AFの基本は中央1点
2021/04/24:発行
はじめに
皆様は通常AFエリアはどれをお使いでしょうか。
下はソニー機(α6000)のAFエリアに関する説明の抜粋なのですが、最近のミラーレス一眼でしたらどれも似た様なものでしょう。
ただし、これらのどれをどんな用途に使えば良いのかは、上の説明では今一つ良く分かりません。
そんな訳で、幣サイトが独断でお勧めの用途についてご説明したいと思います。
AFエリアの特徴と用途
下が各AFエリアの特徴と用途をまとめたものです。
種類 | 特徴 | 用途 |
ワイドAFエリア | カメラが測距点を勝手に決める、暗いキットレンズを使ったお手軽AF。 またはサーボAFと組み合わせて、被写体がどこに位置するか予測できない動きまわる物体の撮影に適する。 なおカメラが選択しようとする被写体(測距点)は、画面の端より中央の物、コントラスが低い物より高い物、カメラから遠い物よりに近い物、横線より縦線を優先する。このため意図しない物に合焦する可能性がある。 |
家族 動物 動体 |
ゾーンAFエリア | ワイドエリアの領域を狭めたもので、被写体が登場する領域が予測できる(もしくは限られている)場合に向いている。 | 乗り物 |
中央1点AF | ファインダー中央の測距点を使って、被写体のどこにピントを合わせるかを自分で決めるAFの基本中の基本。 合焦後AFロックをしてカメラを振ると、僅かにピント位置がズレる可能性があるため、明るい単焦点レンズを使って被写体から1.5m以下の距離で撮影する場合は、下のフレキシブルスポットを使うのが好ましい。 なお一眼レフの時代は中央の測距点が最も測距精度が高かったが、ミラーレスになってからはその恩恵が無くなってしまったのが辛い。 |
人物 風景 |
フレキシブルスポット | 構図を決めた後、測距点をタッチパネル、あるいは十字キー等で移動して自分で狙ったポイントに合致させるAF。 前述の中央1点AFと違って構図がそのままなので、ピントのズレが生じないが、測距点を移動するのが非常に面倒なので手持ち撮影ではやってられない。 |
近距離の人物 マクロ 三脚使用 |
瞳AF (顔AF) |
人物を撮るには最も適したAF。 ただし逆光や複雑な模様が近くにあると、ご動作する事がある。 |
人物 動物 |
そんな訳で、人物撮影に最も向いているのは瞳AFで、2番目が中央1点AF、ただし絞り開放の近接撮影においてはフレキシブルスポットという感じでいかがでしょうか。
なお最近のカメラですと、測距点の大きさも複数選べるのですが、余程被写体の動きが早くて目的とする合焦ポイントを正確に追えない場合を除いて、極力小さな測距点の方がピント精度は高いと言えます。
またポーズを変えた直後に停止してくれるプロの被写体ならワンショットAFでも問題ないのですが、止まってくれない被写体の場合はサーボAFを働かせておいた方がピントの合う確率は高くなります。
なおサーボAFは、シャッターボタンを半押ししているときか、AFボタンを押しているときしか動作しませんが、もしそれが面倒でしたら(電池は消耗しますが)更にコンティニュアスAFを有効にしておけば、電源をONすれば直ぐにサーボAFが働きますので、短期決戦には最適です。
と書いていたのですが、動体撮影については変更が入りました。
動体のAFエリア
と言うのは、SONY α1の設定ガイドにAF設定に関する詳細が載っていたからです。
そのガイドには、以下の様に動体撮影に関する細かい設定が載っています。
撮影シーンは全部で50種類ほどあり、上はそのガイドのほんの一部なのですが、よくここまで細々とまとめたものだと感心させられる程です。
ただしこういう資料は、むしろ初中級者向けの機種に必要だと思うのですが、なぜプロ向けのα1用に準備されたのでしょうか?
α1を購入した自称プロの方々から、動体を撮影するにはどういう設定すれば良いのか分からないので、教えてくれと頼まれたのでしょうか?
知らない事を訊くのは決して恥ずかしい事ではないのですが、だったら何もこんな高価なカメラを購入してから訊くのではなく、先ずは入門機で勉強しながら訊けと言いたくなります。
それはともかく、これを見てオッと思った事があります。
それはフォーカスエリアの全ての欄に、常にスポット:Mと記載されている事です。
ここで言うスポットとは、当然ながら面ではなく一つの測距点という意味です。
また動体撮影を行なうのに、余程の理由が無い限りこの一つの測距点を中央からずらして被写体を追うはずがありません。
故に、このスポットとは中央1点を指すと思って良いでしょう。
ところが下の様な宣伝写真を見ると、動体はワイドエリアで撮るべきだと誰もが思ってしまいます。
ですがα1のガイドによれば、下にあります様にオンロードバイクのお勧めのフォーカスエリアは、スポット: M、拡張スポット、トラッキング:スポット Mの3種類で、ワイドもゾーンも入っていないのです。
オンロードバイクの推奨フォーカスエリアにワイドもゾーンも入っていない
すなわち、動体撮影においてもAFエリアの基本は、(ワイドやゾーンもありますが)やはり中央1点だと言えそうです。(少なくとソニーはそう考えている)
そんな訳で、ミラーレス一眼を購入すると、測距点の多さについつい目が眩んで、ワイドやゾーンのAFエリアを選びたくなりますが、最も使い易くて且つ狙った被写体に合焦させるには1点AFが一番優れていると言う事です。
となると、せめて中央1点だけでもクロス測距にして、測距精度を高めてほしいのですが、こんな願いを聞いてくれるメーカーはどこかに無いものでしょうか。
ただし、人が行なう競技においては、AF時の顔/瞳優先ONが推奨になっていますので、やはり人物撮影では、(中央1点AFより)顔/瞳AFの方が優れていると言えます。
ただし面白い事に、アメフトやアイスホッケーの様に顔前面にプロテクターを付ける競技では顔/瞳優先OFFを推奨していますので、ONのままでは(競技者ではなく)恐らく後の観客にピントを合わせてしまうのでしょう。
それに対してキヤノンのEOS R6は、(顔の見えない)人物の後ろ姿の頭部も認識してくれますので、人物の検出能力は既にSONY機を超えていると言って良いのではないでしょうか。
それもその筈で、キヤノンは2015年にネットワークカメラの世界最大手であるスウェーデンのアクシスコミュニケーションズを買収し、それ以降人物検知はお手の物と言えるからです。
更にEOS R3に至っては、胴体の検出も可能との事ですので、アメフトやアイスホッケーに限らず、顔がファインダーから外れていても被写体を補足できる事になります。
ところで、α1は測距点の大きさをS/M/Lの3つのサイズから選べる様になっており、標準は当然ながらMサイズになっています。
ならばSサイズを推奨しているのはどんなシーンか調べた所、唯一以下のシーンになっていました。
この表をご覧頂きます様に、動きが少ない時にSサイズとありますので、やはり精度的にはSサイズが一番上だと読み取れます。
ただし、周囲に障害物あるときにMサイズや拡張スポット推奨というのは、どう見ても変(間違い)です。
まとめ
そんな訳で、まとめとしては人物撮影だろうが、風景写真であろうが、動体撮影であろうが、基本は中央1点AFであり、他のAFエリアは余程の理由がない限り使う必要はないという事です。
少しはお役に立ちましたでしょうか。