LUMIX S PRO 50mm F1.4の光学性能
(高級標準レンズのMTFを比較してみた)
2019/02:発行
2020/11:更新
2020/11:更新
はじめに
パナソニックから超ど級の標準レンズ、LUMIX S PRO 50mm F1.4がリリースされました。
LUMIX S PRO 50mm F1.4
価格は何と28.5万円で、重さはほぼ1kgとも言える995gです。
非球面レンズ2枚、EDレンズ3枚を使用した11群13枚構成のLUMIX S PRO 50mm F1.4
となると一体光学性能(MTF)はどれくらいなのか、他社のレンズと比べてみたくなるのが人情です。
LUMIX S PRO 50mm F1.4のMTFチャート
ですが、各社が公表しているMTF(Modulation Transfer Function)チャートは、大きさやグラフの色等が各社毎に微妙に異なったり、絞り値や空間周波数が異なるため、見比べるのに一苦労してしまいます。
SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZAのMTFチャート
このため、各レンズの絞り開放におけるMTF値を1枚のチャートに載せて、簡単に比べられる様にしてみました。
対象となるのは、発売日が比較的新しく高価なSONY(2本)、Sigma、Pentax、Lumixの計5本のレンズです。
どんな結果になるか、お楽しみに。
SONY同士の比較
それでは先ずSONYの2本のレンズを比べてみたいと思います。
1本目は、高級標準レンズの走りとも言えるSONYのAマウントレンズであるPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM(チャート上ではSALと記載)です。
5群8枚構成のSONY Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM(2013/7発売)
SONY Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMのMTFチャート
もう1本は、それより更に新しいEマウントレンズのPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA(チャート上ではSELと記載)です。
SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZA(2016/7発売)
このレンズを初めて見たときは、焦点距離50mmの標準レンズが何故こんなに長いのかと不思議に思ったのですが、いつのまにかこの長さが主流になってきました。
レンズ構成は9群12枚
SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZAのMTFチャート
この2本のレンズの絞り開放で空間周波数が10本/mmのMTFを同じチャート上に載せてみると、以下の様になります。
Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM(青色)とPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA(赤色)の開放時のMTF
左が円周方向、右が放射方向のMTFです。
こうやって見比べると、光学性能の差が一目瞭然です。
Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM自体、それまでの標準レンズより明らかに優れているのですが、新しいPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAはそれよりも更にMTFが改善されています。
なお右のチャートにある様に、Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMの放射方向のMTFは、端に行くとなぜか良くなるという珍しい傾向を示しています。
SIGMA
それではこのSONYのレンズに、昨今評判の良いシグマのSIGMAの標準レンズ Art 50mm F1.4 DG HSMを加えて比較してみましょう。
SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM(2014/4発売)
レンズ構成は8群13枚
SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSMのMTFチャート
すると下の様なチャートになります。
SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM(灰色)を追加した開放時のMTF(10本/mm)
ちなみにシグマでは波動光学的MTFと幾何学的MTFを公表しているのですが、当然ながらここではより現実に近い波動光学的MTFを使っています。
これをご覧頂きます様に、SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSMのMTF(灰色)は両SONYレンズのほぼ中間に位置すると言えそうです。
昨今の評判からするともう少し良い事を期待したのですが、それほどではありませんでした。
ただし距離目盛と被写界深度目盛りがある事は好感触です。
おまけにこれだけの高性能でありながら、純正品より5万円ほど安い10万円以下というのが、何とも魅力的です。
PENTAX
それではいよいよLumixと言いたい所ですが、その前にPENTAXをご紹介させて下さい。
余り目立ちませんが、本レンズはPENTAXが久々にリリースしたフルサイズ対応のレンズで、かなり気合が入っています。
HD PENTAX-D FA☆50mm F1.4 SDM AW(2018/7発売)
レンズ構成は9群15枚
これも径に対して長い全長で、光学性能を高めるためには、フランジバックの長い一眼レフ用レンズであってもミラーレス用と同様に全長を長くする必要がある様です。
このMTF(緑線)を見ると、シグマと似た傾向を示しながら、それより若干上回っています。
HD PENTAX-D FA☆50mm F1.4 SDM AW(緑色)を追加した開放時のMTF(10本/mm)
老舗PENTAXも頑張っています。
LUMIX
さて、お待たせしました。
いよいよ話題のLUMIX S PRO 50mm F1.4です。
LUMIX S PRO 50mm F1.4(2019/3発売)
重さ995g、価格28万円の光学性能はどれほどなのでしょうか?
そのMTF(水色)は以下の通りです。
LUMIX S PRO 50mm F1.4(水色)を追加した開放時のMTF(10本/mm)
このチャートをご覧頂きます様に、これはもうかなりビックリではないでしょうか?
円周方向も放射方向もコントラストは95%以上をマークしています。
おまけに中心部は、100%近い値です。
まるで開放時のMTFではなく、F8程度にまで絞った様な値です。
これはもう本当にびっくりです。
一体誰が設計したのでしょうか?
そして誰が製造工程を指揮したのでしょうか?
S Proレンズはライカの認証は受けている様ですが、ライカのブランド名は付いていない事から、完全に自社開発で自社製造の様です。
と思ったのですが、カメラWatchの記事によれば、ライカのブランド名は付いていないながらも、S Proレンズはライカと共同で開発製造された様です。
むしろライカの光学技術の方が、たっぷり盛り込まれているのかもしれません。
だとすると、すんなり納得です。
とは言え、このレンズに関しては、キヤノンもニコンも少なからず脅威に感じているのではないでしょうか。
まとめ
それでは最後にまとめとして、MTFの順位をお伝えしたいと思います。
第5位:SONY Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM(2013/7発売)
本レンズは、2013/7発売と少々古いながらも、フィルム時代の標準レンズと比べれば明らかにMTFは優れています。
ただし如何せん、最新の高級レンズを比べると少々見劣りするのは事実です。
ただしそれらのレンズと比べると、新品/中古とも値段がこなれているのが魅力的です。
なお放射方向のMTFは、端に行くとなぜか中心部より良くなるという不思議な傾向を示しています。
第4位:SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM(2014/4発売)
SIGMAのArtレンズは、純正レンズを凌ぐ光学性能を誇りながら、価格は純正より安いというのが大きなアドバンテージです。
本レンズにおいても、光学性能は優れていながら、価格が純正品よりもかなり安いというのが、最大のアドバンテージと言えます。
第3位:HD PENTAX-D FA☆50mm F1.4 SDM AW(2018/7発売)
本レンズは、PENTAXからの久々のフルサイズ対応レンズなので、その意味からもついつい応援したくなってしまいます。
MTFはSIGMAのそれより、僅かに上回っています。
懐古趣味と言われるかもしれませんが、昔ながら距離表示窓を設けているのに共感を覚えるのですが、何故被写界深度の目盛りが無いのが腑に落ちません。
第2位:SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZA(2016/7発売)
このレンズは15万円前後の高級標準レンズとしては、ベストの仕上がりと言っても良いかもしれません。
重さは800g以下(778g)で、MTFは第2位です。
ただし絞りリングが付いているのは良いのですが、鏡筒の太い部分に付いていて、それを1/3ステップで回さなければいけないので、操作性はとても褒められたものではありません。
第1位:LUMIX S PRO 50mm F1.4(2019/3発売)
これはもう、ぶっちぎりの光学性能と言っても良いのではないでしょうか。
ただしこの値段とこの重さですので、どういう方がどういう目的で購入するのかの方に、非常に興味があります。
生憎このクラスにはキヤノンとニコンのレンズは存在しないのですが、今後両社がミラーレス機用にどんなレンズを投入してくるか、今から楽しみです。
LUMIX S PRO 50mm F1.4の光学性能(高級標準レンズのMTFを比較してみた)