マニアックな
コンパクトフィルムカメラのトップ10

2019/12/27:発行

目次


はじめに
第1位:元祖コンパクトRollei 35
第2位:元祖スパイカメラMINOX 35
第3位:元祖カプセルカメラOLYMPUS XA
第4位:宮内庁ご用達OLYMPUS O-product
第5位:元祖プレミアムコンパクトCONTAX T2
第6位:伝説の銘レンズ搭載Konica HEXER
第7位:クロノグラフ搭載Nikon 35Ti
第8位:驚きの画質FUJIFILM TIARA
第9位:精緻の極みへMINOLTA TC-1
第10位:元祖スナップシューターRICOH GR1
まとめ

はじめに


もうこのまま消え去るのではなかたお思ったフィルムカメラが、若者の間で僅かながら復活してきているとの事です。

理由はアナログ回帰とか、フィルム独特の色合いに惹かれてとか言われていますが、単なる物珍しさや、他人と違う物を使ってみたいという理由もあるでしょう。

だとしたら、他人が見てオッと唸(うな)る様なフィルムカメラを使ってみるのも宜しいのではないでしょうか。

と言う訳で、カメラファンならずとも興味をそそられる、昔懐かしいマニアックなコンパクトフィルムカメラのトップ10をご紹介したいと思います。

ただし一部はコレクターアイテムになり、中古でも少々お高いのをお許し下さい。


第1位:元祖コンパクトRollei 35


それでは早速本サイトが選ぶコンパクトフィルムカメラの第1位をご紹介したいと思います。

それは今から半世紀も前の1967年に発売されたRollei 35です。


Sonnar 40mm F2.8を搭載したRollei 35 SE

本機の最大の特徴は、何と言っても中心部にある丸いレンズと、その周囲に配置された同じく二つの円形ダイヤルが醸し出す3眼レンズ風のユニークなデザインでしょう。

本カメラが発売された時代は、既に日本製のカメラが世界市場を席捲しつつあったのですが、このデザイン(意匠)は余りにもインパクトが大きくて真似をするのを憚(はばか)られたのか、他社製でこの様なデザインを踏襲したモデルは全くありませんでした。

ですので本書が本機を第1位に選んだ理由は、遠くから見ても、見紛(みまごう)ことなくRollei 35と分かるその存在感です。


初期のRollei 35は底面にストロボを装着した

本機はレンズを変えたり、露出計を変えたりといくつかのモデルが存在しますが、製造期間が15年以上(その後復刻版も登場)と長かったため、かなり多くの中古モデルが流通しています。

ただし距離計はないためピント合わせは目測になりますが、露出計は内蔵で、シャッタースピードはB、1/2秒〜1/500秒まで対応しています。

またいざとなれば露出計が無くても写真は撮れますので、電池無しでも使用できるのも利点です。


露出設定の目安が書かれたフィルムのパッケージ

ちなみにISO100のフィルムでしたら、上のパッケージにある設定(もし晴れならば1/250秒のF8)にすれば大丈夫です。

この設定値は、今のカメラにおいても通用しますので覚えておいて損はありません。

最後にもう一つ。

本機は説明書が無くても何とか使えると思うのですが、シャッターをチャージしないと沈胴レンズを収納できない事だけはお伝えしておきます。


第2位:元祖スパイカメラMINOX 35


続いて第2位は、1974年に発売されたMinox 35です。


Color-Minotar 35mm F2.8を搭載したMINOX 35GT

ミノックスと言えば専用のマイクロフィルム(8 x 11mm)を使うスパイカメラが有名ですが、本機はその名の通り35mmフィルムを使うカメラです。

小型ながら、電子制御のシャッター1/30~1/500で写りもソコソコ、レンズカバーを閉じれば胸ポケットにも入れられます。


レンズカバーを閉じると突起物が無くなるMINOX 35

また本機も(Rollei 35と同様に)露出計は搭載しているもののピント調整は目測になり、生産期間が長かった(1974年から1999年まで新機種発売)ため、中古品も多く流通しています。

ただし本体にストラップの取り付け金具がないため、ストラップを付けるためには別途カメラケースが必要になります。

更に、知っている方が見れば間違いなく通好みのカメラなのですが、知らない人が見るとどうしてもおもちゃにしか見えないのが辛い所です。


第3位:元祖カプセルカメラOLYMPUS XA


続く第3位は、1979年に発売されたオリンパスのXAです。


F.Zuiko 35mm F2.8を搭載したOLYMPUS XA

本機の最大の特徴は、ご覧の様にレンズとファインダーがスライドカバーによって開閉できる事です。


OLYMPUS XAと専用の外付けストロボ

更に驚くべきは、この小ささで絞り優先AE(シャッタースピードは10秒~1/500秒)を搭載し、なんと距離計連動のレンジファインダーまで搭載しているのです。

シャッターボタンがオレンジなのを見ると、前述のMINOX 35を少なからず意識している様に見えますが、この前に発売されているオリンパスペンやOM-1に見られるオリンパスの徹底した小型化の思想が伺えます。

なおこの後、ゾーンフォーカス(目測)方式を採用した普及版のXA2(1980年発売)、セレン式露出計を採用した廉価版のXA1(1982年発売)、広角レンズを搭載したXA4(1985年)が登場しましたが、一番のお勧めは勿論初代XAです。


第4位:宮内庁ご用達OLYMPUS O-product


続く第4位は、1988年に発売されたオリンパスのO-productです。


35mm F3.5のレンズを搭載したOLYMPUS O-product

本機の特徴は、もう言うまでもなくそのデザインです。

この円形を多用したデザインはRollei 35にも似た物があり、何故か人の心を惹きつけるものがあります。

本モデルは国内1万台、海外1万台の限定予約販売だったため、多くがカメラ業界関係者に買い占められ、店頭に並ぶ事は殆どありませんでした。

おまけに、当時皇太子であった現天皇陛下が本カメラを愛用されている姿が報道されため、中古相場が高騰したといういわく因縁付きのモデルです。

なお本モデルは、フィルムの装填から巻き戻まで全て自動で行われますが、シャッタースピードは1/45~1/400秒のため、夜間はストロボが必須でした。


O-producのフィルムコンパートメントと脱着式の専用ストロボ

このため、デザイン的に言っても専用ストロボは常時付けておくのが、本機のお約束事でしょう。

余談ですが、この専用ストロボを本体右側に装着するスタイルが、前述のXAと同じなのは偶然ではないでしょう。


第5位:元祖プレミアムコンパクトCONTAX T2


第5位は、1990年に発売されましたご存知Contax T2です。


Carl Zeiss Sonner 38mm F2.8 T* レンズを搭載したCONTAX T2

本機はプレミアムコンパクトの草分け的存在ですので、ご存知の方は多いのではないでしょうか。

本機に刺激されて、この後各社からプレミアムコンパクトカメラが発売されたという訳です。

設計製造はヤシカを吸収した京セラですが、デザインはポルシェ、レンズはカールツァイスですので、日独共同作品と言えるかもしれません。

また本機の外装は、ポルシェの要求に基づき傷が付き難いものの加工が難しくて高価なチタンを採用しているのですが、チタンの採用は本機が初めてではないでしょうか。

さらに本機のファインダーの表面にはサファイアガラス、レリーズボタンは人工多結晶サファイア、フィルム圧板にはセラミックと、京セラ自慢の材料もふんだんに盛り込まれています。


CONTAX T2の各部の名称

操作性も秀逸で、電源ダイヤルは更に回すとフォーカスダイヤル(AF/MF)として機能し、露出補正には当時のコンパクトカメラには珍しく専用ダイヤルを採用している程です。


露出補正ダイヤルとその表示部

そしてレンズもそれに伴う画質も噂に違(たが)わぬ優れものです。

にも関わらず 何故第5位かと言うと、有名になり過ぎた事と、カメラ全盛の今でも中古市場で以前値段が高騰していて、おいそれと購入できないからです。


第6位:伝説の銘レンズ搭載Konica HEXER


第6位は1992年に発売されたコニカのHEXERです。


KONICA HEXER 35mm F2.0を搭載したKONICA HEXER

本機もプレミアムコンパクトカメラの流れで生まれてきた言えばそれまでですが、最大の特徴はそのレンズです。

一般的なコンパクトカメラのレンズの開放値は押し並べてF2.8なのですが、本機は35mm F2.0の大口径レンズを採用しているのです。

このため外観は他社機より一回り大きく、沈胴式レンズでもありません。

おまけにレンズが大きいためか、レンズシャッターの最高速度が1/250秒なのが玉に瑕(きず)と言えます。

先ほどお伝えしました様に、晴れの日の露出は1/250秒で絞りF8、曇りでもF4.0ですので、昼間の屋外でF2.0で撮影する事はほぼ不可能と言えます。

とは言え、このレンズは余程通好みの描写だった様で、後にライカLマウント用の交換レンズとして生まれ変わり、何と本機以上の高値で取り引きされています。


ライカLマウントを採用したHexanon 35mm F2

そしてもう一つの特徴は、本機に採用されたサイレントモードです。

このモードは後に販売されたシルバーモデルでは削除されたのですが、隠しコマンドで使えるというのが巷で話題になりました。


シルバー外装の後期モデル

本機もご多分に漏れず、中古品も高値で推移しているのですが、他社のプレミアムモデルより多少安いのが救いです。


第7位:クロノグラフ搭載Nikon 35Ti


続いて第7位は、1993年に発売されたNikon 35Tiです。


Nikkor 35mm F2.8を搭載したNikon 35Ti

本機の最大の特徴は、何といっても本体上部に設けられたクロノグラフ時計ならぬ、アナログ指針でしょう。


距離、絞り値、露出補正値が表示されるアナログ指針

当然指針は専用モーターで駆動しているので、(液晶のデジタル表示と比べて)かなりのコストが掛かっているのは間違いありません。(噂によればセイコーエプソン社が手を貸したとの事です)

ただし、デジタル表示より明らかにこちらの方が感覚的に分かり易いのは間違いありません。

本機も1990年代のプレミアムコンパクトカメラの流れに乗って発売されたのですが、カメラの性能よりどうしてもこちらの表示部に目がいってしまう所が辛い所です。

この後に28mm F2.8のレンズを搭載して、外装を黒くした28Tiが登場しましたが、チタンカラーの35Tiの方が高級感はある様に思います。


28mm F2.8のレンズを搭載して黒塗りとなったNikon 28Ti

35Tiで使い難いと言われたストロボのスイッチが、こちらでは改善されています。


第8位:驚きの画質FUJIFILM TIARA


第8位は1994年に発売されたフジフィルムのティアラ(正式名称はCARDIA nini TIARA)です。


SUPER EBC FUJINON 28mm F3.5の単焦点レンズを搭載したフジフィルムのティアラ

今まで登場したプレミアムコンパクトと比べて目立つ特徴はありませんが、驚くのはその写りです。

筐体にSUPER EBC FUJINON 28mmと書かれているは伊達(だて)ではなく、撮った写真は確かに並みのコンパクトカメラとは一線を画すものです。


日付設定だけではなく、カメラの設定を全てこのボタンで行う

またこの大きさで、マニュアルフォーカスが可能だったり、ピント位置を2mに固定するスナップモードが付いていたりと機能面も充実してます。

おまけにストロボ直下の涙袋に見える部分はタッチセンサーになっており、ストロボに指が掛かるとファインダー横のランプが赤色に点滅して警告してくれるという気の使い様です。

なおこのストロボですが、レンズの光軸に近いため、発光させても被写体に影が出難いのも利点です。


第9位:精緻の極みへMINOLTA TC-1


第9位は1996年3月に発売されたMINORTA TC-1です。


G-ROKKOR 28mm F3.5を搭載したMINORTA TC-1

本機も先ほどのCONTAX T2の影響を受けて発売されたプレミアムコンパクトです。

で、本機の特徴はと言えば、お決まりのチタンの外装採用や基本性能は他社と似た様なものの、その中では最も小さいという事でしょうか。


TC-1の各部名称

本機も依然中古価格が高値で推移していて、実用には全くお勧めできない所が寂しい所です。


第10位:元祖スナップシューターRICOH GR1


最後は1996年に発売されたリコーのGR1です。


GRレンズ28mm F2.8を搭載したリコーGR1

本機のルーツは、1994年に発売されたリコーR1に遡(さかのぼ)ります。



これは当時流行したプレミアムコンパクトの仲間と同様、30mmF3.5の単焦点レンズを搭載し、高品位の薄型カメラとして世界で5つのグランプリを獲得、ヒット商品となりました。

ただし当時のプレミアムコンパクトは、ミノルタのTC1やフジフィルムのティアラの様にお洒落な外観だったのですが、本機はご覧の様に少々武骨なスタイルでした。

そしてその2年後の登場したGR1は、外装にマグネシウムダイカストを使用し、高性能な28mmF2.8レンズを搭載し、プロが一眼レフのサブ機としても使える高級コンパクトの位置づけを確固たるものにしました。

特にスナップ撮影においては、軽量/薄型で撮影距離を固定したパンフォーカスが可能な事から代表機種となり、その系譜はデジタルカメラの今にも続いています。

そして2000年には、21mmの超広角レンズを搭載したGR21へと進化しますが、お勧めはやはりGR1でしょう。


まとめ


さてまとめです。

もしかしたら、既にお気付きになられたでしょうか?

色々理屈を付けて順位を付けさせて頂きましたが、実は下のリストにあります様に本書の順位は発売順と全く同じなのです。

第1位:元祖コンパクトRollei 35(1967年)
第2位:元祖スパイカメラMINOX 35(1974年)
第3位:元祖カプセルカメラOLYMPUS XA(1979年)
第4位:宮内庁ご用達OLYMPUS O-product(1988年)
第5位:元祖プレミアムコンパクトCONTAX T2(1990年)
第6位:伝説の銘レンズ搭載Konica HEXER(1992年)
第7位:クロノグラフ搭載Nikon 35Ti(1993年)
第8位:驚きの画質FUJIFILM TIARA(1994年)
第9位:精緻の極みへMINOLTA TC-1(1996年)
第10位:元祖スナップシューターRICOH GR1(1996年)

その理由は、古いカメラほどマニュアルで操作する必要があり、更に古いカメラほど製造期間が長く中古価格もこなれてきている事から、マニアックでそこそこ手の届くとしたらこの順番で大きな間違いではないと思うからです。

ですので、本書はコンパクトフィルムカメラの系譜とも言えます。

この系譜に、更にエポックメイキングなコンパクトカメラを入れると、1961年に価格破壊のキャノネットとオリンパスペン、1977年にAF搭載を搭載したKONICA C35AFになります。

それらを考え合わせると、1970年代までは小型化、低価格化、自動化が進められていたのに対して、1980年代は高級化と洗練化が進められていたと言えそうです。

という事は、1980年代にはコンパクトフィルムカメラの技術は既に飽和状態にあり、この後にやってくるデジタル化の荒波までの凪だったのかもしれません。

だとすると、その時代に跋扈したCONTAX、MINOLTA、KONICAのカメラブランドは消え去り、当時高級コンパクトには一切目もくれなかったCANONがその後のカメラ市場においても首位を堅持しているのは、偶然でしょうか?




マニアックなコンパクトフィルムカメラのトップ10





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