RF600mm F11とRF800mm F11は買いなのか?

2020/12/09: 発行

はじめに


ご存知の様に、本年8月にキヤノンからDOレンズを採用した軽量コンパクトなRF600mm F11とRF800mm F11の2本の超望遠レンズが発売されました。


RF600mm F11

RF800mm F11

当初このレンズを見たときは、一昔前手持ちで望遠撮影ができたミラーレンズを思い出させ、もしかしたらキヤノンは新たな金鉱を掘り当てたのではないかと思ったのですが、よくよく考えてみるとそうでもなさそうです。


Minolta
AF Reflex 500mm F8

Nikon
Reflex 500mm F8
手持ちで撮影できた昔懐かしいミラーレンズ

何故ならば、小サイズ機用の望遠レンズであれば、同じ画角の超望遠レンズをもっと小型で実現できるからです。

例えばAPS-Cサイズであれば、600mmを1.5で割って400mm、800mmでしたら500mmの焦点距離で超望遠レンズを実現できますので、単純計算で全長を60%に短縮でき、当然ながら価格も更に抑える事ができます。

ただし1画素の受光量をフルサイズと同じにして画質を同じにするには、APS-CサイズであればF11を1.5で割ったF7.3、マイクロ4/3でればF11を2で割ったF5.5の明るいレンズにする必要があります。

そうすると、絞り開放時の被写界深度も同じになります。

これを撮像素子のサイズ毎にまとめた表が以下になります。

撮像素子 600mmレンズ 800mmレンズ
フルサイズ 600mm F11(55mm) 800mm F11(73mm)
APS-Cサイズ 400mm F7.3(55mm) 533mm F7.3(73mm)
マイクロ4/3 300mm F5.5(55mm) 400mm F5.5(73mm)
1インチサイズ 222mm F4.1(55mm) 296mm F4.1(73mm)
同じ画角と画質になるレンズの相関表(かっこ内はレンズ口径)

この表から、撮像素子が小さくなればレンズの全長はどんどん短くなると共に、レンズ口径は変わらないので太さは同じにままだという事が分かります。

ここまで分かった所で、実際にその様なレンズがあるかどうか調べてみたいと思います。


APS-Cサイズ


先ずはAPS-Cサイズ用レンズですが、これは先ほどお伝えしました様に400mm F7.3533mm F7.3が対象になります。

以前調べたときは、このカテゴリーの望遠レンズはAPS-Cサイズ機には存在していないと思っていたのですが、サードパーティー製レンズも入れて調べてみるとしっかり有るではありませんか。

E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS XF200mmF2 R LM OIS WR 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM
(525mm F4.2) (300mm F1.3) (600mm F4.2) (450mm F4.2) (900mm F4.2)
ソニー フジフィルム タムロン シグマ シグマ
注:( )内はフルサイズと同じ画角と画質になる焦点距離と絞り値

それが上の表の右側にあるシグマとタムロンのレンズです。

例えばタムロンの18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLDでしたら、フルサイズ換算で600mm時にF4.2ですので、ターゲットとなるRF600mm F11より2.8段も明るくて、且つ全長も短く、価格もRF600mm F11よりかなりお安くなります。

なおこのレンズは、キヤノンのEFマウントとニコンのFマウントしかないのですが、マウントアダプターを使えばEOS Kiss MですとかNikon Z50の様なAPS-Cサイズのミラーレス一眼にも使用可能です。

さらにシグマの150-600mm F5-6.3 DG OS HSMに至っては、フルサイズ換算で900mm F4.2の超望遠レンズになり、焦点距離も明るさも全長も価格もRF800mm F11を凌いでいるではありませんか。

これから考えると、やはり超望遠レンズは小サイズ機が有利なのは間違いなさそうです。

さらにもし、APS-Cサイズで安い単焦点の超望遠レンズが発売されれば、価格や大きさから言ってRF600mm F11やRF800mm F11は軽く駆逐されてしまうのではないでしょうか。


マイクロ4/3サイズ


次はマイクロ4/3(フォーサーズ)です。

この場合、300mm F5.5と400mm F5.5が対象になります。

それで見つけたのが、以下の4本です。


M.ZUIKO
DIGITAL ED
300mm F4.0 IS PRO

M.ZUIKO
DIGITAL ED
75-300mm F4.8-6.7 II

LUMIX G
VARIO 100-300mm
F4.0-5.6 II

VARIO-ELMAR
100-400mm
F4.0-6.3 ASPH
(600mm F8) (600mm F13.4) (600mm F11.2) (800mm F12.6)
注:( )内はフルサイズと同じ画角と被写界深度になる焦点距離と絞り値

かなりお高いレンズもあるのですが、 LUMIX G VARIO 100-300mm F4.0-5.6 II の様に正にRF600mm F11と真っ向勝負のレンズも存在します。

その外観を見ると、(予想通り)太さはRF600mm F11とほぼ同じながら全長はその半分で、価格も大幅に安くなっています。

それでいて、(何度も言いますが)画角も被写界深度も画質もフルサイズのRF600mm F11と同じ写真が撮れるのです。

だったら何も高いRF600mm  F11を購入する必要はないでしょう。


1インチサイズ


既に結論は分かっているのですが、念のためにマイクロ4/3より更に小さい1インチサイズの機種においても、222mm F4.1や296mm F4.1に該当するレンズがあるかどうか調べてみました。

RX10 M4
8.8-220mm F2.4-4
G3 X
8.8 - 220mm
F2.8- F5.6
DMC-TX2
8.8-132mmmm
F3.3 - 6.4
(600mm F11) (600mm F15) (450mm F4.2)
ソニー キヤノン パナソニック
注:( )内はフルサイズと同じ画角と被写界深度になる焦点距離と絞り値

すると、しっかりあるではありませんか。

何とソニーのRX10 M4の搭載しているレンズは、RF600mm F11と全く同じです。


1インチの撮像素子と25倍の高倍率ズームを搭載したRX10 M4

写真からすると、レンズ鏡筒部の外径は80mmで、望遠端でのカメラ本体を含めた全長は235mm程ありそうです。


外径約95mm、本体奥行最大約230mmのRX10 M4

一方RF600mm F11が、使用時で外径93mm、全長270mmです。


外径93mm、撮影時の全長270mmのRF600mm F11レンズ

RF600mm F11は、DOレンズを使用する事によって、600mmの超望遠レンズとしては非常に短いのですが、それでも当然ながらRX10 M4の小ささには敵(かな)いません。

にも関わらずこの2本のレンズにおいては、カメラ本体の画素数が同じであれば、画質を含めて全く同じ写真が撮れるのです。

依然フルサイズと1インチサイズのカメラで同じ画質の写真が撮れる訳がないと思われる方に、くどい様ですがもう一度ご説明しましょう。

不要なら青枠は飛ばして頂いて結構です。


RX10 M4は2000万画素です。

ですので、RF600mm F11のレンズに同じくフルサイズで2000万画素のEOS R6を装着したとします。

それで先ず、RX10 M4の望遠端を使って、絞り開放(F4)のシャッタースピード1/1000秒のISO100で人物を撮ったとします。

これと同じ被写体をRF600mm F11で撮るとすると、絞り開放(F11)のシャッタースピード1/1000秒で、ISO感度を800(正確には770)まで上げないといけないのです。

これに伴ってフルサイズの画質のアドバンテージは見事に消え去って、両者の画質は同じになってしまうのです。

フルサイズ機はISO100で撮っている限り間違いなく小サイズフォーマット機より画像はよいのですが、ISO感度を200にすると画質はAPS-Cサイズ機並みになり、ISO400にするとマイクロ4/3機並みになり、ISO800にすると1インチサイズ機並みになってしまうのです。

特に今回の超望遠レンズの様に開放値がF11と暗い場合、必然的にISO感度を上げる事なってしまい、気が付くと小サイズフォーマット機と同じ画質で撮っている可能性が高いのです。

だったら、何もこの超望遠レンズをフルサイズで使わなくても、もっと安くて軽い小サイズフォーマット機で使うべきではないかと言うのが、幣サイトの考えです。


まとめ


それではまとめです。

①RF600mm F11やRF800mm F11の様にフルサイズ用の暗い超望遠レンズについては、価格/大きさ/画質の観点から小サイズフォーマット機の方が断然有利である。

②このため、既にEOS Rシリーズをお持ちの方以外には、両レンズは余りお勧めできない。





RF600mm F11とRF800mm F11は買いなのか?





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