EOS Rをバージョンアップしてみた
(やっと使えそうな瞳AF)

2019/9/28:発行
2019/10/29:更新

はじめに


お待たせしました。

噂されていたEOS Rの瞳AF改善ファーム(1.4.0)がリリースされました。

変更内容は以下の通りで、撮影される人物の顔が小さくても瞳検知が働く様になったとの事です。

EOS R(Version 1.4.0)の変更内容

・瞳AF検出精度の向上により、画面の中で主被写体の人物の顔が従来より小さい状態からでも瞳を安定的に検知することができるようになります。

・AF枠の表示速度向上により、素早く動く被写体に対して、AF枠が従来より的確に追従するようになります。

・AF性能の向上により、画面の中で素早く動く被写体を、従来より小さい状態からでも捕捉し、その後もより安定的に捕捉し続けるようになります。

・サーボAFの設定で、AFフレームのサイズが変更できない現象の修正

・PTP通信の脆弱性の修正

ご存知の様に、今までのEOS Rの瞳AFは人物を大きく捉えないと殆ど瞳を(顔も)検知してくれなかったため、これでがかなり使える様になりそうです。

という訳で、早速バージョンアップして新旧の瞳AFの性能を比べてみましたので、その結果をお知らせ致します。


新旧瞳AFの比較


とは言え、バージョンアップ前後のカメラを使って同一条件で人物を撮り比べるのも結構ハードルが高いので、モニターに映った人物画像を使ってバージョンアップ前後の瞳AFの改善効果を調べてみました。

まずバージョンアップ前に、人物を徐々に拡大していき顔を認識をした時の写真が以下の通りです。


バージョンアップ前の顔認識(赤枠)

この状態では、瞳AFを有効にしていても、瞳を検知せず顔認識になっています。

次にバージョンアップ後に同じ人物画像を撮影してみると、びっくりです。


バージョンアップ後の瞳認識

上の写真の様に、いきなり瞳を認識するれはありませんか。

おまけに人物(顔)の大きさも、バージョンアップ前より僅かに小さいにも関わらず瞳を認識しています。

これは実際の撮影においても、かなり期待できるのではないでしょうか。

なお生憎ここには写真はありませんが、旧バージョンで瞳検知が働きだすのは、上半身以上を撮影してからですので、それと比べれば大きな進歩と言えます。


その他の新旧差


今回のバージョンアップで気が付いた事を列記しますと、以下の通りです。

1. 瞳AF時の表示方法が変更された

旧バージョンにおいては、瞳を検知した場合、瞳検知枠の外側に顔認識の白枠が表示されていました。


瞳検知後は顔認識の枠は表示されない

ですがバージョンアップ後は、その顔認識の白枠は消えて、瞳の周囲の白枠のみ表示される様になりました。

すなわち、ソニーやニコンと同じなったと言えます。

2. 動体追従性向上は殆ど感じられず

キヤノンの公式HPによれば、”素早く動く被写体に対して、AF枠が従来より的確に追従するようになった”との事ですが、残念ながらその効果は殆ど感じませんでした。

実際、人物が右に動いたとすると、瞳AF枠は元の位置(左側)に引き戻される様に表示され、枠の中心部と瞳に微妙なズレが生じます。

これは表示だけの話かもしれませんが、この辺は依然ソニーの方が一歩リードしている感じです。

キヤノンはネットワークカメラで、散々顔認識をやっているのですから、何とかならないものでしょうか。

それともCPUの演算速度だけの問題なのでしょうか。

3. 異なる顔の瞳を選択可能

バージョンアップ後に気が付いたのですが、瞳を検知したのちAFフレームボタンを押すと、左右どちらかの瞳を、左右ボタンで選択できる様になります。

またもし人物が上の写真の様に2人の場合、4つの瞳をボタンで選択できます。

更にタッチパネルでも瞳を選択できる様になっています。

それはそれで良いのですが、できる事ならば被写界深度を考慮して、4つの瞳の中間にピントを合わせるモードを作って貰えないものでしょうか。

4. お勧め㊙設定

これは今回のバージョンアップと直接関係しないのですが、ここまで瞳AFが改善されたとなると、今後この瞳AFを頻繁に使う事になると思われます。

その場合の、本書お勧めの㊙設定をそっとお教えしたいと思います。

恐らく他社のカメラもそうでしょうが、EOS Rの場合、電源をONした直後はレンズの焦点距離が無限遠の設定(遠くにピントが合った状態)になっています。

この場合、近距離の被写体に対してピントが大きく外れているため、(シャッターボタンを半押しして)AFを起動してある程度画像が認識できる様にしないと、電源をONしただけでは瞳を検知してくれません。

ミラーレス一眼の場合、頻繁に電源スイッチをON/OFFする事から、その度にシャッターボタンを半押しして瞳を検知するかどうか確認するのも面倒な話です。

そこでお勧めなのが、AFメニュー内にあるコンティニュアスAFをON(する)に設定する事です。


瞳AFを多用するのならば、コンティニュアスAFをON(する)にする

そうすれば、電源をONしてレンズを被写体に向けた瞬間に瞳を検知してくれていますので、即撮影が可能になります。

常時AFを駆動するため、多少バッテリーの持ちが多少悪くなりますが、とてつもない差ではありません。

本格的に人物撮影を行なうのならば、コンティニュアスAFをONに設定する事をお勧めします。

さもなければ、電源ON直後は自動的に撮影距離を3m程度に設定して貰えると、コンティニュアスAFをOFFのままでも瞳AFを即使えるのですが。

何とかならないでしょうか?

キヤノンさん。


まとめ


既にこちらの幣記事でもお伝えした様に、小さな瞳に精度良くピントを合わせる能力はデュアルピクセルCMOS AFを搭載したEOS Rの方が他社機より断然優れています。


デュアルピクセルCMOS AFの位相差測距点は他社機より格段に多い

今回のバージョンアップによって、瞳検知能力が高まった事から、撮った写真の歩留まりもかなり向上するのは間違いないでしょう。

そうなると、(叶わぬ夢ですが)いつかポートレート用レンズの代表格であるRF85mm F1.2 L USMを使って、本機の瞳AFの性能を存分に味わってみたいものです。

 
ボケマスターのキヤノンRF85mm F1.2 L USM


実際に使ってみたらどうだったか

2019/10/29:追記

さて、PC画像を元にした簡易評価では何とか使えそうな瞳AFですが、実際に使ってみたらどうなのでしょうか?

という訳で、早速EOS RにRF85mm F1.2 L USMを装着して使ってみました。

結論から言わせて頂くと、残念ながらまだまだでした。

例えばですが、被写体が下の様にコントラストのある服を着ていると、何と服の柄を顔と間違えてピントを合わそうするのです。


EOS R + RF85mm F1.2 L USM(F1.2 1/750秒 ISO400)

上の写真は後ろ姿ですが、正面を向いていても服の柄にピントを合わせ様とするので、かなりビックリです。

更に下の写真の様に、人物の前に前景があると、いくらシャッターボタンを半押ししても、前景にピントを合わせたまま一向に顔を認識してくれないのです。


EOS R + RF85mm F1.2 L USM(F1.2 1/1500秒 ISO100)

顔認識や瞳認識精度は100%ではないと言えばそれまでですが、もう少し認識精度が上がってくれないと、結局より確実な昔ながらの一点AFで撮り続ける事になります。

顔認識と瞳認識精度を更に改善したVersion 1.5.0のリリースが待たれます。

そしてついでに言えば、デュアルピクセルCMOS AFの合焦精度についても、残念ながら85mm F1.2開放の非常に浅い被写界深度では役不足です。

まだ実現には時間を要するでしょうが、縦線と横線の検知が可能なクアトロピクセルCMOS AFが登場して、ようやくミラーレス一眼のAF性能が一眼レフの背後まで追い付いたと言えるのかもしれません。


縦横斜め線も検知できるEOS-1D X Mark IIのAFセンサー

何しろ一眼レフは、縦線と横線の検知が可能なクロスAFセンサーだけでなく、斜め線も検知可能なデュアルクロスAFセンサーまで搭載しているのですから。

とは言え、現状この光学的に優れたRF85mm F1.2 L USMを使えるのはEOS R(EOS RPは先幕が電子シャッターのためボケ欠けが生じる場合がある)だけですので、暫く一点AFとマニュアルフォーカスで頑張るしかなさそうです。




EOS Rをバージョンアップしてみた(やっと使えそうな瞳AF)




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