ボケゴミの原因

2017/03



はじめに


先ずは下の写真を、じっくり見て頂けないでしょうか。


85mm F2.8 1/90 ISO2000

これは点光源に彩られたライブハウスのステージを、故意にぼかして撮った写真なのですが、拡大して見ると下の写真の様に点光源のボケの中に、ポツポツとゴミの様なものが写っています。


85mm F2.8 1/90 ISO2000

何だこれは?

レンズの表面が汚れているのかなと思いながらも、ピントの合っていないレンズ表面の汚れが、これほどくっきりボケの中に写るのも考え難い事です。

そうでないとしたら、レンズの光学系に異常があるとしか思えません。

ならば、折角買った高価なレンズですので、メーカーにクレームを付けて何とか対処してほしいものです。

と言いながらも、万一レンズの汚れでしたら、かなり恥ずかしい事になります。

という訳で、このゴミの正体が一体何か、じっくり調べてみる事にしました。


再現試験


早速レンズに付いているフィルターを見てみると、しっかり汚れています。

レンズ表面が多少汚れていても、夜間の撮影で多少フレアーの影響があるかもしれないものの、ピントが合っていないのでそうそう画質には影響しないと思い、暫く掃除もしていませんでした。

直ぐに拭きたい所ですが、それでは原因が特定できないので、この状態で再現試験を行います。

ライブ会場では、点光源まで10mほど離れていたのですが、手っ取り早く先ずは3mほど先の懐中電灯の明かりをぼかして撮ってみます。


85mm F1.4 1/125 ISO100

これでですと、ゴミは写っていません。

試しに絞りをF2.8にしてみてもゴミは見当たりません。


85mm F2.8 1/125 ISO100

更にF5.6まで絞ってもやはりゴミは見えません。


85mm F5.6 1/125 ISO100

ただしこれを拡大してみると、ボケの周囲にコロナの様にフレアが発生しているが分かります。


85mm F5.6 1/125 ISO100

どうやら、懐中電灯の明かりでは、ライブ会場の光源よりかなり強くて光が飽和している様です。

という訳で、懐中電燈の反射傘を外して、電球の明かりを使って再現試験を行ないます。

すると見事に成功です。


85mm F1.4 1/125 ISO100

上の写真では分かり辛いですが、拡大すると以下の様になります。


85mm F1.4 1/125 ISO100

これをライブ会場のボケと比べると、ゴミの配置はどうも異なるものの、不良現象は再現できたと思って良さそうです。


85mm F2.8 1/90 ISO2000

恐らくこのゴミを消せれば、それが原因と言えるでしょう。

と言いながら、夜も遅くなってきたので、続きは翌日に持ち越しです。





原因追究


さて今日は原因の解明です。

真っ先にやってみたいにはフィルターの清掃だったのですが、その前にフィルターを外してみる事にしました。

下はbefore画像のフィルターを外す前ですが、しっかりゴミは写っています。


85mm F1.4 1/125 ISO100

ただしゴミの発生位置は前日と異なります。

なおこの理由については、後程ある仮説について述べたいと思います。

それでは次にフィルターを外してみます。


85mm F1.4 1/125 ISO100

するとご覧の通り、完全ではないものの、ゴミの量は一気に減りました。

どうやらフィルターを含めて、レンズ前面の汚れが関係するのは、間違いない様です。

また、当初はフィルター内側のレンズ表面は殆ど汚れていないと思っていたのですが、覗いてみると意外にもレンズ表面(前玉)にも僅かながらゴミが付いています。

今度こそこのレンズを清掃して、本件は一件落着にしようかと思ったのですが、できればもう少し明確な確証がほしくなってきました。

すなわち、レンズを清掃したからボケ内のゴミが消えたではなく、レンズに付いたゴミと、ボケの中に写ったゴミを、1対1に対応させたくなってきました。


汚れたフィルターに貼付した透明フィルム

と言う訳で、上の写真の様に大き目の透明フィルムをフィルターに貼付して、再度ボケ写真を撮ってみる事にしました。

ついでに言っておきますと、フィルターもレンズもまだ一切掃除はしていません。


85mm F1.4 1/125 ISO100

すると見事に、上の写真の様に故意に付けたフィルムがボケの中に表れました。

これによって、ボケの中に表れたゴミはレンズ表面もしくはフィルター表面に付いた汚れが原因と断定しても良さそうです。

できればこの次に、レンズの後玉を汚してボケに影響するかどうか確認したい所ですが、流石にそこまでは面倒なので諦めたいと思います。

ですが恐らく同じ様にボケに影響すると推測されます。

またレンズ表面の汚れがどうしてもボケの中に合焦するのか光学的に解明したい所ですが、それについては専門家にお任せしたいと思います。


何故レンズ表面の汚れがボケ画像の中に合焦するのかは不明

ただしもう一つ、どうしても確認したい事があります。

それは、今までのボケはレンズの焦点距離を一番近くした場合の前ボケだったのですが、これが後ボケにしたらどうなるかです。

という訳で、ピントリングを無限遠にして、後ボケにした画像が以下の通りです。


85mm F1.4 1/320 ISO100

ご覧の様に前ボケのときと比べて、フィルムの像が180度回転(もしくは上下左右反転)した画像になりますが、しっかりレンズ表面に貼ったフィルムが写っています。

すなわち、前ボケでも後ボケでもレンズ表面の汚れはボケ画像に影響するという事です。

そして今回もう一つ気が付いた事があります。

下の写真を見比べて頂きます様に、ボケが画面のどこにあるかによって、ボケ内のゴミの位置も微妙に変わる事です。


ボケの位置によってゴミ(黒点)の位置も変化する

ですので、前段の試験でゴミの配置が異なっていたのは、画面上でボケの位置が異なったのが原因だったと思われます。


まとめ


いかがでしたでしょうか?

ほぼ予想通りの結果と言えるかもしれませんが、今までの試験結果をまとめると以下の様になります。

①レンズ表面が汚れていると、撮影したボケの中にそのゴミが写るので、もし点光源のボケを強調して撮りたいのならば、レンズ表面は綺麗にしておく必要がある。

②ただし面光源の場合、点光源のボケが、無数に重なる事になるので、それほど気にしなくても良いかもしれない。

③なお本現象は、前ボケでも後ボケでも発生する。

③またボケの中のゴミの位置は、画像内のボケの位置によって変化する。


本記事がお役に立てば幸いです。





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