カメラのダイナミックレンジ
(RAWファイルの本当のメリットとは?)
Feb. 2016:Release
目次
12) ダイナミックレンジの広い画像
さて、ここまでお読み頂いたら、だったらなぜJPEGファイルにダイナミックレンジの全領域のデータを盛り込んでいないのだろう、と不思議に思われませんか?
Good question!
何故でしょう?
簡単です。
下の写真を見て頂ければ分かります。

上の写真は、カメラのダイナミックレンジの全領域をギュッと詰め込んだ写真なのです。
ですので、夕焼けの雲の輪郭や、(多少分かり難いのですが)手前右の木々も再現されています。
ですがどうみてもインパクトの無い、もやっとした様なのっぺりした変な感じがしませんか?
そうなのです、広いダイナミックレンジの画像をJPEGに詰め込んで、ダイナミックレンジの狭いモニタで見ると、コントラストの少ない非現実的な軟調の画像になってしまうのです。
この理由は、以下の図の様に本来70dBもある光の範囲を、40dBしか再現できないモニタに詰め込むと、本来でしたらもっと明るかったり、もっと暗い画像が再現できないため、その分本来のコントラストが失われてしまうためです。

ですから、もし70dBの再現性を持ったモニターで上の写真をみれば、十分綺麗に見えるのです。
HDR(ハイダイナミックレンジ)
ここで耳寄りな話をしておきましょう。 たった今、もし70dBの再現性を持ったモニターで上の写真をみれば、十分綺麗に見えるとお伝えしましたが、もうじきそれが可能になるかもしれないのです。 HDR(ハイダイナミックレンジ)という言葉を聞かれた事はありますでしょうか。 これは従来のビデオやモニターの明るさ(輝度)を、10倍から100倍に上げる規格です。 ![]() これをデシベルで表すと、10倍で60dB、100倍で80dBになりますので、カメラのダイナミックが楽々入ります。 数年後にはこの規格に対応したテレビが発売されるでしょうから、そうなった暁には現実に近い画像を家庭で楽しめる事になります。 とは言え、そんな眩しいほどに光るモニターが、我々庶民の手に届くのはまだまだ先の事でしょうから、本書ではコンベンショナル(一般的)なモニターに関して話を続けます。 |
一方通常のJPEGファイルは、両端の明部と暗部の情報をカットして、モニターで再現できる幅の画像だけが使われているので、自然に見えるのです。
ここで分かった事をまとめると、以下の様になります。
①カメラの全ダイナミックレンジをJPEGに詰め込んでモニターで見ると、インパクトのない軟調な画像になってしまう。
②通常のJPEGファイルは、両端(明部と暗部)の光の情報が(モニターに合わせて)カットされているので自然に見える。
なおご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、最近のハリウッド映画はこのカメラのダイナミックレンジを利用して、白トビや黒潰れの中に画像を再現させるのが流行っている様です。
映画は暗闇の中で見るのでその価値はあるのでしょうが、明るい所で見る写真には関係ないと言えます。