ドットとピクセルの違い

2019/3: 発行
2019/5:大幅改定
2020/06:更新
2021/01/10:誤記訂正
2021/08/12:大幅改訂

はじめに


ドットとピクセルの違いを正確にご存知でしょうか?

ネットで調べると、同じと言ったり、違うと言ったり、同じだけど違うと言ったり、それはもう良く分からない説明が溢れかえっています。

という訳で、本書がその違いを分かり易くご説明したいと思います。


ドットに関するネット記事


本書の解説を始める前に、ネットにおけるドットとピクセルに関する代表的な説明を見ておきたいと思います。

もし不要でしたら、この3段下の”ドットとは”に進んで下さい。

先ずドットをネットで調べると、多少の違いはあるでしょうが、以下の様な説明が出てきます。

ドットとは、基本的には「点」という意味。

たとえば、パソコンの画面は小さな光の点で表現されていて、その数(解像度)を1024×768ドットなどと書くことがある。

この場合は、横方向に1024個の光の点が、縦方向に768個の光の点が並んでいるという意味。

これはまだ分かり易いと言えますが、問題は次のピクセルです。


ピクセルに関するネット記事


それでは次にピクセルを調べると、以下の様な説明が出てきます。

ピクセルとは画素を意味する。

パソコンの画面は、細かな光の点で表現されている。

たとえばXGA(1024×768ドット)なら、横方向に1024個、縦方向に768個、全体では786,432個の光の点が並んでいる。

この、ひとつひとつの点を画素という。

パソコンの画面は、RGB(赤、緑、青)の3色の組み合わせで色を出している。そのため、このワンセットで1画素というのが基本。

特に液晶ディスプレイの場合、そのディスプレイの標準解像度で使えばキッチリと1画素=1ドット=RGBのワンセットになる。

一方、今のCRTは解像度を切り替えられるので、必ずしも1画素=1ドットというわけにはいかない。


ドットとピクセルは同じものなのか?


さあ、上の二つの説明文を読んで、両者の違いを明確に理解された方はいらっしゃいますでしょうか?

笑ってしまうほど、支離滅裂と言ったら言い過ぎかもしれませんが、かなり矛盾している内容なのは間違いないでしょう。

何しろ、ピクセルの説明文の中で”1画素=1ドット”と言っていながら、次の文で”は必ずしも1画素=1ドットというわけにはいかない。”と書かれているのですから。

さらには、”今のCRTは解像度を切り替えられる”と聞いて絶句してしまいます。


今どき何処にも売っていないブラウン管(CRT)

ちなみにこの記事は、個人サイトではなく、非上場企業ながらNTTコミュニケーションズの子会社である、NTTPCコミュニケーションズの公式HPからの引用です。

日本を代表するIT企業の子会社でさえ、こんな説明なのですから、コピペばかりの個人サイトの記事でしたら、推して知るべしでしょう。

本サイトも似たり寄ったりの弱小サイトではありますが、これから間違いなく真実をお教えしますのでご安心下さい。


ドットとは


それでは本書独自の解説です。

かなり端折(はしお)った言い方かもしれませんが、ドットとは以下の様にご理解頂ければと思います。

ドットとは、画像入出力装置において光の強弱を表現できる最小単位を指す。


なお、ここでは色について全く触れていないのを不思議に思われるかもしれませんが、それこそがまさにピクセルとの大きな違いなのです。

すなわち、ピクセルとはフルカラーを表現できる最小単位なのに対して、ドットは光の強弱だけしか表現できないので、白黒もしくは単色しか扱えないのです。

ところが一部の画像入出力装置においては、1ドットでフルカラーを表現できる物があるから、話がややこしくなるのです。

なお、ここで言う画像入力出力装置とは、以下の様な機器を指します。

分類
画像入力装置 イメージスキャナ
デジタルカメラ等
画像出力装置 液晶モニター
インクジェットプリンタ
レーザービームプリンタ等

ここまでご理解頂いた所で、それではいよいよ各画像入出力装置における1ドットをお知らせしたいと思います。


イメージスキャナ

先ずは画像入力装置の一番手として、原稿や写真を読み取るイメージスキャナです。


Appleのイメージスキャナ

イメージスキャナの画像読み取り部には、いくつか種類があるのですが、ここでは下にある様な板状のレンズアレイを搭載した比較的安価でシンプルなものを取り上げます。


レンズアレイを使たイメージスキャナの画像読み取り部

上記の様な構成のイメージスキャナの場合、一列に並んだイメージセンサーの中にある1つの受光素子が1ドットになります

イメージセンサーの中の1受光素子が1ドット

ちなみにイメージスキャナの仕様書に1200dpi(ドットパーインチ)と書かれていたら、上の様なイメージセンサー上に1インチ(25.4mm)当たり1200個(1mmに47個)の受光素子が並んでいる事になります。

これについては、どなたもすんなりご納得頂けるのではないでしょうか。


デジタルカメラ

続いては、画像入力装置の代表選手であるデジタルカメラです。


カメラとその内部にある撮像素子

この場合、前述のイメージスキャナとは異なり撮像素子の上に赤青緑のカラーフィルターが乗っていて、その下に受光素子が面状に配置されいます。


デジタルカメラの場合、撮像素子の中の1素子が1ドットになる

ですが考え方はイメージスキャナと同じで、撮像素子の中に数千万個ある内の1受光素子が1ドットになります。


液晶モニター

次はどこのご家庭にもある、画像出力装置の一つである液晶モニター(或いは液晶テレビ)です。


どこのご家庭にもある液晶モニター

液晶画面を虫眼鏡で拡大したときに見える赤青緑に光る一つの素子(正確には裏面の光を液晶が透過したり遮ったりしています)が、表示できる最小単位の1ドットになります。


液晶モニターの場合、一つの光る素子が1ドットになる      

この場合、液晶自体に色が付いているのではなく、液晶の上に赤青緑のフィルターが乗っていて、裏側の光源によって赤青緑に光って見えます。


インクジェットプリンター

次は、画像出力装置のインクジェットプリンターです。


インクジェットプリンター

この場合、表示できる最小単位はインクの一滴であり、それが1ドットになります。


インクジェットプリンターの場合、インク1滴が1ドットになる

これで各画像入出力装置のドットについては、スッキリご理解頂けたと思うのですが、いかがでしょうか。


ピクセルとは


それでは次にピクセルについてご説明します。

ピクセルとは、画像入出力装置においてカラー画像を表示するための最小の単位を指します。

このため、既にお伝えしました様にドットは白黒もしくは単色しか表現できないの対して、下のリンゴの図にあります様に一つのピクセルはフルカラーを表現できます。


1ピクセルはフルカラーを表現できる

今度は説明し易い事から、順番を変えて画像出力装置である液晶モニターから話を進めたいと思います。

液晶モニター(3ドット=1ピクセル)

先ほどは、液晶画面を虫眼鏡で拡大して見える一つの光る素子が、1ドットになるとお伝えしました。

一方ピクセルとは、カラー画像を表すための最小単位ですので、どうしても赤青緑の三つを組み合わせたものが必要になります。

ですので液晶モニターの場合、赤青緑の三つのドットを一つにまとめたものが1ピクセルになります。


液晶モニターの場合、赤青緑のドットをまとめたものが1ピクセルになる

これでドットとピクセルの違いはかなり明確に分かってきて頂いたと思うのですが、いかがでしょうか。

すなわち、液晶モニターの場合でしたら、ドットの数とピクセルの数は3倍違う事になります。

ところで、先ほどNTTPCコミュニケーションズ の記事を、引用させて頂きました。

そこにはXGA(1024×768ドット)と書かれていましたが、これは明らかな間違いで、正しくはXGA(eXtended Graphics Array)の解像度は1024×768ピクセルです。

ですので、もしこれをドットで表すと、ピクセルの3倍になりますので、XGA(eXtended Graphics Array)の解像度は3072×768ドット(2021/9/4:誤記訂正)になります。


インクジェットプリンター(256ドット=1ピクセル)

次にインクジェットプリンターです。

先ほどお話した様にインクの1滴が1ドットになり、3色(正確には黒を入れて4色)のインクが用紙の同じ所に着弾します。


インクジェットプリンターの場合、インク1滴が1ドットになる

このため、1ドットでフルカラーを表現できますと言いたい所ですが、そうではありません。

もし1ドットが1ピクセルでしたら、下の図の様に3色を混ぜる(1通り)、2色を混ぜる(3通り)、1色のみ使う(3通り)の計7通りの色しか表現できません。


色の3原色だけでは7色しか表現できない

ではフルカラーを表現するためにはどうするかと言えば、以下の様に1ドットを縦横に16個ずつ配置した仮想の256マスのパレットを3色分用意します。


プリンターのドットと画素のイメージ図

そして入力された8ビットの色情報(256諧調)に沿ったインクを仮想パレット上に用意し、用紙上の同じ場所にそれらの色を着弾させます。

なお上の図では、分かり易くするため同じ場所(ドット)に着弾した色のみが混じり合った状態で描いていますが、実際は3色のインク(液体)が異なる量で混じり合いますので、全体として見れば7色以上の微妙な色が再現できるという訳です

これを16×16のマスを使って調合すれば、1色で256諧調が再現でき、それが3色あれば256×256×256の1700万色が(液晶モニターと同様に)再現できます。

ちなみに上の図の様な混色でしたら、白の面積が大きいので非常に薄い肌色が再現できる事になります。

すなわち、1画素を表示するのに、液晶モニターは(1ドットの明るさを調整できるので)3ドットで済むのに対して、プリンターの場合256ドットも必要になるとういう訳です。

こんな説明でご納得頂けますでしょうか?

結論としては、インクジェットプリンターにおいては、16×16の256ドットが1ピクセルになるという訳です。

なおこれは、レーザービームプリンターでも同じです。

またプリンターの場合、ピクセルはではなく、ドットで表示されるのが一般的です。


デジタルカメラ(1ドット=1ピクセル)

次は、デジタルカメラのピクセルです。

デジタルカメラの撮像素子の表面には、先ほどお伝えした様に赤青緑のフィルターが載っていて、その下に受光素子が面状に配置されています。


デジタルカメラの場合、撮像素子の中の1素子が1ドットになる

ですので、液晶モニターの様に赤青緑(正確には赤青緑緑の計4ドット)をまとめたものが、1ピクセルになります、と言いたい所ですが違うのです。

デジタルカメラの場合、1ドット=1ピクセルになるのです。

エッ!と驚かれたら、ここまでしっかり理解されている証拠ですので、安心してください。

その理由は、当然ながら1ドットでは1色の色情報しか読み取れないのですが、デジタルカメラの場合他の2色の色情報を周囲の別の色の素子から推測して、1ドットに3色分の色情報を持たせているのです。

こんな簡単な説明でご理解頂けるでしょうか。

この辺の詳しい話はこちらに載せていますので、もしもう少し詳しく知りたい方は覗いてみて頂ければと思います。


イメージスキャナ(1ドット=1ピクセル)

最後はイメージスキャナです。

これについても、先ほどのレンズアレイを使ったものでご説明します。


レンズアレイを使たイメージスキャナの画像読み取り部

イメージスキャナは、デジタルカメラと違ってカラーフィルターは使っていませんし、イメージセンサー(受光素子)は1列に並んでいるだけです。

だったらどうやって3色の色情報を取り込んでいるかと言えば、赤青緑のLEDを順番に点灯して、それぞれの色情報を時間をずらして一つの受光素子で読み込んでいるのです。

ですので、この場合も1ドットが3色の情報を持っていますので、1ドット=1ピクセルと言えます。

ただしイメージスキャナの場合、当初は白黒専用で後にカラー対応になった事もあり、ピクセルと呼ぶ事は殆どなく、白黒だろうがカラーだろうがドットと呼ぶのが一般的です。



まとめ


それではまとめです。

ドットとは、画像入出力装置において光の強弱を読み取ったり表示したりできる最小の単位を指す。

②このため、デジタルカメラやイメージスキャナにおいては、1つの受光素子が1ドットになり、液晶モニターは液晶の1素子が、インクジェットプリンターにおいてはインク1滴が1ドットになる。

③ピクセルとは、画像入出力装置においてフルカラーを表すための最小の単位を指す。

④このため、液晶モニターにおいては赤青緑の3ドットで1ピクセルになる。

⑦またプリンターにおいては、インクやトナーを混ぜ合わせる必要があるため、256ドット=1ピクセルになる。

⑤デジタルカメラにおいては、1ドットに3色の色情報を持たせているため、1ドット=1ピクセルになる。

⑥イメージスキャナにおいては、1ドットで3色の色情報を読み込めるので、1ドット=1ピクセルになる。

⑦白黒専用の画像入出力装置の場合、ピクセルの概念は必要とされない。

⑧全体をまとめると以下の様になります。

装置 種類 関係
画像入力装置 イメージスキャナ
デジタルカメラ
1ドット=1ピクセル
画像出力装置 液晶モニター 3ドット=1ピクセル
インクジェットプリンタ
レーザービームプリンタ
256ドット=1ピクセル

これでドットとピクセルの違いを、明確にご理解頂けたのではないでしょうか。

なおついでにdpi(dot per inch)とppi(pixel per inch)の違いについて知りたければ、是非こちらへ。

これを読んで頂ければ、モニターとプリンターでは、どちらがより高解像度なのかが分かります。




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