とAPS-Cサイズ機、あるいはフルサイズ機とマイクロ4/3機だと思いますので、換算係数の1.52を覚えておけば、意外に役に立つと思います。

またAPS-Cサイズ機を基準にしたマイクロ4/3機の換算係数は1.3(=2/1.5)になります。


3. まとめ


それでは、まとめです。

フルサイズのレンズと、画角が同じで異なるフォーマットのレンズがあったとすると、

①フルサイズと同じボケとなる異なるフォーマットのレンズの絞り値は、フルサイズのレンズの絞り値を換算係数で割れば求められる。

例えばAPS-Cサイズの35mmのレンズにおいて、フルサイズの50mm F1.8と同じボケになる絞り値は、F1.8を1.5で割ったF1.2となる。

②異なるフォーマットのレンズと同じボケとなるフルサイズのレンズの絞り値は、異なるフォーマットのレンズの絞り値に換算係数を掛ければ求められる。

例えば、APS-Cサイズの35mm F1.8のレンズがあったとして、それと同じボケになるフルサイズの50mmの絞り値はF1.8を1.5倍したF2.7になる。

なお上記はいずれもフルサイズと異なるフォーマットのレンズの場合ですが、例えば中判とAPS-Cサイズのレンズの場合でしたら、間にダミーでフルサイズのレンズを想定すれば、同じ様に計算できます。

と、長々と読んで頂きましたが、これは既にお気付きの通り、レンズの焦点距離の変換方法と同じなのです。

すなわち、フルサイズの50mmと同じ画角のAPS-Cサイズのレンズは50mmを1.5で割った33mmになり、APS-Cサイズの35mmと同じ画角のフルサイズのレンズは35mmに1.5を掛けた53mmになるのです。

少しはお役に立ちましたでしょうか。




異なる大きさの撮像素子でボケを同じにする方法





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