クロス測距だけではなかった
クアッドピクセルCMOS AFの秘密

2020/10/17:発行

はじめに


既にご存知の方も多いと思いますが、またまたビックリする情報が舞い込んできました。

キヤノンが噂のクアッドピクセルCMOS AF(QUAD PIXEL CMOS AF)のパテントを出願したそうです。


クアッドピクセルCMOS AFの解説図

これによって、従来のデュアルピクセルCMOS AFは縦線しか検知できなかったのに対して、縦線と横線の両方が検知できる様になります。

という事は、理論的にはAF精度が2倍に上がると言えます。

一眼レフの場合、既に縦横斜め線まで検知できますが、専用の位相差センサーと撮像素子の位置が異なるため、もしかしたらこれで一眼レフのAF精度に限りなく近付いたと言えるかもしれません。


EOS-1D X Mark IIのAFセンサー配置(中央の5ポイントがデュアルクロス測距)

これ自体は以前より予想されていた事ではあったのですが、まだまだまだ数年先の事だと思っていました。

パテントの内容によればAPS-Cサイズとの事ですが、この画期的な撮像素子をAPS-Cサイズ機から投入するはずはないので、当然搭載1号機は間違いなく来年発売予定のEOS R-1でしょう。


2100万画素のグローバルシャッター搭載予定のEOS R-1

と、ここまでは既にご存知の事でしょうが、手前味噌ながら幣サイトはもう一つ画期的な事をお伝えしたいと思います。


クアッドピクセルCMOS AFの秘密


さて、先程ご紹介したクアッドピクセルCMOS AFの解説図を見て、何か気付かれた事はありませんでしょうか?


クアッドピクセルCMOS AFの解説図

実は、今までは全く気付かなかったのですが、上の絵を見ていて、全く予想外の事に気付いてしまいました。

それが一体何かをお伝えする前に、一般的な像面位相差AFの撮像素子がどうなっているか見てみたいと思います。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、他社の一般的な像面位相差AFの撮像素子は、以下の様に左側と右側がマスクされた受光素子がペアになって数万個撮像素子上に配置されています。


1画素の片側がマスクされたAFセンサー

この場合、左右がマスクされていますので、縦線しか検知できません。

ですので、横線も検知できる様にするには、上下をマスクした素子を撮像素子上にペアで配置する必要があります。

更に斜め2方向の線を検知するには、右上と右下をマスクした素子と、左上と左下をマスクした素子をそれぞれペアで配置する必要があります。

そこまで知って頂いた上で、先ほどのクアッドピクセルCMOS AFの解説図をもう一度見て頂けますでしょうか。(追加した赤線の意味は徐々に分かってくると思います)

クアッドピクセルCMOS AFの解説図

この場合、1つの受光素子が4分割されていますので、縦線を検知するときは左側の2個(203と201)と右側の2個(204と202)を使えば可能です。

また横線を検知するときは、上側の2個(203と204)と下側の2個(201と202)を使えば可能になります。

さて、ここまでご説明すれば、次に何を言いたいか気付かれたのではないでしょうか?

そうなのです。

例えば、右上の1個(204)と左下の1個(201)を使えば左上がりの斜め線、左上の1個(203)と右下の1個(202)を使えば右上がりの斜め線を検知できるのです。

ただしこの場合、縦横線検知より感度が半分になるのですが、理論的に可能なのは間違いありません。

すなわち、クアッドピクセルCMOS AFは単に縦横線検知のクロス測距が行えるだけでなく、それより感度は落ちるものの斜め線の検知を含めたデュアルクロス測距も行えるのです。

もしこの通りになったら、とんでもない事です。


Nikon D6のクロス測距点(105ポイント)

何しろAFを大幅に強化した最新のプロ用一眼レフのNikon D6でさえ、クロス測距点は中心部の105ポイントしかないのですから。


新たな懸念


そんな事を想像していたら、新たな懸念が頭をもたげてきました。

もし近々にデュアルクロス測距が可能なミラーレス一眼が出現したら、果たして他社は太刀打ちできるのでしょうか?

お伝えしました様に、他社の(一般的な)像面位相差AFはカメラの命とも言える大事な画素をAFセンサーとして使用しますので、画像上はその部分が画素欠損となります。

補完して目立たなくしているとは言え、どうしても画質低下は免れません。

そして、もし縦線も検知しようとすると、画素欠損は2倍になり、デュアルクロス測距に対応しようとすると何と画素欠損は縦線検知だけより4倍も増えるのです。

となると今後他社はどうやってキヤノンに対抗していくのでしょう?

①画質低下を覚悟の上で、AFセンサーを増やしていくのか?

②或いは、クアッドピクセルCMOS AFのパテントを買うのか?

③キヤノンのクアッドピクセル撮像素子を購入するのか?

④はたまた、異なる測距方式を開発するのか?

全く以って余計なお世話なのですが、1社が先行し過ぎるのも考えものだと思う今日この頃です。




クロス測距だけではなかったクアッドピクセルCMOS AFの秘密




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