撮像素子のサイズと被写界深度の関係
(スマホはフルサイズ機と比べてどれくらいボケ難いのか?)
2020/02/26:発行
はじめに
スマホの写真は本当に良くなりました。
撮った写真をカメラの写真と見比べても、全く遜色ありません。
むしろ高速CPUの能力を総動員して色々なデジタル処理を掛けられている分、フルサイズの撮って出しの画像より綺麗に見える程です。
そして、もう一つ感心するのが、ピンボケ写真が殆ど無い事ではないでしょうか?
この理由は、(AF性能もあるのでしょうが)スマホの撮像素子はカメラの撮像素子よりかなり小さい事から、同じ絞り値であっても、フルサイズより被写界深度が深くなるためです。
では一体どれくらい被写界深度は深くなるのでしょう。
今回は、その謎に迫ってみたいと思います。
なぜスマホで写真を撮ると、被写界深度が深くなるのか
それでは先ず、なぜスマホの写真は被写界深度が深くなるのかをご説明します。
理由は簡単です。
例えば、ここに焦点距離50mmのレンズがあったとします。
これをフルサイズのカメラに装着して写真を撮ると、画角が40度の普通の画像です。
同じ50mmレンズでも、スマホで撮ると画角が狭くなる
次にこのレンズをスマホに装着して撮ると、何と画角4.8度と焦点距離280mm相当の望遠レンズになってしまうのです。
その理由は、以下の図の様にスマホの撮像素子はフルサイズよりはるかに小さいので、スマホの写真はフルサイズの写真の一部分を切り取る事になるからです。
フルサイズカメラとスマホの撮像素子の関係
ではフルサイズと同じ様に、画角を40度にするにはどうすれば良いでしょうか。
簡単です。
焦点距離の短いレンズにすれば良いのです。
この場合でしたら、焦点距離を9mmのレンズにすれば50mm相当の画角で撮れます。
焦点距離9mmと言えば、フルサイズで言えば超広角レンズになりますので、同じ絞り値であっても焦点距離50mmのレンズと比べて被写界深度がとんでもなく深くなるという訳です。
ここまでは宜しいでしょうか。
ではどれくらい焦点距離が深くなるのか
ここまで分かってくると、ではフルサイズと比べてどれくらい被写界深度が深くなるのか知りたくなってきます。
これは写真を撮って見比べても良いのですが、定量的に比べるのも大変ですので、手っ取り早く計算で求めたいと思います。
具体的には、ボケの量はレンズの有効口径に比例しますので、それを基に計算すると以下の様になります。(詳細はこちら)
サイズ | FULL | APS-C | APS-C (Canon) |
4/3 | 1型 | 1/1.7型 | 1/2.3型 |
段数 | 0 | 1.2 | 1.4 | 2.0 | 2.9 | 4.4 | 4.9 |
フルサイズを基準とした同じ被写界深度となる絞りの段数
この表は、フルサイズと同じ被写界深度にするためには、撮像素子のサイズによってどれくらい絞りを開けなければならないかを、計算で求めたものです。
逆に言えば、同じ絞り値で撮った場合、フルサイズと比べて何段くらい絞りを絞った被写界深度になるかを撮像素子のサイズ毎に示した表とも言えます。
ですので、例えば手持ちのスマホが1/2.3型の撮像素子を搭載しているとしたら、同じ画角のフルサイズのカメラと比べて、5段階も絞った被写界深度が得られるという事になります。
もう少し具体的に言うと、スマホでF2.8で撮った写真の被写界深度は、フルサイズのカメラで絞りF16で撮った場合と同じという訳です。
同じ画角の、同じ絞り値で撮っていながら、絞り5段階分も被写界深度が深くなるのですから、それはもうスマホのピントは良く合う筈です。
ついでにお伝えしておきますと、マイクロ4/3のカメラで撮った写真の被写界深度は、フルサイズでちょうど2段階絞りを絞ったのと同じになります。
ですので、撮像素子がどんどん小さくなると、フルサイスの様に背景をぼかしたりする事がどんどん難しくなるという訳です。
まとめ
それではまとめです。
①スマホで写真を撮ると、大きな撮像素子を搭載しているカメラより、断然ピントが合い易くなる。
②その理由は、スマホの撮像素子はカメラより小さいため、カメラと同じ画角にするためには、焦点距離の短いレンズ(フルサイズで言う所の超広角レンズ)を使う必要があるからである。
③スマホのカメラの被写界深度をフルサイズと比べると、同じ画角の同じ絞り値であっても、絞りで5段分も異なる。
④また例えばマイクロ4/3になると、フルサイスと比べて2段階分被写界深度が深くなるので、フルサイズの様に背景をボカスのは難しくなる。
という訳で、撮像素子が小さければ小さい程、ピントが合う、すなわち被写界深度が深くなるのは間違いありません。
ですが、一概にそう断言できるのかと言うと、実はそうでもないのです。
その話は後ほどさせて頂きますので、楽しみにしておいて頂ければ幸甚です。