やっと分かったEOS Rの本質的な問題

20190/7:発行
2019/11:更新

はじめに


キヤノンファンの期待を一身に集めて登場したEOS Rとその弟分であるEOS RP。


期待が大き過ぎたせいなのか、はたまた専用レンズが少なくて且つ高価なせいなのか、それとも何か特別な理由があるのか、今一つ売れ行きも巷(ちまた)での評判も芳(かんば)しくありません。

それはともかく、いざ使ってみると確かに操作性に関して、どうしても腑に落ちない所がいくつかあります。

その理由が今一つはっきりしていなかったのですが、今回EOS Rのがっかりした点をまとめていたら、ようやくある事に気が付きました。

恐らくこんな指摘をしている記事はここしかないと思いますので、興味のある方は是非覗いてみて頂ければと思います。


EOS Rのがっかりした点


既にお読み頂いたかもしれませんが、本サイトが指摘したEOS Rのがっかりした点は以下の通りです。

がっかりした点
1 やっぱり右肩にほしい電源スイッチ
2 レンズの根元にほしいコントロールリング
3 意味の無いズームリングロックレバー
4 外し難いフード
5 クリック音がほしいマルチファンクションバー
6 2工程増えるモードダイヤル
7 やっぱり使い難いバリアングルモニター
8 引き出しても消えるモニター
9 暗いと全く見えないファインダー
10 使えないエコモード
11 意味不明の測光タイマー
12 意味不明のマルチ電子ロックボタン
13 表示されない被写界深度
14 明るいと見えないモニターとファインダー
15 是非ほしい絞りブラケットとフォーカスブラケット
16 敏感過ぎる水準器
17 顔認識AFだと表示されない水準器
18 前画像が見れない撮影画像
19 縦線しか検知できないAF
20 無駄でチグハグなM-FnボタンとQボタン

個々の内容につきましては、こちらをお読み頂くとして、今回注目して頂きたいのが、赤い網点で示した#1、#10、#11、#12です。

それらを簡単に解説すると以下の様になります。


やっぱり右肩にほしい電源スイッチ

ご存知の方も多いでしょうが、EOS Rの電源スイッチは、自社の一眼レフ機と同じ様に左肩にあります。


EOS Rの電源スイッチは操作し難い左肩にある

一方、他社のミラーレス機の電源スイッチはおしなべて全て右肩です。

どちらが使い易いかは今更述べるまでもないでしょう。

特に電池の消耗の早いミラーレス機の場合、使い難い左肩の電源スイッチは重欠点と言っても良い程です。

にも関わらず、なぜキヤノンは左肩に電源スイッチを設けたのでしょう。


使えないエコモード

電源スイッチが左肩にあるせいなのでしょうか?

EOS Rには、他社で見られる自動電源OFF機能の他に、エコモードなる機能があります。

このモードにすると、2秒間操作しないと背面モニターの表示を10秒間暗くし、その後電源をOFFして電池の消耗を抑えてくれるそうです。

ですが、ちょっとでも(何も操作せず)モニターを凝視していると、たちまち表示が暗くなるので、これはもう嫌がらせとしか思えない程使えない機能です。

そもそも10秒間モニターを暗くして、一体どれだけ省エネになるのでしょう。


意味不明の測光タイマー

これも他社のミラーレス機には無い機能です。

EOS Rにおいては、シャッターボタンを押すと、設定した時間だけ露出計をONさせる機能があります。

これって一体何のでしょう?

不思議に思って調べた所、何という事はなくEOSの一眼レフにも搭載されている露出計のONタイマーだったのです。

ですがミラーレス機の場合、常時撮像素子の画像を読み取っているのですから、露出計の値を常時リアルタイムで表示しても何の不都合もありませんし、消費電力にも全く差はないはずです。

にも関わらず、敢て測光タイマーなる(一眼レフの機能)をミラーレス機に投入しているのです。

これって、どう考えてもおかしくありませんか?


意味不明のマルチ電子ロックボタン

そしてもっと奇妙なのが、マルチ電子ロックボタン(LOCKボタン)です。


今まで一度も使った事のないLOCKボタン

これも他社のミラーレス機には見られないボタンで、尚且つキヤノンの一眼レフに搭載されている機能です。

ではこれが何をするかと言えば、メイン電子ダイヤル、サブ電子ダイヤル等の機能を一時的に無効に(ロック)して、不用意に設定が変わらない様にするものです。

ですがミラーレス機の場合、撮影中は電子ダイヤルを全て機能させますし、それ以外はこまめに電源をOFFにする事から、こんなロックボタンを使う必要はありません。

なぜこんなボタンを搭載したのでしょうか?


EOS Rの本質的な問題


さてここまでお伝えすれば、本書が何を問題視しているか、凡そ分かって頂けるのではないでしょうか。

そうなのです。

EOS Rは電気を多く消耗するミラーレス機でありながら、それと比べれば明らかに省電力の自社製一眼レフにおける電源系の操作性を踏襲したのです。

もう少し具体的に言うと、一眼レフの場合、電源スイッチをONにしてもシャッターボタンを押さない限り殆ど電気を消耗しないため、頻繁に電源スイッチのON/OFFを行う必要がありません。

それに対して、常時入出力装置(撮像素子とファインダー)を稼働しているミラーレス機の場合、どうしてもコマメに電源スイッチをON/OFFする必要があります。

にも関わらず、一眼レフの電源系操作性を踏襲したために、左肩に電源スイッチを配置したり、役に立たないエコモードを設けてみたり、殆ど省エネにならない測光タイマーや、意味の無いマルチ電子ロックボタンを搭載したのです。


左肩に電源スイッチ、右下にLOCKレバーがあるEOS 5D Mark IV

この数十年、カメラ業界をリードしてきたキヤノンが何でこんな初歩的なミスを犯したのでしょうか?

推測ですが、キヤノンとしては自社の中高級一眼レフユーザー(買い替えユーザー)をEOS Rに惹き付けるために、一眼レフの基本となる電源系の操作性を一眼レフと同じにする事を優先したのではないでしょうか。

そう考えると、同時に発売された4本のRFレンズが、いずれもやけに高価だったのも何となく納得がいきます。


RF24-105mm F4 L
IS USM

RF28-70mm F2 L
USM

RF50mm F1.2 L
USM

RF35mm F1.8
MACRO IS STM

すなわちEOS Rは、従来自社の一眼レフを使い続けてきたハイアマチュアを対象としたモデルという訳です。

その一方で新規性を出すために、従来から使われてきた背面ホイールやジョグセクターを敢て廃止して、コントロールリングやマルチファンクションバーを追加したのでしょう。

最終評価はまだ分かれる所でしょうが、逆にするべきだったのではないでしょうか?

すなわち電源系等の基本操作性は一新し、他の直接撮影に関わる操作性はEOS一眼レフを踏襲するべきだったのではないでしょうか?


回避策


それはそうと、EOS Rを購入した以上、愚痴ばかり言わずに何とか使いこなさなければなりません。

で、その方法ですが、取り敢えず以下の様にすれば、他社のミラーレス機に近い操作性を得る事ができます。

問題点 回避策
左肩の電源スイッチ 回避策無し(我慢する)
エコモード 使わない
測光タイマー 測光タイマーを30分に設定し、電源をONしたらシャッターボタンを軽く押してタイマーを起動し、常時リアルタイムの露出を表示する。
マルチ電子ロックボタン 使わない

完全な回避策ではありませんが、これで多少は使い易くなると思います。

ただしその気になれば、もっと抜本的な回避策もあります。


キヤノンへの期待


それはキヤノンが、過ちを速やかに是正して、潔(いさぎよ)くEOS Rをバージョンアップしてくれる事です。

どうするかと言えば、全く使い道のないマルチ電子ロックボタンにスリープ機能を追加するだけで済みます。


EOS Rより立派なEOS RPのLOCKレバー(なぜ電源スイッチにしない?)

そうすれば、左肩の電源スイッチをON/OFFする代わりに、右肩にあるマルチ電子ロックボタンを押すとスリープモードに入り(電源スイッチをOFFしたのと同じ様に電池の消耗を防ぎ)、尚且つシャッターボタン等いずれかのボタンを押せば即目覚めて撮影可能になります。

さらに測光タイマーは廃止して、電源をONすれば常時測光表示する様にしてくれれば言う事ありません。

大企業が弱小サイトのお願いを聞いて貰えるとは到底思えないのですが、ダメ元で書いておきます。

また近々にリリースが予定されているEOS Rの上級機には間に合わないでしょうが、EOS Rの第2世代においては、この電源系の操作性を抜本的に見直してほしいものです。




やっと分かった、EOS Rの本質的な問題





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