EOS Rのがっかりした点27連発

2019/6/20:発行
2020/2/6:最終更新

目次



21. 詰めの甘いFvモード

2019/11/23:追記

次なる問題は、EOS Rシリーズに新たに搭載されたFvモード(フレキシブルAE)です。

Fvモードとは、すべてをオートにしたPモード(プログラムAE)の状態から、シャッタースピード、絞り、露出補正、ISO感度を、自由に設定できるモードです。


Fvモードの説明図

ですので本モードの使い方としては、撮影開始時、或い撮影は環境が大きく変わったに、▲ボタン(全て設定をAUTOにリセット)を押して、シャッタースピード、絞り、ISO感度をキヤノンがベストと考える露出に設定します。

その上で、自分が変えたい項目だけを自由に変更する事によって、Tvモードや、Avモードの様に使えるという訳です。

ですので、事前にどの露出モードで撮るか決めないで、取り敢えずオートで露出を設定し、特定の値だけを調整する様なズボラな写真家にとっては、正に理想的な撮影モードと言えるかもしれません。

実際、現物を見る事は殆ど無いと思いますが、操作の複雑な電子測定器においては、未知の信号を自動で表示させるAUTOボタンが付いている事を考えると非常に妥当なモードと言えます。


AUTO SETボタン(赤丸)のあるスペクトラムアナライザ

ですが、いざじっくり使おうとすると色々問題が発生します。

設定値を一気に固定できないMモード相当

Mモード相当とは、Fvモードにおいてシャッタースピードと絞り、ISO感度の3点を任意の値に固定する事です。

そうすれば、少なくともカメラ側起因で露出がコロコロ変動する事はないので、スタジオ撮影等では重宝します。

ところが、Fvモードにおいてその3点を固定するためには、果てしなく手間が掛かるのです。

具体的には、以下の5ステップ(全7工程)を行う必要があるのです。

①▲ボタン(全ての設定をAUTOリセット)を押して、シャッタースピード、絞り、ISO感度をAUTOに設定する。

②設定値を固定するために、サブ電子ダイヤルを回してシャッタースピードを選択する。

③表示されたシャッタースピードの値を固定する(AUTOを解除する)ために、メイン電子ダイヤルを回して一度数値を上げて、また下げる(元に戻す)。

④それが終わったら、絞りに関して②から③を行う。

⑤最後にISO感度でに関しても、②から③を行う。

こんなに手間が掛かると知ったら、Mモード相当を使う気力は殆ど失(う)せたのではないでしょうか。

EOS Rには、前記した▲ボタン(全ての設定をAUTOリセット)以外にも、◀ボタン(選択した項目だけをAUTOにリセット)があるのですが、全ての設定を固定するボタンが無いのです。

これは早急に追加すべきでしょう。


露出メータが動かないMモード相当

このFvモードにおけるMモード相当には、もう一つの問題があります。

もしFvモードでMモード相当(シャッタースピード、絞り、ISO感度を任意の値に固定)にしても、露出メータが働かないのです。

当然ながら、本来のMモードでしたら露出メータが働いてくれます。

これを知ったら、Mモード相当は使う気力は完全に失せるでしょう。


その他

これ以外にも、Pモード相当のときプログラムシフトが使えない、Avモード相当及びPモード相当のときスローシンクロが働かないと、このFvモードは完成度が低すぎます。

早急に改善すべきです。


22. 露出シミュレーションの罠

2019/11/23:追記

続いては露出シミュレーションです。

露出シミュレーションとは、実際の撮影結果(露出)に近い画像をファインダーに表示してくれる機能です。

これがミラーレス一眼の優位性の一つなのですが、不満が無い訳ではありません。

それは、ストロボを使用する場合です。

ストロボ発光に伴って、例えば背景を暗く設定しても、ストロボのスイッチをONすると、たちまちファインダーが明るく表示されるのです。

一瞬背景が明るくなったのか、はたまた設定が変わってしまったのかとドキッとするのですが、どうやらストロボ発光に伴って、露出シミュレーションが解除される模様です。

これは人によって好みが分かれる所かもしれませんが、本書としては常時露出シミュレーションのままにしておいてほしいものです。


23. 縦位置表示に対応しない背面モニター


今どきどんなミラーレス一眼でも、横位置でも縦位置撮影でも、ファインダー内の表示が見易い様に切り替わるのは普通の事だと思います。


EOS Rのファインダー表示は横位置と縦位置で切り替わる

当然ながらEOS Rも上の図の様に切り替わるのですが、切り替わるのはファインダーにおいてのみで、背面モニターの表示は縦位置にしても変わらないのです。

これも少々ビックリではないでしょうか?

よもやモニター側が縦位置表示に対応していないとは思っていなかったので、当初は壊れたのかと思ったくらいです。

これぐらいファーム変更で、早急に修正してほしいものです。

ついでに言うと、ファインダーと背面モニターは同じグラフィックメモリーを呼び出しているのかと思ったのですが、少なくとEOS Rは2枚分のグラフィックメモリーを搭載している様です。

もしそうならば、かなり勿体無い話です。


24. Pモードで機能しない
ISOオート時のシャッタースピード低速限界

2019/11/23:追記

これはバグなのでしょうか?

それとも、こちらの使い方が何か間違っているのでしょうか?

EOS Rには、他社機と同様にISOオート時のシャッタースピードの低速限界が設定できます。

これはPモード及びAvモードにおいて、ISOオートが設定されている場合、シャッタースピードが遅くなるとISO感度を上げて、一定以上シャッタースピードが遅くなるのを防ぐ機能です。


キヤノンEOS Rの公式HPの抜粋

これがAvモードだと正常に働くのですが、Pモードで絞りを変えてもISO感度が全く変化しないのです。

言葉だけだと分かり難いと思いますので、実際に設定を変えた場合を表にしてみました。

露出モード Pモード Avモード
# 絞り SS ISO 絞り SS ISO
1 F4 1/80 320 F4 1/80 320
2 F5.6 1/40 320 F5.6 1/80 640
3 F8.0 1/20 320 F8.0 1/80 1250
4 F11 1/10 320 F11 1/50 1600
5 F16 1/5 320 F16 1/25 1600

上の表の様にAvモードですと、絞りを変えてシャッタースピードが低速限界を超え様とすると、ISO感度を上げてくれるのですが、PモードではISO感度は変わりません。

バグの可能性が高い様に思うのですが、どうなんでしょう?

もしそうだとしたら、キヤノンのQA部門は何をやっていたのでしょう。

と思ってキヤノンに確認したら、プログラムシフトにおいてはISOオート時のシャッタースピード低速限界は解除されてしまうのだそうです。

絶句です。


25. 直ぐに表示されない撮影画像

2019/11/23:追記

本件は以前EOS RPの不満に書いていたのですが、こちら(EOS R)の記事には載せていなかったので、追加しておきます。

それは、シャッターボタンを押した直後に、撮った画像が表示されない事です。

これもかなりビックリではないでしょうか?

あらゆるカメラにおいて、シャッターボタンを押すと、たった今撮った写真をファインダー(もしくはモニター)に表示してくれます。

さすがに画像処理を行うので、撮ってから表示されるまでの遅延時間がゼロとはなりませんが、殆どの場合、それが気にならない時間(恐らく0.3秒未満)に表示してくれます。

ところが本機の場合、シャッターボタンを押してから暫く(恐らく0.5秒ほど)現在の画像(ライブビュー)が表示されるのです。

それから突然ファインダーが真っ暗になり(恐らく0.1秒ほど)、その後ようやく撮った写真が表示されるのです。

こちらとしては撮った画像をすぐさま見たいと思っているのに、こんな必要もないライブビューを見せられたら興ざめです。

一体誰がこんな緩(ゆる)い仕様を許したのでしょう。

EOS RPにおいては、コストダウンの影響だろうと思っていたのですが、EOS Rも同じ様にこの遅延が生じます。

これはさすがにファームの修正で直せるとは思えませんので、次期機種では必ず対応して頂きたいものです。

ただし、この数か月EOS RやEOS RPを使い続けていると、この不具合に次第に慣れてくるから不思議です。

つでに言うと、APS-CサイズのPowerShot G1 X Mark IIIでは、シャッターON直後に画像が表示されますので、恐らくAPS-Cサイズのミラーレス一眼のEOS Kiss M等は、この様な遅延は生じないのでしょう。

となるとフルサイズ機特有のデジタル処理で、撮影画像が直ぐに見れない理由があるかもしれません。

そう思って、EOS Rから可能になったデジタルレンズオプティマイザ機能をOFFにしてみましたが、遅延が生じるのは同じでした。


26. 自己否定の評価測光

2020/2/6:追記

このAEロックの設定が初期設定になっている理由は、何なのでしょう?


ワンショットAF後にAEロックする測光モードは評価測光がデフォルト

上の設定メニューにあります様に、EOS Rは合焦後にAEロックする測光モードを選べる様になっているのですが、初期設定は評価測光のみが選択されています。

上の設定の場合、シャッターボタンを半押しすると、合焦後評価測光の時はAEロックされ、その他の中央重点平均測光や部分測光ではAEロックされません。

それが何か問題なのか、と思われる方がいらっしゃるかもしれないので、少し解説させて頂きます。


AEロック機能ができた理由

その昔(1970年代)、当時マニュアル露出が一般的だった一眼レフにもAE(自動露出)化の波が押し寄せてきます。


1973年に発売されたキヤノン初の本格的なAE一眼レフCanon EF

このAE化に伴って、明るさが変わる度に、撮影者が絞りとシャッタースピードをカチカチと調整する作業が大幅に減りました。

ですが一つ問題があって、例えば人物を逆光で撮影する様な場合、中央部重点測光や部分測光で好みの構図のままシャッターボタンを押すと、(露出計が周囲の明るさの影響を受けて)露出がアンダーになるという傾向がありました。

これがもし従来のマニュアル露出の一眼レフであれば、撮影者が絞りやシャッタースピードを個々に調整して補正できたのですが、自動露出の場合はそう簡単にはいきません。

そこで考えられたのがAEロックです。

これによって、例えば前述の逆光で人物を撮影する場合でしたら、適正露出と思われる方向(人物と同じ明るさの方向)に一旦カメラを向けてAEロックを働かせ、その後構図を決めて撮れば適正露出になるという訳です。


評価測光が考えれた理由

ただしこの場合、AEロックしてカメラを振るという余計な手間が増えるので、もっと便利にしようと考えられたのが1980年代に出現した評価測光(分割測光或いはマルチパタン測光)です。


1983年に発売された評価測光を搭載したNikon FA

この評価測光においては、カメラが逆光かどうかを自動的に判断し、もし逆光と判断したら自動的に補正を掛けてくれる優れものです。

これによって、撮影者はAEロックなどする事なく、好みの構図のままシャッターボタンを押すだけで適正露出を得る事ができるという訳です。


では何が問題なのか?

ついつい昔話に花が咲いてしまいましたが、何が言いたいか分かって頂けますでしょうか?

すなわち評価測光とは、AEロックをしないで済む様にするために開発されたのです。

にも関わらず、デフォルトの設定で合焦後AEロックするのは評価測光で、本来AEロックを必要とする中央部重点平均測光や部分測光は外されているのです。

これは誰がどうみてもオカシイでしょう。

という事は、キヤノンは自社の評価測光はAEロックを必要とする未完成なものだと言って、自己否定しているのも同然なのです。

とは言え、これが単にデフォルトの設定ミスなら多少許せる所もあります。

ところが唖然とすることに、何と操作説明書にまで、カメラが初期状態(デフォルト状態)のとき評価測光はAEロックされるとまで、しっかり明記されているのです。


間違ったデフォルト設定を肯定する操作説明書の記述

恐らくこの操作説明書が完成するまで、かなりの関係者が内容をチェックしたのでしょうが、誰も気が付かなかったのでしょうか?

書いているうちに、少々悲しくなります。

いずれにしろ、さすがにこれはデフォルトの設定ミスだと思われますので、EOS R(及びEOS Ra とEOS RP)のユーザーは早急に設定を変える事を強くお勧めします。

その方が間違いなく、撮った写真の歩留まりは良くなります。


27. 使い難いマニュアルフォーカス

2020/6/29:追記

またマニュアルフォーカスも使い辛いの一言です。

丁度手元にフジフィルムのX-T1があるので、それと比べてみましょう。

AF後のMF

当然ながらEOS Rにも、ワンショットAF後にマニュアルフォーカスが可能なフルタイムマニュアルフォーカスの機能が備わっています。

その際、ピント合わせを正確にするために、他社機と同様に自動的にファインダーの一部を拡大する機能も備わっています。


EOS RのAF後のMF設定画面

ですので、シャッターボタンを半押ししたままピントリングを回せば、自動的に画像の一部が拡大されてマニュアルでの正確なピント調整が可能になります。

ところが、その拡大された画像を元の大きさに戻す事ができないのです。

何方も分かって頂けるともうのですが、シャッターを切る前は、どう考えても全体の構図を見てから切りたいものです。

にも関わらず、それができないのです。

唯一画像の大きさを元に戻すには、シャッターボタンから指を離すしかありません。

するとどうなるかと言えば、シャッターボタンを押した瞬間にまたAFが働いて、それまでマニュアルフォーカスで合わせたピントがご破算になってしまうのです。

こんなの許せますでしょうか。

ではフジフィルムのX-T1はどうなるかと言えば、シャッターボタンを半押ししたままフォーカスアシストと呼ばれるボタンを押せば、立ちどころに元の大きさの画像に戻るのです。

それで全体の構図を確認して、シャッターボタンを深く押せば、ピントもしっかり合わせて、更に構図も確認して写真が撮れます。

EOS Rの場合も、INFOボタンを押せば拡大倍率を5倍と10倍に変えられるのに、なぜ1倍にする機能を入れなかったのでしょう。

考えたら眠れなくなりそうな謎です。

なおEOS RのAF後のMFを唯一使いこなす方法は、シャッターボタンのAF動作を解除して、AFボタンだけでAFを駆動させれば良いのですが、面倒なので止めました。


MF中のAF

MF中のAFとは、MF中でもAFボタンを押して一度AFでピントを合わせ、その後マニュアルフォーカスでじっくりピントを合わせる方法です。

X-T1ならできます。

EOS Rはできません。


その他


ここまでお読み頂くと、ボディー内手ブレ補正や、メモリーカードのダブルスロット、ローパスフィルターレスはどうしたと思われる事でしょう。

本書としては、そんな役に立たないものは不要です。(その理由はこちら

とは言え、いつかプロ用カメラとか高画素対応カメラにはそれらが搭載されるのかもしれませんが、是非EOS Rはそんなものは搭載しないで身軽で画質優先にこだわって頂ければと思います。


まとめ


上記をまとめると以下の様になります。

がっかりした点
1 やっぱり右肩にほしい電源スイッチ
2 レンズの根元にほしいコントロールリング
3 意味の無いズームリングロックレバー
4 外し難いフード
5 クリック音がほしいマルチファンクションバー
6 2工程増えるモードダイヤル
7 やっぱり使い難いバリアングルモニター
8 引き出しても消えるモニター
9 暗いと全く見えないファインダー
10 使えないエコモード
11 意味不明の測光タイマー
12 意味不明のLOCKボタン
13 表示されない被写界深度
14 明るいと見えないモニターとファインダー
15 是非ほしい絞りブラケットとフォーカスブラケット
16 敏感過ぎる水準器
17 顔認識AFだと表示されない水準器
18 前画像が見れない撮影画像
19 縦線しか検知できないAF
20 無駄でチグハグなM-FnボタンとQボタン
21 詰めの甘いFvモード
22 露出シミュレーションの罠
23 縦位置表示に対応しない背面モニター
24 Pモードで機能しない
ISOオート時のシャッタースピード低速限界
25 直ぐに表示されない撮影画像
26 自己否定の評価測光
27 使い難いマニュアルフォーカス

こうやって全体を見渡してみると、殆どができれば次機種期待と言った感じで、一番の問題点は電源スイッチの位置ではないでしょうか。

そんな事を思って表を眺めていたら、ふとEOS Rの根本的な問題に気が付きました。

それは何か?

もし興味がありましたら、次へ




21. 詰めの甘いFvモード/EOS Rのがっかりした点27連発




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