ペンタプリズムの謎
2021/02/17:発行
はじめに
いくら歳をとっても、知っている様で知らない事は多々あるものです。
下はご存知の様に、一眼レフカメラにおけるレンズからファインダーまでの光路を示すイラストです。
反射回数が3回のファインダーまでの光路
恐らく写真好きの方でしたら、今までに何度もご覧になられた事でしょう。
ですが、よくよく考えると奇妙な事に気付かれませんでしょうか?
それは、光の反射の回数です。
ご覧の通りレンズを通った光は、ミラーで1回、プリズムで2回の計3回反射しています。
となるとファインダーで見る像は、左右逆の鏡像になる筈です。
反射が1回(奇数回)ならば鏡像になる
実際ミラーが1枚だけのウェストレベルファインダーの場合、ファインダーの像は鏡像です。
ミラーが1枚のウェストレベルファインダーを覗くと鏡像が見える
にも関わらず、なぜ一眼レフカメラのアイレベルファインダーは正像に見えるのでしょうか?
今回はその謎に迫ってみたいと思います。
ペンタプリズム内での反射の回数
それでは早速その答えとなる解説図を描こうと思ったのですが、余りにも複雑過ぎてその解説図がうまく描けません。
そんな訳で、思いっきり手抜きで描いたのが下の図になります。
レンズの光軸からずれた赤い光はペンタプリズム内で3回反射する
これをご覧頂きます様に、レンズの光軸を通った青い光は、確かにペンタプリズム内で2回しか反射しません。
ところが、光軸から少しでもズレた赤い光は、ペンタプリズム内で3回反射するのです。
このためファインダーを覗くと正像に見えるという訳です。
ここで注目して頂きたいのは、ペンタプリズム上部(三角錐)にあるファインダー側の2面を使ってフォーカススクリーン全面(1面)を反射させている事です。
それゆえに、フォーカススクリーンの大きさの画面を3回も反射させながら、ペンタプリズムを小型化できたのです。
これは知られざる世紀の大発明ではないでしょうか。
それでいてファインダーを覗いても中央に全く筋が見えないのですから、この2面の稜線は限りなく尖っているのでしょう。
その昔中学校での数学の授業で、線には幅がないと教わったのを思い出します。
それ故に、プリズム内で2回しか反射しない光軸を通った鏡像はファインダー内には見えないのです。
なお当然ながらレンズの光軸からズレた赤い光は、レンズ内を光軸と並行に進む事はないのですが、上の図はあくまでもボディー内での光の反射の回数を表すためのものだと割り切って頂ければと思います。
良い子は決してマネしてはいけません。
まとめ
それではまとめです。
①一般的な一眼レフカメラの光路の説明図はレンズの光軸を通った光路が記されているが、この場合はペンタプリズム内での反射回数は2回である。
②ところが、光軸からズレた光の場合、ペンタプリズム内で3回反射しており、これによってファインダーを見る像は正像になる。
③なおレンズの光軸を通った光は、実質的にファインダー内で見る事はない。
少しはお役に立ちましたでしょうか。