SONY α1を急ぎEOS R5と比べてみた
2021/01/27:発行
2021/02/12:追記
2021/02/12:追記
はじめに
2021/1/27(水)、ソニーのα1が発表されました。
税込み90万円のSONY α1
ミノルタ時代からの掟を破って、αシリーズに1の名称を付けてきた事に、ガックリしたのは幣サイトだけではないでしょう。
それはともかく、このα1の宿敵とも言えるEOS R5と急ぎ比べてみましたので、結果をご報告させて頂きます。
スペック比較
簡単にスペックを比べてみると、以下の様になります。
項目\機種 | α1 | EOS R5 |
撮像素子 | 5000万画素 | 4500万画素 |
常用ISO感度 | 100- 32000 |
100- 51200 |
測距輝度 | EV-4 | EV-6 |
シャッター (電子) |
1/8000-30秒 (1/32000-0.5秒) |
1/8000-30秒 (1/8000-0.5秒) |
シンクロ 同調速度 |
1/400秒 (電子1/200秒) |
1/200秒 (電子先幕1/250秒) |
手ブレ補正 | 5.5段 | 8段 |
連写 (電子) |
10コマ/秒 (30コマ/秒) |
12コマ/秒 (20コマ/秒) |
ファインダー | 940万ドット 240fps |
576万ドット 120fps |
モニター | 3型 144万ドット チルト |
3.2型 210万ドット バリアングル |
動画 | 8KUHD30P (30分) |
8KDCI/UHD30P (20分) |
価格 | 90万円 | 50万円 |
これをご覧頂きます様に、本機の最大の売りは、電子シャッターによる秒速30コマの連写性能と、30分の8K30P動画撮影機能なのでしょう。
とは言え、5000万画素の秒速30コマの連続写真は、8K30Pの動画と似た様なものですので、特に驚きもありません。
実際EOS R5は8K30PでのRAW撮影が可能ですので、これを使えば3500万画素で秒速30コマの写真を撮ったのと同じ事になるのです。
またAF-Cで秒速30コマを使えるのは、ソニー製純正レンズの一部に限られています。
更に8K30Pについても、世界初ならともかく所詮EOS R5の二番煎じですし、性能も明らかにEOS R5の方が格上です。(詳細はこちら)。
例えばα1は8K30p(4:2:0 10bit)をアピールしていますが、EOS R5は8K30Pの12bitRAWファイル(すなわち4:4:4 12bit)に対応しており、更にMP4による4K(DCI)動画の同時録画まで可能なのです。
おまけにEOS R5はDCI規格の8Kにも対応しているのです。
またα1における8K30Pの録画時間が30分になっていますが、EOS R5の場合はカメラ内部を守るためというより、人が低温火傷をしない様にかなり早い時点で保護回路を働かせている様なので、この録画時間の違いがハードの差なのか、或いは社内の安全基準の差なのかは定かではありません。(連続撮影時間の詳細についてはこちら)
そんな訳で、残念ながらこれでThe one never seenと呼ぶのはかなり大袈裟だったという印象です。
高評価ポイント
とは言え、さすがと唸(うな)らせる所もあります。
その一つが、ストロボ同調速度です。
一般的なカメラのストロボ同調速度は1/250秒なのですが、最近ルミックスのS1シリーズが1/320秒を達成していました。
それを抜いて、α1が1/400秒を達成したのは立派です。
α1の1/400秒のストロボ同調写真
ご存知ないでしょうが、その昔ミノルタは1992年に発売したα9xiにおいてシャッタースピード1/12,000秒(ストロボ同調速度1/300秒)を達成していたのです。
今もなお破られないシャッタースピード1/12,000(X:1/300)秒を達成したミノルタα9xi
α1の幕速度が1/400秒となると、恐らくその気になればメカシャッターで1/12000秒以上は出せたのでしょうが、電子シャッターとの兼ね合いでそこまでは上げなかったのでしょう。
そしてこのメカシャッターの開発に、旧ミノルタの技術者が関わったのは間違いないでしょう。
なおこの幕速度アップはストロボ同調速度だけではなく、メカシャッターにおける動体歪も低減できます。
この場合、一般的なシンクロ同調速度1/250秒のカメラと比べると、歪が60%も改善されますので、後述します電子シャッターの歪改善よりも効果は上です。
なぜソニーはこの事をアピールしないのでしょうか?
α1のメカシャッターは単幕シャッターだった
2021/02/12:追記
その後分かったのですが、α1は電子先幕シャッターと電子シャッターしか搭載していません。
すなわち、メカシャッターは前幕の無い単幕シャッターだったのです。
この場合、明るいレンズで高速シャッターを切ると、ボケ欠けが発生します。
高速の電子先幕シャッターを使うとボケ欠けが発生する
α1の仕様書を見ると、シャッターは電子先幕シャッター/電子シャッター/AUTOから選べる様になっていますので、もしかしたらその様な場合はいきなり電子シャッターに切り替わるのかもしれません。
撮影中にいきなりシャッター音が無くなったら、不気味です。
入門機ならいざしらず、フラッグシップ機でありながら単幕シャッターにするとは、ソニーも思い切った事をするものです。
ソニーとしては、大口径レンズを使って明るい所で人物を撮るのならば、スキャン速度もアップしたのでNDフィルターを使わずに電子シャッターを使えば良いという思想なのでしょう。
その思想を否定するものでないのですが、何の説明も無しにいきなりメカシャッターの選択肢を無くしたのはかなり無謀ではないでしょうか。
恐らくニコンやキヤノンは決してやらないでしょう。
なおボケ欠け関連の記事はこちらをご覧下さい。
EOS RPにおけるボケ欠け回避策
電子先幕シャッターを使えるボーダーライン
それともう一つ高く評価したいのは、α1がチルト式モニターを採用した事です。
α1はチルト式モニターを採用
さすがソニー。
バリアングル一辺倒のキヤノンも見習ってほしいものです。
自撮りする人とそうでない人はどちらが多いか考えれば、分かりそうなものです。
中評価ポイント
それでは次に中評価のポイントです。
一つ目は、電子シャッターにおけるローリング歪が改善された事です。
α1のローリング歪(右)
α9(及びα9 II)もアンチディストーションシャッターを謳っていましたが、電子シャッターのスキャン速度は1/150秒前後でした。
なお電子シャッターのスキャン速度とは、フォーカルプレーンシャッターの幕速度の様なもので、ストロボの同調速度と同じだと思って頂いて大きな間違いではありません。
それに対してα1は、ストロボ同調速度すなわちスキャン速度が1/200秒になりました。
という事は、α1はα9より3割ほどローリング歪が抑えられた事になります。
なおソニーの宣伝文句によれば、”最高1/32000秒の動体歪みを極限まで抑えるアンチディストーションシャッター”との事ですが、一般的なメカシャッターの幕速度が1/250秒ですのでどうみても言い過ぎでしょう。
そして二つ目が、電子シャッターでもストロボが使える様になった事です。
実はα9でも1/150秒でストロボを使う事は可能だったのですが、電子シャッターですとストロボの発光ムラを拾うため、使用できない仕様になっていました。(詳細はこちら)
シャッタースピードを遅くすれば電子シャッターでもストロボ同調は可能
それがα1において電子シャッターのスキャン速度(全ラインの読み込み速度)が1/200秒になり、自社製の純正ストロボでも発光ムラが目立たなくなったので、電子シャッターでもストロボを使える様にしたのでしょう。
ただし、残念ながら電子シャッターでストロボを使うシーンは全く思い付きません。
静かだけど、光れば目立ちますので、
何に使うのでしょうか?
もしα1でストロボを使うのでしたら、1/400秒でも同調するメカシャッターを使うべきでしょう。
まとめ
上記以外にも90万円のα1には色々な機能があるのですが、電子シャッターによる秒速30コマや8K30Pの30分撮影に興味が無ければ、まだ多少手の届く可能性があるEOS R5(50万円)の方が余程魅力的ではないでしょうか。
4500万画素で8K30Pと秒速20コマを達成したEOS R5
またソニー自身もそれは百も承知で、数が出ない事が分かっているが故に、この値段にするしかなかったのかもしれません。
もしそうだとしますと、普及機のα7IIIが高級機α9の2400万画素の撮像素子を流用して大成功した体験から、次期α7 IVにもこの5000万画素の撮像素子を流用して拡販しようという計画なのでしょうか。
さすがにそれは無いとは思うものの、最後にソニーファンに気になる事をお伝えしておきたいと思います。
今回α1においては、機種名に1の冠称号を与えながら、手ブレ補正効果を最大5.5段までしか達成できませんでした。
という事は噂されている様に、マウント径の小さなαシーズはこれ以上手振れ補正を改善できそうもないという事を示唆しています。
となると、今後の主戦場とも言える動画市場において、この事がこの先大きな弱点になるかもしれません。
という記事を後ほどアップしますので、お楽しみに。(←本件に関する記事はこちら)