オリンパスペンE-PL9/PL10で
星空と人物を撮る方法
2020/04/02:発行
目次
1. はじめに
さあ、夜空にまたたく星達を背景に人物を撮ってみましょう。
Canon PowerShot G1 X Mark III (F2.8 15秒 ISO3200)
フィルムカメラの時代は、フィルム感度の問題からそこそこ敷居が高かった星の撮影ですが、今ならマニュアルフォーカスとマニュアル露出のできるカメラでしたら、間違いなく写せます。
ですが分かり難いマニュアルをひっくり返して、手持ちのカメラの設定方法を調べるのは本当に苦労します。
という訳で、マニュアルを一切見ないで星空と人物を撮影する方法を機種別にご用意しました。
その第2弾はOLYMPUS PEN Lite E-PL9と、そのマイナーチェンジ版であるE-PL10です。
OLYMPUS PEN Lite E-PL10
なお先にお伝えしておきますと、数あるカメラの中でも1600万画素と控え目な画素数のPEN Lite は、星空と人物を撮影する上でトップクラスの実力を秘めているのです。
すなわち、大きなフルサイズのカメラより、OLYMPUS PEN Liteの方が星空と人物を綺麗に撮れるのです。
その方法をしかと伝授しますので、是非参考にして頂ければと思います。
2. 星空撮影の準備
それでは先ず星空撮影の準備をします。
必要な物は、以下の通りです。
1: カメラ
ここではオリンパスPEN Liteの8代目と9代目であるE-PL9とE-PL10を使用しますが、それ以前のPENシリーズでも同じ様に使用可能です。
E-PL10 |
E-PL9 |
E-PL8 |
E-PL7 |
E-PL9とE-PL10は先代のE-PLシリーズと基本性能は同じですが、それまで外付けだったストロボを内蔵して登場しましたので、星空ポートレートにうってつけです。
また撮像素子はそのままながら、新たにOM-D E-M1 Mark IIと同じ画像処理エンジン搭載、4K動画対応、電子シャッターとBluetoothを搭載などの新機能が盛り込まれています。
2: レンズ
レンズは既にカメラに装着されていると思いますが、星空撮影ではどちらかと言えば広角レンズの方が、星がたくさん写って印象的な写真に仕上がります。
またなるべく明るいレンズ(開放絞り値が小さいレンズ)の方が、シャッタースピードを早くできるので星空撮影には向いているのですが、人物も一緒に撮るためには被写界深度を深くするため、F2.8程度で十分です。
という訳で、その観点でオリンパスの交換レンズを見てみましょう。
なお4/3用レンズの場合、焦点距離を2倍すればフルサイズ換算の焦点距離になりますので、例えば焦点距離12mmのレンズでしたら、フルサイズで24mmのレンズの画角に相当します。
8mm F1.8 |
9mm F8.0 |
12mm F2.0 |
17mm F1.8 |
15mm F8.0 |
上をご覧頂きます様に、オリンパスにはソコソコ明るい単焦点の広角レンズが揃っています。
その中でも興味をそそられるのが、少々お高いですがやはり魚眼レンズの8mm F1.8 Fisheyeでしょう。
また、この中で異色なのがボディキャップレンズと呼ばれる超薄型のボディキャップ兼用のレンズです。
E-PL6とボディキャップレンズ
F8と暗いのがネック(星空撮影で2分以上の長時間露出が必要なので非現実的)ですが、広角の15mmと9mmの魚眼レンズもあります。
続いては広角ズームです。
広角系ズームレンズ
7-14mm F2.8 |
9-18mmF4.0-5.6 |
12-24mmF2.8 |
12-50mm F3.5-6.3 |
これも超広角ズームの7-14mm F2.8がお勧めなのですが、やはり高いのが難点です。
このため、コストを考えると広角ズームの9-18mmF4.0-5.6辺りが妥当かもしれません。
また画角は狭くなりますが、下にある標準系ズームでも十分撮れますので、ご安心下さい。
標準系ズームレンズ
14-42mm F3.5-5.6 II R |
14-42mm F3.5-5.6EZ |
おまけに標準系ズームについては、更なる打開策があります。
以下の様に標準ズームの14-42mm F3.5-5.6 II R用に、超広角と魚眼用のレンズコンバーターが用意されているのです。
14-42mm F3.5-5.6 II R用レンズコンバーター
ワイドコンバーター |
フィッシュアイ コンバーター |
コンバータセット |
これを付けても開放値は変わりませんし、比較的安価ですので、既にこの標準ズームをお持ちの方には断トツのお勧めになります。
なお一眼レフ用の4/3交換レンズも使用可能ですが、変換アダプターが必要になります。
3: レンズフード
そして忘れてはいけないのが、レンズフードです。
暗くてなぜフードが必要なのかと思われるかもしれませんが、星空撮影においては街路灯や街明かりの僅かな光が大敵なのです。
横からの僅かな光が前面レンズに当たるだけでゴーストやコントラストの無い写真になりますので、必ずレンズフードは付けておきましょう。
フード
12mm F2.0用 |
17mm F1.8用 |
45mm F1.8用 |
9-18mm用 |
12-50mm用 |
そしてもう一つ忘れてはいけないのは、オリンパスのペンシリーズはパナソニックのマイクロ4/3用レンズもそのまま使える事です。
という訳で、パナソニックのマイクロ4/3用レンズも見ておきましょう。
パナソニックのマイクロ4/3用レンズ
FISHEYE 8mm F3.5 |
14mm F2.5 |
14-42mm F3.5-5.6 |
7-14mm F4.0 |
12-35mm F2.8 |
敢えて他社製レンズを使う必要もないのですが、魚眼レンズの8mm F3.5と広角レンズの14mm F2.5はかなりお安いので、検討してみる価値はありそうです。
4: 三脚
普通の記念撮影でしたらカメラをテーブルの上に置けば良いのですが、斜め上を撮るにはどうしても三脚が必要になります。
ただし地面に置いて、上を向かせるだけですので、小型の物で十分です。
5: 予備の電池
ご存じかもしれませんが、昼間の撮影より夜間の撮影の方が断然電気を多く消費します。
その理由は、少ない光量を電気を一杯使って増幅するからです。
おまけにその状態を長時間続けますので、電池がどんどん消耗する事になります。
このため、星空撮影には予備の電池を用意するか、もし手持ちの電池が1個しかなければ、事前にフル充電しておく事をお勧めします。
3. カメラの事前設定
星空を撮影するには、全部で7項目ものカメラの設定を変えなければなりません。
暗い所で行うと時間が掛りますので、事前に明るい所でやっておきましょう。
1: 長秒時ノイズ低減の解除
夜間の長時間露光においては、本来長時間ノイズ低減の設定を行うべきなのですが、先ずはそれを解除します。
その理由は簡単で、撮影時間が非常に長くなるのを防ぐためです。
そもそも長時間ノイズ低減とは、長時間撮影時の画像の中には電気的なノイズが沢山入っているので、被写体撮影後に真っ黒の画像を同じ時間だけ撮影して、そのノイズ分を被写体撮影時の画像から差し引いてやろうというものです。
ノイズリダクション無し ノイズリダクション有り
ですから、もし30秒間の露光を行うと、同じく30秒間の真っ黒画像の撮影が行われますので、トータルで1分間何もできなくなってしまいます。
本番撮影ならしかたがないのですが、先ずはピントや露出や構図の確認をしなければいけない時に、この余分な30秒は甚だ無駄です。
さらに真っ黒画像を撮影しますので、電池もその分多く消耗します。
という訳で、本番撮影の前は長秒時ノイズ低減を以下の手順でOFFにしておきます。
①MENUボタンを押して、メニューを表示する。
②歯車マーク(カスタムメニュー)のタブを選択して、表示されたメニューグループからD1メニューを選択する。
⑤D1メニューから”露出/ISO/BULB”を選択し、”長秒時ノイズ低減”をOFFにする。
⑥OKボタンを押して設定内容を確定する。
⑦MENUボタンを押して、メニューを終了する。
2: 2秒タイマーのセット
前記しました様に、シャッターを押した際の振動を防ぐため、以下の手順で2秒タイマーをセットします。
①背面にある十字ダイヤルの▼ボタンを押して、連写/セルフタイマーのメニューを表示する。
②下段に表示されたメニューから、2s(2秒セルフタイマー)を選択する。
③OKボタンを押して終了する。
3: ホワイトバランスの設定
ホワイトバランスは恐らくデフォルトのままでしたらオートになっていると思いますので、そのままで構いません。
ただし実際星空を撮ると、赤みを掛けたかったり、逆にもっと青みを掛けたくなったりします。
その時に備えて、ホワイトバランスの調整方法も事前に確認しておきましょう。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、WB(ホワイトバランス)を選択する。
③下段に表示されたメニューから、ホワイトバランスの設定がオートになっている事を確認する。
④OKボタンを押して終了する。
4: 手ブレ補正機能の解除
三脚を使って撮影する場合、手ブレ補正機能は却ってブレの原因になりかねません。
このため以下の手順で、手ブレ補正機能をOFFにします。
①モードダイヤルをMモードにして、本体背面上部の肩にあるショートカットボタン(□↗マーク)を押します。
②表示されたLVスーパーコンパネ画面から、▲▼ボタンを押して手振れ補正表示部を選択します。
LVスーパーコンパネ画面
③次に◀▶ボタンで”S-IS Off”を選択した後、OKボタンを押します。
5: マニュアルフォーカスの設定
星空は光量が少ないため、オートフォーカスは働きません。
このため、以下の手順でマニュアルフォーカスに設定します。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、AF方式を選択し、下段に表示されたメニューから、MF(マニュアルフォーカス)を選択する。
④OKボタンを押して終了する。
以上でマニュアルフォーカスが可能になりましたので、これで遠くの被写体にカメラを向けて、レンズのフォーカスリングを回せばピントが合います。
レンズに付いているフォーカスリングを回してピントを合わせる
ただしより正確にピントを合わせるため、フォーカスリングを回したとき、自動的に画像が拡大される様な設定を行います。
これをMFアシスト機能と呼び、以下の手順で行ないます。
⑤MENUボタンを押して、メニューを表示する。
⑥ 歯車マーク(カスタムメニュー)のタブを選択して、表示されたメニューグループからAメニューを選択する。
⑦Aメニュー(A, AM/MF画面)から、”MFアシスト”をONにする。
A, AM/MF画面
⑧OKボタンを押して設定内容を確定する。
⑨更に同じくA, AM/MF画面から、レンズリセットを選択してOffに設定します。
こうすると、電源を切ってもレンズのピント位置をそのまま維持してくれます。
⑩MENUボタンを押して、メニューを終了する。
⑪遠くの被写体にカメラを向けて、レンズのフォーカスリングを回してピントを合わせる。
なお今回は前準備のピント調整ですので、撮影現場に着いたら再度遠くの明るい物にカメラを向けてピント調整を行ないます。
6: マニュアル露出設定
次は、マニュアル露出の設定です。
カメラの性能は非常に良くなってきており、今では殆どの場面は自動露出で撮れる様になってきました。
ですが、さすがに星空は光量が少なくて自動露出ではうまく撮れません。
このため、以下の手順でマニュアル露出にして、絞りをF4、シャッタースピードを30秒にセットします。
①モードダイヤルをMにセットする。
②コントロールダイヤルを回してシャッター速度を30秒にセットする。
③▲(±)ボタンを押した後、左右ボタンで絞り値をF4に設定します。
これでシャッター速度と絞りの設定は完了です。
7: ISO感度の設定
ISO感度とは、昔使っていたフィルムの感度に当たります。
この数字が大きければ大きいほど、小さな光でも写す事ができますが、余りに大きくするとその幣害として画像に電気的なノイズが乗って、ざらついた画像になります。
ですので何事もほどほどが肝要です。
星空の場合、以下の手順でISO感度を3200に設定します。
①OKボタンを押してライブコントロールを表示する。
②上下ボタンを押して、ISO感度を選択する。
③表示されたメニューから、3200を選択する。
④OKボタンを押して終了する。
8: フラッシュの準備
①フラッシュポップアップボタンを押して、内蔵フラッシュを出す。(設定だけでしたらフラッシュを出す必要はありません)
②背面にある十字ボタンの▶ボタンを押す。
③INFOボタンを押し、発光量を1/4にセットします。
④これでもフラッシュの発光量が強いので、白いタオル等を用意して、更に光量を抑えられる様にします。
9: レンズの清掃
カメラのセッティングが終了したら、最後にレンズの清掃をしておきましょう。
フードの所でもお話ししました様に、夜間の撮影は昼間の撮影以上に外乱の光が写真に影響してしまいます。
うっかりレンズに指紋でも付いていると明らかにコントラストが低下しますので、しっかり清掃しておきます。
また、フィルターも外しておく事を強くお勧めします。
10: 動作確認
設定が完了したら、最後に動作確認を行いましょう。
①どこか暗めの所にカメラを向けてシャッターを切ります。
②シャッターを押して2秒後にシャッターが開いて、30秒後にシャッターが閉じて真っ白な画像(もしくは薄らと何か写っている画像)がモニターに表示されれば、設定OKです。
③最後にストロボを持ち上げてシャッターを切って、ストロボが発光する事を確認します。
このときストロボの光がまだ強いと思いますので、ストロボの光量を抑えるために、ストロボの前を白いハンカチ等で塞ぎ、被写体が適正露出になる様調整できる事を確認します。
4. 星空撮影
準備が完了したら、先ずは星空だけの写真を撮ってみましょう。
なおしつこい様ですが、フィルターを外して、フードを付けるのをくれぐれも忘れないで下さい。
①カメラを三脚にセットしたら、もう一度遠くの明るい物(例えば月や、遠くの街灯)にカメラを向けてピントがあっているかどうか確認します。
②もし合っていなければ、前述のマニュアルフォーカスの設定を再度行います。
③変わっていないと思いますが、もう1度絞りがF4でシャッタースピードが30秒で、ISO感度が3200になっている事をモニターで確認します。
④カメラの設定はそのままで、カメラを撮りたい星空に向けて、シャッターを切ります。
⑤もし撮影された画像が暗ければ、上下ボタンを押してシャッタースピードを遅く(例えば60秒に)するか、左右ボタンを押して絞りを開ける(例えばF2.8にする)か、前述のISO感度設定を呼び出してISO感度を上げ(例えばISO6400にし)ます。
F4.0 F4.0 F4.0
15秒 30秒 30秒
ISO3200 ISO3200 ISO6400
⑥もし撮影された画像が明るければ、上記と反対にします。
⑦上記④~⑥を繰り返して適正露出になったら、色見を前述のホワイトバランスを変えて調整します。
もし赤味を付けたいのでしたら、色温度を低めの4000K前後にするか、蛍光灯を選択します。
WB: オート WB:太陽光 WB:蛍光灯(昼白色)
もし青味を付けたければ、太陽光、日陰、曇天を選択します。
その他各種設定がありますので、色々変えて撮影しておく事をお勧めします。
⑧好みの色味になったら、前述の長秒時ノイズ低減の設定をONにして、最終画像を撮ります。
5. 星空と人物の撮影
星空が撮れる様になったら、次に人物も一緒に撮ってみます。
①それには先ず、レンズのピント位置を人物と背景の中間に合わせます。(人物と星の両方にピントを合わせるため)
もし難しい様でしたら、多少星がボケる事になりますが、人物に合わせても構いません。
なお、本機のレンズには距離指標が無いので少々ハードルが高いのですが、理想を言えばレンズのピント位置を2.5mに設定する事です。
具体的には、レンズから2.5mの位置に人物に立って貰い、そこでマニュアルでピントを合わせます。
24mm相当で絞りF4であれば、撮影距離2.5mにすると1.2m~∞まで常にピントが合う
そうすると、絞りF4でしたら1.2m~∞まで常にピントが合いますので、以降はこの範囲内であれば多少カメラと人物との距離が変わっても、一切ピント合わせしないで済むのです。
またF2.8にすると、以下の様になります。
24mm相当で絞りF2.8であれば、撮影距離3.6mにすると1.8m~∞まで常にピントが合う
ちなみに、フルサイズのカメラでしたら24mmのF4で、撮影距離5mにして2.5m~∞ですから、本機の優位性が分かって頂けると思います。
②次にホワイトバランスをAWB、もしくはフラッシュに設定します。
③最後にストロボを持ち上げて、シャッターを切ります。
もし被写体が明る過ぎる場合は、練習した様にタオル等でストロボの光量を抑えます。
いかがでしょうか?
素敵な写真が撮れましたでしょうか?
6. 星空撮影モード解除
星空の撮影が終了したら、忘れずに星空撮影モードを解除しておきましょう。
さもないと次に写真を撮ると、ピントは合わないし、画像は真っ白になったりと面食らう事に成ります。
解除が必要な設定は以下の通りです。
①セルフタイマーを解除する。
②ホワイトバランスを”AWB”に戻す。
③手振れ補正をONにする。
④レンズのフォーカスモードをAFにする。
⑤モードダイヤルを回して、M(マニュアル)以外にセットする。
⑥ISO感度を”オート”に変更する。
⑦ストロボを自動調光に戻す。
なお設定変更の詳細については、上記手順書を参考に願います。