2020年度版:小サイズミラーレス一眼のトップはどれだ?
(他社機と比べたNikon Z50の実力やいかに)
2019/12/31:発行
2020/01/19:修正
2020/07/27:誤記訂正
2020/01/19:修正
2020/07/27:誤記訂正
はじめに
2019年末に、ニコンからついにAPS-Cサイズのミラーレス一眼Nikon Z50が発売されました。
これで下の表にあります様に、いよいよ主要なカメラメーカーの小サイズミラーレス一眼が、一通り出揃ったと言えます。
発売日 | モデル | サイズ | 画素数 |
---|---|---|---|
2019/11/22 | Nikon Z50 | APS-C | 2000万画素 |
2019/11/22 | Olympus O-MD E-M5 Mark III | 4/3 | 2000万画素 |
2019/11/1 | SONY α6600 | APS-C | 2400万画素 |
2018/9/20 | Fujifilm X-T3 | APS-C | 2600万画素 |
2018/1/25 | Lumix DC-G9 | 4/3 | 2000万画素 |
と言う訳で、早速これらの小サイズミラーレス一眼を横並びで比べてみたいと思います。
Nikon Z50 (2000万画素) |
E-M5 Mark III (2000万画素) |
α6500 (2400万画素) |
X-T3 (2600万画素) |
DC-G9 (2000万画素) |
上は現在の価格、下は2020/4下旬時点の価格
昨年の記事で首位だったLumix G9 PROがトップを維持するか、それとも今年発売された他社機が首位を奪還するのか、どんな結果になるかお楽しみに。
モデル紹介
それでは先ず、本書で扱う5機種の概要を、発売の新しい順にご紹介しておきたいと思います。
Nikon Z50
最初にご紹介するのは、2019/11に発売されましたNikon Z50です。
ご存知の様にNikon Z50は、フルサイズミラーレス一眼用に開発された大口径のZマウントを流用した、ニコン初のAPS-Cサイズのミラーレス一眼です。
これに伴い、(SONYのα6000シリーズと同様に)画角が変わるもののフルサイズ用のレンズも使えるというメリットもあります。
ですが、むしろその逆にフルサイズ機において小型で安いAPS-Cサイズのレンズが使える方がメリットとしては大きいかもしれません。
特に滅多に使わないマクロレンズや望遠レンズはAPS-Cサイズのレンズで十分という方も多いのではないでしょうか?
なおレンズマウントが大きいのに伴って、ボディーの高さ方向に対してマウントの一部がはみ出る事になりますが、デザインで無難にカバーしている感じです。
撮像素子は恐らくSONYのα6600と同じ物が搭載されていると思っていたのですが、画素数が異なるので、違う物の様です。
この撮像素子にどんな特徴があるのか、興味のある所です。
なお今回登場した5機種の中では本機のみストロボを内蔵していますので、ニコンとしては本機を中級機と扱っているのかもしれません。
となると、今後この上の高級機や、この下の入門機が登場するかもしれません。
Olympus OM-D E-M5 Mark III
続いては、同じく2019/11に発売されたOlympus OM-D E-M5 Mark IIIです。
Olympus OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
本機はAPS-Cサイズより一回り小さい4/3サイズの撮像素子を採用している事から、APS-Cサイズ機よりボディーもレンズも小さくでき、更に連写速度や手ブレ補正においても優位性があります。
なおオリンパスのOM-Dシリーズには、本機の上位機種として、E-M1XとE-M1 Mark IIとが存在するのですが、E-M1X(2019/02発売)はプロ使用を意識した縦位置グリップ一体型であり、E-M1 Mark IIは発売が2016/12と古い事から、本書ではOlympus OM-D E-M5 Mark IIIを取り上げます。
2019/2に発売されたOlympus OM-D E-M1X
また従来OM-D E-M5は金属ボディーを使用し、発売のタイミングによっては、上位機種のE-M1より優れた部分もあったのですが、本機からは本体がプラスチックになり上位機種であるE-M1 Mark IIの小型軽量版の様な扱いになっています。
SONY α6600
続いては同じく2019/11に発売されたSONYのα6600です。
E 18-135mm F3.5-5.6 OSS + α6600
本機の最大の特徴は、見てお分かりの様にその外観です。
他社機は全て一眼レフスタイルを踏襲しているのに対して、本機は電子ファインダーを搭載していながらレンジファインダースタイルを採用しています。
この場合、レンズの光軸とファインダーの中心がずれているので、接写時に多少違和感がありますが、一般的な撮影では特に気になる事もありません。
その代わり、カメラ上面をフラットにできてカメラバックからの出し入れがし易いとか、ファインダーを覗いたときに鼻が液晶画面に当たらないとか、背面左側に操作ボタンが無く、右手だけで操作できるといったメリットがあります。
本機は2016/12に発売されたα6500の後継機で、従来より一回り大きなバッテリーを採用した事により撮影可能枚数が大幅に増えています。
また作像エンジンが最新版になり、ISO感度がアップし、処理速度も速くなっています。
ただし本機になってから、従来あった内蔵ストロボが廃止になっています。
FUJIFILM X-T3
続いては、2018/9に発売されたフジフィルムのX-T3です。
2018/9発売のフジフィルムのX-T3
本機はAPS-Cサイズの撮像素子を搭載したミラーレス一眼ですが、特徴的なのはその操作性とスタイルです。
シャッタースピードダイヤルやISO感度ダイヤルを備えたX-T3の軍艦部
上の写真をご覧の様に、ひと昔前のフィルム用一眼レフスタイルを踏襲しており、シャッタースピードダイヤルやISO感度ダイヤル、レンズによっては絞り環まで備えており、昔からのカメラファンなら泣いて喜ぶ様な外観と操作性を備えてています。
ですが、むしろ本機の最大の特徴はそれではなく、撮像素子上に一般的なベイヤー配列と異なるフジフィルム独自のX-Transと呼ぶカラーフィルター配列を採用している事です。
詳細は割愛しますが、これに伴い当初よりハイパスフィルターレスを採用し、またフィルムシミュレーションによるJPEG画像の美しさには定評があります。
2018年3月に発売されたX-T3の上位モデルX-H1
なお本機の上位モデルとして2018年3月にX-H1が発売されていますが、画像系が一世代前のものなので、本書ではそれより新しいこのX-T3を代表機として取り上げます。
Lumix G9 PRO(DC-G9)
最後は、2018/1に発売されたLumix G9 PROです。
本機もオリンパスのOM-D E-M5 Mark IIIと同様に、4/3サイズの撮像素子を採用しています。
2018年1月に発売されたLumix G9 PRO
従来ルミックスのGシリーズと言えば、電子ファインダー/バリアングルモニター/内蔵ストロボを搭載したLumixシリーズにおける標準機的な扱いだったのですが、先代から筐体が金属になり徐々にプロ用のスチールカメラを強く意識したモデルになってきました。
特に本機からは、内蔵ストロボを廃止し、モードダイヤルに赤い鉢巻きを締め、広告名称の末尾にPROと入れるほど、気合の入れようです。
となったら、どれほどの完成度かじっくり調べてみるしかありません。
キヤノンのAPS-Cサイズミラーレス一眼
なお何故今回ここに売れ筋であるキヤノンのAPS-Cサイズのミラーレス一眼であるEOS Kiss MやEOS M5の様ながないのかと訝(いぶか)られる方がいらっしゃるかもしれませんが、両機は入門機の扱いのため、ここでは割愛しています事ご容赦願います。
EOS Kiss M EOS M5
なお残念ながら今のEF-Mマウント(上記の専用レンズ)の商品構成から見ると、今後もキヤノンからAPS-Cサイズのハイアマチュア用モデルが出る事はないと思われます。
キヤノンとしては、プロ及びハイアマチュア用はフルサイズ、APS-Cサイズは初中級用と明確に色分けしている様です。
と以前は記述していたのですが、ニコンからフルサイズ用のZマウントを採用したNikon Z50が発売された事を考えると、キヤノンから同じくフルサイズ用のRFマウントを採用したAPS-Cサイズのミラーレス一眼が発売されるのは、ほぼ間違いないでしょう。
話は戻って、4機種の凡その概要を掴んで頂いた所で、それではこれからフルサイズ未満ののミラーレス一眼の優位性と4モデルの特徴を検証してみたいと思います。
撮像素子
それでは次に画質に影響する撮像素子について見てみましょう。
下の表をご覧頂きます様に、画素数はAPS-Cサイズで2400万画素以上、4/3サイズで2000万画素以上を達成しています。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
撮像素子 | APS-C サイズ |
4/3サイズ | APS-C サイズ |
APS-C サイズ |
4/3サイズ |
画素数 | 2088万画素 | 2037万画素 | 2420万画素 | 2610万画素 | 2,033万画素 |
フルサイズ換算 の画素数 |
4698万画素 |
8148万画素 |
5445万画素 |
5872万画素 |
8132万画素 |
ISO感度 (拡張) |
100 51200 (204800) |
(64) 200 6400 (25600) |
(50) 100 32000 (102400) |
(80) 160 12800 (51200) |
(100) 200 25600 注 |
ローパスフィルター | 有り | 無し | 有り | 無し | 無し |
特徴 | N/A | N/A | N/A | 裏面照射型 X-Trans |
N/A |
解像度順位 | 3位 | 4位 | 2位 | 1位 | 4位 |
ISO感度順位 | 1位 | 4位 | 2位 | 3位 | 4位 |
順位ポイント | 4 | 8 | 4 | 4 | 8 |
総合順位 | 1位 | 4位 | 1位 | 1位 | 4位 |
注2:フルサイズ換算の画素数が間違っていましたので、お詫びして訂正致します。(2020/07/27)
つい数年前までは、フルサイズ未満の画素数は1600万画素と相場は決まっていたのですが、大した進歩です。
フルサイズの標準モデルの場合でも、画素数は2400万~3000万画素ですので、2000万画素~2600万画素もあれば大きなハンディにはならないでしょう。
ついでにその下の段にある、フルサイズ換算の画素数をご覧頂きます様に、APS-Cサイズですらフルサイズ換算で4500万画素を超え、4/3サイズの2機種においては、何とフルサイズ換算で8000万画素を越えています。(2020/07/27:誤記訂正)
このため1画素の小さなX-T3、E-M5、DC-G9の3機種は、最大ISO感度を上げるため画像信号のゲイン(増幅率)を高めにして、最低標準ISO感度が160もしくは200になっています。
ここで目立つのはNikon Z50で、画素数を2000万画素に抑えた事もあって、常用ISO感度を100から51200にしたのは立派です。
これでしたら、ISO6400も臆せず使えるかもしれません。
もう一つ驚くべきはDC-G9で、これだけの高解像度の撮像素子を採用しながら、常用の最高ISO感度を25600としています。
先代のDSC-G8が、1600万画素で25600でしたので、このDC-G9になってから、画像処理エンジンの処理能力を飛躍的に向上させた模様です。
と言いたい所ですが、LUMIXの場合この上位機種であるLumix SRもそうなのですが、増幅したISO感度を常用ISO感度に入れる傾向があるので、実質的にはE-M5と同様に最大常用ISOは6400程度と見た方が良さそうです。(2020/1/19:追記)
という訳で、暗闇に強いのはNikon Z50、撮像素子と画像処理エンジンに関しては、X-Trans採用のX-T3が一歩リードといった感じでしょうか。
なお解像度とISO感度に関する順位を、先ほどの表の最下段に追加しておきました。
電子ファインダー
続いては、電子ファインダーの性能です。
これだけでもフルサイズ未満のミラーレス一眼の気合の入れ方、そして凄さを分かって頂けると思います。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
画素数 | 236万ドット | 236万ドット | 236万ドット | 369万ドット | 369万ドット |
倍率(フル換算) | 0.68倍 | 0.60~0.69倍 | 0.7倍 | 0.75倍 | 0.83倍 |
アイポイント (最終面から) |
19.5mm (中央から) |
27mm | 23mm | 23mm | 21mm |
フレームレート | 不明 | 120fps | 120fps | 100fps | 100fps |
遅延時間 | 不明 | 5ms | 不明 | 5ms | 5ms |
順位 | 5位 | 3位 | 4位 | 2位 | 1位 |
数値だけ見ても良く分からないと思いますが、X-T3とDC-G9のファインダー画素数の369万ドットはフルサイズを含めてミラーレス一眼ではトップクラスの解像度なのです。
ちなみにフルサイズミラーレス一眼のファインダー性能は以下の通りです。
項目\機種 | α 7R III | α 7 III | Nikon Z 7 | EOS R | ライカSL |
---|---|---|---|---|---|
画素数 | 369万ドット | 236万ドット | 369万ドット | 369万ドット | 440万ドット |
倍率(フル換算) | 0.78倍 | 0.78倍 | 0.8倍 | 0.76倍 | 0.8倍 |
アイポイント | 23mm | 23mm | 21mm | 23mm | 20mm |
フレームレート | 120fps | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
遅延時間 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
さらにDC-G9のファインダー倍率0.83倍は、恐らくミラーレス一眼の最高値ではなでしょうか。
369万ドット、倍率0.83倍のDC-G9のファインダー
何しろ、フルサイズであっても80万円以上もするライカSLの440万ドット/0.8倍が最高ですので、DC-G9の369万ドット/0.83倍がいかに凄いか分かって頂けると思います。
とは言え、先ほどお伝えしました様に、DC-G9はフルサイズ換算で7810万画素の高解像度とは言え、所詮4/3サイズの撮像素子でそこまで必要かと思われる方もいらっしゃる事でしょう。
もしそう思われる方がありましたら、DC-G9のディチューン版としてDC-G99が用意されていますので、そちらの方が良いかもしれません。
DC-G9と同じ撮像系を使用した中級機のDC-G99
話は戻って、アイポイントについては、E-M5の27mmはかなり立派な数値です。
Olympus OM-D E-M5 Mark IIIのアイポイント説明図
アイポイントの長さはメガネを掛けたときにしか役に立たないと思われているかもしれませんが、例えばカメラを三脚に付けて野鳥を狙っているときに、ファインダーから少し目を離していても全体が見渡せるのはかなり便利です。
AF性能
お次はAF性能です。
通常ミラーレス一眼のAF性能と言えば、下の表の様に測距点の数とか測距エリアの広さとか合焦速度の速さが気になる所でしょう。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
AF構成 | 像面位相差AF+ コントラストAF |
コントラストAF (空間認識AF) |
|||
測距点 (検知線) |
209点 (縦線) |
121点 (縦横線) |
425点 (縦線) |
425点 (縦線) |
225点 (縦線) |
AF範囲 | 全体の74% (水平87% 垂直85%) |
全体の60% (水平80% 垂直75%) |
全体の84% |
画面全体 |
不明 |
レスポンス | 未発表 | 未発表 | 0.02秒 | 未発表 | 0.04秒 |
瞳AF | ○ | ○ | ○ (動物対応) |
○ | ○ |
その他 | -4EV対応 | AFリミッター | -2EV対応 | N/A | 星空AF可能 -4EV対応 |
順位 | 5位 | 1位 | 3位 | 4位 | 2位 |
ですが、本書の注目点は異なります。
大事なのは測距精度です。
そこで注目したいのは、測距点数は少ないながらE-M5 Mark IIIの像面位相差AFセンサーが、全点十字の縦横線を検知できるクロスタイプという事です。
E-M5 Mark IIIの全点クロスタイプの像面位相差センサー
フルサイズを含め、本機以外の像面位相差AFセンサーは縦線検知のラインセンサーですので、測距点がいくらあろうと水平線には全くピントが合わないのです。
これが全点クロスタイプになったのは、正に快挙と言えます。
ですのでE-M5 Mark IIIのAFの精度は、他社機の2倍になったと言っても良いくらいです。
そしてもう一つの注目点は、DC-G9の空間認識を利用したコントラストAFです。
DC-G9の空間認識技術の解説図
これはライビュー中の2枚の画像をサンプリングして、被写体の距離を推定するもので、これによってコントラスト方式のままで高速のAFを実現しています。
この場合、撮像素子の中に(画像情報として使えない)AF用のセンサーを埋め込む必要が無いため、間違いなく画像の再現性は高まります。
動画に拘(こだわ)りのあるパナソニックらしい取り組みと言えます。
連写速度
次は連写性能です。
これはもうフルサイズ未満の独擅場と言っても良いでしょう。
2017年にソニーからα9が発売され、電子シャッターでAF追従秒速20コマが話題となりました。
電子シャッターでAF追従秒速20コマを達成したSONY α9
ですが下の表をご覧になる様に、フルサイズ未満のミラーレス一眼でしたら、そんなのは当たり前でAF固定となると何と秒速60コマまで連写可能なのです。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3(注) | DC-G9(注) | |
---|---|---|---|---|---|---|
メカ | AF追従連写 | 5コマ/秒 | 10コマ/秒 | 11コマ/秒 | 11コマ/秒 | 9コマ/秒 |
AF固定連写 | 11コマ/秒 | 15コマ/秒 | N/A | N/A | 12コマ/秒 | |
電子 | AF追従連写 (解像度) |
N/A | 18コマ/秒 | N/A | 20コマ/秒 (2600万画素) 30コマ/秒 (1600万画素) ブラックアウト フリー |
20コマ/秒 |
AF固定連写 | N/A | 60コマ/秒 | N/A | N/A | 60コマ/秒 | |
6Kフォト | N/A | N/A | N/A | N/A | 30コマ/秒 (1800万画素) |
|
4Kフォト | N/A | N/A | N/A | N/A | 60コマ/秒 (800万画素) |
|
プリ連写 | N/A | 最大30コマ | N/A | 最大20コマ | 0.4秒前から対応 | |
順位 | 5位 | 2位 | 4位 | 3位 | 1位 |
フルサイズより撮像素子が小さいので、連写においては当然フルサイズ未満の方が有利なのですが、APS-CサイズのX-T3においては2600万画素で秒速20コマを達成しているのは立派です。
更に4/3サイズのDC-G9においては、解像度(画素数)が減るものの6Kフォトや8Kフォトにも対応していますので、バッファー容量を気にせず連続連写も可能です。
またNikon Z50とα6600以外はプリ連写にも対応していますので、例えばテニスボールがラケットに合たった瞬間を捕えようとする様な場合、かなり有効です。
もし動体撮影がメインでしたら、フルサイズ未満のカメラを選ぶ価値は十分あり、その中でもDC-G9、X-T3、E-M5 Mark IIIの順でお勧めと言えます。
なおNikon Z50は、この辺が他社機より遅れを取っていると言えます。
シャッタースピード
連写速度が分かった所で、次はシャッタースピードを見ておきましょう。
折角連写速度は速いのに、シャッタースピードが遅ければ話になりません。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
メカシャッター | 30" 1/4000 |
60" 1/8000 |
30" 1/4000 |
4" 1/8000 |
60" 1/8000 |
電子シャッター | 30" 1/4000 |
60" 1/32000 |
30" 1/4000 |
4" 1/32000 |
1" 1/32000 |
メカ同調速度 | 1/200 | 1/250 | 1/160 | 1/250 | 1/250 |
電子同調速度 | - | 1/50 | - | - | - |
順位 | 4位 | 1位 | 5位 | 3位 | 1位 |
という訳で調べてみると上の表の様に、残念ながらNikon Z50とα6600だけが一歩劣るという結果になりました。
どうもNikon Z50とα6600については、その上にフルサイズのミラーレス一眼があるためか、(フラッグシップになる他社モデルと異なり)そのサブ機の扱いになっている感じです。
いずれにしろ動体撮影には、E-M5 Mark II、X-T3、DC-G9がお勧めと言えます。
手ブレ補正
連写がフルサイズ未満の独擅場だとするとお伝えしましたが、手ブレ補正もそう言えるでしょう。
何しろ撮像素子が小さくて軽い分だけ、撮像素子を上下左右に動かし易いからです。
下の表をご覧頂きます様に、X-T3以外は全てボディー内手ブレ補正を有しており、更にフルサイズの手ブレ補正効果が最大でも5段程度なのに対して、フルサイズ未満は僅かながらそれを上回っています。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
ボディー内手ぶれ補正 | 無 | 5軸 | 5軸 | 無 | 5軸 |
最大手ぶれ補正効果 | N/A | 5.5段 | 5.0段 | N/A | 6.5段 |
順位 | 4位 | 2位 | 3位 | 4位 | 1位 |
特にDC-G9の最大手ぶれ補正効果6.5段は、1/60秒が必要な所が1.5秒でも撮れる事になりますので、びっくりする程の優れものと言えます。
という訳で、少なくとも手ぶれ補正に関して言えば、DC-G9の圧勝と言えます。
背面モニター
次は背面モニターです。
一眼レフと比較してライブビューでのAF性能がアップした事から、ミラーレス一眼で背面モニターを使って撮影する機会は明らかに増えました。
このため、背面モニターの見え方と操作性は非常に重要です。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
サイズ | 3.2型 | 3型 | 3型 | 3型 | 3型 |
解像度 | 104万ドット | 104万ドット | 92万ドット | 104万ドット | 104万ドット |
可変方式 | 2方向チルト (自撮り可) |
2方向チルト (自撮り可) |
2方向チルト (自撮り可) |
3方向チルト | バリアングル |
タッチパネル | 対応 | 対応 | 対応 (但し限定) |
対応 | 対応 |
順位 | 1位 | 4位 | 5位 | 2位 | 3位 |
上の表をご覧頂きます様に、背面モニターについては残念ながらα6600は他社機よりも明らかに劣る結果になっています。
動画性能
人によっては動画に余り興味ないかもしれませんが、ミラーレス一眼は動画と相性が良いので簡単に見ておきましょう。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
4K | 30P | 24P | 30P (オーバー サンプリング) |
60P | 60P (連続10分) |
フルHD | 120p | 60P | 60P | 60P | 60P |
ガンマ補正 | Flat | Flat | S-Log3 S-Log2 |
エテルナ F-Log |
V-LogL |
順位 | 3位 | 5位 | 4位 | 1位 | 2位 |
これをご覧になって、少々驚かれるのではないでしょうか?
先ずパナソニックのDC-G9については、本機以外に動画機能を優先したDC-GH5SやDC-GH5Sが存在しますので、動画機能が控え目なのは分かります。
ですがパナソニックと同様に動画にこだわりのあるソニーのα6600において、4K動画が30Pというのが驚きです。
また家電メーカーでもないフジフィルムのX-T3が4Kで60Pを達成していて、Nikon Z50がフルHDで120Pを達成しているも驚きではないでしょうか?
α6600の動画性能は、発売当初はS-Logまで搭載していて画期的だったのですが、競合機がどんどん性能アップしてきたため、これも目立たなくなってしまいました。
その他の性能
ほぼこれで結論は出たと思うのですが、その他の性能も簡単に見ておきましょう。
項目\機種 | Nikon Z50 | E-M5 Mark III | α6600 | X-T3 | DC-G9 |
---|---|---|---|---|---|
防塵防滴 | △ | ○ | △ | × | ○ |
メモリスロット | シングル | シングル | シングル | デュアル | デュアル |
フリッカー低減 | ○ | ○ | × | × | ○ |
ハイレゾ | × | ○ | × | × | ○ |
便利機能 | ストロボ内蔵 レンズにコントロールリング タイムラプス 多重露光 |
深度合成 フォーカスブラケット ライブコンポジット |
USB充電給電 大型バッテリー搭載 |
AWB ロック機構 |
深度合成 フォーカスブラケット 絞りブラケット 色温度ブラケット フォーカスセレクト |
順位 | 3位 | 2位 | 5位 | 4位 | 1位 |
これを見る限り、4/3サイズ2機種(E-M5 Mark IIIとDC-G9)の機能が豊富と言えます。
ボケ難い
さて、今まではひたすらフルサイズ未満の長所をお伝えしてきたのですが、ここで最大の弱点をお伝えしなければなりません。
それは、ご存知の通りフルサイズ未満のカメラはフルサイズと比べて、ボケ難いという事です。
ではどれくらいボケ難いのかを、実際の画像でお伝えしたいと思います。
下の写真はフルサイズ換算で85mmのレンズを使って、人物を撮影した画像です。
これをご覧頂きます様に、いずれもフルサイズで85mm相当のF1.2で撮影した画像なのですが、撮像素子が小さいほど背景のボケも小さくなっている事が分かります。
フルサイズ 85mm F1.2 |
APS-Cサイズ 56mm F1.2 |
4/3サイズ 42.5mm F1.2 |
1インチサイズ 32mm F1.2 |
実際の絞り値で説明すると、APS-CサイズのF1.2のボケは、フルサイズのレンズでF1.8まで絞った(1.25段絞った)のと同じになります。
また4/3サイズのF1.2のボケは、フルサイズのレンズでF2.4まで絞った(2段絞った)のと同じになります。
またボケの大きさで言えば、APS-Cサイズのボケはフルサイズの2/3になり、4/3サイズのボケはフルサイズの半分になります。
ただし、先ほどの写真を見て頂きます様に、APS-Cサイズでもそこそこ背景はボケていますし、4/3サイズでも被写体に近づけば、ある程度ボケを表現できます。
またフルサイズであっても、85mmをF1.2の開放のまま使うのは稀ですので、フルサイズ未満でもソコソコいけそうな感じではないでしょうか。
まとめ
さてまとめとして、本書独自のフルサイズ未満ミラーレス一眼のベスト5をお伝えしたいと思います。
なおこれは、今まで表の最下段に記述した順位の集計結果を元にしています。
第1位:Lumix DC-G9
誰がどう見ても、DC-G9が第1位なのは間違いないでしょう。
2018年1月に発売されたルミックスDC-G9
ファインダー性能、連写性能、AF性能、手ブレ防止性能、動画性能、そして値段から見てDC-G9がダントツの一押しです。
動体撮影がメインであれば、フルサイズを差し置いてでもお勧めしたいくらいです。
第2位:Fujifilm X-T3
第2位は、フジフィルムのX-T3です。
2018/9発売のFujifilm X-T3
何度もお伝えしています様に、連写速度や手ブレ補正については撮像素子が小さな4/3サイズ機が断然有利なので、順当にいけばE-M5 Mark IIIが第2位になると思っていました。
にも関わらず第2位に食い込んだとなると、かなりの実力の持ち主と言えます。
それでいて、画像が良くて、ボケもそこそこ期待できるのですから、もしポートレートが主体でしたら、X-T3が一押しになります。
第3位:Olympus E-M5 Mark III
スピード撮影ならばE-M5 Mark IIIと思っていたのですが、残念ながら最新のDC-G9に抜かれたといった感じです。
2019/11発売のOlympus OM-D E-M5 Mark III
ただしメカシャッターの連写性能と、AFセンサーが全てクロスタイプというのは高く評価できます。
第4位:Nikon Z50
続く第4位はNikon Z50です。
2019/11発売のNikon Z50
ニコン初のAPS-Cサイズのミラーレス一眼としては、上出来といった所ではないでしょうか。
本機は、このクラスとしては珍しくストロボ内蔵で、グリップが大きく、レンズにコントロールリングが付いて、暗闇に強いというのが強みです。
第4位:SONY α6600
最下位はソニーのα6600です。
2019/11発売のSONY α6600
本機が最下位になった原因は、他社機に対して特に秀でた所が無いのと、シャッタースピード、モニター、動画等で後れをとったためでした。
ただし先代のα6500に対して、バッテリーの大型化、ISO感度のアップ、システムの高速化、AFの性能アップ等が図られた事を考えれば、汎用機としての完成度が高まったと見るべきかもしれません。
と言いたい所ですが、どうもそれも違う感じです。
何故ならば、自撮り可能背面モニター、ISO感度のアップ、システムの高速化、AFの性能アップ等は全て入門機であるα6100や、中級機のα6400にも同じ様に盛り込まれているからです。
それらとの違いは、大型バッテリーとボディー内手ブレ補正だけ(おまけに内蔵ストロボは廃止)となると、この順番も致し方ないでしょう。