α7Cは星空ポートレート最強カメラ
2021/05/23:発行
はじめに
ソニーのα7Cをご存知でしょうか。
小型フルサイズミラーレスカメラのα7C
2400万画素の撮像素子を搭載したフルサイズのミラーレスカメラなのですが、これが最近巷で流行の星空ポートレートに打って付けなのです。
星空ポートレート(F2.8 15秒 ISO3200)
なぜそう言えるのか、これからじっくりご説明したいと思います。
高感度特性
星空ポートレートにおいて重要なのは、当然ながら高感度特性です。
星をだけを撮るのでしたら、赤道儀を使ってシャッタースピードを遅くする手もあるのですが、人物も一緒に撮るとなったら、シャッタースピードを遅くするのも限界があります。
そんな訳でISO感度が高いほど、シャッタースピードを早くして人物のブレを抑える事ができます。
本機の撮像素子は裏面照射型を採用している事もあり、最大常用ISO感度は51200です。
ISO100をEV0としたフルサイズカメラのISO感度スパン
上のチャートをご覧頂きます様に、もっと低画素機では102400を達成している機種もあるのですが、普及機クラスで51200を達成していれば十分でしょう。
深い被写界深度
次は被写界深度です。
ご存知の様に星空ポートレートは、無限遠にある星と近場の人物の両方にピントが合ってなければなりません。
そのためには、どうしても被写界深度を深くしなければなりません。
となると思い付くのは、絞りを絞るとか広角レンズを使う事ですが、それ以上に有効なのが撮像素子を小さくする方法です。
これは、撮像素子の小さなスマホの画像が、被写界深度が深くなるのと同じ理屈です。
ただし撮像素子の小さなカメラは感度が低いので、高感度のフルサイズカメラをAPS-Cサイズにクロップすると、高感度のまま被写界深度を深くして撮る事ができるのです。
例えば、フルサイズ機に24mmのレンズを付けて、絞りF2.8で撮ったとします。
フルサイズ機の被写界深度
すると上の図の様に、ピント位置を過焦点距離の7mに設定すると、被写界深度は3.6m~∞になります。
すなわちフルサイズのままですと、人物から3.6m以上も離れていないと人物と星の両方にピントを合わす事ができないのです。
フルサイズ24mmの画角で人物までの距離3.6m
一方フルサイズ機をAPS-Cサイズにクロップして、同じ画角となる焦点距離16mmのレンズを付けて、同じく絞りF2.8で撮ったとします。
フルサイズ機をAPS-Cサイズにクロップした場合の被写界深度
このときピント位置を過焦点距離の2.7mに設定すると、被写界深度は何と1.4m~∞になるのです。
フルサイズ24mmの画角で人物までの距離1.4m
被写体まで1.4mに近付いても、星と人物の両方にピントが合うのは、何とも耳寄りな話ではないでしょうか。
APS-Cサイズのレンズが豊富
このフルサイズ機をAPS-Cサイズにクロップするのは、どんなフルサイズカメラでも可能なのですが、α7Cの利点はAPS-Cサイズ用のレンズが豊富に揃っている事です。
下はその一部ですが、さすがに早くからミラーレスカメラに移行していただけあって、APS-Cサイズのレンズが豊富にあるのはかなり魅力的です。
E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS |
E16mm F2.8 |
VCL-ECU2 ウルトラワイド コンバーター |
VCL-ECF2 フィッシュアイ コンバーター |
特にE16mm F2.8については、純正のコンバーターレンズを装着すると、レンズの開放値は同じまま更に超広角の画角を楽しむ事ができます。
とは言え、レンズが豊富なのはソニーの他のフルサイズ機でも同じ事です。
そんな訳で、次はなぜα7Cが星空ポートレートに向いているかを、ご説明したいと思います。
小型軽量
その最大の理由は、小型軽量である事です。
α7Cの重さは、電池等込みでたったの509gです。
一方一眼レフスタイルのα7 IIIは、650gです。
α7Cは従来機と比べて2割小型軽量
たった141gの差ですが、これは暗闇での撮影で少しでも機材を軽くしたい場合、かなり有効です。
ちなみにAPS-Cサイズ機のα6600が503gですので、APS-Cサイズ機と同じ重さであると思えば、その軽さを実感して頂ける事でしょう。
α7CはAPS-Cサイズ機とほぼ同じ大きさ
更にこれによって、一回り小さな三脚を使えるのですから、その優位性は図り知れません。
ブライトモニタリング機能が使える
これは秀逸です。
通常星明かりだけの環境では、ファインダーを覗いても何も見えないのですが、このブライトモニタリング機能を使うと、下の様に被写体が確認できるのです。
ブライトモニタリング機能のイメージ
このため構図確認のために照明を点けなくて良いのは、周囲に別の撮影者がいる場合は多いに助かります。
本機能はα7 IIIから追加されたのですが、他社機にも是非ほしいものです。
残念な所
とは言え、残念な所もあります。
先ず1点目が、好みの問題があるでしょうが、背面モニターがバリングル式な事です。
暗闇で大きく開いたモニターにぶつかって、壊したりしないか、心配で夜も眠れなくなってしまいます。
また星空ポートレートの場合、空を大きく画面に入れるため、三脚を1m以上伸ばして使う事は滅まずありません。
むしろ地上から数十cm程度の高さにするのが普通ではないでしょうか。
そうなるとファインダーは低くて覗けないので、思い切ってファインダーレスになれば、その分安くなって良かったと言えます。
更に言えば、星空ポートレートでは三脚が必須なので、ボディー内手振れ補正も不要と言えます。
SIGMA fp
そういう意味では、ファインダーレスでボディー内手振れ補正もなく、α7Cと同じ撮像素子を搭載しているシグマのSIGMA fpも星空ポートレートに向いていると言えるのですが、如何せんα7Cと似た価格です。
またAPS-Cサイズ用のLマウントレンズも数が少なく、使えそうなのは16mm F1.4 くらいです。
SIGMA 16mm F1.4 DC DN |
そんな訳で、やはり星空ポートレートに最適なカメラは、α7Cと言えそうです。
まとめ
それではまとめです。
以下の理由により、α7Cは星空ポートレートに最適なカメラである。
①本機の最大常用ISO感度は51200と、フルサイズ機の中でもトップクラスである。
②APS-Cサイズのレンズが豊富にある。
③小型軽量である。
④ブライトモニタリング機能が使える。
正直な所、フルサイズ機としてみるとα7Cは全く魅力を感じないのですが、高感度で被写界深度の深いAPS-Cサイズ機としてみると、俄然魅力を発揮します。